カテゴリ:自閉症( 12 )

拙著あとがきのあと(その11):東田直樹さんのNHKスペシャル番組に関わりました

米国大統領選番狂わせの影響で放映日がずれ込みましたが、昨晩、NHKスペシャル「自閉症の君が教えてくれたこと」を視聴しました。エンドロールに自分の名前が載った初めての番組なので、少し思いを記しておきます。

そもそものきっかけはブルーバックスさんから『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』を刊行したことでした。ディレクターの方の目に留まり、取材を受けることになりました。

前回の「君が僕の息子に教えてくれたこと」は、東田直樹さんの著書『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』を翻訳したデイビッド・ミッチェル氏が、そのことをきかっけに自分の自閉症の息子のことを理解することができたというヒューマン・ドキュメント。平成26年度文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞などを受賞しました。今回は、その2年後の直樹さんの成長、認知症のお祖母様への気持ち、自身が癌に冒され障がいを持つことになったディレクターの視点が主軸となりました。

番組制作の過程において、「脳科学的な観点を取り込みたい」ということでしたので、東北福祉大学特任教授の小川誠二先生にお繋ぎしました。小川先生は、機能的脳画像撮影の原理開発により2003年に日本国際賞を受賞された研究者で、現在は福祉大の感性研究所に研究室を持っておられます。
d0028322_00181448.jpg
今回、直樹さんの休息期脳活動計測や心理検査などを行うことになり、現場に立会いましたが、この部分は残念ながら番組の中には盛り込まれませんでした。その理由としては、50分のヒューマンドキュメンタリー番組の中に「脳科学」をうまく入れることが難しかったであろうことや、直樹さんの「個性」を十分に説明するだけの説得力のあるデータとして耐えうるか、という面があると思われます。しかしながら、テレビ番組制作の過程の一部を観る貴重な経験をさせて頂きました。

直樹さんは、多動の傾向もありますし、簡単に言葉を発することができないので、通常の知力検査では低いスコアしか出すことができません。つまり、豊かな感性があったとしても、それを客観的に示すことは困難です。発話が不自由な面は「文字盤」を使って補うということで対応しています。キーボード型に配置された文字を指差し、それを追いかけながら一字一字発音することで、発話のきっかけとしているようです。一方、PCを使って執筆活動をすることは可能で、これまでに多数の著書を出してきました。

私自身を振り返ると、PCのキーボードはブラインドタッチでタイプできますが、スマホではそこまで早く自分の気持を言葉として表わせません。そんなときのもどかしい気持ちは、もしかしたら直樹さんが発話に困難を感じることと繋がっているのではないかと思っています。また、直樹さんの書かれたものを読むと、他人とのコミュニケーションが少ない分、自分の脳の中で何度も反芻され、内省された言葉として表れているような印象があり、そのことは、偉大な宗教家の営みとの共通性のように感じます。

脳科学ではこれまで、特定の活動に関わる脳の部位の同定(例えば、発話に関わるのは脳のブローカ野などのように)や、自閉症の人々の脳は健常者の脳とどのように異なるのか、という解析など、10〜20名程度の集団の平均値でデータを理解する方向で進んできました。これからはもっと、それぞれの人の「個性」が脳内でどのように表現されているのかについての理解が進むことを期待しています。そのような視点から、『多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解』という研究班を立ち上げています。この数年の間にこの分野がどのように進展するのか楽しみです。

なお、番組は12月14日(水)午前0時より再放送が決まっています。見逃した方はぜひ♬

*****


by osumi1128 | 2016-12-13 00:19 | 自閉症 | Comments(0)

学会備忘録&新シリーズ「自閉症研究最前線その1:九大中山研ほかNature論文」

先週、第38回日本生物学的精神医学会と第59回日本神経化学大会の合同大会が福岡国際会議場にて開催されました。初日に東京医科歯科大学の西川徹先生(←実は高校の先輩でもあります……)とともに合同シンポジウム「発症とは何か」の座長をさせて頂き、発達障害、統合失調症、うつ病など、精神疾患の発症時期の違いからメカニズムに迫るという切り口での議論を深めることができました。

