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サンフランシスコ旅の失敗談と「机、片付ける? 片付けない?」問題

サンディエゴで開催された北米神経科学大会には、最終日の午前中まで参加した後、サンフランシスコに移動した。

いわゆる「シャトル」的なフライトで、念のために予約するのに変更可能なチケットだったので、自動チェックイン機でチェックインの手続きをする際、早目の便に変えられないかと思ったが駄目だった。ちょっとフライトまで時間が長いなぁと思いつつ、ゲート近くで書類書きに没頭していたら、どうも待機していたゲートを間違えていたらしく、人々の気配を感じたのは、実は次の便に乗る方たちが搭乗口に並び始めたからだった。

……つまり、気づいたのは、乗る予定の飛行機がちょうど飛び立った後だった……。

大慌てでカウンターに駆け込み、30分くらい後の次の便にスタントバイして事なきを得た。やれやれ……。移動日だと思って少し気が抜けたのかもしれない。同じ3時代に2本も飛んでいると思わなかったのよね……。まぁ、蓋を開けてみると、次の便の座席の方が実は、前の方で座席が良かった、のたけど、良い子は真似してはいけませんww 空港に着いたら、まずは自分の予定の便がオンタイムか、ゲートはどこか、正確に把握しましょう。

サンフランシスコは4年ぶりくらいだろうか。何度も訪れており、たぶん、ボストンの次に長く滞在したことのある都市。一通りの観光地も美術館も巡ってしまって、以前は友人の結婚式にNapa Valleyまで足を延ばしたりできたが、今は用務として行くだけになってしまっている。

今回はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の古くからの友人であるJohn Rubenstein博士にホストして頂いてのセミナーと、Neuroscience Graduate ProgramのヘッドになったAnatohl Kreitzer博士への面会がメインで、その他、数名のPIとの情報交換を行った。(画像はAnatohlのいるDavid Gladsone Institute。山中先生のラボもあるところですね)
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UCSFは10年くらいかけて、古いパルナッサスのキャンパスから、ミッション・ベイに神経系のラボを移して来た。当初に移らなければならなかったJohnは、自宅に近いパルナッサスの落ち着いた雰囲気が大好きで、キャンパス・シャトルでミッション・ベイの新キャンパスまで通うのに不平たらたらだったのだが、今やほぼすべてのラボがミッション・ベイに移ってきて、その方が研究環境もよく、共同研究もやりやすいので、すっかり馴染んでいた。近所に面白い食事処も増えたからだろう。

さて、Anatohlとの仕事の話の途中で「ところで、貴方のオフィスって、完璧に片付いているのだけど、書類など、どうしているのですか?」と訊いてみると、「え? 別に電子媒体で整理しているから、紙はほとんど必要ないよ」とのこと。「でも、じゃぁ、こうして私が東北大学から持ってきたパンフレットなど、ゴミ箱に直行ってこと?(笑)」「いや、そうじゃないけど……(汗)。自分だって紙のファイルはここにあるよ」といってファイルキャビネットを見せてくれて、「あぁ、私も古い文献だけは紙で保管してますね……」という会話をした。

一方、Johnのオフィスは雑然といろいろなものが散乱している。教科書等の書類が多いのはもちろんだけど、趣味のギターが置いてあったり、あちこち講演で行ったときのお土産や、とくにお茶が好きなので、日本の緑茶や番茶、本場の烏龍茶、普洱茶、韓国の名前は知らないお茶などの缶がずらっと並んでいる。2008年頃だったかに仙台に来ていただいた際に送った東北医学会からの表彰状の側に、「貴方の研究が載っているから」といって差し上げた拙翻訳本『心を生み出す遺伝子』の、岩波書店からの初版も棚の上にあったのは嬉しかった。
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私の理想は完璧に片付いたAnatohlのオフィスなのだけど、実際には気づくとJohnのオフィスに近づいている。会議資料の書類を捨てるかどうか判断する際に、「ちょっとデスクの上に寝かせて考える」時間が長すぎるのだ。自分の居心地としては、その間くらいのところが一番落ち着くのだ、と言い訳していたけど、実はディジタル化でもう少し減らせるはずということだろう。

ちなみに本学数学科のK先生は、「書類はちょっとずらして置くと良い」という自説をお持ちで、その理由は「そうすると、書類の端っこが見えて、何の書類かがすぐわかるから」とのこと。彼女は幾何が専門だから、やっぱりパターン認識型なのかもしれない。ともあれ、研究以外の仕事もたくさん抱えておられるので、理学部のお部屋だけでなく、AIMR機構長オフィスにも書類が床にも積み上げられている(CSTIオフィスも、就任直後に伺った際はがらんとしていたけど、最近はそのような具合なのではと予測する……違っていたらごめんなさい)。

「机を片付ける派 vs 片付けない派」の違いの背景には、20歳くらい若いAnatohlのディジタルな書類管理の徹底と、Johnのようにアナログ時代に確立した仕事のやり方の違いもあるかもしれない。どのあたりに境目があるのかは、研究分野や職種によっても違うだろう。私自身、かつて図書館に行って自分でコピーした論文は保存しているが、新しい論文はPDFで保管している。種々の管理ソフトもあるが、それもまた面倒なので、保存する際のファイル名の工夫だけで、あとは優秀になった検索エンジンに任せるか、いっそのこと再度PubMedやGoogle検索した方がずっと早い。あと、PDFをモニタやiPadで拡大した方が目に優しいお年頃になったということもある(苦笑)。実際、PDFを印刷した図は小さすぎてわからないことも多い(これはこれで、問題があるのだが……)。

