長谷川眞理子先生のセミナー「加齢と寿命の進化、そしてヒトの特殊性」

本日は盛りだくさんな日。
朝は税金を払いに駅前の銀行に行き(ジーブスが欲しい)、昼に山形へ高速バスで移動して東北藝術工科大学で副学長の宮島達男先生にお目にかかって、1月の脳カフェスペシャル版のお打合せをし(追ってご紹介)、とんぼ返りで長谷川眞理子先生のセミナー@加齢研に遅刻ながら出席し、その後、内輪の夕食会にも参加させて頂いた。
ただ今、最終新幹線にて大宮経由、前橋まで移動中。

ご主人である長谷川壽一先生ともども、自分にとっては高校の大先輩。
つい「長谷川先生」というよりは(壽一先生との区別もあって)「眞理子先生」と呼んでしまう。
眞理子先生のご専門は、たぶんひと言だけで言うのであれば「進化生物学」なのだろうが、その守備範囲は生命の誕生から性選択、直近の少子化問題まで、非常に広くて、スケールの大きなお話をされる。
なにせ、国家公安委員会の唯一の女性委員でもあり、交友範囲は政治家にも及ぶ。
初めてお目にかかった頃は早稲田大学教授でらしたが、現在は総合研究大学院大学の教授。

本日のセミナーは東北大学グローバルCOEの一つ「Network Medicine創生拠点」主催のセミナーで、ホストは加齢研の佐竹先生。
「加齢と寿命の進化、そしてヒトの特殊性」というタイトルだった。





哺乳類は胎生であり、胎児期から乳児期にはそのエネルギーを全面的に雌に依存する。
その後、ヒトの赤ん坊(乳児)が離乳するのは平均で2.8歳と、チンパンジーの4.5歳よりもずっと早いにも関わらず、その時点でまったく自立していない(自分で食べ物を摂って食べるという、普通のことができない)。
このような「子ども」という存在様式はヒト特有。
また、「若者」期になり、性成熟に達しても社会的に一人前になるのにさらに時間がかかる点も、普通の哺乳類と(あるいは近縁のチンパンジーとさえも)大きく異なる。
これが可能であったのは、繁殖終了後にも死なない「老後」のステージが長かったことによるのではないかと、眞理子先生ほか、社会行動学や進化生物学の研究者は推測している。
つまり、閉経後も積極的に子育て等に参加する「おばあさん」の存在が大きかったとする、ヒトの進化の「おばあさん仮説」である。

ちなみに、このような例は他にはクジラとゾウに例外的に認められるようだが、それらの生き物で、「おばあさん」がどのような役割を持っているのかについては確かめられていない。

上記のようなヒト特有のライフステージが成立した背景には、大きな脳を獲得したことがあると考えられている。
つまり、脳を大きくし、さらに機能的な可塑性(柔軟性)を増すためには、子どもや若者の時期が長く必要になり、それが可能なのは「おばあさん」も子育てに参加できるからだという。

私自身は、この背景に、神経細胞が少なくとも海馬等では生後も産生され続けること(神経新生)や、石器使用による摂取食物の変化を指摘したい。
栄養に関する点は眞理子先生も十分に意識されていらして、「ヒトはチンパンジーよりもはるかに〈肉食〉だったはず」と仰っていらした。


セミナー後の質問で「おじいさんの存在は、どんな影響があるのでしょう?」という(きっと毎回訊かれる)質問があったが、男性の場合は基本的に閉経する訳ではないので、ライフステージとしては「おとな」の状態がずっと続くとみなされる。
もっとも、例えば年齢と筋力の変化を体重で補正しつつ調べると、女性は思春期以降、あまり変わらないが、男性は20代をピークとして大きく変化するのではあるが。

もう少し時間があったら「competitive intelligenceを持つ生き物はいろいろあるが、cooperative intelligenceを大きく発達されたのはヒトのみ」というお話をもっと聴きたかった。

【関連リンク】
御著書はたくさんある眞理子先生だけど、上記に関係するものとしては、『動物の生存戦略--行動から探る生き物の不思議 (放送大学叢書) 』を挙げておく。
まだ読んでいないけど、最近の眞理子先生は脳に興味を持ってらして、例えば、こんな訳書も。
『数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み』(スタニスラス・ドュアンヌ著)
by osumi1128 | 2010-10-28 22:34 | サイエンス | Comments(0)
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