仕分け評決への意見:科学技術振興調整費 女性研究者支援システム改革

どうも標記の事業については、まだ出足が悪いようなので、行政刷新会議担当副大臣・政務官へ送ったメールをこちらに貼り付けておきます。
同様の御意見の方はどうぞご参考になさって下さい。





送ったメールはこちら。
(すみませんURLのリンク、埋め込んでいません)
行政刷新会議担当
副大臣中川正春様
政務官後藤斎様

お世話になっております。
東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサー・
総長特別補佐(男女共同参画担当)の
大隅典子と申します。

標記事業につきましては「予算要求の縮減(1/3程度)」との評決がなされました。
公表されている評価者のコメントには
「保育所の設置に限定するなら良いが、研究費は余分」
「女性研究者に課題な補助金を与えるのは逆差別になりかねない」
「支援は重要だ。研究費をつけるという支援の仕方はいけない」
等が散見されました。

平成18年度から開始されたいわゆる「モデル事業」は
いわば女性研究者の裾野の拡大であり、
環境整備や両立支援を推進して来ました。
その成果は着実に出つつあります。
これに対して平成21年度から開始された「加速プログラム」は
より高い職位に付ける女性研究者の増加を目指した施策です。

我が東北大学は1913年に日本で初めて女子学生を受け入れた伝統がありますが、
現状における女性研究者の割合は9.4%と非常に低い状況です。
そこで、これまでの「杜の都女性科学者ハードリング支援事業」を推進し
さらに今年度からは「杜の都ジャンプアップ事業 for 2013」として、
今後5年間の間の女性研究者採用プランを策定し、
種々の取組が開始されたところです。
http://www.morihime.tohoku.ac.jp/index.html

イノベーションの推進はこれからの日本のあり方の基本と思われ、
それを担う人材には多様性が必要です。
ご存じのように、研究人口に占める女性比率は、
日本では先進国の中で最下位の13%となっており、
ついに韓国にも抜かれてしまいました。

韓国はトップダウンで女性研究者育成支援を行っており、
その中心は
National Institute for Supporting Women in Science & Technology
(NIS-WIST)という国の機関です
http://english.wist.re.kr/

女性採用大学へのインセンティブの付与、
女性対象の研究費の支援などが行われています。

また「逆差別」とう御意見はよく言われることですが、
圧倒的に両性の比率に差がある場合において、
法律的に差別とはならないことは、
日本学術会議から2008年7月24日に出された提言
「学術分野における男女共同参画推進のために」
(科学者委員会男女共同参画分科会とりまとめ)
において明記されております。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t60-8.pdf

本来このようなシステム改革は大学等で独自に行われるべきではありますが、
毎年、運営費交付金が減らされている状況にあっては、
自らの資金で女性研究者育成支援を推進することは、
事実上不可能な状況にあります。
標記事業の大幅な縮減は、
女性研究者の育成について、せっかく芽が出始めたところで
摘み取ってしまうようなものになります。

関係各位におかれましては、このような付帯条件についてご勘案頂き、
日本の科学技術を遂行する人材の多様性が確保されるように、
女性研究者支援システム改革の推進を強く御願いする次第です。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。


by osumi1128 | 2009-11-20 13:12 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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