和食を科学する

先週は一般向けの講演が2つありました。一つは、理事として関わっている「NPO法人 脳の世紀推進会議」というところが毎年主催している「脳の世紀シンポジウム」という催し。ここ最近は「運動と脳」「音楽と脳」というようなテーマになっていて、今年は「食と脳」。特別講演は京料理「木乃婦」の三代目、高橋拓児様でした。身近なテーマかつ「きょうの料理」の講師などでも有名な講師をお呼びしているためもあってか、8月末でウェブ登録は締切、当日も歩留まりよく多数の方々にお集まり頂きました。
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仙台で他の用務があってご講演伺えず残念……。そこで、さっそくご著書をゲットしました。
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美しいお料理の写真とともに、高橋氏の和食の捉え方が記されています。例えば「料理人は研究者でお客様は被験者?」「歴史・経験、そしてこれからはデータ」など……。そして、この手の本で「グラフ」が出て来るのを見たのは、初めてかもしれません。「昆布出汁」と「一番出汁」のアミノ酸成分を、チキンブイヨンと上湯と比較しているのです。確かに、和食の基本である「出汁」はスッキリとしていることが、実際の成分からも(視覚認知的に)わかります。

(ちなみに、ちょうど、4人目の講演者である都甲 潔先生@九大が、ご自身が開発された味覚や嗅覚のセンサを紹介されていましたが、味をどのように構築していくのかは、このようなデータを元にして科学的にも進められるのでしょうね。ただし、受けて側のヒトの味覚受容体や嗅覚受容体には多様性があるので、万人が同じように感じる訳ではない、ということもありますが……。)

京料理の楽しみは味そのものだけでなく、器との調和や、さらにはお部屋の設えなど、本当に総合文化だと思います。木乃婦はミシュランの星も付いている人気店とのことですが、いつか訪れてみたいと思います。





# by osumi1128 | 2016-09-24 09:53 | 味わう | Comments(0)

学会備忘録&新シリーズ「自閉症研究最前線その1:九大中山研ほかNature論文」

先週、第38回日本生物学的精神医学会と第59回日本神経化学大会の合同大会が福岡国際会議場にて開催されました。初日に東京医科歯科大学の西川徹先生(←実は高校の先輩でもあります……)とともに合同シンポジウム「発症とは何か」の座長をさせて頂き、発達障害、統合失調症、うつ病など、精神疾患の発症時期の違いからメカニズムに迫るという切り口での議論を深めることができました。

2日目は、午前中に神経化学会側の大会長、和田圭司先生自らが座長を務められた教育講演で我が国のグリア研究の立役者の、工藤佳久先生がアストロサイトについて、池中一裕先生がオリゴデンドロサイトについてお話され、その後、本来は高坂新一先生がミクログリアについてお話されるはずのところ、ダブルブッキングにより代役となったのが佐柳友規さん@国立精神神経医療研究センターでした。40分ほどの長いトークを立派に務められていました。
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午後は、当研究室の助教である吉崎嘉一さんが企画シンポジウムにお声がけ頂き、未発表データ(父加齢による仔マウスの行動異常とその背景として想定される次世代継承エピジェネティクス)について披露させて頂きました。なるべく早く論文にまとめないと……。30代の若手の方のセッションで、裏番組に大物の先生方のシンポジウムがある中で、多数の聴衆に恵まれて何よりでした。
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ちょうどこの週、おそらく最近の自閉症の基礎研究の中でもエポック・メイキングになるであろう一つの基礎研究論文がNatureに掲載されました(抄録は末尾にcopy & pasteしておきます)。

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10年ほど前から、自閉症の遺伝学的解析が全ゲノムレベルで為されるようになってきたのですが、数年前に行われたエクソーム・シークエンスという解析から、浮かび上がった因子の一つがCHD8という遺伝子でした。この遺伝子はchromatin helicase DNA binding protein 8という名前のタンパク質を規定(コード)しています。この他にも関連する、染色体の構造を変える(リモデリング)因子をコードする遺伝子についていくつか自閉症との関連が示唆され、シナプス形成などに直接関係する分子をコードするものではないのに、いったいどうやって自閉症の病態に関係するのだろうと疑問が持たれていました。

