学問@北欧のすゝめ

北欧出張帰路のコペンハーゲン空港で6時間のトランジット中です。今回は、日本学術振興会(JSPS)のストックホルムセンターのご支援により、「JSPS同窓会セミナー」という枠組みを利用したセミナー@リンショーピン大学にお招き頂いたことをきっかけとして、さらに同じスウェーデンのカロリンスカ研究所とキャンパス内にあるJSPSオフィスを訪ね、さらに東北大学Neuro Global国際共同大学院プログラムの連携先であるノルウェー科学技術大学(NTNU)のカブリ神経科学研究所でセミナーを行いました。

文部科学省の「科研費」の審査等をオーガナイズしているJSPSは、海外にいくつかの拠点があり、ストックホルムセンターは2001年に設立されました。初代のセンター長は京大名誉教授の志村先生でしたが、その後、名古屋大学名誉教授の岡崎恒子先生などもセンター長になられています。

JSPSストックホルムセンターの所掌事項としては、北欧6カ国から日本への留学や学術交流のための短期・長期滞在の取扱いが中心で、さらに今回のようにかつてJSPSの支援で日本に来られた方が主催する「同窓会セミナー」のサポートもしています。

今回のホストはリンショーピン大学のHeriberto Rodriguez-Martinez教授という方で、岡山大学に招聘研究者として滞在されたとのこと。さらにそのポスドクのDr. Manuel Alvarez-RodriguezもJSPSの支援によりごく最近、山梨大学に5ヶ月滞在し、種々の実験手技を習うなどの経験をされたそうです。

今回のセミナーのテーマは「Andrology: Reproduction and health during a man´s lifetime」ということで、「男性学」というキーワードのもとに、精子から老化までの男性のライフスパンにまたがるトピックや、性同一性障害(最近はgender dysphoriaという名称に変わってきたということも初めて知った)の方の心のケアからホルモン療法、生殖細胞保存まで、きわめて学際的な話題が提供されました。
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私自身は「Paternal aging affects offspring’s behavior possibly via an epigenetic mechanism involving a transcriptional repressor REST」というタイトルのもとに講演を行い、父加齢のリスクについて指摘するとともに、そのエピゲノムレベルの背景について最新のデータを披露しました。

列車で2時間ほどのストックホルムに移動し、久しぶりにカロリンスカ研究所を訪れました。2006年に最初の共著論文を出した共同研究者のJonas Frisenは、ノーベル賞の決定に関わる親委員会の委員もされている方。14Cを用いてヒトにおけるニューロン新生の様態を解析する手法を開発するなど、ユニークな研究をされています。

上記のJSPSストックホルムセンターはカロリンスカ研究所のキャンパス内の建物を借りています。昨年の大隅良典先生のノーベル賞受賞関連行事などでは、こちらのセンターが種々、大活躍ということでした。現在のセンター長の津本先生を表敬訪問し、夕食をご一緒させて頂きました。ノーベル賞受賞者も滞在されるという由緒正しいグランドホテルで、名物のスモーガスボード(いわゆる「バイキング」ですね)を。とにかく、ノルウェーもそうでしたが、本場のスモークサーモンは本当に美味しい!
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さらに、ノルウェーのトロンハイムというところに移動。こちらはノルウェー最大のニーダロス大聖堂がある都市ですが、人口は約17万人。全般的に北欧は人口密度低いです。ニード川に面したホテルに滞在しましたが、屋根の勾配がキツイお家が可愛らしい雰囲気。北欧各国でなぜデザインが盛んなのかは、きっと暗くて長い冬を生きる知恵だと推測しているのですが、とてもお洒落な地域でした。

NTNU医学部と東北大学大学院医学系研究科および同生命科学研究科は、今年の4月に連携協定を結んだところですが、2015年のジョイントシンポジウム開催など含め、これまでからの交流の実績をもとに、例えばNeuro Global国際共同大学院プログラムなどの枠組みも利用しつつ、さらに連携を進めようとしています。
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今回は、以前より面識のあるMenno Witter教授が不在だったので、Emre Yaski教授にホスト頂き、セミナーをさせて頂くとともに、ほぼ30分おきに夕方までPIやポスドクの方との面談がセッティングされました。種々の現在進行系の研究動向を伺うとともに、今後の方向性へのアドバイスなどをさせて頂きました。ランチはポスドクさんとご一緒。

夜は、NTNUの医学部長、副医学部長とともに、NTNUへの異動を考慮中の女性研究者とそのご主人も交えての夕食会でした。お子さんの教育などもあるので、ノルウェーのインターナショナルスクールの状態はどうか、などの質問をされていました。
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今回の訪問で改めて思ったのは、「今、留学するならぜひ北欧に!」です。米国の状況は現大統領の問題がありますし、英国もBrexitの過程にあります。一般的に英語圏の留学を考える日本人学生が多いですが、私は常に「non-nativeの国の方が日本人にとって有利!」と伝えています。英米では、一般市民との会話が、早くて辛いのに対して、北欧はバスの運転手やコンビニ(セブンイレブンが多い!)の店員など、普通の方と英語で劣等感無くコミュニケーション可能です。研究室の中は、どちらでも同じように国際化していると思いますので、PI次第、ラボ次第と思いますが、普段の生活でのストレスがずっと少ないかもしれません。

さらに、ランチ時にポスドクさんたちから聞いたのは、例えばノルウェーでは外国人のポスドクでも、出産にあたって8ヶ月の育児休暇(maternity leave)が認められ、さらに父親も2ヶ月の休暇が取得できます。重要なのは、この休暇の間、100%の給与が与えられるということです!!!(80%の給与で1年の育児休暇という選択肢も可能) 出産に合わせてノルウェーでポスドクというプラン、お勧めです♬ もちろん、医療保険や、保育園についても手厚い福祉が為されます。ノルウェーで生まれた方でなくても、その恩恵を受けることが可能なのです。画像は左より、スペイン、インド、イタリア出身のポスドクの方々。上記の育児休暇はインドの方がごく最近に経験したことです。
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欧州留学のメリットはさらに、どちらの国にも国内旅行の感覚で行けるということでしょうか。英語でのコミュニケーションという意味では、南欧では一般の方々の英語力が北欧より劣るというのが印象です。

という訳で、「学問@北欧のすゝめ」です。ちなみに、東北大学Neuro Global国際共同大学院では、大学院博士課程時代にNTNUでの6ヶ月程度の滞在も可能です。






by osumi1128 | 2017-08-29 21:26 | 若い方々へ | Comments(0)

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