2日目は、午前中に神経化学会側の大会長、和田圭司先生自らが座長を務められた教育講演で我が国のグリア研究の立役者の、工藤佳久先生がアストロサイトについて、池中一裕先生がオリゴデンドロサイトについてお話され、その後、本来は高坂新一先生がミクログリアについてお話されるはずのところ、ダブルブッキングにより代役となったのが佐柳友規さん@国立精神神経医療研究センターでした。40分ほどの長いトークを立派に務められていました。
d0028322_22045142.jpg
午後は、当研究室の助教である吉崎嘉一さんが企画シンポジウムにお声がけ頂き、未発表データ(父加齢による仔マウスの行動異常とその背景として想定される次世代継承エピジェネティクス)について披露させて頂きました。なるべく早く論文にまとめないと……。30代の若手の方のセッションで、裏番組に大物の先生方のシンポジウムがある中で、多数の聴衆に恵まれて何よりでした。
d0028322_22071960.jpg
*****
ちょうどこの週、おそらく最近の自閉症の基礎研究の中でもエポック・メイキングになるであろう一つの基礎研究論文がNatureに掲載されました(抄録は末尾にcopy & pasteしておきます)。

d0028322_22180817.jpg
10年ほど前から、自閉症の遺伝学的解析が全ゲノムレベルで為されるようになってきたのですが、数年前に行われたエクソーム・シークエンスという解析から、浮かび上がった因子の一つがCHD8という遺伝子でした。この遺伝子はchromatin helicase DNA binding protein 8という名前のタンパク質を規定(コード)しています。この他にも関連する、染色体の構造を変える(リモデリング)因子をコードする遺伝子についていくつか自閉症との関連が示唆され、シナプス形成などに直接関係する分子をコードするものではないのに、いったいどうやって自閉症の病態に関係するのだろうと疑問が持たれていました。

おそらく、世界中で他にもこのCHD8の遺伝子をゲノム編集技術で改変したマウスを作っているような研究室は存在するのではないかと思うのですが、実は、九州大学の中山敬一教授のグループは、すでに別の経緯でこのCHD8に着目し、ノックアウト・マウスを作っていたのです。そこに、「どうやら自閉症に関係するらしい」という論文が舞い込んできた訳ですから、じゃぁ、調べてみましょうか、ということで、2009年に自閉症マウス論文でCell誌の表紙を飾った理化学研究所脳科学総合研究センター(BSI)の内匠透チームリーダー(当時は広島大学教授)のところにコンサルトをお願いしました。(ちなみに、さらにその背景には、不肖、大隅が取りまとめ役だった某グループグラントの申請があったかもしれません。そのグラントはボツになりましたが、こんな風に繋がったの無なぁ…と勝手に思うことにします♬)
d0028322_22585418.jpg
さらに、マウスの行動解析を網羅的・統一的に行うシステムを構築していたのが、藤田保健衛生大学の宮川剛教授。この共同研究により、CHD8の遺伝子の片方が欠損した「ヘテロ接合」のマウスの行動解析が一気に進んで、確かに不安の亢進、常同行動、社会行動の異常など、自閉症様の行動異常が認められました。

しかしながら、データがここまでではNatureには載りません。さらにその分子メカニズムを追求するために、マウスの脳の中で働く遺伝子を調べてみると、何か特定の遺伝子の発現のみが非常に変化しているというよりも、もう少し全体的な変化のように見受けられました。この中で、発現が上昇している、すなわち、強く働いていると思われた遺伝子が浮かび上がりました。それは、RE-1 silencing transcription factor (REST)という名前のタンパク質をコードする遺伝子でした。CHD8は、タンパク質になった場合の機能としてDHAに結合するのですが、確かにCHD8がRESTの遺伝子(つまりDNA)に結合することもわかりました。

