骨髄幹細胞移植治療

NHKスペシャルで眠れる再生力を呼びさませ 〜脳梗塞(こうそく)・心筋梗塞(こうそく)治療への挑戦〜という番組をやっていたので、つい観てしまいました。
脳梗塞の治療に、患者さんの骨髄幹細胞を用いるという治療は、今年の1月から札幌医大でなさ得ているもので、骨髄液を採取した後、幹細胞を集めて、1万倍に増やしてから静脈注射します。
え? それだけ??? というくらいシンプルなのですが、番組では治療後5時間の脳画像で、すでに梗塞部位が縮小し、翌朝、今まで動かなかった左手の指が少し動くようになった、というのです。
その後もどんどん回復し、数ヶ月後に退院する頃までには、支えがなくても歩け、割り箸も両手で割れるようになっていました。

治療効果は、1)骨髄幹細胞が脳の細胞に神経栄養因子を与える、2)骨髄幹細胞から血管新生因子が放出され、梗塞部位に脳血管が新生する、3)骨髄幹細胞が脳の細胞になる、と説明されていたのですが、3)は本当かどうか、ちょっと疑わしいかもしれません。
また、もしかすると、「脳の細胞」といっても神経細胞(ニューロン)ではなく、グリア細胞の方に働きかけている可能性もあるのではと思いました。
(あくまで、番組を観ての感想です。学会発表を聴いたり論文を読んだりした訳ではありませんので)

札幌医大の脳外科の先生は「今後、移植した骨髄幹細胞が癌にならないかどうかなど、2年くらいは経過を追う予定」と話しておられました。
すでに8例の治療を行っているとのことですが、そのうちの何例が回復したのかについては、あまり明確には報道されませんでした。

心筋梗塞の方はドイツの症例で、こちらはカテーテルで心臓に行く血管に骨髄幹細胞を移植していました。
Commented by 通りがかりの医者 at 2007-11-08 12:54 x
NHKスペシャルで「眠れる再生力を呼びさませ 〜脳梗塞(こうそく)・心筋梗塞(こうそく)治療への挑戦〜」を見ました。Osumi先生の記載とほぼ同感です。
比較的効果のあった(都合のよい)症例1つを中心に番組を構成していたような気がしました。 8例の成績がどうだったのかを簡潔に放送したほうがよかったと思いますし、客観的に評価するためにも可及的にそうすべきです。
報道はセンセーショナルを狙いますので、事実や真実が多分にゆがめられる虞があります。
国民に夢や期待を持たせるのは良いとしても、報道には常に「やらせ」や「いじめ」、「世論誘導」の危険が付きまとうことを実感しました。Osumi先生いかがでしょうか?
Commented by osumi1128 at 2007-11-09 22:30
通りがかりの医者さん、こんばんは。
昨晩コメントバックしたはずのコメントが消えていて???なので、もういちど。税金をつぎ込んでいる放送局なので、8例のうち何例がどうだったのか、きちんと数字を出してほしかったと思いました。でも、研究としてはうちの研究室に関わるヒントを頂いたかんじです。
by osumi1128 | 2007-11-05 23:53 | サイエンス | Comments(2)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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