「正解」を求める指向性

連休の夜中、ニコニコ動画で東北大学大学院生命科学研究科の占部城太郎(←ジョジョとは関係ないとのこと)教授による、ミジンコの交尾実況中継と解説が為されました。生命さんの広報室、イイね! プレスリリースはこちら。
内容を解説した記事はこちら。
1時間ほど視聴していたのですが、大きい方が雌で小さい方が雄なのはわかりましたが、交尾したのかはわかりませんでした……。(画像は上記サイトより転載しました。ごめんなさい)
「正解」を求める指向性_d0028322_05435194.jpg
その間、大量のコメントが付いていたのですが、中に「何が正解なの?」というものが多数あったことに、あぁ、そういう風に見ている方々がいるのね、と感慨深く思いました。

何か新しいこと、初めてのものを観察するときに、予め「正解」がわかっている訳ではないと思うのですが、「正解」が何であるか、その解説を求めてコメントし、その「正解」が見られる瞬間を待つ、というスタンスなのでしょうか。夜中にニコ動を見ている方々の年齢構成も男女比もわかりませんが、明らかにコメントを付けた方々の中には「正解」を先に知りたい、という方が一定数いたのだと思いました。

研究室に出入りしている医学部の学生さんなども、「この実験の結果って、どうなったらいいのですか?」と訊いてくる方がいます。「いやいや、それがわからないから実験しているんだから……」と返すのですが、若干不満そうな様子。早く「正解」を出して、先に進みたいような風に見えます。単純に、現在の入試制度が云々……とは言えないと思いますが、もし我が国で持続的に自然科学の研究者を輩出したいというのであれば、正解を覚えて、なるべく早く解答する、という思考パターンではない人材を育成することを考えないといけないと思います。

ミジンコのクルクル回る姿と見ながら、そんなことを考えました。

関連して、米国科学アカデミー紀要に掲載された、生命科学研究者のキャリアパス等に関する提言のPDFをリンクしておきます。


by osumi1128 | 2015-07-22 05:46 | 科学技術政策

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