第47回日本神経精神薬理学会シンポジウム&ノーベル生理学・医学賞2017

秋は学会シーズンです。9月21日に第27回日本神経回路学会で、大会長の柴田智広先生(九州工業大学)がオーガナイズされた新学術領域「個性」創発脳のシンポジウムでお話させて頂きました(追って、領域HPに記事掲載予定)が、月末には札幌で南雅文先生が大会長を務められた第47回日本神経精神薬理学会において、岩本和也先生(熊本大学)がオーガナイズしたシンポジウムで話しました。この学会では理事を務めていますが、今回は第39回日本生物学的精神医学会との合同開催で、参加者は1000名を超えたとのこと。このぐらいのサイズの学会ですと、国内のいろいろなところで開催可能です。参加者が3000名を超えるクラスの学会になると、日本では横浜か神戸での開催が多くなってしまいます。

岩本先生のセッションはエピジェネティクスがテーマで、特定の遺伝子の制御領域のエピジェネティック修飾の違いについて患者さんの検体で調べるというアプローチのお話が2題、一卵性双生児での体細胞変異についてのトピックと、うちの父加齢次世代継承エピジェネティクスについてのマウスモデルという話でした。順番は私が最初でしたが。
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日本では一般の方々にはまだまだ「遺伝子=設計図」という決定論的イメージが強く、環境によって遺伝子の「働き方」が変わるという概念を十分に伝えきれていないと思います。拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』でも、本当はそこまで書き込みたかったのですが、編集者さんとの打合せで割愛されました。今年の終わりに上梓予定の『脳の発生発達と進化』(仮)という新書でも同様です。仲野徹先生の名著『エピジェネティクスーー新しい生命科学像をえがく』(岩波新書、2014年)などもありますが、いわゆる「文系」の方々まで浸透するのには、まだまだ時間がかかるという感触を持ちます。

……そうこうする間に、10月2日のノーベル生理学・医学賞受賞者発表を迎えました。残念ながら、筆者のイチオシにはならず、今年は「サーカディア(概日)リズム」がテーマで、ショウジョウバエの遺伝学をベースにした研究者3名の共同受賞となりました。最初のパイオニアの方が亡くなられ、もうこのテーマでは難しいのかと思っていましたが、こういう基礎研究の受賞は嬉しいことですね。


ちなみに、私たちもほんの少し、概日リズムに関わる研究を行いました。それは、マウスの海馬における神経新生(ニューロン新生とも言う)に昼夜のリズムがあるという内容です。個人的には、このようなリズムの乱れは、睡眠障害とともに、いろいろな精神疾患の背景にあると考えています。そういう意味で、今回のノーベル賞のテーマは基礎研究として根元的であるだけでなく、さまざまな広がりがあると思われます。





by osumi1128 | 2017-10-04 10:03 | サイエンス | Comments(0)

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