おそらく、世界中で他にもこのCHD8の遺伝子をゲノム編集技術で改変したマウスを作っているような研究室は存在するのではないかと思うのですが、実は、九州大学の中山敬一教授のグループは、すでに別の経緯でこのCHD8に着目し、ノックアウト・マウスを作っていたのです。そこに、「どうやら自閉症に関係するらしい」という論文が舞い込んできた訳ですから、じゃぁ、調べてみましょうか、ということで、2009年に自閉症マウス論文でCell誌の表紙を飾った理化学研究所脳科学総合研究センター(BSI)の内匠透チームリーダー(当時は広島大学教授)のところにコンサルトをお願いしました。(ちなみに、さらにその背景には、不肖、大隅が取りまとめ役だった某グループグラントの申請があったかもしれません。そのグラントはボツになりましたが、こんな風に繋がったの無なぁ…と勝手に思うことにします♬)
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さらに、マウスの行動解析を網羅的・統一的に行うシステムを構築していたのが、藤田保健衛生大学の宮川剛教授。この共同研究により、CHD8の遺伝子の片方が欠損した「ヘテロ接合」のマウスの行動解析が一気に進んで、確かに不安の亢進、常同行動、社会行動の異常など、自閉症様の行動異常が認められました。

しかしながら、データがここまでではNatureには載りません。さらにその分子メカニズムを追求するために、マウスの脳の中で働く遺伝子を調べてみると、何か特定の遺伝子の発現のみが非常に変化しているというよりも、もう少し全体的な変化のように見受けられました。この中で、発現が上昇している、すなわち、強く働いていると思われた遺伝子が浮かび上がりました。それは、RE-1 silencing transcription factor (REST)という名前のタンパク質をコードする遺伝子でした。CHD8は、タンパク質になった場合の機能としてDHAに結合するのですが、確かにCHD8がRESTの遺伝子(つまりDNA)に結合することもわかりました。

REST遺伝子から作られるRESTタンパク質は、神経分化に重要な働きをすることが知られているのですが、実は、その名前のように「抑制的」に働く分子です。つまり、他のさまざまな遺伝子のスイッチをOFFにする働きがあります。したがって、
CHD8がヘテロになって減少する→RESTが上昇する→RESTによって制御される遺伝子の働きが悪くなる
というシナリオが書けることになるのです。このことが「神経発達障害」というカテゴリーに分類される自閉症スペクトラム障害の発症機序を説明できると考えられます。

もちろん、自閉症と診断される方でも、CHD8遺伝子の変異を持たない方もおられます(というよりも、その方が多いことは間違いありません)。しかしながら、CHD8やRESTなどのような、他の複数の遺伝子の働きに影響を与えうる分子は、確かに「多遺伝子疾患」と想定されるような病気(自閉症だけではなく、代謝病なども含まれます)を説明する上でぴったりです。今後、なぜ多様な病態が生じるかについては、RESTの標的となる遺伝子のスイッチ部分の違いというようなメカニズムが解き明かされていくと期待されます。

【豆知識】
「CHD8の遺伝子の機能とタンパク質の機能はどう違うのですか?」というような質問を、他の分子についても受けることがよくあります。これは生命科学研究常識の「基本のキ」、「一丁目一番地」といえることなのですが、遺伝子(実体としてはDNA)は、それ自身では「機能」することができません。実際には「遺伝子に書き込まれた情報をもとに作られるタンパク質」が、その機能の実体を担います。したがって、研究者は「CHD8遺伝子の機能」と話しているときも、頭の中では「CHD遺伝子から作られたCHDタンパク質の機能」と読み替えて話をしています。これが不慣れな方には混乱を招くようです。

ちなみに、分子によっては遺伝子名とタンパク質名が異なる場合があります。例えば、自閉症関連で言うと、脆弱性X症候群という、精神遅滞や自閉症的症状を示す疾患の原因遺伝子の1つにはFmr1(Fragile X Mental Retardation syndrome 1)という名前が付いていますが、タンパク質はFMRP(Fragile X Mentarl Retardation Protein)という名前で呼ばれます。

分子レベルで語る生命科学研究では、多数の役者を区別する必要があるので、それぞれの遺伝子やタンパク質、その他の物質にも、固有の名前が付いています(実体がわからず、まだカタログ番号のみの遺伝子もあり)。不慣れな方々には固有名詞が多数出てくるのはわかりにくいですが、名付けた研究者にとっては自分の子どものように愛情のこもったものなのです……。

