脳の中の並列処理

天気予報のとおり、お昼頃にちょっとだけ雪が降りましたが、その後、何事もなかったような暖冬の日々です。
学生のT君は、「せっかくスタッドレスタイヤにウン万投資したのに・・・」ととても悔やんでいました。
今年はCOEのRAとして雇用されてリッチだったためで、でも、買えるときに買っておいてよかったのではと思いますが。

昨日のエントリーで話題になった「マグカップ」の「リユースの仕方」で、思いがけず沢山のコメントを頂きました。
(うちって、読者がお上品なのか、コメントの少ないブログなんです・・・)
こんな話題で盛り上がれるとは!
また何か探してきます。

今日、うちのラボを訪問されたのは、お子さんが小学校に通うお母さん方3名でした。
2月17日に折立市民ホールというところで、小学生&父兄+アルファという方達をお相手に、脳についてのお話をする予定で、そのための打合せでした。
不肖大隅、小学生を聴衆に交えての講演は、(昨年の東北大サイエンスカフェで若干混じっておられたことを除けば)初めての体験になりますので、ここは気合いを入れて、入念な準備をしてかかろうと思っている次第。
(いえ、いつでも「一期一会」で臨んでいるのですけど・・・(^^;))
(顔文字も「ひとりでできたモン」)
さすがに小学生相手で「遺伝子」の話はちょっと抽象的かなと思い、「脳のつくりと栄養」というタイトルにしました。
中身は当日のお楽しみ・・・

*****
さて、以前、友人で数学者のK先生と「鍋を焦がす・焦がさない」という話題を展開したことがあり、これは私たちが初めて出会う人を分類するときのひとつの基準となっています。
(「分ける」ということは、「分かる」ために重要なことです)
K先生曰く、これは「集中型か並列処理型か」という差異であるということで、ふーん、なるほど、と思っていたのですが、先日、とある脳科学の本を読んでいましたら、確かに「並列処理」ということが書かれていました。
著者のオリジナルなアイディアではなく、また原典が明記されていなかったので、そこはまた調べてみようと思いますが、「並列処理」のアイディアは、あの、有名な心理学テスト「壺か女性か」にまで遡ります。

どっちがどっちでも良いのですが、「黒い方に着目するとそれは壺に見え、白い輪郭を重視するとそれは向かい合っている女性の横顔」というような絵を見せられると、ヒトは、壺のイメージと女性の横顔のイメージが瞬間的に切り替わって、どちらかになり、また別の方に遷移するということがあります。
その両方を同時にイメージすることはできないというところが大事なのですが、つまり、「並列処理」といっても、脳はある瞬間には何か1つを専門に処理している訳ですね。
(コンピュータで複数のアプリケーションを立ち上げていて、でも、今処理している書類は何か1つであるようなことを想像して下さい)
で、一見、同時並行的に「並列処理」しているように見えるのは、一つのことを処理し、別のことに移って、また戻ってくる際に、その前に処理したことをちゃんと記憶できているかどうか、がポイントなのだそうです。

私はこれに加えて、脳のワーキングメモリにあたる領域が、いくつくらいのパーティションに分かれているかも関係するのではないかと勝手に考えています。
ホトトギスだったか、巣の中の卵の数がいくつまで理解しているか、というような実験があったかと思いますが、そういう「数の概念」とはちょっと異なるのかもしれませんが、パーティションが複数に分かれていた方が並列処理はしやすそうですよね。
ただし、パーティションが2桁にまで上ると、あまり意味をなさなくなってしまうというか、きっと脳の中のエネルギーの供給量の制限などの問題もあって、あまり沢山のパーティショニングは難しそうです。
また、たくさんパーティションに分けると、それぞれの割り当てメモリは少なくなるという問題もありそうですね。

大脳生理学的には5から7という数が直感的にも理解できる限界なのだそうで、1週間が7日であるのは、きわめて理に適っているという話を聞いたことがあります。
(プレゼンのスライドで「箇条書きは7項目までに留めるように」というのは、大隅研のルールです、もとい、常に若い人たちに口をすっぱくして言っていることです。)

うーん、このエントリ、カテゴリを「サイエンス」にしてしまった割には、ちょっと雑談っぽいですねえ。
すみません。
by osumi1128 | 2007-02-02 00:10 | サイエンス

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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