ここしばらく、自分の職場の会議で「書類をディジタル化しませんか?」と言うと難色を示されてしまうのだけど、何もお金をかけて立派なシステムを組む必要はない。単に、集まった資料を事務補助員の方に必要部数をコピーしてもらうのではなく、まとめた一つのPDFファイルにし、会議前にメーリングリスト経由で配信するだけで済むことだ。議事次第から該当ページに飛べたり、途中で議事次第に戻ったりできればなおベター。

でも、中にはもしかしたらファイルされた書類の中に埋もれていたい方々もいるのかもしれない。機内で観た「シンゴジラ」で、緊急にゴジラ対策本部が作られたときに、多数の人々が分厚いバインダーを抱えて右往左往している様子が印象に残った。これがいわゆる日本の行政組織のスタイルということだろう。もしかしたら、紙のファイリングを止めるだけでも仕事が経るのではないかと思う。ただしこれは、大きな視点で言えば、コピーとファイリングなどの単純労働をする方の雇用を奪うことにもなりえる。

……ともあれ、1週間の出張後にオフィスにどのくらいの書類が溜まっているか、それを片付けるところから始めないと……。

*****
おまけの画像はランチに訪れたトラック屋台が集まっているところ。ピザからラーメンから、いろいろな料理が選べます。ププサという食べ物を初めて食べました。決して安くはないのはサンルフランシスコ事情……。
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by osumi1128 | 2016-11-20 10:46 | Comments(0)

参加者募集!:明日をソウゾウするあなたへ〜女性科学者への道案内〜」

前のエントリーに関連して合宿イベントへの参加者募集のお知らせです♬ 医工学研究科の田中真美先生と、薬学研究科の矢野環先生がご登壇。大隅はナビゲータとして参加します。参加のための交通費等は支給されます。周囲に理系進学を考えるJKの方がおられましたら、ぜひ応募を勧めて下さい!

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 東北大学では、「明日をソウゾウするあなたへ ~女性科学者への道案内~」に参加する全国からの女子高校生を募集しています。
 このイベントは、東北大学への進学に興味・関心があり、研究者としての将来を考えている女子高校生(1,2年)で、短期的・長期的な視野で物事を捉え(明日を想像)、日々その諸課題を解決すべく行動(豊かな社会を創造)している方を対象としています。本イベントでは、本学で活躍する女性研究者、東北大学サイエンス・エンジェルなどによる講演会、参加者によるグループ討議等を通じて、遠い存在として捉えられがちな現代の科学や女性科学者としての職業を身近に感じてもらい、次世代のリーダーとして明日を想像し、豊かな社会を創造する女性を育成すること目指しています。また東日本大震災の被災地を巡り、震災及び震災からの復興を体験していただきます。
 皆さんの応募をお待ちしております。

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by osumi1128 | 2016-09-04 08:16 | Comments(1)

昭和大学歯学部での講演会

東大医科研の清野先生とご一緒でした。粘膜免疫のお話、一度聴きたかったのでラッキーでした。私のトークは神経堤細胞の魅力というタイトル。学長の宮崎先生他、関係者の皆様、お世話になりました。
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by osumi1128 | 2016-03-12 17:41 | Comments(0)

「人種の差」エントリーについて・その2

昨晩はこちらに留学中の日本人SさんとMさんとJazz Barに行きました。
実はSさんは東北大で学位を取った方なのですが、趣味がジャズピアノで、彼の指導教官だった先生曰く「プロ並みらしい」とのことで、本場のお店をご案内して頂こうとした次第。
お店は食べ物も出してくれるところで地中海料理(イタリア、ギリシア、モロッコというかんじ)を食べつつ、ビールやワインを飲みつつ、ジャズの演奏を聴いていました。
夜が更けるとジャムセッションになり、Sさんも参加!
すみません、曲名とか知らないのですが、スタンダードナンバーで、本当に上手でした!!!
「ここのピアノはちょっとキーが重い」とのことでしたが、なかなかどうして。
その場でドラムやベースの方と合わせられるってすごいですね。
さらに、日本人で遊びに来ていた20代半ばくらいのシステムエンジニアの方も飛び込みで弾いていて、東京でもそんな感じでやっているらしい。
日本人の女性ボーカリストでやはり夏期休暇で来たという方もいて、日本人率高し。
トランペットで参加したアフリカンアメリカンのおじさんはインスタントカメラ持参で来ていて、頼まれましたので演奏しているところを写真に撮ってあげました。
滅多にできない経験でしたね。

*****
そういえば実は、コールドスプリングハーバーで参加したWorkshopのstudentsの中に、ドミニカ共和国出身の大学院生の女の子がいました。
どういう言い方が良いのか分かりませんが、たぶん(見た目には)「ムラート」と呼ばれる、元々はヨーロッパ系とアフリカ系の混血の方なのかと思います。
講義の間の質問も多く、またみんなの面倒をみるタイプのように思えたので、「英語が上手だけど、どこで勉強したの?」と聞いていたところ、「父親が大学教授なので小さいときから家庭教師が付いていたの」「お父様は何を教えてらっしゃるの?」「経済学」「なぜ生物学を志したの?」「経済は面白くなさそうだったから。姉は二人とも弁護士で、弟も法律の勉強をしてて、皆、経済はつまらないと思っているみたい(笑)」
まあ、ある程度予測された答えでした。

このような「個人的インタビュー」では、一生かかっても統計学的処理のできるような例数には達しないかと思いますが、個人的な疑問を満足させることはできます。
もし「研究」として何らかの相関関係を明らかにしたいと思った場合には、相関していると考える要素をある程度しぼり(注:大規模な疫学調査などでは、かなり多数の項目を挙げることもあり)、測定できるようなものを選ぶでしょう。(ただし、そういうスタイルではない研究というものもありますね。ちょうど、医学における「症例報告」的なものと同じかと思います)

