沖縄科学技術大学院大学(OIST)の非日本的世界

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2005年に研究所として立ち上がり、3年前からは大学院生を受け入れて本格的に動き始めました。何人も知り合いの研究者が所属されているのですが、これまでご縁が無く、今回はじめての訪問となりました。
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那覇空港から車で約1時間ほど北の恩納村の斜面に位置するOISTでは、メイン・ビルディング、ラボ1、ラボ2に加えて、ラボ3がまだ建築途中です。正面ゲートからメイン・ビル玄関前までは長いカーブした通路を通っていくので、何か異次元空間に辿り着くような気持ちになりますね。MIHO Museumポーラ美術館を思い出します。凹凸の多い建物外壁には濃い色の石(この地方のものと聞きました)が使われており、廊下もカーブしているところが多く、見慣れた日本の大学の建物とはまったく異なります。種々環境にも配慮が為された建築としても認定されているようです。ファカルティ・ハウスや学生寮の建物も、明るい茶色の瓦が沖縄の伝統的な建物をイメージさせます。
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建物内部のインテリアは、世界のいくつかの有名な研究所の内装を手がけたケン・コーンバーグの手によるものです。彼が研究所の内装を得意とするのは、そのがノーベル生理学医学賞受賞者であることも影響しているのでしょう。普通の国立大学のような無機質な壁や実験台はここにはありません。木の質感豊かな扉、人造大理石のテーブル・トップなど、もし日本メーカーの実験機器が置いてなければ、外国の高等教育機関と見まごうばかり。廊下においてあるフリーザーも、予めそのスペースを確保されているので、乱雑な印象がありません。すべて「非日本的」な空間となっているのです。
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教員・研究員、スタッフの外国人率が高いことはもちろん、日本人の職員でも英語で応対可能な方々が多数。首都から離れていながら、人口の割に英語を使える人材を確保できるのは、沖縄という地理と歴史が背景にあるのでしょう。実際、国内線直行便で3時間余という仙台よりも、国際線で上海や香港の方が近いということに、今回、改めて衝撃を受けました。

実は、OISTは国の予算により設立されていますが、やや特殊な学校法人、むしろ私学と考えた方が妥当かもしれません。我が国の高等教育のグローバル化を先導する目的で設置されているので、種々の点において「非日本的」なのです。実際、現在入学している70余名の学生は世界25カ国ほどから来ており、日本人は約1割。大学院入試もすべてアドミッション・オフィス主導で行っていて、書面審査を経た候補者は、1週間程度OISTに滞在する間に多数の教員による長時間の面接を受けて選抜されます。その倍率は現在、10倍程度。少子化により定員確保に難渋する各大学院にはありえない競争率を誇ります。高倍率なのは、大学院生に手厚い経済的支援があることも大きな理由です。そうでなければ世界各国の大学院と互角に争うことはほとんど難しいといえます。

研究面で言えば、現在の研究室(ユニット)主催者(PI)は50名ほど。各々のユニットは大きくなく、伝統的なDepartment制ではなく、緩やかな集まりとしてのDomainとしてNeuroscience 、Environmental & Ecological Science、Molecular, Cellular, & Developmental Biology、Mathematical & Computational Science、Physics & Chemistryの5つのドメインに括られています。5年間一貫教育を受ける学生は、所属予定ユニットを含め3つのユニットでのローテーションを経験するなど、学際的な人材育成を目指しています。初代のPresidentは2002年にノーベル生理学医学賞を受賞したSydney Brennerでしたが、現在はJonathan Dorfanという素粒子物理学者がPresident/CEOです。Provost/Vice-CEOのGeorge Iwamaは海洋生物学者の方。教員(かつPI)は2023年までの間に倍増予定と聞いています。

人材育成に関わる大学や研究所は、入れ物を造れば終わりではありません。建物の建築に多額の国費が注ぎ込まれるフェーズが終わってから、どのようにサステナブルに運営されていくのか、そして、研究と教育において世界的なreputationを獲得できるか、これからの勝負と思われます。
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おまけの画像は海が眺められるカフェテリアの様子。なんと、バゲットもこちらのオーブンで焼いているとのこと♬

by osumi1128 | 2014-12-09 21:52 | 科学技術政策 | Comments(0)

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