身体心理学

お陰様で、昨日の脳カフェの参加者は300名ほど。
数十名の立ち見が出て、回収されたアンケートでの不満項目は「もう少し椅子の数が多いと良かった」でした。申し訳ありませんm(__)m
帰りがけにグローバルCOEのオフィスに立ち寄り、150枚ほどのアンケートすべてに目を通しましたが、トーク以外にも、展示ブースの説明が丁寧だった、など、暖かいコメントは有り難いですね。

大平さんのトークの部分については、ほぼ100%が良かった、面白い、また聞きたい、楽しめた、でした。
私の方は、分かりやすかった、星と脳の似ている点が面白かった、是非次回はもっと脳の話を、の他、5%くらいのネガティブなコメントとして、内容が浅かった、無理に脳と星をこじつけている、質問への答えにPPTを使って欲しい、などがありました。
まぁ、10分しか頂いていない持ち時間なので、どこまで<深い>話ができるか、そうすると<分かりやすかった>が減るでしょうし、今回は仕方なかったですね。

一番残念だったのは、大平さんを展示コーナーに連れて行かなかったこと。
最後までPPTの直しもあったようなので、ちょっと躊躇ってしまいましたが、せっかくの機会を逃したのは残念。
2時に開場してから3時までの間に、もっと展示コーナーを見てもらうように、スタッフが動くべきだったのでは、ということもあります。
今回は、前回好評だった「さまざまな脳」の標本(水波先生、有難うございました!)や切片標本(顕微鏡をお貸し下さったZeissさん、有難うございました!)、立体視のモデルの他、拠点メンバーの撮影した美しい画像のパネル展示も行ってみました。
パネルはいずれ脳科学GCOEオープンラボ・ギャラリーが立ち上がりましたら、常設展示したいと思っています。

コーヒーサービス等をご提供下さった財団法人辛酉会の方々や、受付・撮影等担当の事務局の方々、本当にお世話になりました。
有難うございました。
*****

本日午後は医学部の発生学の講義の最終回。
つまり、週をまたいで7日の間に6回プレゼンをしたことになりますね。やれやれ。
来週に試験ということもあって、授業終了後は30分以上も質問につかまってしまいました。
講義室の鍵をかけに来た守衛さんに「ごめんなさい、もう少し待ってください」と言うと、笑って行かれました。

*****
さて、お約束の第1回日本キネステティック研究会の講演のことですが、
『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)などの著書を上梓されている桜美林大学心理教育学系心理学分野の山口創先生のお話が「皮膚と心の身体心理学」というタイトルでなされ、なかなかに興味深いものでした。

日本語の中には「肌が合う」「姉御肌」「鳥肌が立つ」など、感情・感覚的なことを言い表すのに「肌」を使う言葉も確かに案外ありますね。
皮膚も脳も元は外胚葉、という意味での発生学的共通性はありますし、表皮のケラチノサイトに神経伝達物質の受容体であるNMDA receptorなどが発現していることは興味深いと思います。
単離されて育てられたラットは、複数で触れ合って育ったラットよりも不安度が高い、という実験結果も、きっとそうだろうな、と思います。

ただ、「子供の頃に抱きしめられた記憶」が「皮膚」にあるのかというと、現時点で脳科学者は違った説明の方を好むでしょうね。
「親に抱きしめられて心地よい安心感を感じた」という記憶が蓄えられているのは、やはり脳の中だろうと想像します。
子供が成長した後に、触れられたときに安心感を感じるとすれば、それは昔の記憶が脳の中で想起されるからである可能性の方が高いでしょう。
認知脳科学に近い研究者にとっては、その方がリアリティーがあるのでしょう。
でも、心で了解する上で、「皮膚にも記憶がある」という納得の仕方もあって良いかなとは思います。

一番気になったのは、データを出される際に出典がないこと、例数や誤差や有意差検定が示されていないことです。
この点は常に、文系と理系の間の対話を難しくしますね。
お作法の違いといってしまうとそうなのですが、理系は「例数や誤差や有意差検定」が付いていない場合には信用してはならない、という初期トレーニングを、学部の4年生くらいから叩き込まれますので。
一回性の現象については、どのように扱えばよいのか、まだお作法ができていませんが。

ともあれ、文化的に「触れ合う」ことが少ない日本人の家の作りに「個室」が導入されたことは、より「肌の記憶」を薄くしてしまった可能性がありますね。
一人で寝かしつけられても、起きたときにはきちんとハグする週間が取り入れないといけないかもしれませんね。

*****
脳カフェで「星はなぜ美しいのでしょう?」という問いについて、認知脳科学での答えはまだないと思いますので、私見を話しました。
それは、ヒトが進化したばかりの頃、火も道具も持たない弱い生き物だったヒトにとっては、夜の闇は、いつ大きな動物に襲われるかわからない、恐ろしいものだったはず、でも、夜空に瞬く星は、少しだけ闇を晴らして有り難かった、安心だった、だから美しく思えた……。
昨年、ケアンズの郊外で見た南半球の星たちは、本当に綺麗でした。
by osumi1128 | 2008-07-15 00:23 | サイエンス | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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