「非関西系日本人はうつ傾向か?」(注:ここでは、いわゆる「鬱病」という意味ではありません)という問題は私の頭の中ではこんな風に展開していました。

そもそも「非関西系日本人」というのは、どのように定義したらよいのだろう?
江戸っ子は3代続かないといけないというけど。
非関西系で皆くくって大丈夫?
「うつ」の指標はどうしたらいい? 
本人に「うつですか?」と聞くのでは客観的でないような気がする。
「食欲はありますか?」(これも本人の主張なので駄目)
「今日は家の外に出ましたか?」(自宅で仕事をしている人もいるかも)
「今日、何人の人と会話しましたか?」(置かれている環境によって、周りにいる人の数が違うかも)
・ ・・

という訳で、早々に破綻しているのですが、やっぱり何かの「生物学的指標」があるとよいなあと感じました。
そうすれば、北ヨーロッパの人で日照時間の短くなる秋から冬にかけて、うつ症状を示す人が多くなるとして、それでも「生物学的指標」でみると、日本人の平均値よりも高い、なんてことが分かるかもしれません。
つまり、「うつであると自覚すること」の基準が社会的背景によって違う、ということを客観的に説明できる訳です。

Workshopの間は「肉体的な差」をつくづく感じていました。
「活動量」(これはもしかすると、血中のアドレナリン量などを指標とすることができるかもしれないですが)が違うのは、もちろん「運動」については「習慣」ということもありえます。
ただし、これはたぶん「運動をしなければ摂取カロリーがかなり過剰になる」ことを自覚しているためでもあります。
(例えば、ニューヨークの街角には、そういう自覚がないと思われる人たちが大勢います。それでも、西海岸、東海岸はself consciousな人が多い地域と言われていますが)
一番違うと思ったのは、とにかく彼ら(ここではアジア人以外)は、まず滅多に居眠りしませんね。
前の晩かなり夜更かししていても、そのために、若干遅刻してきても、講義の間にこっくりしている人がいないのは何故か?
(ただし、講義がつまらないとなると、無線LANが繋がっているのをいいことに、自分のlap topでメールなどしていましたが)
彼らの摂取カロリーは多く、結果として平均寿命が短い(平均値として)ことと関連はあるのでしょうか?
こちらは調べられそうな要素があるかもしれません。

*****
さて、本日はランチからのアポイントなのでこれにて。
by osumi1128 | 2006-08-05 00:58 | Comments(149)

「人種の差」エントリーについて・その1

ニューヨークは連日体温を超える記録的な猛暑である。
「金曜日には終わるみたい」とコロンビア大のFionaが言ってくれたけど、土曜日には帰国なので、しばらくこの暑さと付き合わなければいけないようだ。
Vacation timeなので街が空いている感じがする。
車がいつもより少なく、クラクションの音もあまりしない。
人がいるのは涼しい美術館等の中のようだ。

昨日のセミナーのホストであるFionaには2−3年前に会ったのだと思うが、ハーバードでポスドクの間に素晴らしい仕事をし、その後、コロンビアで独立したのが3年前。
昨年ギリシアの学会でトークを聴いたときには、ちょっとペースダウンかなと思っていたが、ようやくラボがセットアップしてツールが揃ってきたようで、非常に興味深いデータを見せて頂いた。
「ところで、もしかして、オメデタ?」「そうなの!」「おめでとう!!! で、いついつ?」「10月」「男の子?女の子?」「男の子」「名前はもう決めた?」「うーん、まだ」「でも、楽しみね!」「うん、本当に!」
ってな会話をしたのだが、彼女はとても小柄なので、同じフロアのテクニシャンのおばさんも知らなかったくらいらしい。
でも、本当におめでとう!

* ****
さて、しばらく前のエントリー「人種の差」には非常にたくさんのコメントを頂きました。
コメントが盛り上がっていたのでそのままにしていましたが、やはり誤解をそのままにしているのがあまりに居心地が悪くなりましたので、そろそろきちんとしたいと思います。

まず、大事な結論を先に言うと、私自身は「アフリカンアメリカンの人が『学問なんて面白いと思わない』と考えている訳ではない(それは社会的要因の方が大きいに違いない)」と考えています。
以前のエントリーでも同じような誤解を生じた経験があるので、学習していない、といえばそうなのですが、このような「疑問形」で終わる文を私は「反語」としてよく使う傾向があるようです。
(不特定多数の読者がいるようなブログには向かない文章ということですね。たぶん、私のことを直接よく知っている人は「アフリカンアメリカンの人が生物学に向いていない、と思っている訳ではないだろう」と思っていると思いますが)
ただし、果たして、本当に「社会的要因であって、生物学的要因はない」とまで言えるかどうかは分からないと思いましたので、すぐに説明のコメントバックを加えずに、どなたかそういうことを丁寧に説明して下さるかと思っていました。
(「手の大きさ」などが実験的なことには向かないのでは? というコメントは頂きましたが。)
という訳で、「大隅は人種差別発言をしている」というスタンスで盛り上がって下さった方には大変申し訳ない(?)のですが、まったくそうではありません。

「人種」という言葉を取り上げようと思ったのは、「心の病」と捉えられる精神疾患に関する今回のWorkshopではCaucasian, African-American, Asianなどの言葉がかなり頻繁に使われているなあと思ったからです。
(日頃、モデル動物の世界にどっぷり使っている身ですので)
「人種」という言葉は「人種差別」などの言葉を連想させるので、きっと人文系の方からケシカランという批判をあびるだろうと思って冒頭の文を入れましたが、これが誤読を生む背景になったと思います。

