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東北大学知のフォーラム脳科学<技>無事終了とLichtman先生のこと

2年以上前から準備を始めたTohoku Forum for Creativity (TFC), Frontiers of Brain Science, Tools & Technologiesが今週月曜日に無事に終了しました。その後、引き続き第38回日本神経科学大会が神戸で開かれており、TFCのメインゲストのProf. Jeff Lichtmanをエスコートしつつ移動。アテンダント役を慶應大学の芝田さんにバトンタッチしてほっとしました。
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Lichtman(発音はリクトマンのように聞こえます)先生は、セントルイスのワシントン大学でMD/PhDを取得され、神経筋結合部のシナプス形成についての研究を展開。2004年に、Joshua Sanes先生とともにハーバード大学に移られた頃から、いわゆる「コネクトミクスconnectomics」を立上げ始められました。
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簡単に言うと、nmの分解能がある電子顕微鏡を用いて徹底的に細胞同士の繋がり(connection)、つまりシナプス形成を観察しよう、というアプローチなのですが、そのための連続超薄切片作製装置や撮影装置の開発、撮像された二次元画像からそれぞれの細胞の繋がりを手作業かつ人海戦術で色分けしていく、など、前人未到の世界を展開されています。

興味のある方はぜひ、こちらのTEDの動画を御覧ください。
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さて、アテンダントの役得として、仙台から神戸までの飛行機ではずっとお話をさせて頂きました。その中で「多くの神経科学者は、脳がどのようにして構築されるのか、発生発達現象にあまり興味を持たないが、実は哺乳類の神経機能発露にとって大事なのは、遺伝的に決められているプログラムよりも、活動は経験によって決まっていく神経結合である」という自説を展開されていました。これは、発生生物学出身の私にとっては、まさに膝を打つお話でした。

「昆虫などは、それぞれの生態系に合わせた神経プログラムがインストールされていて、個体ごとのバリエーションは限りなく少ない。でも、哺乳類は、決まっている部分よりも、後から経験によって変わりうる部分の方が圧倒的に大きい。ヒトはその最たるもの」とも言われていました。ちょうどまさに「個性の脳科学」についてどんな風に展開したら良いかと考えているところでしたので、非常に参考になるお話でした。

これまで、生命科学や医学は集団ごとの平均値にばかり注目しており、そのばらつきは「無い方が良いもの」と捉えてきたと思います。そのこと自体はもちろん大切なのですが、「はずれ値」に注目するような科学は成り立たないのかと思うのです。そうでなければ「天才の脳はどのように使われているのか、それはどのようにして出来上がってきたのか」などを理解することは不可能でしょう。あるいは「一回性」の科学は、科学になるためにはどうしたら良いのかと考えています。

知のフォーラム8月のテーマは「Development & Disease」です。脳の発生発達、進化、そして自閉症などの発達障害を扱います。ポスター発表や参加登録を受付中です!
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by osumi1128 | 2015-07-30 21:22 | サイエンス | Comments(0)

東北大学知のフォーラム脳科学:サテライト・シンポジウム@神経科学大会のお知らせ

連休明けにはいよいよ東北大学知のフォーラム「脳科学の最前線」の7月イベントが谷本拓先生と松井広先生のオーガナイズにより開始します。21日からまずは顕微鏡関係5社によるデモ機を使った技術講習会です。初日はハーバード大学の水谷治央さんの講義の他、顕微鏡会社さんによるセミナーを行い、夕方からは6号館アトリウムにて懇親会です。土曜日25日から場所を片平に移して国際シンポジウム。Jeff Lichtman先生、Valentin Nagerl先生、重本隆一先生などをはじめとする多用な技術のエキスパートにより、講演を頂きます。登録されていない飛び込みの方も歓迎します(参加者多数の場合には、知の館1階ラウンジモニターで視聴できるようにします)。25日の懇親会も参加を受け付けます。

