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価値ある博士号取得者に必要なのは「問題解決力」以上

昨日、生化学若い研究者の会(通称:生化若手の会)主催のフォーラム「価値ある博士号取得者になるために必要なこと」に呼ばれてお話をしてきました。

私以外の登壇者が、吉田文先生@早稲田大学と森郁恵先生@名古屋大学と「全員女性」っていうのも興味深いことでした。

3人の講演の前に「生命科学夏の学校」で行ったアンケート「質の高い博士号取得者はどのような素養を身につけた人材であるか」の結果として、上位に「問題解決力」「コミュニケーション力」が挙げられたということが紹介されました。講演後のパネル討論ではそれを受けての議論があったのですが、「問題解決力は<普通>であり、質の高い博士号取得者を目指すのであれば、それ以上でなければならない」という点において登壇者の意見が一致していました。

「問題解決力」という言葉からは、「問題はどこかから・誰かから与えられる、それを解決する」というような意識を感じます。おそらく、大学受験、大学院受験までは、そういう能力を鍛えるように訓練されているのだと思います。でも、大学院以降は、一流の研究者になるためにも、博士号取得者として違うキャリアパスを目指す場合も、「<問い>を立てる力」つまり「問題発掘力」や「問題設定力」が重要なように思います。

パネルの最後にフロアから「ではどうやったら<問題設定力>を上げられますか?」という質問が出て、「セミナーに参加したときなど、背景を聴いている間に<自分だったら、どんな問いを立てるか、どうやって解決するかをシミュレーションしてみては?」、「他の広い研究分野を知ることによって、未解決の問題や、解き方のツールを発掘する」などのアドバイスが為されました。

自分の発表では「<タグを付ける>ことと、ネットワーキングが大事」ということに加えて、依頼されていた「研究倫理」関係の話をしたのですが、結局時間が足りなくて用意したスライド、使い切れなかったので、こちらに貼り付けておきます。
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このスライド、「価値ある博士号取得者として備えるべき素養」に対する私なりの考えというつもりで用意したのですが、5つの「力(ちから)」がカタカナの「カ」に見えるのが面白い(ウコンの力、とかですねww)ので、それをジョークに使おうと思っていたのです(←ネタバラシww)。でも、パネル討論のときに「英語や国語など書く力が大事」ということだけは伝えました。

3つの「性」のところに「計画性」を加えることもありだと思っています。とくに時間を「逆向きに捉える」ことが大事で、「今日、これこれをやったから、明日はこうしよう」だけではなく、「いついつまでにこうしなければならないから、その前のいついつまでにこれこれをしよう」という計画を立てることができるかが大事だと思います。

これらは、すべての点において卓越していることが大事、というよりも、自分の個性を自覚することが大切だと思います。その足りないところを、友人や同僚と協力することによって補うことができるからです。高学歴の方は往々にしてプライドが高いことがあって、他人に相談しないことも多いですが、自分の欠点を素直に認めることは、どんな世界でサバイバルするたえにも鍵となるでしょう。
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最後に伝えたかったのは「みんなちがって、みんないい」ということを謳った金子みすゞの詩でした。これも、パネル討論のときに「某会社の入社式の様子、30年前と今とでは違っていて、今はみんな画一的な<リクルートスーツ>を着ていて、<人と同じ>になろうとしているけど、価値ある博士号取得者に求められているのはそうではない」ということを話しました。今の若い方々は(……という台詞は平安時代の文献にもあるとのことですがww)「空気を読む」ことに意識を向けすぎているのではないかと危惧します。これは「問題解決力」が大事だと思う精神にも、どこかで繋がっているような気がします。「空気を読む、ボスの意図を汲み取る」ことが重要だと考えすぎているのではないかと思うのです。

多様なキャリアパスについては、サイエンス・ライター、科学雑誌編集者(日本語でも英語でも)、ジャーナリストなどもありましたが、スペース不足により割愛。ただし、これらはみな「書く能力」や「取材する力」が必須です。画才があればサイエンス・イラストレータなどもニーズは大きい(ただし、きちんと職業として認知されリスペクトされることが必要)。もっとマルチなタレントを活かしたキャリアパスもあると思います。森先生のお話の中には、森研出身でURAになった方のことが取り上げられていましたね。「研究担当や国際対応の理事の下で活躍する」なんてURAは、かなりやりがいのある仕事だと思います。その場合には、やはり「自分で問題を設定する能力」が求められるでしょう。

