前書きを書く日
2006年 11月 04日
連休の間に「エッセンシャル発生生物学第2版」の初校チェックを終えようと予定を立てていたが、前倒しにできたので、今日は「原著者による日本語版への序」の訳文と、「訳者の言葉」という前書きを書いたところだ。
年に1冊本を出すという、数年前に立てた目標は、お陰様で今のところ守られつつある。
今年はすでに、共著だが「ウィルト発生生物学」も出すことができた。
エッセンシャルの方の翻訳は、本当は12月頭の分子生物学フォーラム@名古屋でお披露目になる予定だったが、こちらの原稿提出が1ヶ月遅れになったために間に合わず、年内ぎりぎりくらいになるだろう。
だいたい初校チェック終了のあたりで前書きを書くことが多い。
原稿がゲラの形になるのはとても嬉しいが、まだ初校のチェックは細かい注意が必要なので、その山を越えたところで、「ご褒美」として前書きを書くのだ。
まとまった分量の本はそれなりに執筆に時間がかかるので、前書きを書く際にはその間の様々な想いが交錯する。
しみじみとした達成感を楽しめる束の間である。
単著で書く総説は別として、論文は自分の立てたマイルストーン通りにはならない。
共著者、とくに筆頭著者の都合があるし、そもそも書くためのデータが必要だし、投稿したら査読が入るし、ときには見当違いに近いようなコメントが付いて戻ってくるし、査読者を満足させるためにまたデータを取らなければならないし、そんな間に、競争相手が論文を出してしまったりするし、やれやれ、本当に大変だ。
それでも目標は必要で、学生さんなら「学位取得」という期限が大きく働くからよい。
本人も周りも、その期限は大きな縛りとなっているので、先生は学生さんのお尻を叩いて、学生さんもブツブツ、ヒーヒー言いながらも、なんとか期限に間に合わそうというエネルギーが終結する。
そういう他律的な縛りがなくなってからが問題で、論文はいつでも投稿できるのだが、ということは、いつ投稿してもよいので、いつまでたっても投稿できないことになる。
データを良いものに差し替えるのはきりがないから、どこかで「エイヤっ」とまとめなければならず、これは極めて吸エネルギー反応である。
自律的な研究者になれるかどうかは、研究内容のオリジナリティーもさることながら、自分の作品を世に生みだすことを自分で自分に課せるかどうかにもかかっているかもしれない。