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おかげさまで拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』は3刷になりました。自閉症と脳、その発生や遺伝子の働きなどに興味のある方はぜひどうぞ! また、今週は脳の発生と栄養についての一般向け講演を行います。

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Nature論文の抄録です。
Autism spectrum disorder (ASD) comprises a range of neurodevelopmental disorders characterized by deficits in social interaction and communication as well as by restricted and repetitive behaviours. ASD has a strong genetic component with high heritability. Exome sequencing analysis has recently identified many de novo mutations in a variety of genes in individuals with ASD, with CHD8, a gene encoding a chromatin remodeller, being most frequently affected. Whether CHD8 mutations are causative for ASD and how they might establish ASD traits have remained unknown. Here we show that mice heterozygous for Chd8 mutations manifest ASD-like behavioural characteristics including increased anxiety, repetitive behaviour, and altered social behaviour. CHD8 haploinsufficiency did not result in prominent changes in the expression of a few specific genes but instead gave rise to small but global changes in gene expression in the mouse brain, reminiscent of those in the brains of patients with ASD. Gene set enrichment analysis revealed that neurodevelopment was delayed in the mutant mouse embryos. Furthermore, reduced expression of CHD8 was associated with abnormal activation of RE-1 silencing transcription factor (REST), which suppresses the transcription of many neuronal genes. REST activation was also observed in the brains of humans with ASD, and CHD8 was found to interact physically with REST in the mouse brain. Our results are thus consistent with the notion that CHD8 haploinsufficiency is a highly penetrant risk factor for ASD, with disease pathogenesis probably resulting from a delay in neurodevelopment.

# by osumi1128 | 2016-09-11 23:06 | 自閉症 | Comments(0)

参加者募集!:明日をソウゾウするあなたへ〜女性科学者への道案内〜」

前のエントリーに関連して合宿イベントへの参加者募集のお知らせです♬ 医工学研究科の田中真美先生と、薬学研究科の矢野環先生がご登壇。大隅はナビゲータとして参加します。参加のための交通費等は支給されます。周囲に理系進学を考えるJKの方がおられましたら、ぜひ応募を勧めて下さい!

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 東北大学では、「明日をソウゾウするあなたへ ~女性科学者への道案内~」に参加する全国からの女子高校生を募集しています。
 このイベントは、東北大学への進学に興味・関心があり、研究者としての将来を考えている女子高校生(1,2年)で、短期的・長期的な視野で物事を捉え(明日を想像)、日々その諸課題を解決すべく行動(豊かな社会を創造)している方を対象としています。本イベントでは、本学で活躍する女性研究者、東北大学サイエンス・エンジェルなどによる講演会、参加者によるグループ討議等を通じて、遠い存在として捉えられがちな現代の科学や女性科学者としての職業を身近に感じてもらい、次世代のリーダーとして明日を想像し、豊かな社会を創造する女性を育成すること目指しています。また東日本大震災の被災地を巡り、震災及び震災からの復興を体験していただきます。
 皆さんの応募をお待ちしております。

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# by osumi1128 | 2016-09-04 08:16 | Comments(1)

お茶の水女子大学に行ってきた:第2回理系女性教育開発共同機構 シンポジウム

愛媛からの帰路、土曜日は別シンポジウムで講演とパネル・ディスカッションに参加してきました。主催のお茶の水女子大学では、平成27年度より奈良女子大学と連携し、「女性教育開発共同機構(CORE of STEM: Collaborative Organization for Research in Women's Education of Science, Technology, Engineering, and Mathematics」という仕組みを作り、とくに女子生徒・学生の理系教育推進んのための取組みを行っています。お茶の水女子大学では、保護者や子ども向けに「リケジョ・未来シンポジウム」という、さまざまなリケジョ(理系のキャリアを持つ女性)のロールモデルを提示するイベントも開催されています。今回、学長の室伏きみ子先生からお声がけ頂きましたが、自分の講演の冒頭では、お茶の水女子大学と東北大学の繋がりとして、日本で最初の女子学生3名のうちの一人、黒田チカ先生は、東京女子高等師範学校(お茶女の前身)の卒業生であったことをお話しました。拙翻訳本『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』からの引用含めて、種々のエピソードを盛り込みつつ、全体のメッセージとしては「大人の無意識のジェンダーバイアスを変えることが重要」ということをお伝えしたつもりです。
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黒田チカ含む日本で最初のリケジョについては、下記をご参照下さい♬
東北大学女子学生入学百周年記念事業:女子学生の歴史