フォーラム後に主催者、パネリストを囲んでの懇親会もあったのですが、都合により失礼させて頂きました。皆さん、盛り上がったかな?
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by osumi1128 | 2014-10-19 09:52 | 若い方々へ | Comments(4)

京都府立医大にて特別講義

昨日、解剖の河田光博先生のお声がけで、京都府立医大で特別講義を行いました。
医学部2年生が対象でしたが、大学院生の方(単位になるらしい)や教員の方々もちらほら。
後から来られた方が立ち見になる状況は、講義をする側のモチベーションをさらに高めますね:)

医学部2年生というと、私が大学院で研究を始めた頃には、まだ生まれていなかった方もあり……orz
まぁ、生化学も遺伝学も未修の学生さん相手ですから、とにかく「研究する人生もありだよ!」ということが伝わればいいな、と思ってスライドを組みました。
一応、なぜ、自分が研究を行うようになったかというストーリーの中に、疾患の動物モデルを用いた研究成果を入れるような構成です。
Taking home messagesは以下にしました。
・研究は楽しい!(いつもではないけど)
・研究は出会い!(人、論文、材料など)
・研究への愛とリスペクトを!

途中、「コントロールは必ず取らないと意味が無い」などのメッセージも折り込みつつ。

講義の後にも多数の学生さんが残って「研究って私にもできますか?」「研究室に出入りしてもいいのでしょうか?」など質問しに来てくれたのが嬉しかったです。
お招き頂いた河田先生の目的に叶うことができたでしょうか……。

河田先生は、現在、日本解剖学会の理事長であり、2015年の日本解剖学会総会・学術集会・日本生理学会合同年会の会頭もされるご予定とのこと。
この合同年会は2011年に予定されていたものが、311震災により中止になったという経緯があります。
神戸での合同年会が盛会になることを心からお祈りしています♬
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講義終わって、河田先生の研究室の方、京都府立医大の小野先生、野村さん(もと同僚)と一緒に記念撮影しました。
by osumi1128 | 2013-12-14 09:53 | 若い方々へ | Comments(0)

成功の法則 S=mt2(スクエア)

昨日、富山大学医学部の井ノ口先生にお声がけ頂き、先端脳科学セミナーという大学院生向けのセミナーでお話して来ました。
富山は初めてだったのですが、仙台ー大宮ー越後湯沢ー富山と乗り継ぐと、正味4時間、乗り換え時間入れて5時間くらいで着きました。
自分の研究の原点から未発表データのtransgenerational epigeneticsの話まで約80分、留学生が多い(2割くらい?)ので英語での講演でした。

Taking home messagesは、先日の医科歯科での講演とほぼ同じ。
その1:研究は楽しい!(大変な時期もあるけど……)

その2:広い視野を持とう!(無駄な時間は何も無い)

その3:自分にタグをつけよう!


それで後から思い出したのですが、以前から思っている「成功の法則」があります。
S=mt2(2は自乗のつもりです)

ちょっと相対性理論をもじったつもりですが、ここでは「S」は「成功」、「t」はひとつは「talent(能力)」、もう一つが「time(時間)」を表します。
もし一つ目の「t」の値が小さかったら、時間で稼ぐ、つまり努力をすることが大切ということですね。
例えば、イチローの素晴らしい業績は、才能もさることながら、毎日の努力こそが誰にも真似できないくらいのものである訳です。
「You are what you eat」と言われますが、「You are what you read」だし、「You are what you watch」でもあり、「You are what you buy」かもしれないし、「You are how you spend your time」つまり、自分の時間やお金を何に使うかが、積み重なっていくのだと思います。

では、さて「m」は何だかわかりますか?


