免疫系と嗅覚系、共通する摂理は?
2011年 12月 08日
2009年にも来たことがあるのだが、今回、その位置関係を(ようやく)理解した。
奈良先端大学やATR研究所、国立国会図書館関西館に近い、いわゆる「けいはんなエリア」だったのだ!
2004年にノーベル賞を受賞されたLinda Buckや、『脳と心』の対談で有名なJean-Pierre Changeuxそのほか、錚々たる招待講演者はゴージャスの極み。
今回のオーガナイザーのお一人が坂野仁先生@東大だったこともあり、嗅覚系のトピックが多かったのだが、Linda Buck博士も利根川進先生も坂野先生も、共通するのは「免疫から神経系」に研究テーマを移されている。
とくに、Buck博士と坂野先生は嗅覚というところまで共通する。
これが何故なのか、ということを長年、疑問に思っていたのだが、なるほど、分子を軸に多様性を理解するというモデルとしては、種々の神経系の中で嗅覚がもっともまとまっているのだと思い知った。
空間的には遺伝子、細胞、神経回路、行動まで、時間軸としては発生から進化までの階層に渡って徹底的に研究されているのは、今は視覚よりも嗅覚に軍配が上がるだろう。
とくに、嗅覚はモデル動物としての齧歯類、とくに各種遺伝子改変も容易なマウスの利点が活かされている。
今回多数の話題を聴いて、それぞれの嗅覚研究者の研究スタイルがかなり「網羅的」というか、細かい表を埋め尽くすようにデータを取っていく、というのが印象的だった。
例えば、匂い受容体を「すべて」同定しよう、受容体に結合する匂い分子を「すべて」同定しよう、匂い受容体に近縁のフェロモン受容体はどうか、そのリガンドは何か……。
意識にのぼらない「匂い」分子が、実は意志決定に大きく関係する、という話は、『香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)』を思い出す(これ、とってもお勧めの本です!)。
香りは記憶にも深く関係する(拙ブログ記事)。
「……足りないのは理論ですね」という方がおられたが、もしかすると理論の必要度が低いのかもしれない。
遺伝子・分子を理解することが、かなり高次機能まで直結しているように思う。
配線の仕組みも、多様な匂い分子にそれぞれ対応する嗅覚受容神経細胞の回路が、嗅球という中継基地で収束すること、さらに高次の脳までの到達経路もよく分かっているし。
まぁ、それでも嗅覚に関係する行動で「From Brain to Mind」をどこまで理解したと考えるのかについては、個々の研究者の思い入れの強さがあるだろう。