REST遺伝子から作られるRESTタンパク質は、神経分化に重要な働きをすることが知られているのですが、実は、その名前のように「抑制的」に働く分子です。つまり、他のさまざまな遺伝子のスイッチをOFFにする働きがあります。したがって、
CHD8がヘテロになって減少する→RESTが上昇する→RESTによって制御される遺伝子の働きが悪くなる
というシナリオが書けることになるのです。このことが「神経発達障害」というカテゴリーに分類される自閉症スペクトラム障害の発症機序を説明できると考えられます。

もちろん、自閉症と診断される方でも、CHD8遺伝子の変異を持たない方もおられます(というよりも、その方が多いことは間違いありません)。しかしながら、CHD8やRESTなどのような、他の複数の遺伝子の働きに影響を与えうる分子は、確かに「多遺伝子疾患」と想定されるような病気(自閉症だけではなく、代謝病なども含まれます)を説明する上でぴったりです。今後、なぜ多様な病態が生じるかについては、RESTの標的となる遺伝子のスイッチ部分の違いというようなメカニズムが解き明かされていくと期待されます。

【豆知識】
「CHD8の遺伝子の機能とタンパク質の機能はどう違うのですか?」というような質問を、他の分子についても受けることがよくあります。これは生命科学研究常識の「基本のキ」、「一丁目一番地」といえることなのですが、遺伝子(実体としてはDNA)は、それ自身では「機能」することができません。実際には「遺伝子に書き込まれた情報をもとに作られるタンパク質」が、その機能の実体を担います。したがって、研究者は「CHD8遺伝子の機能」と話しているときも、頭の中では「CHD遺伝子から作られたCHDタンパク質の機能」と読み替えて話をしています。これが不慣れな方には混乱を招くようです。

ちなみに、分子によっては遺伝子名とタンパク質名が異なる場合があります。例えば、自閉症関連で言うと、脆弱性X症候群という、精神遅滞や自閉症的症状を示す疾患の原因遺伝子の1つにはFmr1(Fragile X Mental Retardation syndrome 1)という名前が付いていますが、タンパク質はFMRP(Fragile X Mentarl Retardation Protein)という名前で呼ばれます。

分子レベルで語る生命科学研究では、多数の役者を区別する必要があるので、それぞれの遺伝子やタンパク質、その他の物質にも、固有の名前が付いています(実体がわからず、まだカタログ番号のみの遺伝子もあり)。不慣れな方々には固有名詞が多数出てくるのはわかりにくいですが、名付けた研究者にとっては自分の子どものように愛情のこもったものなのです……。

*****
おかげさまで拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』は3刷になりました。自閉症と脳、その発生や遺伝子の働きなどに興味のある方はぜひどうぞ! また、今週は脳の発生と栄養についての一般向け講演を行います。

d0028322_22541502.jpg
*****
Nature論文の抄録です。
Autism spectrum disorder (ASD) comprises a range of neurodevelopmental disorders characterized by deficits in social interaction and communication as well as by restricted and repetitive behaviours. ASD has a strong genetic component with high heritability. Exome sequencing analysis has recently identified many de novo mutations in a variety of genes in individuals with ASD, with CHD8, a gene encoding a chromatin remodeller, being most frequently affected. Whether CHD8 mutations are causative for ASD and how they might establish ASD traits have remained unknown. Here we show that mice heterozygous for Chd8 mutations manifest ASD-like behavioural characteristics including increased anxiety, repetitive behaviour, and altered social behaviour. CHD8 haploinsufficiency did not result in prominent changes in the expression of a few specific genes but instead gave rise to small but global changes in gene expression in the mouse brain, reminiscent of those in the brains of patients with ASD. Gene set enrichment analysis revealed that neurodevelopment was delayed in the mutant mouse embryos. Furthermore, reduced expression of CHD8 was associated with abnormal activation of RE-1 silencing transcription factor (REST), which suppresses the transcription of many neuronal genes. REST activation was also observed in the brains of humans with ASD, and CHD8 was found to interact physically with REST in the mouse brain. Our results are thus consistent with the notion that CHD8 haploinsufficiency is a highly penetrant risk factor for ASD, with disease pathogenesis probably resulting from a delay in neurodevelopment.

