「大脳新皮質の構築」がアツい【ちょっと加筆】

いやはや、密度が濃いというか、刺激が強いというか、知的に充実した4日間だった。
途中にあまりオフタイムの無いスケジュールで、3日目くらいに息切れ気味だったのを乗り越えて本日最終日午後までのセッションを終えた。
文部科学省の新学術領域という研究費の枠により、基生研の山森先生を代表とした研究班が立ち上がったのが2年前。
今回は初めての国際シンポジウムだった訳だが、大いに盛り上がった。

前日に仙台で用務があり、初日午前中の影山さん@京大の発表は聞きそこねたが、とくに2日目午前中はArnold Kriegstein@UCSFと岡野さん@慶応という、日米横綱揃い踏みのようなトーク。
(confidentialな会なので、中身の詳細はブログに書けません……)
仙台にも寄ってくれたFranck Polleux@Scrippsはかなりの頻度で質問してたし、若い方々も大御所の隙間を縫って?マイクの前に立っていたと思う。
やはり、このような100名程度で、専門的なミーティングが一番充実する。
d0028322_00596.jpg
画像はNature誌の表紙になった小型霊長類のマーモセット(後述)。
キャプションは「Biomedical Supermodel」。
こういうセンスはさすが。



大脳新皮質というのは哺乳類に共通する脳の構造で、霊長類ではさらに発達しており、人間が複雑な神経活動・精神活動を行う生物学的な基盤となっている。
山森班ではこのような大脳新皮質がどのようにして構築されるかという問題にチャレンジする研究者で構成される。

通称「班会議」と称される年1回の研究進捗状況の報告会に加えて、今回は世界各国から、大脳新皮質に興味を持って研究している研究者を招聘して国際シンポジウムを開催した。
類似のミーティングとしては、昨年5月に参加した「Cortical Development」や、参加できなかった「Wiring the Brain: Making Connection」、もう少し広い分野を扱う「Neural Development」というゴードン会議や、神経軸索の伸長とシナプス形成に特化した「Axon guidance」というコールド・スプリング・ハーバー・ミーティングもある。
これらは2年、もしくは3ねんおきに定期的に開かれている。
今回の山森班のは、いわば単発(5年間の研究期間の間にもう1度くらいは開催するかもしれない)。

神経発生の分野がどのような細目にわかれているのかについては、下記、ゴードンの招待講演者リストがわかりやすいだろう(ちなみに、上記Franckがオーガナイザーの一人)。
Keynote Presentations
(Huda Zoghbi / David Ginty)
Neurogenesis and Brain Patterning
(Wieland Huttner / Song-Hai Shi / Andrea Brand / Kenneth Campbell / Maria Lethinen)
Cell Type Specification
(Marc Freeman / Paola Arlotta / Hynek Wichterle / Yasushi Nakagawa)
Neural Stem Cells
(Yoshiki Sasai / Stewart Anderson / Marius Wernig / Guo-Li Ming)
Neuronal Migration and Morphogenesis
(Oscar Marin / Francois Guillemot / Kang Shen)
Wiring the Nervous System I
(Maya Shelly / William Harris / Dietmar Schmucker / Christine Holt / Alex Kolodkin)
Wiring the Nervous System II
(Josh Sanes / Linda Van Aelst / Wes Gruber)
Synaptogenesis and Circuit Formation
(Silvia Arber / Kim McAllister / Cagla Eroglu / Andrew Huberman)
Human Brain Evolution
(Evan Eichler / Pierre Vanderhaeghen / Arnold Kriegstein)


このリストからもわかるように、神経発生の分野では今、「脳の進化」にも注目が集まっている。
それは、遺伝子・分子のレベルに落とした比較が容易であることや、新しい実験動物としてマーモセットという小型霊長類の利用が進んだことにもよるだろう。
先に述べた「両横綱揃い踏み」のお二人も、霊長類の大脳新皮質構築の話をされた。
(上のマーモセットの論文は岡野さんも共著者の一人)
また、究極には「人間の脳」を理解したいと思っている研究者は多く、その中には「心の病」を理解し治療に繋げたいという目的を持っている人たちもいる(私もその一人)。

本日は岡崎から京都へ移動して、「言語の進化」の国際シンポジウムに参加する。
by osumi1128 | 2012-03-14 00:03 | サイエンス | Comments(0)

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