「m」は「motivation」を表します。
もしmotivationがプラスなら、それは成功に近づきますが、もしマイナスだと、どんなに時間をかけても結果はマイナスになってしまうのです。

講演後の夕食会でこの「法則」を井ノ口先生にお話したら、とても賛同して下さったのですが、「<m>は三乗くらいに影響しそうですね」と仰っておられました。

*****
実は、初めての富山は「はくたか号」金沢行きで訪れたのですが、最後、富山で降りるときに網棚に上げた(←滅多にしないのですが、一人がけの席だった……)荷物を下ろしたり大慌てで支度している間に、膝の上に置いていたiPhoneを忘れました……orz
気付いたのはセミナーの直前で、井ノ口先生の秘書さんに金沢駅までお電話して頂いて、無事に回収されていることがわかりました……。やれやれ……。

帰路は始発で逆ルート。
お昼前には仙台に戻ることができました。
午後の脳神経科学コアセンター説明&見学会には、ちゃんと間に合いました♫
井ノ口研の皆様、お迎えなど、お世話になりました!
by osumi1128 | 2013-11-30 22:10 | 若い方々へ | Comments(0)

過日のプレゼン・ゼミの補足(色覚バリアフリー関係)

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過日10月10日に講師を務めました「研究推進ゼミ」の「伝わるプレゼンテーション」について、今年初めて取り入れた(もっと前から入れるべきでした……)「色覚バリアフリー」について初めて聴いた、という感想も多々あったので、補足のリンクなどを挙げておきます。
こちらの画像は「色のシミュレータ」というアプリのサイトから拝借していますが、色覚が多くの健常人の方とは違う方にはどのように見えるか、という例を示します。
ゴッホの自画像なら、ちょっと色調が違うね、ということですみますが、地下鉄路線図などの公共の表示では配慮されるべき点ですし、プレゼン会場の中には赤い線のグラフが緑の線と重なっているとわかりづらい方もいるかもしれません。
是非、下記のサイトをご一読下さい。

来年度の研究推進ゼミではぜひ、『PowerPointによる理系学生・研究者のためのビジュアルデザイン入門 (KS科学一般書)』を書かれた田中沙代子先生にご講演頂ければと、関係者に申し上げておきました。

ちなみに、今年の分子生物学会年会@神戸では、最終日の一番最後にTED風プレゼン(という言い方は好きではないのですが……)公開プレゼンテーション「生命世界を問う」(市民公開講座)でも登壇予定です(気持を盛り上げるために、すでに衣装の手配をしました♫)。
さらに理事会フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」が日替わりで開催され、こちらにも毎日顔を出します。

【リンク】
●拙ブログ:伝わるプレゼンテーション(各種リンク先あり)
色覚バリアフリーについてのサイト
●アプリ:色のシミュレータ
●上記を開発された浅田一憲氏のブログ
●拙ブログ:ワイン、ゴッホ、遺伝子(上記サイトに辿り着いた経緯など)
●拙ブログ:ゴッホ展@宮城県美術館に行ってきました(さらに上記から関連して)
●お勧めしたマニュアル本:『PowerPointによる理系学生・研究者のためのビジュアルデザイン入門 (KS科学一般書)』
●拙著:『バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本』(羊土社)
●「医学の杜へ」に書かれたレポート(色覚バリアフリーについてコメントが無かったのが、ちと残念。来年も講師を務める場合には強調します)
by osumi1128 | 2013-10-29 12:50 | 若い方々へ | Comments(0)

先端歯学スクール2013にて講演

本日は母校で講演してきました。
「先端歯学スクール2013」という、歯学分野の選りすぐりの大学院生を集めて、研究発表、ディスカッションなどを行い、最後に受講証や優秀発表賞を授与する、という企画です。
1時間の教育講演枠を頂いたので、医科歯科時代からの研究テーマを中心に「神経堤細胞の魅力」というタイトルで、19世紀のHisによる記載から始めて最新データと今後の展望まで講演しましたが、いくつか若い方々へのメッセージを込めました。

その1:研究は楽しい!(大変な時期もあるけど……)

楽しいと思えることを仕事にできることは大きな喜びです。
毎日が楽しい訳ではありませんが、びっくりするデータ、予想外の結果などが出てくるとワクワクします。

その2:広い視野を持とう!(無駄な時間は何も無い)

これからの鍵は融合です。
そのためには広い分野の知識や人脈が必要です。
自分の専門と関係の無いと思う話も、いつか役に立つかもしれません。

その3:自分にタグをつけよう!
業界の中で自分の顔・名前に加えて専門分野、プロフェッショナルなスキル、系譜のタグが付くように、学会などに参加する際にセルフ・プロモーションしましょう。
「専門分野と得意なスキル」を覚えてもらうためには、ある程度最初は同じ路線に固めて研究発表を行って、自分の陣地を固めるのが良いと思います。
狭い分野であればより、その分野の若手トップになれるので有利とも言えます。

その4:最先端の研究を!