by osumi1128 | 2016-09-11 23:06 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その10):そもそもなぜ「自閉症研究」に取り組もうとしたのか

『日経サイエンス』8月号(6/25発売)に、丸山敬先生@埼玉医大が拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』(ブルーバックス)をご紹介下さいました。面識は無いのですが、ありがとうございます。丸々1ページ割いて頂いていて、とても詳しく説明して下さっています。「特集2:がんの免疫療法」という記事で本庶佑先生のPD-1の話も載っていて嬉しいです。

本書執筆のきっかけの一つは東日本大震災でした。

 あの日のことは、被災者であってもなくても、誰でも語るべきことがたくさんある。あるいは、5年経ったいまでもまだ語る気持ちになれないという方もいるだろう。地震発生時刻の14時46分、私はオフィスでパックス6変異ラットの研究データについて大学院生と議論中だった。突然の大きな揺れを感じて、私たちはテーブルの下に身を隠した。本棚からはあらゆる書籍とファイルが降ってきた。大学院生はデータの入った大事なPCを抱えて震えていた。「ここなら大丈夫だから!」と彼女に呼びかけ続けた200病は、永遠に続くのではと思うほど長く感じた。(本書あとがきの一部)

この体験をしていなかったら、たぶん研究の方向性や軸足は違ったものになっていたでしょう。今から思えば、空回りでしかなかったプロジェクトもありました。私自身が躍起になっているほどには、付いてこれなかったメンバーもいました。ライフラインが復旧しても、一人ひとり、生きているだけで必死な部分があったと思います。意識に上らない部分で、皆、傷を負っていました。もちろん、それは津波で亡くなられた方々やそのご家族に比べたら、まったく取るに足らないレベルの心の傷ですから、口に出すことも憚られるものでした。

マウスの超音波発声の実験系を立ち上げたのも震災後でした。生後1週間程度の間、お母さんマウスから引き離された仔マウスが超音波の音域で発する声(ultrasonic vocalization, USV)は、赤ちゃんの泣き声に対応するような音声コミュニケーションと考えられます。遮音された装置の中に仔マウスを入れて計測するので、人為的な操作が加わらず、数値化しやすい指標だと思いました。

そして、Pax6変異マウスの父と野生型の母を交配して得られた仔マウスのUSVをデータを見ていたとき、気づいたことがありました。

「うーん、これ、バラつき多いよね……」
「そうですね……」
「なんでかなぁ……。うーーん、そうだ! もしかして、雄が加齢しているってこと、ないかしら?」

交配実験を行う際、妊孕性のある雄は、何度も交配に使い回すことがあります。そこで、大学院生が父マウスの月齢で分けてみると、なんとなく、老齢父マウス由来の仔マウスのUSVコール数が少ない傾向が見えたのです! このときに、単にバラつきが大きいから、もっと例数を稼ごうとしか考えなかったり、あるいは、過度のプレッシャーを大学院生に与えてしまっていたら、現在行っている研究には繋がらなかったでしょう。

拙著の中でも少しだけ触れていますが、父が加齢した場合に、子の自閉症の頻度が高くなる傾向、つまり相関性のデータは論文化されていましたので、じゃぁ、本当にそうなのか、動物実験で因果関係を見てみよう! というプロジェクトを開始し、学会発表にまでこぎつけたのが2013年。雄マウスの加齢が交絡因子になるということは、各種のマウスを使った実験を行っている方々への警鐘でもあり、またちょうど「卵子の老化」の問題が報道されていた頃でもあったので、「ちょっと待って! 加齢は母側だけの問題ではないのです」ということを伝えたく、学会からのプレス・リリースを出して頂きました。