少し前のエントリーで説明したDISC1という統合失調症and/or双極性障害の原因遺伝子として注目されている遺伝子では、「スコットランド人で5-10%の連鎖があるのに対し、フィンランド人ではハイリスクのSNPが30%認められる」という報告もあるとのことでした。
(繰り返しますが、DISC1にハイリスクのSNPを持つ人が、必ず発症する訳ではありません。なお、フィン人はウラル語族の系統です。)
ちなみに、マウスの系統でES細胞を作るのによく使われる129という系統は、以前から脳の構造に異常があり、行動解析には向かない(したがって129系統のノックアウトマウスは限りなくC57BL6などに戻し交配してから用いるべき)ことが知られていましたが、DISC1遺伝子の一部に欠損があり(系統の差としてそれだけ、ではないことは自明ですが)、統合失調症の状態を反映しているとみなされる(みなしているのは、基礎研究者ですが)行動が認められます。
ただし「人種ethnic group」によるゲノムの差、ということを厳密に追求しようとすると、結局は「個人」によるゲノムの差を集団として比較しなければならず、何をもって「人種」とするのか、という堂々巡りになってしまうでしょうね(マウスの系統の場合には、兄妹交配を繰り返し、遺伝子構成を均一化しているのですが)。

<以下つづく>
by osumi1128 | 2006-08-03 21:06 | Comments(67)

統計リテラシー

5号館のつぶやきさんのところで、朝日新聞に取り上げられた記事『次期指導要領 国語、学習の基本に−「論理的思考」重視(見出しより)』をもとにしたいまさら国語を重視ってというエントリーがありました。
私は前々から「早期英語教育よりも国語教育を大切に」「論理的な文章の読み書きを」ということを主張しているので、つぶやきさんの「いまさら」ということは分かるのですが、今からでも変えないと、と思っています。

もう一つ、高校までに教えておいた方がよいと思うのは「統計」です。
疫学調査や経済分析に用いられるような高度なレベルまでは必要ありませんが、集団における値のばらつき、集団を代表する値の求め方、有意差の検定の仕方などについては馴染んでおいた方が良いと考えます。

その理由として挙げられることの一つに、インフォームドコンセント(説明同意と訳されることもあります)の問題があります。
昔なら、治療法は医者に任せていればよかったのですが、現在では患者さんやその家族に判断がゆだねられることが多々あります。

例えば自分の家族が癌にかかったとします。
幸い手術によって腫瘍は取り除けたのですが、再発予防のために抗癌剤の治療を勧められました。
「Aという薬はこれこれの副作用がありますが、X%の有効性があります。これに対して、Bという薬はAよりも副作用は少ないのですが、有効性もAよりも少なくY%になります」という「エビデンス」が告げられ、さあ、判断して下さい、ということになる訳です。

このとき、統計リテラシーがあれば、より正確な判断が可能です。
Aという薬を投与したのは何例あり、どんな性別、人種、年齢構成なのか、他に持病はないのか、そもそも「有効性」とはどんな基準を用いているのか、元データに当たることができれば自分できちんと判断できるでしょう。
例数が10例なのか、100例なのか、1000例なのかによって、データの信憑性は変わってきます。
上の例で言えば、実はAという薬の方はアメリカの臨床研究で、50人の患者の人種構成はアフリカンアメリカンと白人が半々だった、というような場合に、日本人患者100名に対して投与した結果を基にしているBという薬よりも、本当に有効性があると判断してよいのか、ということになる訳です。

もちろん、「統計」は集団を扱っていますので、本当にその患者さんにとってAという薬の方が効くのかどうかについては、試してみなければ分からないということもありえるでしょう。
「統計」は占いでも神のお告げでもありませんから、本当のところはそのようなデータを元に自分で判断するしかないのです。
このような「一回性」に対して、科学は今後どのように対応できるのかについては、興味深いテーマであると思われますが、今のところは無力であるともいえます。

* ****
ところで、精神疾患の遺伝子の話に戻ります。
精神疾患の診断はなかなかに難しく、アメリカのDSM-IV(まもなくVになる)とヨーロッパのICD-10という基準の間にも食い違いがありますが、そもそも血糖値や血圧などのように「測定できる値」を元にしていないという問題があります。
とはいえ、一応臨床の専門家が「この患者さんは統合失調症の症状にもっともあてはまる」というような判断を下します。

さて、スコットランドで統合失調症および双極性障害の患者さんが多数みられる家系が見つかり、患者の染色体を調べてみると、1番の染色体のq42.1という部分と、11番染色体のq14.3という部分より端の部分が、ちょうど入れ替わっている(転座と言います)ということが分かりました。
数十名から成る家系で、疾患を発症しているヒトにはこの転座があり、発症していないヒトには転座がない、ということが統計的に有意なものであることが解析され(連鎖解析)、2000年に論文として報告されました(今回のWorkshopのオーガナイザーの一人であるDavid Porteousの研究室の論文です)。
※ ちなみに、上記のように番号の付いている常染色体はヒトの場合全部で22種類あり、このほかに性染色体と呼ばれるXおよびY染色体がありますが、女性ではこの22種類およびX染色体が2セットあり、男性では22種類が2セットとXおよびY染色体となり、数としては通常男女とも46本です。さらに言うと、Y染色体はX染色体よりもかなり短いです。コメントに「女性は染色体の数が少ない」というものがありましたので、念のため。
上記の論文では、ちょうど1番染色体の入れ替わりの部分(break pointと言います)には2つの遺伝子があり、DISC1(disrupted in schizophrenia 1)およびDISC2と名付けられました。
2001年の論文では、さらに詳しくDISC1の構造などが報告されました。