画像は、開会のご挨拶をされる室伏先生と本の表紙(西村書店さんのHPより)
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今回のシンポジウムでは、教育学の専門家として愛媛大学の隅田学先生と、国立教育政策研究所の銀島文先生からのお話を伺うことができ、たいへん勉強になりました。隅田先生とは、JSTの理系教育に関する委員会で以前に御一緒したことがありましたが、今回は、女子生徒が若いうちに高い理数系能力を発揮すること(逆に言うと、それが活かされていないことになります……)などのデータを拝見できたのがありがたかったです。

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銀島先生は、2012年のPISAのデータをご紹介頂き、15歳児における理数系のスコアの男女差が前回よりも広がったことを知りました。また、最新の国別のデータを見ると、上海やシンガポールの教育レベルが高まっていることがよくわかりますね……。

詳しくはこちら
残念ながら、講演に使われた男女別国別の資料はこちらには含まれていないようなので、後で銀島先生から取り寄せたいと思います。

パネル・ディスカッション、その後の懇親会でも種々のご意見を伺うことができ参考になりました。高専の先生が「大学院進学まで希望する女子生徒に、<将来、大丈夫でしょうか?>と相談されたときに、どのように答えるべきでしょうか?」という質問をされたので、「一般論で答えるよりも、先生ご自身がご存知の、理系のキャリアパスの女性を挙げて、<こんな方もいますよ。だから貴女もがんばってね>という伝え方の方がインパクトがあると思います」という意見を述べておきました。私よりも年上のようにお見受けしましたので、その周囲にそういうロールモデルとなるような女性がおられないということが問題なのだろうなと思いつつ……。でも、もし真剣にそういう女子生徒を伸ばしたいと思うのであれば、「◯◯大学に、こういう女性の教授がいるから、相談に行ってみたら?」というようなアドバイスをして頂けたらと思います。遠くても、今ならSkypeだってありますし。多様でリアルなロールモデルの存在を知ることが大切だと思います。拙ブログにも「東北大学縁の女性研究者」というシリーズで取り挙げています。

隅田先生の才能教育のことなども含め、いずれにせよ、個々の才能をうまく伸ばせる社会であってほしいと思いました。コーディネートされた佐藤明子先生はじめ、関係各位のご尽力に感謝いたします。(画像は閉会と懇親会開会のご挨拶をされた小川温子先生)
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# by osumi1128 | 2016-09-04 07:49 | 教育 | Comments(0)

愛媛大学に行ってきた:第12回愛媛大学学術フォーラムにて講演

伊丹経由で松山空港へ。愛媛大学を初めて訪問しました。キャンパスに棕櫚の木があるというのは、南の国の象徴ですね。年2回ずつ開催されているという学術フォーラムに登壇のお招きを受けました。
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愛媛大学は1949年創立で、もともとの学章は深緑の五葉の松だったのですが、開学60周年を記念して新しいブランドマーク「ドット・愛媛」という、蜜柑色のものを新しく制定されたとのこと。なかなかシンプルで素敵です。ちょっとピクトさんっぽいイメージもありますし。ロゴタイプのフォントもカッコいいですね。(詳しくはロゴマークについてのHP説明をどうぞ)

大学のビジョンは下記のようになっています。

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さて、今回、全体テーマとして「脳の不思議に迫る」という設定の中、2つ講演をさせて頂き、一つは自分の研究について、もう一つはファカルティ・ディベロップメントの研修扱いとして研究不正について。どうしても生命科学・基礎医学寄りの話になってしまうのですが、なるべく専門用語のジャーゴンを避けることを心がけました。多数のご質問ありがとうございました。

愛媛大学からも3名の方の講演があり、医学系研究科の田中潤也先生はマイクログリアの機能について。多数の医学部生が出入りしていて、論文発表もしているとのこと。調べてみたところ、文科省の支援により、こちらの「学生研究員」という制度を作っているのですね。素晴らしい。

