Google body, Google brain?

ちょっと補足っぽい話題なのだが、東北大学脳科学国際シンポジウムの3日目、スターン先生のイントロで印象的だったキーワードが「Google body」。
Googleという社名ができたのは1997年で、10の100乗を意味するgoogolをもとに付けられたというのだけど、それから10年余の間に、Google mapはどんどん拡大して、先日滞在したボストンでも通りの名前がすべて日本語で出てくるし(それが本当に必要なサービスなのかは別として)、Google streetはセキュリティー的にどうか、という問題を残しつつ、でもお店の入り口など画像でわかると有り難いという面もあり、そうやって、世界中の情報をすべて網羅しつくす、という勢いで進んでいる。
かたや、生命科学の分野においては、いまだに階層の断絶という問題があり、Google mapやGoogle earthのようなズームイン・ズームアウトが自由にできる訳ではない。
これは、主に解析手法の限界がそれぞれのディメンジョンで存在することによるのだけど、スターン先生は将来的に、人の体を個体>器官>組織>細胞>細胞内器官>分子という階層をつなげて理解できるようになったら素晴らしい、というお話をされた。

この問題は、脳科学的にはさらに奥が深くて、脳の中にニューロンやグリア細胞がいることは皆知っているのだけど、また、それらがシナプスを介して繋がっていることもわかっているのだけど、1000億もあると見積もられるニューロンが、実際にどのようにつながって神経回路が構成されているのかという実態については、かなりアバウトな知識しかない、と言っても過言ではない。
もちろん、脳の特定の領域の間での繋がり、というマクロなレベルでは理解されている部分も大きいが、もっとミクロな回路の集合体がどうなっているのかは混沌としている。

脳の機能を理解する上で、いろいろな手法が開発されているが、例えば機能的MRIで理解されるレベルと、1つの神経細胞に電極を指して理解されるレベル(single recording)との間にさえ、それなりのギャップがあるし、そのような機能が営まれる際に、どんな化学物質がどんな風に機能しているのか、なんてことは、リアルタイムで理解できている訳ではない。
ましてや、未分化なタネのような神経細胞から、機能に特化した神経細胞やその他の細胞が生まれるくらいのレベルを超えて、それらが複雑な機能を営むようになる仕組みなんて、ほとんど未踏の地だ。

階層を超えてズームイン・ズームアウトできるような理解が得られるためには、いろいろな解析技術の開発も必要だろうし、発想の転換やパラダイムシフトが求められる。
そのためには多様なバックグラウンドをもった人間が知恵を出し合うことが大事、

脳は謎に満ちている。だから魅力がある。
by osumi1128 | 2011-01-22 23:02 | サイエンス | Comments(0)

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