このような解析と並行してDIC1の部分で転座がある上記家系の患者を調べると、p300という脳波の現れ方が減少していることが示され、p300を統合失調症and/or双極性障害の生物学的指標として用いることの有効性が調べられましたが、遺伝学的解析としてその次に行われたのは、統合失調症等の患者でDISC1遺伝子の変異等があるかどうかを調べることでした。
これは関連性解析と呼ばれるもので、エジンバラのグループの他にもこのプロジェクトに取り組む研究室があり、大きな競争となったようですが、やはり関連性があるいということが統計学的に示されました。
これがだいたい2003年から2004年のことです。

では、DISC1という遺伝子が作るタンパク質は、いったいどのような働きがあるのだろうかということが問題になります。
生物学的に説明が付かないと、統合失調症のマーカーとしては有効かもしれませんが、原因を明らかにすることにはなりません。
さらに他のグループも参入する時代となり、DISC1タンパク質と結合するタンパク質の同定などが進み、2005年にはDISC1が神経細胞の移動や神経活動に関わるという論文が発表されました。
そのうちの1報は澤明さんという日本人でJohns Hopkins大学で研究室を主催されている方のものでもあり、この論文とDavidのものは2005年度に最もインパクトのあった論文としてScienceに取り上げられました。

この簡単な歴史で言いたかったことは、病気に関連する遺伝子が統計学的に見つかった場合、それが本当の意味で原因となるものかについては、慎重にさまざまな方向から研究が進められるということです。
頂いたコメントの中に誤解されておられる方があるようでしたので、具体的な事例として説明させていただきました。

なお、もう一つ大事なことは、「ある病気の遺伝子」というものはありません。
例えば、遺伝子を元にして、神経細胞の中で対応するタンパク質が作られ、それは何らかの生物学的活性を持ちます。
そのような神経細胞が結合することにより神経回路が形成され、さらに脳が構成され、そして個体の行動へと繋がるのです。
遺伝子からひとっ飛びに行動へとジャンプして働くなどということはありえません。

さて、そろそろ先日の「問題発言」に戻ることにしましょう。
by osumi1128 | 2006-08-01 21:47 | Comments(5)

Workshopが終わりました

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昨日と今日の午前中をもってWorkshop終了。
写真のような認定証を頂いた(survivedというところがユーモア)。
講義が終わったときに、元気の良い女子PhD students3人が、全課程の面倒をみてくれたDavid Porteousにワインを、Sydney Garyにシャンパンと花束を贈呈したのはアメリカ的。
最後は皆それぞれハグして別れを惜しんだ。

ところで実は、昨日のグループexerciseは残念ながらあまり盛り上がらなかった。
「飢餓と統合失調症発症との関係を調べるプロジェクト」というのが与えられたお題だったのだが、多くのグループが葉酸欠乏食を取り上げていたし、animal modelsも似たり寄ったりだったのが残念である。
面白かったのは、「統合失調症に関わる遺伝子は飢餓の際にsurviveするのに有利に働く可能性があるのでは?」という仮説を出したグループだ。
これは検証するに値する考え方だと思った。
私にとっては、こういうチュートリアルのやり方を体験するのが初めてだったので、そういう意味では参考になった。
それにしても、アメリカ人の学生たちはこういうことにかなり慣れていて、プレゼンも上手かった。
抑揚をつけたしゃべり方はもちろん、ジョークを入れることも忘れないし。

昨日の晩は有名なコールドスプリングハーバー・ロブスター・ディナー。
一応banquetということで、Robertson Houseに戻って多くの女性陣はお洒落なドレスなどに着替えて参加した。
1時間ほどのカクテルアワーの間に、講師の一人の奥さんで北米神経科学学会のWomen in Neuroscienceという委員会のboard memberという方に知り合った。
日本では「男女共同参画委員会」に相当する訳だが、アメリカでは子供のピックアップや食器をdish washerに入れるなどを男性も行う点に関しては進んでいるので、どちらかというと「地位向上」のニュアンスが強いのかもしれない。
10月のアトランタでの学会の折に参加して覗いてこようと思う。
ロブスターはただ茹でたものを溶かしバターのソースで食すのだが、きっとお醤油たらした方がずっと美味しいと思う。

* ****
大荷物だったのでlimoを予約してマンハッタンのホテルまで移動。
運転手のおじさんは元消防士で、気軽にいろいろな話をしてくれた。
「最近は物騒になってきたよな。中東なんてどうなるか分からないし・・・」「そうですね。日本は隣に北朝鮮があるので・・・」「北朝鮮! アイツはcrazyだ! しかも、国が貧しいというのに爆弾なんか作りおって・・・」と、異様に興奮しておられた。
コールドスプリングハーバーのこともよく知っていて、「食べ物はどうだった? ロブスターは食べたか?」「ジム・ワトソンは何度も乗せたことがある。彼はあの年でまだ結構出張があるようだね」「泊まっていたのはどのhouse? 何、Robertson? 冷房はあるのか? ない? そりゃ気の毒だったね」ナドナド。