続いて、神経科学大会初日の28日の夕方に神戸国際会議場5階において、以下のようなサテライト・シンポジウムが開催されます。参加費無料、軽食付。学会本体に参加されない方含め、どなたでも参加できます。是非お立ち寄り下さい!
(下記、ポスター・チラシデザインは有賀雅奈さんです)
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日本神経科学大会サテライトシンポジウム
「Neuroimaging and its impact on our lives」 のご案内

初夏の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。この度、第38回日本神経科学大会の公式サテライト行事として、ヒトの脳機能・分子イメージング領域の最前線で活躍する研究者を招き、「Neuroimaging and its impact on our lives」を開催することとなりました。
脳機能イメージングはポジトロン放出断層法(PET)や機能的核磁気共鳴画像(fMRI)、近赤外線分光計(NIRS)などの多様な手法を用いて研究が推進されてきました。その後、分子イメージングとして確立され、種々の神経精神疾患の臨床評価、認知症の早期診断・発症予測への貢献が期待されています。
下記のように、国内外で注目すべき成果を上げている研究者をシンポジストとして招くことができました。特に、Steven Laureys博士のグループは、重度の脳障害により昏睡や遅延性意識障害に陥った患者の痕跡的な精神活動を外部から評価し、回復をサポートするための方法を一貫して研究しており、世界的な第一人者として認知されています。Laureys氏の研究は多大な社会的インパクトを与え、バチカンのローマ教皇庁やTED Paris、TED Brussel等でも講演を行っていますが、日本で講演を聴く機会はほとんどありませんでした。また、岡村信行博士・田代学博士らのグループは、Alzheimer病患者の脳内に蓄積するタウタンパクを特異的に画像化するPET薬剤の開発及び臨床試験に成功し、その研究は世界的に注目されています。
東北大学の連続シンポジウム「Frontiers of Brain Science」の企画として開催される本サテライトシンポジウムを一つの場として、将来の脳科学の発展およびその社会的意義を見据えつつ、基礎研究者と臨床系研究者がそれぞれの立場から議論を交わす良き機会となれば幸いです。また、学部生や大学院生の参加も歓迎いたします。人間存在や哲学にも迫りうるこの新しい学際的環境の中で、若い感性からの率直な発言をぜひとも期待しております。奮ってご参加下さい。

平成27年6月吉日

Frontiers of Brain Scienceシンポジウム 総合オーガナイザー
東北大学大学院医学系研究科・教授 大隅典子
東北大学大学院生命科学研究科・教授 飯島敏夫


日時: 2015年7月28日(火) 18:30-21:30 (20:30より情報交換会。軽食を用意しております。)
会場: 神戸国際会議場 501室

シンポジスト:
田代 学 (東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)
岡村信行 (東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野)
Steven Laureys (リエジュ大学、ベルギー)

by osumi1128 | 2015-07-19 17:21 | サイエンス | Comments(0)

90分で脳の発生を概説してみた

とある取材のために、脳の発生について90分で語ってみました。相手の方、二名は、いわゆる「文系」で、高校の生物学もあまり印象に残っていない、というリテラシーレベル。パワポ無しでバランス良く話せるか、やっつけ勝負だったのですが、案外上手くいきました。というよりも、パワポに頼らず板書(実際にはホワイトボードにマーカー3色で図を描きながら)での説明だったことが功を奏した気がします。普段の授業では、総説から引用した模式図などを多用していますが、「時間が足りない!」と思っていたのは、実はエッセンスではないことまで盛り込み過ぎだったのかもしれないと気付かされました。話しながら、絵を描きながらの説明は、聴く側の理解のスピードとも合うのでしょう。来年の発生学の講義では今年よりもさらに板書を増やしても良いと思いました。正確に言えば、脳の発生について、そのエッセンスを語るには、質問を受けながらですと90分では少し足りませんでした。60分X2回分くらいがミニマムでしょうか……。135名相手の講義で、質問がほとんど無しだと60分に収まるかもしれませんが、できればインタラクティブにやりたいですね。
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by osumi1128 | 2015-07-08 21:44 | サイエンス | Comments(0)