その後もデータは蓄積し続けており、再現性はきちんと取れています。また、スピンアウト的な研究成果として、Pax6が精巣の中で精母細胞などの雄性生殖系列の細胞に局在していることも見出しました(拙ブログ参照)。現在は、どのようにして父加齢の影響が仔マウスに伝わるのか、精子エピゲノムから仔マウス脳の遺伝子発現を繋げることができないか苦心しているところです。仔マウスの行動における「個性」がどんな風にして作られていくのか、さらに理解を進めることによって、人間の「個性」の問題にも迫ることができたらと願っています。
d0028322_23560956.jpg


by osumi1128 | 2016-06-29 23:58 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その9):パターン思考とモレスキンの方眼ノート

医学部1年生相手の講義「医学研究紹介」を6月末に担当しています。正味45分程度しか使えないので、毎年、何を話題にするか悩みます。135名くらいの学生さん相手にあまり細かいデータを示しても、その価値まで理解してもらえるとは思えず、でも自分であれば「基礎研究も大事」とか「脳科学って面白い!」と思ってもらえたらいいなぁ……と欲張りたくなる訳です。

大学院生相手には、毎年「研究倫理ゼミ」という枠で、プレゼンテーションの基本を伝える講義も担当していますから、「伝わるプレゼンテーション」にならないと恥という自負もあります。(ちなみに、本も書いています……)

その「伝わるプレゼンテーション」の講義では、「PowerPoint(PPT)ファイルを立ち上げる前に、構想をノートに書いて・描いてみましょう」ということを、この数年、必ず言うようにしています。PPTというアプリケーションは(そこそこ)便利なので、つい、表紙から順に作っていきたくなるものですが、先に全体を見渡した方がバランスの良いプレゼンになると思います。Keynoteを使う場合でも同様です。

今朝、目が覚めたときに、思いついたアイディアをいくつか方眼ノート(Moleskineを愛用♬)に描き出してみたのがこちら。
d0028322_22025342.jpg
たぶん、他人が見ても何のことやら……だと思いますが、自分用のアイディアノートとしては、これで十分です。細部は脳の中にストアされていて、実際にプレゼン用のアプリケーションを立ち上げての作業で詰めていくので。

でもって、改めてこの図を見なおして、自分が「パターン思考」であることがよく表れていると認識しました。

拙著『脳からみた自閉症 「障害と「個性」のあいだ』(ブルーバックス)で取り上げているテンプル・グランディン博士は、ご自身が自閉症であることを「個性」と捉えている方ですが、動物学者であり、家畜施設の細かい設計図を描くことが得意とのこと。いくつか著作があり、和訳もされていますが、『自閉症の脳を読み解く―どのように考え、感じているのか』(NHK出版)という著書の中に出てくるのが、「3種類の思考様式」という仮説です。

一般的には、「言語優位な思考」と、それに対比される「視覚優位な思考」の2つに分類されると見なされることが多いかもしれませんが、グランディン博士はそれに加えて「パターン優位な思考」を挙げています。私自身、この本を読むまでは、なんてったってビジュアル系、つまり「視覚優位」だと思っていたのですが(←ここ、クスっと笑うところです、念のため)、一度見た絵画の記憶はしっかり残っていても、自分で描く方はまったく駄目で、組織学のスケッチは大の苦手でした。したがって感覚的には繊細でも、出力系が悪いためであろうと長らく思っていたのですが、そうではなくて、全体(視覚映像)の中に「パターン」を見出すことが得意、パターンとして記憶するという脳の使い方なのだとわかりました。

そういう意味で言えば、「パターン」を見出したり記憶するのは視覚的な入力だけでなく、音楽や電車の音、音声言語などの音刺激もパターン化して記憶しているような気がします。

方眼ノートを使うようになったのは、大学院時代に実験ノートで方眼のものを使うようになったのが最初ですが、モレスキンに出会うまでは、セミナー等のノートを取るのは普通の罫線のものでした。モレスキンには、ブランク(無地)、罫線に加えて方眼のノートがあります。この方眼ノートを使うと、メモを取るときに棒グラフや折れ線グラフなどが描きやすいということに気づいてから、もっぱら、「すべての手描きメモ」を中型のモレスキン方眼ノートに記しています。

