異分野交流の面白さ

北米神経科学学会を早めに切り上げて帰国したのは、北大で開かれた生命リズムと振動子ネットワークに参加するためであった。
北大の21世紀COEの1つ数学のプログラムの支援によるとのこと。
どうしても初日は聞くことができなかったが、2日目、3日目のお話(それだけでも十分盛りだくさん)を堪能し、大いにインスパイアされた。
数理学、生物学、工学の方々による発表は、それぞれ面白かった。

以前、数学科の友人Kさんと「生き物とは?」について議論したことをこのブログにも書いた。
現在、普通の生物学における主流の定義(はずせない3ヶ条)としては
1)膜で囲まれている
2)エントロピーが増大しない
3)次世代を生みだす

というものがあり、Kさんは2)は必須だけど、他は必要ない、という意見だった。
今回のシンポジウムに参加して、真性粘菌が群全体として一つの生き物のように振る舞う様子を見て、自説を曲げてもよいと思うくらい感動した。
ちなみに、「もやしもん」という漫画の中に出てくる「最短コースを選ぶ粘菌」の実験のネタになったNatureの論文の筆頭著者の方にお会いすることもできた。

私の定義としては3)が一番捨ててもよい事項であるが、1)は結構捨てがたい。
粘菌だって、よく考えれば、細胞膜は持っているしね。
でも、なんだか、形そのものも、ちぎれたりくっついたりするくらいでどうにでもなるし、そもそも、上記の定義でも、ウイルスはどう扱うか、などの問題がある。

細胞性粘菌の振る舞いのビデオも感動物。
ごく単純な原理だけで、細胞が集まり、traveling waveを示しつつアメーバ状に動き、中心が盛り上がっていく、などの形態形成を示す。
たぶん、個々の分子の挙動など理解しなくても、おそらくこれと同じような動きをするものを群体ロボットで再現することが可能(東北大学工学部I先生の発表より)。
現時点では二次元シミュレーションではいい線行っていたけど、実装ロボットは、まだまだ可愛い動き。

こういう異分野研究者のシンポジウムでは、どれほど一般性のある話ができるか、本質を突いた研究目的であるかどうかが重要なポイントである。
また同時に、その内容をどう「見せるか・喋るか」という技も、相手の理解や感動の程度につながる。
今回は、皆さん「振動子」「引き込み」「縮約」などなどはオッケーの人たちが集まっているハズ(私以外)、ということで定義なしでずんずん進まれてしまい(いや、初日パスしていたこともあるので、定義なしだったかどうかはわからない)、こちらは、とりあえず「帰納的」に、個々の発表を聞きながら、こういうこと、らしい、と感覚的・直感的に理解しようとした。
別に、自分で数式を書いて変数を決めてシミュレーションするつもりはないのだから、これで構わない。

生物学には「時間軸」は必ず含まれているはずなのに、「時間生物学」や「記憶」といった分野以外では、あまり本質的に扱われていないことを再認識した。
四次元の世界のはずの「発生生物学」でさえ、in situハイブリダイゼーションの羅列やら、ノックアウトマウスの表現型やらで話が進み、時間は断片としてしか捉えられていない。
時間とともに神経管が徐々に巻き上がるというダイナミックな形態形成でさえ、かつて大学院時代にコピーし、擦り切れるくらい読み倒した1980年代の論文以上に何が分かったのか。
これこれの遺伝子は必要だ、という記載ばかりが累積していくのはいかがなものか。

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さて、札幌は食文化のレベルが高いところにある街である。
地元の方に連れて行って頂いたランチや夕食は、どれも美味しかった。
写真は思い切り手ぶれのスープカレー(野菜)。
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by osumi1128 | 2006-10-20 23:23 | サイエンス | Comments(0)
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