科学は過去成果の延長にあることを認識し、先人に学ぶことが大切です。
昔の論文にはヒントとなる宝がたくさん隠れています。
最先端は常に「エッジ」にあります。
最初の論文は認めてもらえないかもしれませんが、本当に大事なことであれば、いつかは世界の中心になります。

その5:歯科は医学の最先端

そもそも「入れ歯(義歯)」の歴史は眼鏡より古く、紀元前にまで遡ることができ、義歯は人類最古の人工臓器です。
先進国では、この数十年の間に虫歯はかなり予防できるようになり、その治療の質も良くなり、齢をとって歯を失う人の数も減りました。
(「齢」という漢字に「歯」が含まれることは象徴的です)
つまり、歴史的に見れば医学の中でもっとも進んだ分野であるとも言えるのです。
その結果、歯科医が余り気味とも言われていますが、それは、新しい分野を開拓していないからです。
上記とも関係しますが、もっと真剣に融合研究を進めるべきだと私は思います。
口腔状態と全身状態の関係を、もっとデータ・ドリブンに解析することにより、今までわからなかったことが見えてくるかもしれません。
歯科と神経科学・脳科学の融合も、本当に「歯を失わなければ認知症になりにくい」のか、では歯を失った場合には、どのように脳を刺激すればよいのか、などのテーマの展開もあります。
「顔認知」における顎口腔部の役割、言語機能との関係などもあるでしょう。
あるいは、特定の症候群(例えばダウン症候群など)が、なぜ特有の顔貌を呈するのかも、まったくわかっていません。
要は、既存の「歯学・歯科領域」から飛び出す勇気が必要なのだと思います。
そこには、まったく新しいフロンティアがあるのではないでしょうか?

……というような意図で、煽ってみました。
講演を聴いてくれた若い方々が、新しい分野にチャレンジしてくれることを祈っています♫
by osumi1128 | 2013-09-27 23:47 | 若い方々へ | Comments(0)

仲野せんせいのセミナー&仕事のスキル:ファイルの「リスト・時系列管理」のススメ

d0028322_823241.jpg昨日、阪大の仲野徹先生のキャリアパスセミナーがあって、大入り満員、立ち見まで出る大盛況でした。
「研究する人生 研究の進め方から論文の書き方・通し方まで」というタイトルで、なかなか聴き応えがありました。
参加できなかった方のため、自分自身の備忘録としてFacebookに書き込みしていたものを転載しておきますね。
まずは何より確実なデータ。トップダウンよりボトムアップ。納得いくまで同じ実験を繰り返す。図表の作成には手間と時間を惜しまない。描きながら考えるのが大事。結果を短いセンテンスで言えるところまで高める。

解釈と展開。新しいデータが出たらそれを元に考えるので、次の実験が変わることがよくある。できるだけ厳しく解釈する。一度に一つのことを考える。同時に、出来るだけ甘く考えて、妄想を膨らませてみる。そのバランスが大事。ベストの結果とワーストの結果の両方考えておく。その対処法も含めて。欲しいデータと出来る実験のバランスも、大事。ロバストな研究と夢のような研究とのバランス。仲野せんせいは8:2くらいとのこと。

上手なデータの組合せ方。引き合うデータをクラスタリング。似たもの同士をあつめる。実験を実際に行った順序は無視。結果を説明しやすいクラスタリングを。おお、懐かしのKJ法のご紹介。組合せたカードの内容を言語化するのは、確かに大事。組合せを変えてみることも。孤立データをどうするか。不要なデータは捨てる。孤立させないために追加実験という場合も。データには軽重がある。

オッカムの剃刀で削ぎ落とす。単純化すること。仮定は少なく。より単純な説明が可能なら、その方がベター。研究の世界は、いわばアブダクションである、というお話も。データを元にストーリーを組立てて、納得させられるか。データを出しながら書くこと。

目指すは一本の矢。主張はするが言い過ぎない。論理に破綻は無いか。論理的構築が決まればタイトルは自ずと決まる。論理の飛躍はないか。論理の糸が細くないか。不足のデータは補足する。傍証の蓄積、反論の棄却。小学校の高学年程度に理解できる理屈でないと通用しない。論理がひっくり返るような結果が出るかもしれない実験は先に行う。

