医療倫理から学ぶこと

昨年来、講演依頼のバリエーションが増えましたが、本日は第50回医学系大学倫理委員会連絡会議に呼ばれて、研究不正防止についての講演をしました。自分の講演については、過日、自治医大で行ったものとほとんど趣旨は変わらないので割愛しますが、今回の聴衆は医学系の大学で「医療倫理」に関わる種々の立場の方(教員、事務系職員、コーディネータ等)でしたので、「基礎研究の立場から」というつもりで行いました。

年2回のペースで開催されているこの連絡会議は、25年前に医学系の大学に倫理委員会が置かれるようになったときに、その情報交換の場としてボトムアップに立ち上がったのですが、参加者はどんどん増えて、今回は300名超えとのこと。実務者の方々が多数参加され、2日目午後には倫理審査に関する研修会も開催されます。

1日目のご講演は聞けなかったのですが(高橋政代さんの90分の基調講演もありました。CITI関係の市川家國先生なども拝聴したかったです)、本日は厚生労働省医生局研究開発振興課治験推進室、室長補佐の福光剣氏による「臨床研究法制化」に関するお話を伺い、さらに「治療不同意への対応」についてのシンポジウムを聞くことができました。

「治療不同意への対応」というのは、末期がんの患者さん等の延命措置を中止してほしいと訴えるご家族にどのように対応するか、宗教上の理由により輸血を受けたくない方にはどのように説明すべきか、などの問題の取り扱いになります。

パネリストのお一人、宮崎大学医学部生命・医療倫理学分野教授の板井孝壱郎先生は、上記の対応のために、いわば「医療倫理コンサルタント」のチームが必要であると述べられ、宮崎大学の事例として病院内の「臨床倫理部」をご紹介になりました。

また、東京医科歯科大学生命倫理研究センター教授の吉田雅幸先生のご発表の中には、同病院HPにおいて、「宗教的要因による輸血拒否に対する当院の方針」が掲載されているというお話がありました。

(……こうやって、他の大学病院のHPを拝見すると、それぞれ個性があるなぁと思います。ちなみに、最近リニューアルされた東北大学病院のHPはこちら。「人にやさしく 未来をみつめる」がキャッチコピーです)

自分の講演の中で、今後の研究不正対応のための仕組みとしてNetwork of Research Integrity (NRI)のような組織があったら良いのでは、とお話しましたが、医療系ではすでに倫理委員会関係者の連携した組織があったのでした。研究不正は広い学術分野を扱うことになりますので、医療倫理以外を対象として同様の組織を立ち上げるのが良いのではないかと改めて強く思いました。また、その中で早急に扱うべき問題として、生データの保管の仕方やその期間、電子カルテのような生データ保管のシステムづくりなどがあると思います。

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by osumi1128 | 2015-02-14 15:38 | 科学技術政策

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