今回のようなプレゼンのアイディアも、きっと人によっては罫線で文字として記した方が合っている方もいるでしょうし、無地のノートに自由に描きたい方もいるでしょう。パターン思考の方なら、方眼がお勧めです♬ もしかしたら、そういう「個性」に合った異なる需要が知られていて、モレスキンのノートの種類が決まっていたのかもしれません。

いずれにせよ、それぞれの方の脳の個性に合ったメモの取り方に出会えると良いですね。

あ、ちなみに、方眼でハードカバーが好みです。(NO COI)
d0028322_22384119.jpg

【追記】モレスキンファンサイト管理人の方にツイートして頂きました♬ ファンとしてとてもうれしい^ ^

by osumi1128 | 2016-06-12 22:44 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その8):盛り込めなかった洞窟壁画の話

拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』のウラ話です。

セサミ・ストリートの新しいキャラクターとして「ジュリア」という名前の女の子が登場したことをご存知の方はどのくらいいるでしょうか? このジュリアは自閉症という設定になっています。


拙著第1章では、自閉症スペクトラム障害の特徴を表すのに、このジュリアの話を使いました。ジュリアはちょっと「普通」とは異なるところがあって、一つのことに夢中になったり、問いかけられてオウム返しで答えたり、大きな音が苦手だったり、という様子が描かれています。また、ジュリアの方がお友達のアビーよりも、たくさんの歌を知っているというような側面もあります。

「発達障害」というカテゴリーの中には、典型的な「カナー型」の自閉症だけでなく、「アスペルガー症候群」や「サヴァン症候群」も含まれます。1988年に公開された映画『レインマン』の主人公の兄レイモンドは、キム・ピークという実在のモデルをもとにサヴァン症候群として描かれています。床に散らばったマッチの数を瞬時に読み取れたり、数年後の何月何日は何曜日かを言い当てられたりという特異な才能があります。

本当は本書の中で他にも取り上げたい事例がありました。それは、必ずしも発達障害という意味ではなく、優れた視覚記憶を持つアーティストのことでした。例えば、スティーブン・ウィルシャーという方は、ヘリコプターで上空から20分ほど眺めた街の様子を緻密な絵として再現することで知られています。例えば、東京の街はこちらのブログに引用されています。他にもパトリック・ヴェールという方、あるいは、色鉛筆だけで極めて写実的な絵を描く方なども。こちらの動画では水の入ったガラスのコップを描いているのですが、なぜか底の方から、しかも上下反対向きに描いていくのです……。「地図では北半球は上」というような刷り込みの無い頭の使い方をしているとしか思えません。

実は、数年前に読んだ書籍『喪失と獲得―進化心理学から見た心と体』には、人類最古の壁画についてのユニークな解釈がありました。3万2000年前のものとされるフランス南部のショーヴェの洞窟には様々な動物の絵が描かれていますが(画像はWikipediaより引用)、それはきわめて写実的で今にも動き出しそうに見えます。そんな優れた絵が描けたのは、ごく特殊な専門家というよりも、もしかしたら当時のクロマニヨン人にはそれが「普通」だったのではないか、という解釈です。人類がまだ文字も持たず、もしかしたら言葉も未発達だった時代には、極めて写実的な絵が描けるのは、特殊な才能というよりも普遍的だったのではないか、人類が言葉を使うようになって、脳の使われ方が変わっていったのではないか、そのようなことが書かれていました。そして、言葉が話せない自閉症の女の子の描いた写実的な絵が取りあげられていたのでした。
d0028322_23100737.jpg
見たままのウマに「馬」という言葉でラベルを付けることは、視覚的な脳の使い方をせずに、テキストを記憶することになりますから、おそらく脳のメモリの使い方としては、相当にお得というか、省エネになっているように思います。そうすることによって、人類は、より抽象的な事象を扱えるような脳の使い方になっていったのでしょう。

