Dialogues Between Neuroscience and Society【動画リンク追加】

北米神経科学学会、通称SfNが始まった。
実際にはサテライトミーティングが前後にあって、私もソーク研究所とカリフォルニア大学サンディエゴ校とのジョイントミニシンポジウムで話をした。
時差というよりも、native Englishにcatch upするのが追いついてなくて、自分の考えるスピードで英語が出てこなかったのがちょっともどかしかったかな。
まぁ、ネタが良いと七難隠す、だったとは思いますが……。

さて、本日土曜日12日の昼前からセッション開始で、最初は一般向けのDialogues Between Neuroscience and Societyとして、女優のグレン・クローズが話をした。
タイトルは「Bringing Change in Mind of Mental Illness」




彼女はメリル・ストリープにもちょっと似ているのだけど、トニー賞など種々の賞を受賞している大女優で、いったい何故今回のSfNのパブリック・トークの講演者なのだろうと思ったら、実は妹さんが双極性障害、甥御さんが統合失調症と、家族4人に1人が精神疾患という背景があった。
なるほど、『危険な情事』のストーカー役だったり、ちょっとエキセントリックな配役を受けているだけではなかった訳だ。

さすが女優さん、話のつかみも上手く、空港でメリル・ストリープのファンのお婆さんに「貴女、どなただったかしら?」と言われ、結局本人と間違われていた話などユーモラスな演技を披露しつつ、「心の病」の話に導入していったのは流石だった。

上記のような背景から、彼女は精神疾患の研究に興味を持ち、自分の遺伝子検査も行ったという。
次世代シークエンサーで前ゲノムの塩基配列を決めてもらったらしい。
皆が遺伝子配列を調べることの是非は置いておくとして、このあたりのメンタリティーは日本人とは大きく違うような気がする。
日本では「遺伝」ということの受け止め方が、もっと「変えられない重いもの」「受け継いでしまってどうしようもないもの(ネガティブな意味で)」という捉えられ方だが、欧米では例えば突然変異に対して「変えられない一次配列なら自分のせいではない」という意味で、むしろラクになると聞く。

さらに彼女は精神疾患の啓発運動を展開していることを紹介したのだが、例えばそれは、ニューヨークのセントラル駅に、ボランティアで精神疾患の患者さんやその家族が集まり、声高にデモ行進をするのではなく、白いTシャツに「Bipolar(双極性障害)」と「Beterhalf」、「Schizophrenia(統合失調症)」と「Mom」、「Autism(自閉症)」と「Brother」などの文字が入った患者さんとその家族が歩いているところが映し出され、やがてそれがCGによって、白いTシャツの色がいろいろな色に変わっていく……そして、スクリーンに「Change」という文字が浮かび上がる……というようなセンスのあるヴィデオだった。

彼女の講演の間中、甥で統合失調症でアーティストの方と、妹の双極性障害の方は後ろでずっと話を聞いていたが、その後、自分の言葉でも、どんな症状か、どんな風に辛いのかを語った。
今回のパブリック・トークは、必ずしも学会員すべての方が面白いと思った訳ではないだろうが、こういう活動は重要だと思う。
また、日本ではとくに、精神疾患と遺伝子や環境因子のことについて、もっと知られる必要があると改めて感じた。

【関連サイト】
ゲノム解読:米女優グレン・クローズさん
上記で使われた動画はこちら(コメント有難うございました)
Commented by 長神風二 at 2010-11-14 17:13 x
http://a.blip.tv/play/hoAbgafJcAA

くだんの動画のリンクを、どうぞ。
by osumi1128 | 2010-11-14 10:06 | サイエンス | Comments(1)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
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