Elizabeth Hillman先生の講演に感動

過日、ニューヨーク再訪のエントリーをしたのですが、帰国後すぐに第9回光操作研究会という研究会に参加しました。今年の4月から東北大学生命科学研究科の教授に昇進された松井広先生が世話人代表で、星陵オーディトリアムでの開催。170名もの参加者に恵まれ盛会となりました。

今回、不肖ながら領域代表を務める新学術領域「個性」創発脳からもスピーカー招聘の支援をさせて頂きました。本日のトピックは、そのうちの一人、Elizabeth Hillan先生の研究についてのエントリーです。
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招聘のための最初のコンタクトは松井先生がされ、その後はこちらの秘書さんが事務的なやりとりをしていたので、きちんと所属先や研究内容を把握したのが直前のことでした。なんと、Elizabethさんは過日訪れたコロンビア大学のZuckerman Instituteの所属でした!


彼女の経歴は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の物理学で学士号と修士号を取得し、その後、医療物理学と医工学で博士号を取得しています。その後、スペクトロスコピーのマネージャーとして企業に就職し、ボストンのマサチューセッツ総合病因(MGH)の放射線領域に関係するBiomedical Imagingの部署で博士研究員、次いでインストラクターとなりました。2006年にコロンビア大学の医工学領域でAssistant Professorとして異動し、2011年からはAssociate Professorに昇進。2013年にテニュアとなり、2014年付でZuckermanInstituteの所属となっています。その他には、Mecial Centerの放射線医療学の教授なども兼任されているようです。

ご発表はとてもエネルギッシュであり、また本当にサイエンスや新しいシステムの開発が「好き」なのだと感じました。何より、新しい時代を切り拓いていく才能とパワーが伝わってきました。まずこの方は信頼できると思ったのは、マウスをモデルとして、いわゆる機能的磁気共鳴画像(fMRI)の根拠としているBOLD信号が、本当に神経活動と同期しているのかを検証していた点です。fMRIは小川誠二先生(2008年より東北福祉大学特任教授)が、当時ベル研究所で開発された技術で、さまざまな脳機能の解析に用いられており、いわば、今日の脳画像研究の中心ともいえるのですが、個人的には、本当に脳血流と神経活動がどのくらい同期しているのか、きちんとした証拠を見たいとずっと思っていました。

Elizabethさんはさらに、同時計測しているマウスの神経活動やカルシウム反応をそれぞれピアノの音やバイオリンの音に変換し、音楽として披露していたのも素晴らしい。サイエンスとアートの融合だと思いました。ちなみに、マウスに対して薬剤投与により精神病的状態を引き起こしたときの音楽は、非常に強い不協和音となっていて、なるほどと思いました。TEDのトークにしたらぜったい受けそうなプレゼンでした。

研究対象はマウスだけでなく、「本当に生きて活動しているときの脳活動が見たい」ために、まずは小型魚類のゼブラフィッシュを用いていたり、さらにはヒトの皮膚の血流からの各種イメージング、さらには、バイオプシーの生体試料を無染色でイメージングする疾患病理学への応用なども。もともとが物理学メジャーだからこそ、広い視野を持っておられるのでしょう。日本で物理出身の方がそこまで広く生物学や医学まで興味を持つことがあるかと考えると、我が国の教育についても思わずにはいられませんでした。

興味のある方は、是非、HPの記載やその引用論文をご参照下さい

【参考リンク】







by osumi1128 | 2017-10-29 17:23 | サイエンス | Comments(0)

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