ニューヨークの宿泊先はコロンビア大のFionaに手配してもらったのだが、アッパーウエストの便利なところ。
メトロポリタン美術館には十分歩いて行けそうである。
チェックインしたときにパスポート提示を求められなかったのは、きっと大学経由の予約だったからなのだろう。
一仕事片付けてから夕方デリでサラダでも買って部屋で食べようと思って、ホテルの周囲を4ブロックほど南北に歩いてみた。
摂氏華氏100度を超える暑さだが、日本よりは(コールドスプリングハーバーよりも)湿度は低い。
運転手のおじさんが「この時期のcityは空いてるね」と言っていたとおり、クラクションの音がいつもより少ないように思った。
しばらく滞在するので、お洒落な花屋さんに寄って薔薇を買った。
丁度良い大きさの花瓶をハウスキーピング係に持ってきてもらい、窓際に飾った。

さて、この数日の間に、本腰を入れて翻訳を片付けるとともに、ラボメンバー向けのWorkshopの報告を書き上げようと思う。
この10日の間は入力過剰状態だったので、出力しながら消化したい。
by osumi1128 | 2006-08-01 11:14 | Comments(0)

精神疾患における性差

WorkshopはいよいよDay9になる。
だいぶ疲れてきた様子がstudentsの間に広がっている。
しかも、今日は朝8:30からだったからなおのことだ。

疾患によっては発症に性差があるものがある。
乳癌などが女性特有であるのはもちろんとして(註:男性乳癌患者は女性患者の1/100くらいは存在する)、精神疾患では例えば自閉症の発症は男女比が4-5 : 1くらいで男の子が多く、統合失調症の場合には、障害発症率としてはほとんど変わらないが、男性の発症年齢は20代前半にピークがくるのに対して、女性はその山はやや後半にシフトしており、さらに閉経後に2つ目のピークがある。
発症年齢がやや早いために、患者数全体では男性の方が多いことになるが、原因遺伝子でオーソライズされているものは、今のところすべて常染色体上に載っている。

統合失調症の発症メカニズムの研究には、さまざまなモデル動物が用いられる。
多くは齧歯類(ラットおよびマウス)だが、サルに向精神薬を投与するようなモデルもある(陽性症状のモデル)。
Workshopの間いつも隣に座っているJillに訊いたところサルの場合は雄雌両方実験に供するらしいが、齧歯類を用いた行動解析はもっぱら雄が使われる。
これは、性周期による影響を避けるためである。

統合失調症の発症が何故思春期以降なのかについては、まだ大きな謎である。
おそらく、急激にホルモンの状態が変化することが一種のストレスになっているのではないかと想像するが、今回のWorkshopを聞いた限りでは、まだ「記述」の時代のようだ。
ラットの場合には、生後数周後と7-8週(思春期以降)では、大脳皮質、とくに注目されている前頭葉における神経細胞の性質が大きく異なるという講義を聴いた。
これからどういう仮説を立てて検証していくのかwatchしたい。

さて、今日取り上げるのは「自閉症」の方である。
2つ前のエントリーでも引用したコールドスプリングハーバーの広報誌harbor Transcriptのvol26, no3にSeeking the cause of autismという記事があり、中身を読んでみると、3月にBanbury Centerで行われたautism meetingに招聘されたSimon Barron-Cohenが一般向けのCultural Series Lecture in Grace Auditoriumで喋ったことを元にしている。
冒頭を引用すると下記になる(念のために記しておくが、記事を書いたのはMarisa Macariという人らしい)。

In 1944, Hans Asperger, the Austrian pediatrician for whom Asperger Syndrome is named, suggested that "the autistic personality is an extreme variant of male intelligenceノin the autistic individual, the male pattern is exaggerated". Today, Simon Baron-Cohen of Cambridge University suspects that Asperger was correct and is seeking the cause of autism by using modern methods to test Asperger's "extreme male brain" theory.


この"extreme male brain" theoryというのは自閉症のことを勉強したときに読んだことがあった気がするのだが、そのテーマにチャレンジしている人がいるのは知らなかった。

この説の背景は、Professor of Developmental Psychopathology and director of the Autism Research Center in CambridgeであるBaron-Cohenの説明によれば以下のようである。
Baron-Cohen maintains that females and males in the general population have different メbrain typesモ or cognitive styles. Empathizing is the ability to predict anotherユs feelings and respond appropriately to anotherユs state of mind. Systemizing is the ability and desire to build systems and determine the rules that govern how they work. The typical female brain, Baron-Cohen said, excels at empathy whereas the typical male brain excels at building systems.

その場で講演を聴いていた訳ではないし、個人的にも存じ上げないので説明として合っているか不安だが、誤解を避けるように言うとすれば、ここではEmpathizing およびSystemizing という認知型を定義した上で、次の作業仮説に進もうとしていると考えて頂きたい。
Studies show that individuals with autism frequently have narrow interests and become preoccupied with finding out how a system works. For example, they might become obsessed with spinning the wheel of a toy truck or turning light switch on and off. They find it difficult to pick up on non-verbal cues and have trouble making eye contact and unerstanding othersユs emotions. They are worse at empathizing than males in the general population. They have, however, a greater ability than typical males to understand systems, to read maps, and to solve physical and mechanical problems. In essence, they display features of predicted of an extreme male brain.