続いて、理工学研究科の村上安則先生が、脳の進化について発表。久しぶりに村上さんにお会いして、いかにも理学部生物という研究発表を聞きました。懇親会でもゆっくりお話できてまたとない機会でした。

また、法文学部の大塚由美子先生は赤ちゃんの顔認識と脳活動について話されました。過日、ブルーバックス『発達障害の素顔』という書籍を読んでいて、近い研究内容だなと思っていたら、やはり著者の山口真美先生のお弟子さんとのこと。なるほど。赤ちゃんがかなり早くから「顔」を認識しているらしいことはわかっていたのですが、近赤外線を用いた脳活動計測によっても、それが確かめられています。「ウォラストン錯視」という現象、顔認識では目のみならず、顔の向きという文脈も関わるというのが面白いですね。(「ウォラストン錯視」については、こちらの北岡さんのHP解説をご参考あれ)

企画をされた飯村忠浩先生はじめ、事務職員の方々にもたいへんお世話になりました。ありがとうございました。打合せ兼ねた昼食時に知ったのは、愛媛でも「芋煮会」があるということ。もしかして、伊達政宗の長男、秀宗が宇和島に入部したことがルーツなのでしょうか……。こちらでは「芋炊き」と名称が変わり、山形風の芋煮の牛肉+醤油味でも仙台風の豚肉+味噌味でもなく、鶏肉+澄まし汁(水炊き風なの?)というのが興味津々。なんと、大学全体での「大芋炊き会」が来週、開催されるそうです。(画像は瀬戸内海国立公園休暇村瀬戸内東予というサイトから拝借させて頂きました♬)
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# by osumi1128 | 2016-09-02 23:16 | 旅の思い出 | Comments(0)

第56回生命科学夏の学校@白石に行ってきた:ダイバーシティを考える

生化学若い研究者の会が主催する第56回生命科学夏の学校に参加するために白石に行ってきました。実行委員長の西村亮祐さんが東北大ということもあり、本学の若い知人も多数参加されていました。確か講師として呼ばれるのはこれで3回目。東大と、神戸エリアのどこだったかと。前2回がものすごい暑かった記憶があり、着ていくものの選択を誤った気がします……>< 仙台からやまびこで一駅、白石蔵王で降りたときの気温は20℃くらい、さらに山間の会場まで移動すると19℃となりました。
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お呼び頂いたのはシンポジウムで、科学哲学の伊勢田哲治先生@京大と、食品栄養学の前田隼人先生@弘前大と御一緒でした。全体タイトルが『これからの「多様性」の話をしようー多様性社会を生き延びるための◯◯」というもので、最初にセッション企画の意図が話されたのですが、「多様性は望ましいのか」というタイトルだったことに(御連絡は受けていましたが……あまり自覚しないままに会場に赴いたので)びっくりしました。私にとって「多様性」は「望ましい」ことがア・プリオリに前提だったからです。
 (ちなみに、セッションは2日目の午前中で、前夜の懇親会も遅くまで盛り上がった模様。伊勢田先生のご講演からは、ヘレン・ロンジーノやミリアム・ソロモンなど、今まで知らなかった哲学者のことを知りました。前田先生は弘前大学で開発された「紅の夢」という新しい林檎の品種をイントロに地域での産学官連携などについて講演されました。)

どうも、「これまでよりも<多様性>の多い社会になると、たいへんそうだ。どうすればよいか?」というような問題意識を話されたように思います。それで、あぁ、そうか、就活で皆が一斉にリクルートスーツを着て、そのまま入社式にも出るために一面黒尽くめ、という状態になるという話の背景の一部を少し垣間見た気がしました。(画像はWING DAILYというサイトの2016年4月4日の記事から拝借します。)
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ちなみに、弁理士の日々というブログのJAL入社式から見える時代の変化という記事を見て頂くと、1980年代と2010年代の服装の違いがよくわかると思います。