本当は、こんな話題も本書の中に入れたかったのですが、ページ数制限のために断念したのでした……。




by osumi1128 | 2016-06-08 23:24 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その7):トヨクラタケルさんの原画を頂きました♬

過日、ブルーバックス編集部の山岸さんと、拙著執筆のきかっけとなった石井正先生(本学同僚かつ『石巻災害医療の全記録』の著者)と、拙著上梓の打ち上げを行いました。しかも、「重版出来!」が決まってのタイミング。有り難いことです。

しかも、なんとサプライズで、表紙のイラスト原画の額装をプレゼント頂きました!
d0028322_11555771.jpg
この作品は、トヨクラタケルさんというアーティストのもので(許可を得て掲載させて頂いています)、子どもはフェルトのアップリケ、紙のニューロンを繋ぐ突起は糸なのです! ブルーバックスではちょっとわかりにくいかもしれませんが、この画像で少し3Dの雰囲気、伝わるでしょうか?

来週、研究室に飾りたいと思います♬

ちなみに、多くの新書は表紙は一律のデザインですが、ブルーバックスさんは、それぞれ独自の表紙が作られます。文字のフォントなどもそれぞれ異なるのです。編集部の思いがこもっていると感じました。

トヨクラタケルさんのブログでのご紹介:脳からみた自閉症



by osumi1128 | 2016-06-04 12:03 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その6):毎日新聞書評欄

先週の読売新聞(岡ノ谷一夫先生)、週刊ダイヤモンド(佐藤優氏)に続き、今週は毎日新聞の書評欄に拙著が紹介されました。
d0028322_18232404.jpg
取り上げて下さったのは新聞社の方なのだと思います。「数年で山のような専門書を購入した」とありますが、確かに、地元の丸善さんでも、そのようなコーナーには多数の発達障害関連書籍がありました。残念ながら拙著は、まだ、脳科学のコーナーにも自閉症のコーナーにも置いて頂けていないので、もっとアピールしないといけませんね……。
d0028322_18331367.jpg
拙著は「こうすると良いですよ!」というような指南書ではないので、その意味でニーズに叶うものではないかもしれません。ただ、科学的な理解を進めることは必要だと信じて本書を執筆しました。

この書評では「……現場で繰り返し聞いた表現が<遺伝>と<愛情不足>であった。」と書かれてあり、それを読んで私も心が痛みました。

聞くところによると、米国大統領選に残っているトランプ氏が「自閉症ワクチン説」を唱えているとか……。本書でも触れていますが、「ワクチンにより自閉症が発症する」という話が出回ったのは、ウェイクフィールドの捏造論文の為でもあります。詳しくは、黒木登志夫先生の『研究不正』(中公新書)に詳しく書かれていますので、ご参考まで。



by osumi1128 | 2016-05-29 18:38 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その5):岡ノ谷さんの書評@読売新聞

上海で仕事があって日曜日から2泊3日、実質1日の滞在でした。exciteブログにアクセスできない、ついでに言えば、TwitterもFacebookもDropboxもアクセスできない環境にいて、「ここは中国なんだ……」と実感しました。行きは仙台からの直行便で3時間、帰りは成田経由になってしまったので、半日がかり……。往路のチャイナエアよりも、復路のアナさんの方が日本的なおもてなしを受けられますが(しかもB787だったし)、便利さから言えば、やっぱり直行便ですね。ただし、日曜日と水曜日のみの運行なのです。(この出張のことは、別エントリーにします)

で、日曜日の読売新聞の書評欄、キンカチョウの歌学習や、ハダカデバネズミの社会性などの研究で著名な岡ノ谷一夫先生が、拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』を取り上げて下さいました! 岡ノ谷先生、ありがとうございます♫ 一部引用させて頂きます。
◯英語のDevelopmentは遺伝子が体を形成する過程である「発生」の意味も含む。これを「発達」と略して訳したのが誤解を招いている。
◯自閉症者と健常者の違いは症状の量的な差だけであり、本来は連続している。
まさに強調したいところを的確に捉えて下さいました。

岡ノ谷先生の書評のおかげで超プチクラウドファンディングに弾みがつくかも?
d0028322_23455523.jpg

by osumi1128 | 2016-05-24 23:56 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その4):誤植発見!><

緊急!

