日本学術会議神経系3分科会連携市民公開シンポジウム

珍しくリアルタイム速報。
本日は日本学術会議の神経系3分科会が合同で開催している第4回目の市民公開シンポジウムが開催された。

ちなみに、日本学術会議というのは日本の学術分野に所属する200名の会員と約2000名の連携会員からなる組織だが、その事務機構が置かれている建物は乃木坂にある。
後からできた隣の国立新美術館の方が一般の方には認知度が高いだろう。
ちょうど、裏口というか搬入口の隣にあるのだが、塀が高いし、普段建物の中は閑散としているし、日本のアカデミアの象徴がこれでよいのか、というのはいつも感じる。
とくに先日、子ども手当の拡充が決定され、かたや科学技術や学術の施策が軒並みC評価を受けたり、仕分けがあったりしたことから、いっそう、その思いが募る次第。




さて、中身についてだが、津本忠治先生@理化学研究所脳科学総合研究センターは「脳を育む」というタイトルで、主に臨界期(感受性期)の話題について。
その発見の歴史から、種々の機能によって臨界期は異なることなど。

続いて中谷裕教さん@理化学研究所脳科学総合研究センターは「将棋棋士の駒配置の認識特性と脳波活動」について。
プロの棋士は瞬時に直感的に良い手をイメージできるのに対し、アマチュアは異なる認識特性を持つこと。

次に阪大の石黒浩さんは「認知脳システム学に向けたロボット研究」というタイトルだったが、最初に少し、ご自身が拠点リーダーを務められている阪大のグローバルCOEについて紹介され、その後にアンドロイド開発の歴史から、ジェミノイド、テレノイドなどの話題を提供された。
ちょうど先日のTEDXSeedでの講演をUstで見ていたこともあったし、初めてお会いした感じがしないというのは現代的な感想(←最近、多い)。
是非、私のアンドロイドを作ってもらって、遠隔操作して会議に出席させたいと思った(笑)。

同志社大学の小西行郎先生は小児科医という立場で「乳幼児の脳と教育ー発達障害の発生メカニズムからー」というタイトル。
自閉症等の発症は通常3歳以降に確定診断されるが、実は生まれてすぐの運動機能の異常が認められることも多く、胎児期の運動(胎動)が神経機能の発生・発達に与える影響が大きいのではないか、という仮説に基づいたお話をされた。
例えば、自閉症の三大兆候の一つである「常同行動」は、指向性の問題というよりも、そもそも「運動機能の異常によって、そのバリエーションが少ない」ことに端を発しているのではないか、という考え方だ。

さらに、東北大学の虫明元先生は「脳科学から見た問題解決行動」について、前頭前野の機能に関して、カテゴリー化、先読み、仮説生成からその選択などがあることを実験結果に基づいて示された。
直感的認知が視覚的なのに対して、反省的認知があって、これは言語的、というのは、理系的vs文系的認知にもやや通じるな、などと思いながら聞いていた。

トリを務めたのは黒田公美さん@理化学研究所脳科学総合研究センターで「哺乳類の子育て行動の脳内基盤」について。
黒田さんは、つい1ヶ月前くらいに第二子を無事出産され……ということを、少し前に聞いてびっくりしていたが、さすが二児の母は難なく講演をこなされていた。
「もし社会が子どもを大切に思うなら、社会はまず親たちを大切にしなければならない」という、小児科医のBolbyの言葉を引用していたのが印象的だった。
養育行動の科学的理解は、子育てをする親のサポートに繋がる、という立ち位置。
話は戻るが、子ども手当でお金をばらまくのは、まるで札束で頬を叩くようなものでもあり、また、本当に子どもの為に使われるのかも不透明なことが気になる。
by osumi1128 | 2010-12-04 21:42 | サイエンス

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