傍証として、MRIにより自閉症の子供とその両親の脳をイメージングすると、両親ともに男性型の傾向を示し、またどちらもsystemizer的認知型であると述べられている(具体的なテスト方法などはこの記事からは分からなかった)。

そこでBaron-Cohenの立てた「作業仮説」は、胎児期のテストステロンの量とsystemizing cognitive styleが相関するのではないかというものである。
つまり、何か「測定」できる指標を見つけないと生物学的研究にはならない。
どのくらいの例数なのか、どのくらいの時期のテストステロン量なのかによって信憑性が変わってくるが、記事によればポジティブな結果が出ているらしい。
これが確からしいとなると、胎児期のテストステロンの測定により出生前診断につながる可能性がある。
記事の最後は、このような研究により自閉症発症の謎が解明されるだけでなく、一般的な集団における神経生物学的な性差についての理解が深まるだろうと結ばれていた。

*****
この話題について、「ケシカラン」と思う方は少なくないのではと思っています。
「男性脳・女性脳のように2つに分けるのは問題だ」というご批判については、生物学的には「平均化」すると性差が認められるのは紛れもない事実です。
したがって、例えば統合失調症の患者さんの脳のどこが普通の人とは異なるのか、という研究においては、イメージングする統合失調症の患者さんの集団の中における女性比率が、対照群における女性比率と変わらないように配慮されます。
(より正確に言えば、人種構成や年齢もなるべくマッチさせるようにするのがお作法です)
その上で、患者群のイメージングデータを平均化し、同じく平均化した対照群と比較する訳です。
先日のエントリーにも書きましたが、これは「平均値」として集団を比較しているのであり、個体差はもちろんあります。
ただ、生物学分野において「差がある」と言うときには、かならず「統計学的に有意である」ことが必要であり、その基準を満たしたデータについては敬意を持って取り扱わなければならないでしょう。
あるいは、反論するのであれば、同様のお作法に則ったデータをもってするべきだと思うというのが「生物学者」としての意見です。
※なお、私にとっての生物学者というのは、例えば「私は女性である」というような属性と同じカテゴリーです。I am a biolgistですがI am the biologistではありません。

ここで取り上げたいのは、例えば自閉症のお子さんを持つ方がこの記事を読まれたときに、どんな風に感じるかということです。
日本人の生物学的な感じ方か、正確な科学記事が一般にあまり読まれていないという社会的な問題か分かりませんが、なんとなく居心地の悪いような気持ちにさせてしまうことはないのか不安に思いつつ書いています。
繰り返しておきますが、このエントリーの元ネタはHarbor Transcriptsというコールドスプリングハーバー研究所の「広報誌」です。
著者検索していただけば、Baron-Cohenの論文は検索できますが、2005年に「Testing the extreme male brain (EMB) theory of autism: let the data speak for themselves.」という総説をCognit Neuropsychiatryという雑誌に出していますね。

私が一番問題だと思うのは、「胎児期テストステロン量」で出生前診断できるようになるということの波及効果です。
ダウン症のように中絶可能な時期に診断できるのであればよいというものなのか、予防や治療が確立していない状態における出生前診断というのは、医学的に非常に難しい問題をはらんでいると思います。

最後に補足しておきますが、自閉症の原因として"extreme male brain" theoryというのはけっしてメジャーではありません。
現在updatedな説は脳のmicro-circuits(皮質の中の神経細胞同士の回路)の活動異常というもので、齧歯類やサルなどでの研究が積み重ねられています。
研究の動向としては、むしろ遺伝子候補の方が先に挙がってくるでしょう。
Jill と反対の隣に座っているTaniaによれば、「統合失調症の方が診断がはっきりしているが、自閉症は症状のスペクトラムが広くて診断が難しい」というような問題はあるでしょうが、統合失調症よりも家族を含めた血液サンプルなどが集めやすく、また、第一子が自閉症であったご両親の理解のもとに、第二子の脳の発達を継時的に解析することも行われています。
by osumi1128 | 2006-07-30 23:16 | Comments(31)

Psychologists and psychiatry

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Workshopの残りも少なくなってきた。
現時時間の土曜日の夕ご飯は、Banbury Campusのプライベートビーチで「ピクニック」であった。
実際には、テイクアウトのハンバーガー(パンと素材が別になっていて、自分ではさむ)、サラダ、バーベキューチキン&ポークなどをビーチまで運んで、海に突き出た桟橋に並んで座って食べた次第。
写真はちょうど美しいサンセットが見られたので携帯カメラで撮影。

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「精神疾患と性差」についてのエントリーをする前に、頂いたコメントの中で「心理学者がどのようにこのワークショップに関わっているのか?」というご質問を頂きましたので、そのことについて述べておこうと思います。

26日人の参加者のうち、現在もしくは過去にpsychologyを専攻している・いたのは8名であり、うち1名が男性で残りは女性(名前と容貌からの判断)である。
上記の質問については、ちょうどStudent profilesとして、予め参加者が自分のバックグラウンドや抱負を述べているので、そちらをいくつか引用しようと思う。
(翻訳にあたっての解釈にバイアスがかからないように、書かれたものをそのまま引用します)

Jennifer/Postdoc/University of Campbridge
My background is in psychology and my recent PhD was about longitudinal changes in cognitive function in schizophrenia and first-episode psychosis. I am broadly interested in the genetic and developmental basis of mental health and mental illuness, especially cognition, and in dimensional and population-based apporoaches to mental health. I am also interested in better ways of defining phenotypes, such as longitudinal modeling and latent variable approaches.


Kate/Assistant Professor/Albert Einstein School of Medicine
Katherine PhD received her undergraduate degree in Psychology at the University of Rochester and her PhD in Neuropsychology at the Graduate Center-City University of New York. She did her clinical internship and postdoctoral work at Yale University School of Medicine. ...Dr. B.'s primary area of interest is in neurocognitive functioning in patients with bipolar disorder....Other current research interests include the potential influence of susceptibility genes on neurocognitive function in patients with schizophrenia, affective illunesses, and healthy individuals and has recently published results demonstrating an effect of a number of genes on neurocognition, including DTNBP1, DISC1, and COMT.