すみません、拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」あいだ』に誤植を発見しました……(正確には、読者の方からのご指摘)。

209 ページ 図5-16 右グラフの上「女性だけのゲノムデータ」は、男性だけの・・」の間違いです。

謹んでお詫びして訂正致します。出版社には連絡し、Kindle版などから訂正してもらいます。

どうぞ、他にも気づいた方がおられましたら、ご連絡下さい。

【追記】
編集の方からのお話によれば、Kindle版に反映されるのには、しばらくかかる模様です……。というのは、電子書籍が紙の書籍と同じでない、ということが問題となるとのこと。そのために必要な手続きがあるとのことでした。

【追記2】
第2刷にて誤植の訂正を行いました。
表3−1脳画像技術
「トボグラフィー」(濁点)を「トポグラフィー」に
対応する本文p121の「光トポグラフィ」も「光トポグラフィー」に

表5−2コドン表
左のカラムの「メチオニン」の段の修正

図5−16
右側のグラフの上の説明が「女性だけの・・・」から「男性だけの・・・」へ

【追記3】
おかげ様で3刷になりました!

【追記4】
図4−4の説明の間違い(未修正)
上:プレパルス抑制が働かないマウス(上のグラフ)と正常なマウス(下のグラフ)

上:驚愕音を聞かせるとびっくり反応が起きるが(左)、驚愕音の少し前にプレパルス音を聞かせると、そのびっくり反応が減弱する(右)。このことをプレパルス抑制(PPI)と呼ぶ。

by osumi1128 | 2016-05-11 13:26 | 自閉症 | Comments(0)

拙著あとがきのあと(その3):超プチクラウドファンディング

実は本書『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』(ブルーバックス)を出すことになったとき、密かに決めていたことがありました。それは、印税を研究費にするということです。

「直接、講談社さんから委任経理金として大学に収めて頂けないでしょうか?」
「(東日本大)震災後、そのようなお申し出もあるのですが、なかなか難しいのですよね……。お気持ちはわかるのですが……」
ということで、印税にかかる税金分が無駄になる(寄付に使えなくなる)のですが、自分で立替えて「自閉症研究助成金」という名目の委任経理金を立てることにしました。

つまり、一種のクラウドファンディングです。

研究を行うために文部科学省等の研究費を頂いていますが、例えば前年度の1月〜3月のマウス飼育費は、今年度採択された研究費で支払うことはできません。研究は継続的なものなのにも関わらず。このあたりは、たぶん他国ではもっと合理的な判断がされていると思います。上記のような費用は、運営費交付金で支払うことになりますが、これは現在、光熱水料やコラボスペース使用料でほぼ消えてしまいます……。したがって、年度を跨いでも使用できる財源が必要という事情もあります。

それよりも、本書の中でも触れましたが、米国などではいわゆる患者団体が直接、研究費を支援しているので、患者さんやそのご家族と研究者の関係は、日本よりもずっと近い距離にあります。今回の「超プチクラウドファンディング」は、同様の「エンドツーエンド」な繋がりになると考えています。

本を買って頂いた方(Kindle版含む)には、私たちの研究を助けて頂いているのだと思って、そうやって多数の方々に支えられているつもりで頑張ります!

【追記】
「自閉症研究助成金」としてのご寄付を受け付けるために、申込書を研究室HPからダウンロードできるようにしました。トップページの左カラムのバナーをクリックすると該当ページにリンクします。

これまでに頂いた書評(Amazon以外):
歴史は必ず進歩する! 医師・松永正訓のブログ:脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ (ブルーバックス) 大隅 典子
ブクレコ:山家先生より

by osumi1128 | 2016-05-08 09:40 | 自閉症 | Comments(0)