親切な心で論文を書く。アブストラクトとイントロダクションを魅力的に。最初が駄目なら読んでもらえない。査読者は必ずしも専門家では無い。親切な心と感謝の心。素人とエキスパートの両方が納得できるように。読後感をさわやかに。最後のセンテンスも大事。大事なデータをどこに配するか。弱気なコメントで終わってはダメ。

いざ投稿、そして改訂。エディターのレビューワーも人の子。どの雑誌に投稿するか。カバーレターを丁寧に。本文よりも膨らまし気味に。レビューワーの忌避は有効。指名の効果は不明。レビューワーにはできるだけ素直に従う。親切なリバイスを。

というあたりが重要なメモです。
このブログに載っけてシェアします♫

最後の方のスライドからのメモはこちら。
生命科学研究、受難の時代? 一つの論文に必要なデータの膨大化。研究のスピードと研究内容の変化。テニュアポジション獲得の困難性。いかに生き抜くか。オリジナリティのある研究を。勝てるテーマを選ぶ。やりたいこととできることを意識。足下を確かめつつ星を眺める。単位時間あたりの研究成果を最大限に。ムダな実験をしない。常に上手くいかなかったときのことを考える。いろいろな相場感を身につける。引いて考えること。自分のデータだけで考えてもダメ。ラボメイトのデータから考える。

これに触発されて、本日のテーマは「仕事のスキル」として、PC上でどのようにファイルを管理するかという話をします。

その前に、仲野せんせいのご著書のご紹介。
『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』
拙ブログの書評:『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』【ちょこっと加筆】

ちょうど昨日、Facebook繋がりの方と話題になったのですが(Macユーザの方)、ファイルの一覧って、デフォルトはたぶん「カラム表示」なのだと思いますが、私には圧倒的に「リスト表示」の方が仕事がしやすいのです。
その理由は以下になります。
1)ファイルやフォルダが保存した時系列に並べられる
2)そうすると、直近に動きのあったファイルやフォルダが上にくる
3)動きの無い下に回ったファイルやフォルダは格納の時期だとわかる

私の場合には、on-goingのファイルやフォルダはすべてDropbox上に置いており、一日に10〜50くらいのフィアルの処理(原稿チェックから日程調整星取表まで)あるので、「時系列処理」が必須です。
それは人の記憶が時系列というタグがつきやすいということに基づいていると思います。
人の名前、その他のタグは、タグそのものを思い出すことが困難だったりしますが(若いうちは大丈夫?)、「たしか昨日か一昨日くらい」「1ヶ月前くらい」という記憶のタグは、かなりロバストです。
時系列整理はもともとは有名な野口悠紀雄先生の本『超整理法』にもとづきます。

また、この管理の仕方では、フォルダの階層を深くすることは避けています。
例えば、せいぜいが下記のようなかんじです。
Dropbox>秘書さんとの共有フォルダ>直近のタスクのフォルダ>ファイル

なので、急いで仕上げるべきフォルダは、つねにモニタ上で上位に位置することになり、アクセスが良いのです。
階層を深くすると、いちいちフォルダ名を付けなければなりませんが、「リスト表示」の場合には、例えば、新しく作ったファイルは、とりあえず「ひとりぼっち」で置いておいてもOK。
何かそのファイルの改訂バージョンなどたまっていけば、それを「クラスター」にして初めて「フォルダ」を作成するのです。
新しくファイルを作る際に、それを入れる階層のフォルダに、いちいち名前を考える手間もありません。
ずっとひとりぼっちのファイルは、時間が経つにつれて自然に下の方に下がっていきますから、一週間ごととか一ヶ月ごとなど、ファイルの整理をする際にメインマシンの「処理済み」フォルダに放り込みます。
最近はメモリの容量が大きいので、滅多なことではファイルは削除しませんね。

また、ファイル名自体には「OsumiCorrespondence130705」のように、少しだけキーワードをタグとして付けておきます。
カラム表示の場合に、例えば「text.ver.1」などのようなファイル名を付ける学生さんが多いようですが、私とのやりとりの間に、ファイル名を変えておきます。
そうでないと、私にとっては「誰のテキスト」なのかわからなくなるからです。
日付を頭に付けると、カラム表示でも日付順にはなりますが、あたまに日付が付いているのは、何のファイルなのか、瞬間的な視覚認知が悪いですね。
ファイル名に付いたタグは、PC内の検索の場合にも効果を発揮します。
というのは、現在の検索エンジンは優秀なので、PowerPointの中のテキストまで検索してくれることは確かですが、それよりも、「ファイル名」でのキーワード検索ができれば、圧倒的に早く結果が表示されます。

