第1回東北大学脳科学国際シンポジウムおよび東北大学とロンドン大学との連携協定

第1回東北大学脳科学国際シンポジウムは1月21日に、丹治先生の開会のご挨拶に始まり、ポスターセッション、2日目にシステム脳科学系の発表とゼキ先生の特別講演、3日目に分子・細胞系神経科学の発表と、クラウディオ・スターン先生の特別講演がありました。
また、3日目は、東北大学生命科学研究科とユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)との連携協定調印式も。
プログラムはこちら
印象的だったことをいくつか挙げておきます。
d0028322_22395330.jpg




調印式にあたって、UCLの大沼先生(東北大学理学部ご出身)から、UCLについての説明がありました。
それによると、1863年に伊藤博文ら、その後明治維新で活躍する日本人の一団がUCLを訪問したことが石碑に残っているそうです(そういえば、12月頭にゼキ先生のところを訪問した際に、そんな話を聞いたような気がしてきた。そのときは伊藤博文だとmentionされなかったのでわからなかったのだけど)。
私は母方の祖父が山口県出身なので、何かちょっとつながりが感じられて嬉しかったですね。
大沼先生はさらに、この10年で1ヶ月以上の海外出張をする日本人研究者がどんどん減っているという統計グラフを示して、若い方々に留学を勧めていました。
もっとも、このグラフに大きく影響しているのは、文科省の「在外研究員制度」が無くなって、教員になってからの留学が事実上できなくなったこと(しかもポストは任期付きだったりするし)、国内ポスドクポジションが圧倒的に増えて、海外に行く必要が無くなったこともあるので要注意。
ともあれ、今回の東北大学とUCLとの連携は、人的交流をやりやすくするベースになると思います。

ゼキ先生の基調講演の方は、古くからの朋友である酒田先生によるご紹介があり、光について研究したアインシュタインの引用から始まり、光受容器の色特異性(三原色それぞれに強く反応する受容器がある)、視覚に関わる脳の部位の同定と進み、「眼が見る」のではなく「脳で見ている」ことの科学的根拠についての話題となりました。
最後、視覚の受容は狭い一定の領域ごとで為されるのに、どのようにしてそれが統一されていくのか(まだ解明されている訳ではない)、というような最先端の話まで進んだ後に、「科学者としては多数の論文を出そうと焦るのではなく、本当に正しいかじっくりと検証すべき」という、若手へのtaking home messageが。

もう一人の基調講演はスターン先生で、脳の発生でももっとも初期のあたりのお話。
やはり、ノーベル賞を受賞したシュペーマンのオーガナイザーの話から始まって、ワディントンによる他の生き物を用いた追試や、その物質的な実体についての一連の研究が紹介されました。
面白いと思ったのは、基本的なシグナル系が8種しか無いのに、10の14乗もの細胞種が出来上がるのは、音楽に喩えると、単に音階があって、同事に音が出される場合の組み合わせはさほど大きな数にはならないのですが、そこに「タイミング」が加わることによって、ほとんど無限に近いバリエーションがありえるということ。
ちなみに私がなぜ発生に心惹かれたかといえば、そこに「時間軸」があるからで、時間がどのように関わるかとか、さらに最近では「時間の記憶」そのものが気になって仕方ない。

ともあれ、UCL側の大御所の先生方のご講演はヨーロッパの近代科学や、さらにさかのぼってリベラルアーツまでのつながりを感じさせるものでした。

参加者は東北大学関係者だけでなく、学外からも多数。
システム系の参加者の方が多かったのですが、3日目にそういう方々があまり参加されなかったのは残念。
逆は聞いていたのにね……。
このあたりの相互乗り入れがもう少しシンメトリカルにならないと、脳科学は健全に発展しないのではないかなぁ……。
d0028322_23303815.jpg

by osumi1128 | 2011-01-23 22:35 | サイエンス | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31