黙祷
2014年 08月 07日
10数年前の早春の頃、笹井博士よりも数歳年上の、やはり京都大学から輩出された逸材の生命科学研究者が自らの命を断ちました。確か、笹井博士はその追悼のための会の1つを開催されたはずです。
世界の生命科学界が失ったものが大きいことは、この2日の間に国内外含め多数の文書やコメントが発出されていますので、そこに加えることは何もありません。強いて言うなら、拙著の中の神経誘導という項目の中でもコーディンの発見者として研究成果を取り上げていました。
後に残された方々の気持ちを思い計ってもなお上回る念慮というものは、私の理解をはるかに超えている部分もあるでしょう。授かった命を全うするのに、他人と比較するべきではありません。遺書にどのような言葉が書かれていたのか明らかではない時点で、笹井博士が何を目的として自死を選択したのか、本当のところはわかりませんが、命よりも大事なことは何も無いはずです。自分の命はまた誰かの為でもあるのですから。
なぜ自らの命を断つという選択をしたのか。このようなことが起きた背景について分析し、問題を取り除く努力を続ける必要があると思います。生命科学の商業化・産業化、過当競争、教育の質保証、問題は多岐にわたり交絡しています。犯人探しや責任のなすりあいをするのではなく、どうすればこのような悲劇を防げるのか、科学者コミュニティーの構成員が自分の問題として現実に目を向ける必要があります。
そして、理化学研究所の皆様、とくに神戸の発生・再生科学総合研究センターの皆様、くれぐれも労りあい、気持ちを強く持って良いサイエンスを続けて下さい。世界は応援しています。
笹井博士のご冥福を祈って。
- 論文不正問題に関する要望書(2013.8.7) (PDF 360KB)
- 「論文不正問題に関する早急な情報開示の要望書」(2012.11.8) (PDF 743KB)