上記の仲野先生の御講演にもありましたが、「単位時間あたりの研究成果を最大限に」することはとても大切です。
ファイルの管理ひとつでも、「単位時間の処理速度を上げる」ことが可能なのです。

たぶん、研究を初めて間もない学生さんには「カラム表示」の方が自然なのかもしれませんが、どこかの時点で自分の仕事が複雑になっていくときに、「違うやり方」もあるということを知っておくのは大事だと思います。
また、「異なるやり方に適応する」柔軟性自体も、クリエイティブな発想ができるかどうかに関わると考えられます。

という訳で、「リスト表示・時系列管理」、お勧めです!!!
by osumi1128 | 2013-07-06 09:32 | 若い方々へ | Comments(0)

ライティングの筋トレ

よく「仙台通信、読んでます。よく書かれますね!」と仰る方には「ブログ書くのも<筋トレ>なんです」とお話します。
本を読むのは「入力系」で、これは知識を得たり感性を研ぎ澄ますのに必要ですが、「出力系」は運動機能も使うので、<イメトレ=イメージ・トレーニング>だけでなく、<筋肉トレーニング=筋トレ>が必要です。

タイピングの速度を上げることができれば、時間当たりの作業効率が上がります。
誰でも「一日は24時間しかない」のですから、やりたいことがいろいろある方には、密度を上げるしかありません。
(あるいは、ミスを少なくする、というやり方もありえますね……)

さらに若い方々にお勧めするのは、「まるごと他の方の文章を書き写す」というトレーニングです。
これは、実際にどの芥川賞作家さんだったかの受賞インタビューか何かで昔読んだことがあり、なるほどな、と思いました。
文章を書き写すことによって、その作者の言葉遣い、句読点、リズム、間、などを「体得する」ことを目指すのです。

科学者を目指す方々は、小説ではなくて、論文を書き写すのがベストです。
さすがに、Cellのフルペーパーを書き写すのは大変かもしれませんが、Brief Correspondenceのような、1000〜1500 wordsくらいの文章を、1時間程度で一気にタイピングするのは、良い筋トレになります。
周りに人がいなければ、発音しながらタイプすると、音声の出力とそれを聞き取る聴覚の刺激により、さらに単語の記憶が強化されるでしょう。
科学的な文章の場合には、論理構成、つまりロジックが重要なのですが、リズムや接続詞等の使い方でその雰囲気を身体に叩きこむには、タイピングが一番です。
幸い、英語の文章をタイプする場合には、「漢字変換」が必要ないので、自分が打ったものをモニタ上で見て確認しなくてもできます。

ただし、その前提条件としては、ブラインド・タッチできるまで、タイピングを習得しておく必要があります。
キーボードを見ながらですと、お手本にする文章(モニタ上であれ、印刷したものであれ)に集中することが困難で、リズムを感じるところまでいかないかもしれません。
ミスタイプは多くの場合、打っていて手の感覚?で気づくので、直しながらタイプしますが、必要であれば後でまとめてスペルチェックをすればよいでしょう。
大事なのは「速さ」です。
なので、タイピングにおけるブラインド・タッチは、現代の仕事のスキルとして必須であり、できれば高校生くらいまでの間に習得しておくのが良いと個人的には思います。

「出力系」のために筋トレが必要なのは、スピーキングにおいてもそうなのですが、これについてはまた次回……。
by osumi1128 | 2013-06-29 10:30 | 若い方々へ | Comments(0)

ノルウェーから学べること

先日告知しましたイベントに参加しました。
自分のミッションは「東北大学の男女共同参画についてご紹介」だったのですが、男女共同参画の先進国のノルウェーから改めて学ぶところ大と感じた2時間余でした。

教育・研究担当副大臣のお話の要点としては以下のようなことを話されました。
・ノルウェーにとって未来の資源は石油ではなく「人」
・男女共同参画を推進することが国の経済の発展にも重要
・今年、ちょうど女性参政権が認められて百年で、政府関係ポストではほぼ男女半々になったが、企業幹部の女性比率はまだ20%と低い
・保育園整備により出生率が大きく改善した(ちなみに、保育園はむしろ<教育>の位置づけであり、子どもはそれを享受する<権利>を持つという意識)


