発生・細胞合同年会に行ってきた

学部時代から母の国際会議に同行したり、タイムキーパーのアルバイトをした経験はあったが、一番最初に自分で学会発表をしたのは博士課程2年の秋。
東大駒場キャンパスで開催された日本細胞生物学会という国内学会だった。
まだ「35mmスライド」の時代で、その日の午前中に差し替えスライドの現像が上がるのを待って(←当時から泥縄……)、あたふたと会場に向かった。
現像を待っている間、喫茶店で発表原稿をなんどもチェックして、ほぼ暗記していたのだが、それを手元に持って演壇に上がったら、後でボスに「読まないなら持って上がるな。格好悪い」と怒られた。
そんな訳で、以来ずっと、つまり20年以上、細胞生物学会の会員なのだ。
現在では研究室からの発表は他の学会の方が多いのだが、「細胞生物学的モノの見方」が自分にとっての基本だと思っている。

ところで、私の名前の「大隅」という姓は、全国の名前ランキングで1833位、電話番号が登録されているのが2117世帯、つまり、そう滅多に見かけない姓のはずなのだが、不思議なことに、この細胞生物学会には会員数1000人程度の中に少なくとも5人も「大隅」氏がいる。
(うち2名は母子関係で、他は親戚ではないのですが、ときどき、大御所の某大隅良典先生に、親子か夫婦か、と間違われます←いずれにしても微妙……ww)。
他に自分が所属している学会で同じ姓の方を見たことがないので、この偏りは確からしいと思うけど、でも偶然なのですよね……?

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さて、今年は日本細胞生物学会の第64回大会と、日本発生生物学会の第45回大会の合同大会であった。
なぜか京都で開催されると思い込んでいて、京都の宿や伊丹便の予約を入れてしまい、2日前に「前日お知らせメール」が届いて大慌てでキャンセルしたり(キャンセル料が痛い……orz)、という話はともかく、こういう合同大会の場合に、通常はそれぞれの学会で大会長を立てるのだが、今回は奈良先端大から古巣の京都大学に異動されたばかりの高橋淑子さんが両方合わせての一人大会長。
大会のポスターやTシャツ等にも使われたロゴのデザインをはじめ、随所に淑子さんの工夫が見られた。
メイン会場で行われたプレナリーレクチャーの直後に、若手の演題のハイライトを「フラッシュ・トーク」として一人1分で発表したのは、是非見たかった。
ポスターも含めて完全英語化されていたが、シンポジウムでプレゼンする若手の英語は、20年前のおじさんたちとは比べ物にならないくらい流暢だ。

細胞と発生と2つの学会はどちらも「英語化」を推進しており、サイズも発生の会員数が1400名、細胞が1000名と同じくらいで、淑子さんや私のように、両方の会員となっているメンバーも多いため、10年前から「5年に1回程度は合同大会にしよう」ということになっている。
合同大会のメリットとしては、もちろん、普段聴けない話題を聴くのに都合がよい、異分野人材交流等があるが、その他にも、例えば大きなポスター会場を借りて、機器展示をするなどには、単独大会ではちょっと難しい、というようなオトナの事情もあったりする。
企業さんの寄付だって、2回に分けるより1回で済めばお互いに「お得」になる可能性が高い。
だが、そもそも、毎年大会を開催しなければならないのか、いわゆる「学会屋さん」を介して行う必要が本当にあるのか、学会の発行する雑誌(世界の中でハイジャーナルとは言いがたい)をどうするのか、などを含めて見直す必要があるかもしれない。

20年前くらいまでは、大学の講義室を使った学会が主流だったが、現在のような「会議場+学会業者委託」形式になったのは、多数の演題が集まるようになって、口頭発表よりもポスター発表が増え、広い会場が必要になったこと、口頭発表が35mmスライド映写ではなく、液晶プロジェクタによる投影となって機材やオペレータの人員が必要になったこと、そのために企業の機器展示や寄付が必須になったこと、などの背景がある。

新しくできる学会の方が潰れる学会の数よりも多いので、年間の学会スケジュールはだんだんに多忙を極めるところに加え、研究費とリンクしたシンポジウムや、大学や研究所が独自に開催するフォーラム等、イベントの数はやたら多くなっていて食傷気味。
自分が助手(当時)になりたての頃は、生き残り戦術として「年間2回の学会発表」と「年1本の論文発表(筆頭でなくても)」を自分に課して、5月の発生、12月の分生(分子生物学会)というパターンだったのだが、最近はこれに9月(もしくは7月)の神経(科学大会)が加わった。
残念なことに、分生と神経は大きな学会となってしまったので、もはや国内で会場はパシフィコ横浜か、神戸国際会議場か、福岡国際会議場くらいの選択肢しかなく、知らない土地を訪れる楽しみが減ったのは残念。

ちなみに、英国の発生学会は歴史と伝統がある学会だが、発生学のすべての分野を網羅した演題を集めての年会を行わず、春は細胞生物学会とのジョイント、秋はトピックを絞った、小さなミーティングとして行うスタイルとなっている。
例えば、すでに開催されたこの春のミーティングは、さらに日本発生生物学会との共催。
この秋に開催されるカンファレンスは「The molecular and cellular basis of regeneration and tissue repair」というテーマでEMBO(欧州分子生物学機構)との共催だ。

学会誌の問題は、また別途書こうと思う。

【追記】
「日本細胞生物学会」の中には、大隅圭太さん@名古屋大という方もいます。
しばらく前まで東工大だったと思うのですが、名古屋の教授になられてますね。
全国ランキングでは1833位、大隅半島のある鹿児島県のランキングでも100位に入っていないくらい少ない姓なのに、特定の学問分野に異常に集中しているのは本当になぜなのでしょうね?
by osumi1128 | 2012-05-31 22:40 | サイエンス | Comments(0)
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