Kateは同じ宿題グループだったのでもう少し詳しく聞いたところ、psychologistsにはclinical psychologistsとresearch orientedな人がいるとのことで、彼女は後者。
Neuropsychologyのコースだったので、neuroanatomy, neurobiology, neurochemistry, neuropharmacology, geneticsなどの単位も取っているらしい。
「日本の統合失調症の分野にはあまり心理学者がいないのだけど・・・」と聞くと、「フィアンセがブラジル人なのだけど、ブラジルではpsychiatristsとpsychologistsの間には隔たりがあるようね。ここでは違うけど」ということだった。
臨床心理学者には、さらにpharmacologyを修めることによって、セラピーだけでなく投薬をできる資格を得ることもできるらしい。
「開業するなら、患者にとってはその方がいいのは当然」

Dana/PhD student/Columbia University
I completed undergraduate studies in psychology and Italian area studies, and am MPH in epidemiology at Columbia. Iam currently a PhD candidate in psychiatric epidermology and history at Columbia. My workshp-related research interest is understanding how multi-level causes, ranging from micro-level (e.g., genetics) to macro-level (e.g., social adversity and discrimination), operate in concert to produce illuness, using variations in incidence (e.g., elevated rates in immigrant and migrant groups) as points of departure. I am also interested in secular trends, diagnostic issues, and pathways to treatment for affective and psychotic disorders.


このほか、biologyバッグラウンドの方や、情報科学の方いて、MDは2名。
講師陣はMDとPhDが半々くらいで、genetistsが多く、psychologyの方は少なかった。
遺伝学会の全貌に明るい訳ではないので、正確な数字は分からないが、日本ではいわゆる「病気の遺伝学」に関わる方にPhDが少ない印象があるのとはかなり隔たりがある。

そういえば、日本では少し前に「精神分裂病」という名前から「統合失調症」に変わった。
これに関して「日本の方が進んでますね。<Schizophrenia>という名前は良くないと言われているのに、ずっとこのままなんですよね・・・」というコメントを講師の誰かから頂いた。

・・・ということで、これからいよいよ明日の宿題発表の直前打ち合わせになる。
by osumi1128 | 2006-07-30 09:56 | Comments(1)

The Camp David of Biology

Cold Spring Harbor Laboratoryの一般向け広報誌Harbor TranscriptのVol 21, Number 1に、今回のWorkshopが行われているコールドスプリングハーバーのバンバリーセンターについての説明がちょうど掲載されていたので、遅ればせながら記しておこう。

A secluded retreat, sheltered from the endless distractions of everyday life. A meeting place for the worldユs great leaders and thinkers in biology, medicine, education, and policy. A forum for discussion and decision-making in an environment of inspiring natural splendor. This is Cold Spring Harbor Laboratoryユs Banbury Center.


というパラグラフで始まるエッセイによれば、このBanbury Campus一帯はもともとThe Sammis familyという一族が所有していた土地だそうで、1936年にはCharles Sammis Robertsonと奥さんのMarieがビーチの西側に自宅を建てた。
1972年にMarieさんが亡くなってから、科学に対して造詣の深かったCharlesさんは、当時のCSHLのDirectorであったJames Watsonに相談し、地所CSHLに寄付したいと申し出た。
Robertsonは元々は神経科学の研究室を作りたいと考えていたのだが、メインキャンパスから車で15分ほど離れているので、あまり使い勝手は良くないだろうということで、代わりに「小さなミーティングができるセンター」をつくることになったらしい。

Watson envisioned a center where 20 to 30 scientists and policy-makers of diverse backgrounds could gather to tackle problems from a multi-disciplinary perspective. The private setting would facilitate the uninhibited exchange of ideas among the worldユs best scientists, providing them with opportunities to critically review the progress (or lack thereof) in the field.


という訳で、公式には1977年6月に、ワトソンとともにノーベル賞を受賞したFrancis Clickを呼んでバンバリーセンターが開所された。
今日のエントリーのタイトルは、引用したエッセイのタイトルでもある。
このときから、お屋敷がRobertson Houseとして宿泊施設になり、こじんまりとしたConference Centerとともに使われるようになった。
現在の所長は4代目のJan Witkowskiという方で、さらに2005年からSydney GaryさんがAssistant Directorとして加わった。
ちなみに、彼女のバックグラウンドは神経科学で、ポスドク後しばらくはサイエンスライターをしていたらしい。
非常にhospitality溢れる方で、まさに適任であろう。
宿泊施設は他にSammis HallやMeier Houseなどがあり、Conference Centerや朝食が出されるRobertson Houseの間は徒歩5分圏内である。
今回、講師陣はMeier Houseに宿泊され、Studentsのうち女性陣がRobertsonで男性がSammisに泊まっている。
Meier Houseはサバティカルの間、本の執筆などをする方にも使われているらしい。
街からは車で15分以上離れており、広大な敷地には自然が溢れ、静かで安全でありながら、Conference Centerまで行けば無線LANからPubMedにもつながり、折々のミーティングなどで研究者が出入りするという環境は、私にとって憧れである。
ただし、食べ物・飲み物は3食+間食も含めふんだんに供給されるのだが、1ヶ月くらい滞在すると、もうちょっとデリカシーのある食事が恋しくなるかもしれない。

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昨日のエントリーと関連する話題は、また明日載せます。
今日もこれから(つまり、朝の9時から)夜の9時まで講義が続き(土曜日なのですが)、おそらく、さらに課題の打ち合わせでそれ以降も続くのでこれにて。
by osumi1128 | 2006-07-29 21:27 | Comments(0)