日本へのアドバイスとしては……
・日本のような高学歴の国で女性が活用されていないのはもったいない
・長時間労働がワークシェアリングを妨げ、男女共同参画推進にも障害となっているのではないか
・男女共同参画の問題は人生の質の問題。男性を巻き込むこと。そのロールモデルが必要(ノルウェーの首相は在職中に三ヶ月育児休暇を取った)


いちばん心に残ったメッセージは以下です。
これは、昨年2012年の国際女性会議においてノルウェー元首相の講演の中にもありました。
男女共同参画は、第一に人権であり、第二に民主主義であり、第三にただの常識なのです。
Gender equality is primarily the human right, and the democratic policy, and just a common sense.

ご紹介した東北大学サイエンス・エンジェル制度については、「とても素晴らしい仕組みなので、ぜひノルウェーでも取り入れたい」と仰って頂ました。
画像は、仙台市在住の女子学生・大学院生3名と、副大臣とのパネルディスカッションの様子です。
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副大臣とのツーショット
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【リンク先】
東北大学女性研究者育成支援推進室フォトアルバム
by osumi1128 | 2013-05-30 23:37 | 若い方々へ | Comments(0)

分子生物学会理事長としてのメッセージ

イベント告知が続きましたので、ちょっと読み物を。
分子生物学会会員の皆様にはすでに会員一斉メールでお伝えしたものですが、このたび、英文にも直したものをHPに掲載して頂きました。
今年1月の理事長就任時のものと、四半世紀の間に競争的環境が厳しくなった中で、研究する喜びを忘れたくない、という自分への戒めも込めて書いた春の号と合わせてリンク先を示します。
ご笑覧あれ。

理事長メッセージ:新春号(1月)
理事長メッセージ:春号(4月)

Message from the 18th President (2013/1)
Message from the 18th President (2013/4)

*****
……と言いつつ、今週土曜日、東北大学大学院医学系研究科大学院説明会開催です!
仙台まで来られない方はUstreamでどうぞ!
by osumi1128 | 2013-05-21 19:55 | 若い方々へ | Comments(0)

留学は何のため?:NIH-Tohoku-JSPS国際シンポジウムのワークショップから

5月9日、10日、NIH-Tohoku-JSPS国際シンポジウムが開催されました。
河北新報:学術交流より密接に 東北大とNIH、仙台でシンポ
東北大学からNIHに留学された先生も多く、震災直後からいろいろなご支援を受けました。
今後のさらなる連携のための覚書を交わし、5つのセッションの講演とポスターセッションの間、2日目のランチタイムにキャリア・デベロップメントのためのワークショップ(WS)が開催され、パネリストとして登壇しました。

ちなみに、WSを企画された井樋先生もNIHへの留学をされた方で、もうひとりNIHからのオーガナイザーの外山玲子先生は発生生物学がご専門ですが、キャリア・デベロップメントの部署のご所属です(実は高校の先輩でした〜世間は狭い)。

種々の統計がありますが、海外に留学する日本人研究者が減少しています(文科省発表によれば、ピークの平成16年に比して、直近データの平成22年は30%減少で5万8060人)。
ここで見過ごされがちな点は、この10年くらいの間、米国への留学が激減しており、中国・韓国への行き先シフトが見られることです(留学全体には文系も含まれます)。
これは、日本企業の取引先が米国からアジアにシフトしたことも反映していますし、米国でのフェローシップが獲得しにくくなったことも影響しているかもしれません。
また、フェローシップに「アジア枠」があったとすると(very likely)、その中を中国、韓国と食い合って減ったという可能性があるように思います。

ともあれ、ハーバード大などの日本人留学生は激減で、NIHも同様。
関係者もそのことを苦慮しており、今回のWSの議論の入り口として、留学に関するアンケート結果が、東北大学側およびNIH側から示されました。

そもそも「留学」っていう言葉は不思議ですね。
英語はstudy abroadかwork abroadでなのでしょうが、日本でこの言葉はポジション的には圧倒的に後者のケースで使われているのですが、実際には「海外の<進んだ成果>を日本に持ち帰る」ことを念頭に置いてきたので、文部省(当時)在外研究員もそういう意味では「お勉強しに」行った訳です。