たぶん、私の世代の意識としては、制服でもないのに、皆が同じ格好になるのは全体主義のようで「キモチガワルイ」という感覚があるように思うのですが、それが皆と同じでないと不安の方が強いということなのでしょうか……。上記の今年のJAL入社式で植木社長の訓辞が「皆さんもダイバーシティの要素」という内容であったというのは、なかなかアイロニーを感じます。若い世代の皆さんにとって、「皆と同じでないと心配」という要素と、「多様な個性を発揮して下さい」というプレッシャーの間には葛藤がある訳ですから、そりゃぁ、たいへんだなぁと思った次第です。

講演は15分(!)で、そんな感想から始めてしまったので、ほぼ時間切れ……。私は男女共同参画という観点からの話題提供でしたが、そもそも有性生殖を行う生物が地球上で多様な進化を遂げてきた、ということもあるので、性差は前提。また、男女という二項対立とは捉えておらず、いわゆる男性的な思考パターンの女性もいれば、その逆もあるでしょうから、結局は個人個人の希望に合致したキャリア形成ができたら良いと考えています。

……ともあれ、あまりに喋り足りなかったのですが(苦笑)、近い話は今度、お茶の水大学さんで講演がありますので、近場の方、良ければぜひ聴いて下さい。一応、本日まで参加登録受付のようですが、たぶん当日参加でも大丈夫でしょう♬

2016年9月3日(土)14時~17時20分
お茶の水女子大学理学部3号館7階701教室
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# by osumi1128 | 2016-08-28 08:03 | 若い方々へ | Comments(0)

逆転からの金メダル

立て続けの金メダルが続いていますね。しかも、女子レスリングの3人や女子バドミントンのダブルスなど、逆転からの勝利というのがこの2日の印象に残りました。バドミントンの方はインタビューで「前日に、レスリングで逆転して勝ったのを見て、自分たちもできるのではと思いました……」と語ってました。
なんとなく日本は惜しくも敗れたことに対する美学というか、それに安心しているようなところがこれまであったように思うのですが、若い世代の方々はもっとクールでタフになっているのかもしれません。あるいは、2020年の東京開催も見据えた国策が功を奏し始めたのでしょうか? 研究業界も、そんなタフな若い人材を惹きつける活躍の場であってほしいと思いました。
(画像は下記朝日新聞デジタル記事より拝借させて頂きました)

# by osumi1128 | 2016-08-19 08:08 | 雑感 | Comments(0)

大人のための最先端理科第80回:レトロポゾンの話

ただいま発売中の週刊ダイヤモンド(8/13・20日合併号)にて、拙コラム掲載中。トウモロコシを見たら思い出してください♬ ウェブ版はこちら
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# by osumi1128 | 2016-08-15 13:27 | サイエンス | Comments(0)

科学における創造性と使われる言語について

先月の『新潮45』の特集記事が「世界<日本化>計画」というもので興味深く読みました。かねてより我が国における英語教育については種々思うことがあります。
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特集の中の、科学ジャーナリストの松尾義之氏による「なぜ日本人は毎年ノーベル賞を取れるのか」という記事では、他のアジア諸国と異なり日本では「日本語=母語で科学や技術を勉強することができた」ためノーベル賞受賞者が非西洋諸国の中でもっとも多いということが主張されています。同様の内容は、言語生態学者の鈴木孝夫氏の論考「日本語と日本文化が世界を平和にする」の中にも登場します。

我が国では、江戸末期から西欧近代文明を取りれるため、幕府の蕃書調所(ばんしょしらべしょ)を中心として、西洋文明の言葉の意味を正確に理解した上で、もっとも適した「漢語」に翻訳されました。大学で細胞生物学などを教えるときに、クラスに中国人の留学生がいると、「<細胞>も<染色体>も、日本で作られた訳語ですよ」と伝えることがあります。彼らは中国での翻訳が先だと思っていることが多いのです。

さて、松尾氏の主張は、科学分野の勉強をする場合に、母語で深く学ぶことが可能であるために、オリジナリティのあるアイディアに繋がるのではないかということです。また、母語であるために、日本独特の感性と結びつきやすいことも、ユニークな発見をもたらすという側面もあります。つまり、科学における創造性に関して、自在に操れる母語を使うことが可能な日本は、独特の立ち位置にあるという訳です。

