ライフサイエンスの行方:Sharing and networking

先月末に東北大学の加齢医学研究所設立70周年記念国際シンポジウムが開催され、全部は聴けなかったのだけど、29日に伺った講演がとても印象的だった。
Stephen H. Friend博士という方はアカデミアのキャリアの後に大手薬品メーカーのメルク社で開発責任者を務め、(私の聞き取りが確かであれば)現在、サバティカルの期間を利用して(あるいは早期リタイアだったか?)NPOを立ち上げられた。
そのNPOというのはSage Bionetworksという名前なのだけど、要するに、生活習慣病等の大規模データを集めてメタ解析を行うことをミッションとしている。
(こちらのホームページ、カッコイイですね)
彼がしきりと強調していたのは、「例えば物理や天文の世界だったら、皆がデータをシェアして、それを元に新しい科学を切り拓こうとしている。生物学・生命科学もそういう時期に来ているのではないか?」ということだ。




私自身は大賛成の考え方で、すでに昨年8月にそういう記事もその趣旨のことを拙ブログに書いている。
だが実際にDr. Friend博士の講演の後の質疑応答では、異なる意見も表明された。
「それは理想論である。実際には種々のデータを取る条件はそれぞれの研究で異なっているので比較は難しいし、そもそも手間暇お金もかけて得たデータをタダで他人に利用されるなんて論外」など……。

もしこれから経済状況が悪くなっていくと、お金のかかるウェットな実験を行うことが困難になると予測される。
その場合には、すでに行われた網羅的発現解析などで公開されている情報を元にメタ解析をするのもいいだろう。
また、こういうことが容易になるインフラ整備が為されれば、ライフサイエンス分野でも「在野の研究者」が出現する可能性がある。
(ほら、アマチュア天文家や、アマチュア昆虫学者ならいるではないですか!)
着眼さえあれば、同じデータでも違う切り口で見直すことができるのでは?
(一粒で二度美味しい!)

きっとこれからの(少なくとも)10年は、data sharingやnetworkingが重要になると確信している。
(いやむしろ、そうあってほしい、そうあるべきだと考える)
by osumi1128 | 2011-12-07 22:51 | サイエンス | Comments(0)

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