でも、時代はもう世界に追いつくことを目指した「坂の上の雲」ではなくなりました。
生命科学の分野においても、日本国内の方が良い設備だったり、良い研究環境であるところもいろいろあります。
なので、私は単に「若者の内向き志向」だけが原因とは思いません。

また、アンケートでは医学系(いわゆる医師免許、歯科医師免許を持っている人)と非医学系(PhDやnon-MDと呼ばれる人)の間で「帰るアテがあるか」の違いがあって、non-MDの人たちには「日本から離れると戻ってこれるか不安」と思う人が多いようです。
このあたりは、私の世代だと日本にポスドク相当の職があまり無い時代だったので、大学院を出て助手(当時)にならない場合には必然的に海外に出ることになり、また「一発当てなければ帰ってこれない」と思っていた人たちも多かったように思います。

パネル・ディスカッションに登壇した中の一人は、医学部5年生の男子学生さんだったのですが、彼は医学部卒業後に米国の大学院進学を希望しています。
その彼の発言が象徴的だったので記しておきます。
海外の大学院は給料が出ますよね。それに結局、このアンケートの回答からは、大学院修了後に留学する意味がほとんど無いように思えます。語学の習得や外国人の友人を作る、異分野や異なる文化の理解など、あってもいいけど、別に直接的に研究に役立つ訳ではないですよね?(テープ起こしではないので正確ではありませんが、このような意味のことをはなしました)

まぁ、そのあたり、回答した方の自由記載に「ノーベル賞学者の研究室という環境で数年過ごしたことは大きな価値があった」というようなものでもあれば、きっと印象も違ったのかもしれませんし、明らかに立身出世を目指して米国に行く中国の方たちに比べたら、平均的な日本人留学生は「ぬるい」意識のままで外に出ているのかもしれません。
また、多くの留学経験者は、単なる語学研修などで短期に滞在することと、文化や習慣の違いに戸惑い苛つきながらも克服して得られるものを感じておられるでしょうし、よりエスタブリッシュされている方には論文出版などにおいて人的交流の持つパワーを活かしておられると思います。
もちろん、より若い時代に海外に出る意味はありますし、でも、いくつになっても得られる経験はあると思います。
ちなみに、日本で初めての女子大学生の一人、丹下ウメが留学したのは40代後半であり、ジョンズ・ホプキンス大学で学位を取得したのは54歳のことです。

留学のスタイルも20年前とは異なっています。
海外にいてもインターネットを介して日本と繋がることができますし、そもそも日本にいても海外の情報が簡単に手に入る時代です。
かつては留学するまで外国に出た経験が無かった人が多かったかもしれませんが、今は家族での海外旅行の経験も豊富だったり、高校生の修学旅行先がオーストラリアだったりします。
昔よりも時間の流れが早くなっていることを思えば、3年新しいラボで一仕事するよりも、海外の共同研究先で3ヶ月でデータを出してくる、という短期留学の方が現代に相応しいかもしれません。

パネル討論後に、同僚の教授が言われたのは「日本人って結局<引っ込み思案>なんじゃないでしょうか?」ということでした。
私はそれに加えて「みんないっしょ」が好きなんだと思います。
自分の回りの友人で3人「えー、留学なんて行ったら戻ってこれないよー」と言う人がいたら、「そっか、じゃぁやっぱり国内でポジションを探そう」になるというメンタリティ。
「じゃぁ、私は違うキャリアパスを歩もう」にならないのは、みんな一緒にお手々繋いでゴールイン、という刷り込みがあるのでしょうか……。

私自身はいわゆる留学の経験が無く、その分、海外とのコネクションを作るための努力は人一倍したつもりですし、ラボのジャーナル・クラブとプログレス・ミーティングは英語で行なっています。
そのせいか、初代の大学院生含め、欧米に行った元学生さんは5名。
NIHに留学した人はグリーンカードを取って今はFDAに勤務しています。
助手(当時)の後に留学した方は、関西の大学で准教授ですね。
現在の学生さんも、留学に興味のある人も、「外国は嫌い」という人もいろいろです。

私自身はより広くキャリア・デベロップメントの上で「メンター」の重要性を指摘したのですが、この件は別立てのエントリーにします。
by osumi1128 | 2013-05-11 20:11 | 若い方々へ | Comments(0)