こちらについては、昨年3月に開催されたノーベル・プライズ・ダイアログ東京2015にパネリストとして参加したときのこと、田中耕一氏(つい「先生」と言ってしまうのですが、いつも「僕は<先生>ではありません」と否定されます……)が言われたことに近いものがあります。田中氏は「日本の<漫画>がユニークな発想に繋がる」と主張されています。

ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2015報告書

脳科学の観点からは、母語で論理的な思考が確立する前の段階からの英語教育にはメリットもディメリットもあると考えられます。二ヶ国語を操ることができるバイリンガルの人の脳を機能的脳イメージングにより調べると、「バイリンガルの人は脳の広い部分が活性化している」ことがわかります。これは、脳の多くの部分を使っていることになるので性能が良い、という捉え方もありますが、一方で「脳に負荷をかけている」ことでもあります。したがって、キャパの大きい人であればメリットが大きいかもしれませんが、キャパの小さい人にとっては過剰な負担になるかもしれません。

バイリンガルの人の脳については、例えば、こんな一般向けの記事も参考になるでしょう。
バイリンガルな人の「脳の構造」についての最新報告

もちろん、インターネット上では英語のコンテンツ方が日本語よりも圧倒的に多いので、英語を理解できることは非常に得であるという面はきわめて重要であると思います。とくに、日本から英語で発信する部分が圧倒的に足りていないので、このようなスキルを持った人材は必要と思います。ただ、国民のどれだけの人々がどのレベルで英語を習得することを目標にしているのか、単に義務教育における英語の授業を中学校から小学校に下ろしただけでは宜しくないと思うのです。逆に、国語=母語でしっかりロジックを教える、客観的な文章を理解し、書けるようにする教育は、もっと必要ではないでしょうか。

大学院教育の現場でも、英語化の波は押し寄せており、学会発表も英語で行うところが増えつつあります。先生方の中には「深い議論がしにくくなって、教育的な面から心配だ」という声も聞かれます。うちのラボでは以前よりオフィシャルなセミナー(論文紹介や進捗報告)は英語で行っているので、大学院生たちはたいへんだと思いますが、なるべく終了後に日本語でもフォローのディスカッションをするように心がけています。

結局のところ、言語であれ、科学であれ、教育は画一的で簡単な方法は無いと思った方が良いと思います。一人ひとり、相手に寄り添って、そのレベルや性格、向き不向きに合ったやり方を取るしか無いのでしょう。

【参考】
日本語の科学が世界を変える(松尾義之著、筑摩選書)


# by osumi1128 | 2016-07-30 23:59 | 科学技術政策 | Comments(0)

『とめはねっ!』で現代の書道の動向を知りました

高校時代、芸術系の科目として音楽、美術、工芸、書道の四択があって、書道を選択していました。PC時代になって、手書きが読めないくらい悪筆の現在からは想像できません……。うちの学生さんとのやりとりでも、学生さんはこっそり秘書さんに私の手書きのコメントの読み方を訊いていたりするくらいです。小学校、中学校は祖父の影響もあってマシだったはずなのですが……。ともあれ、その書道の授業は面白かったです。判子を彫ったり和綴じを習ったり、単に書くことだけではなかったこともあり。

最近になって『とめはねっ!』という漫画を一気読みしました。舞台が鎌倉市にある高校ということも馴染みがあって、随所に懐かしい地名もあり。篆書、隷書、あるいは前衛書などの解説も久しぶりに面白かったです。
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でも、びっくりしたのは、高校書道部の全国の大会のレベルがものすごく高くなっているという事実。揮毫のパフォーマンスの大会などがあることも初めて知りました。

普段、自分の気持ちや考えを表すには、はるかにキーボードを使う方が手書きよりも楽なのですが(漢字が出てこないことも多いですし……)、やっぱりアナログな世界も大事だなぁと思いました。「臨書」といって、要するに過去の素晴らしい書をお手本に書き写す、それによって、原著の技術や精神性を学ぶというスタイルがありますが、これなんて、コピペしてしまったら何にもならない。最初から最後まで書き損じもできない緊張感の中で、3000字もの大作を仕上げるなど、精神的にもタフになるでしょうね。

先日のソウルの学会場で見かけたハングル文字の書を再掲します。きっと、この作者のスタイルなのだろうと想像するのですが、内容が読めないというのが悲しい……。
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# by osumi1128 | 2016-07-25 23:37 | 書評 | Comments(0)