カヴァー・アーティクル

3月末に受理された大学院生が筆頭著者の論文が、このたび2015年7月号の表紙を飾りました。Journal of Anatomyという1867年に創刊された伝統ある雑誌で、解剖学・形態学に関する20誌の中の5位という位置づけです(Wikipediaによる)。内容は、これまで眼鼻の発生、脳の発生の鍵因子とされてきたPax6という名前の転写制御因子が、なんと精巣の中でも発現し、興味深い局在パターンを示すというものです。
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精巣の中では日々、精子が作られていますが、精巣でもやはり「幹細胞」というタネの細胞が存在していて、それを元にして「減数分裂」という特殊な細胞分裂により、遺伝子のセットを一揃えだけ備えた生殖細胞、すなわち精子の細胞が生まれます。遺伝情報が書き込まれている染色体を百科事典に例えると、ヒトの普通の細胞は、核と呼ばれる構造の中に、全23巻の百科事典を父方、母方から受け継いで2セット持っています。23巻の最後の1巻は特別で、Xという巻とYという巻があります。女性はお父さん由来とお母さん由来の2つのXという巻をもらい、男性はお母さんから受け継ぐXの巻と、お祖父さん、お父さんと男性にのみ受け継がれるYの巻を持っています。生殖細胞ではこの百科事典が1セットになります。このときに、お父さん由来、もしくはお母さん由来の1セットをそのまま受け継ぐのではなく、第1巻はお父さん由来、第2巻はお母さん由来、と異なる組み合わせのセットになって受け継ぎます。なので、同じお父さん、お母さんから生まれる子どもでも、もともとのお祖父さんのもの、お祖母さんのものがランダムに混ざるので、異なる百科事典のセットを受け継ぐことになります。

このような百科事典の受継ぎが起きるのが減数分裂という現象です。生殖細胞が作られる間、実は同じ巻の百科事典がいったん集められ、部分的にお父さん由来の部分とお母さん由来の部分が混ざった巻が新たに作られます(専門用語で言うならば、染色体の対合、交叉、組換えが生じます)。したがって、生殖細胞に持ち込まれる百科事典のバリエーションは途方も無い数になります。いわば、減数分裂という現象は、単に百科事典のセットを1つずつに分けて細胞に分配するだけでなく、有性生殖により卵子と精子が受精して2セットの遺伝情報を受け取る際の多様性を増す仕組みでもあります。

さて、学生K君が発見したのは、精巣の中のタネの細胞(精祖細胞もしくは精原細胞)や精母細胞において、これまで報告されていないPax6の局在と、精子形成過程における、そのダイナミックな変化でした。とくに、精母細胞のXY体と呼ばれる特殊な構造が形成される時期にPax6の非常に集積し、その段階から約24時間後には排除されて核全体に分布するという、非常に興味深い現象を見出しました。減数分裂の間に同じ号の百科事典が集められますが、Xという巻に比べてYという巻はとても薄い(すなわち、X染色体に比して、Y染色体はとても小さい)ので、かなり特殊なことが生じていると考えられています。例えば、これらの百科事典から情報が読み出されないように、特殊なタンパク質で回りを囲んでロックしてしまうような仕組みがあります(meiotic specific chromosome inactivation; MSCI)。ただし、百科事典のXの巻に記載されている「精子形成に必要な情報」のところだけは読み出しできるような機構もあります。XY体に集積したPax6がその間にいったい何をしているのか、大きな興味がわきます。(下の画像は、論文より転載。左よりステージI-III, V, VIII, X, XIIにおけるマゼンタがPax6タンパク質の局在を、緑は染色体対合に関わるタンパク質を示していますが、非特異的な染色が精細管周囲に見られます)
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今回の論文では「Pax6の機能」については解析せずに、まず「現象の観察」を報告しました。それは、機能解析のためには、いろいろな仕込みの実験をする必要があり、それにはとても時間がかかるからです。学生さんの学位取得を考えて、このタイミングでまず論文化するという作戦でした。また、そもそも脳の発生発達をメインに研究している私たちの研究室で精巣を研究したかというと、父親から次世代の脳の発生発達やその結果としての行動に及ぼされる影響について知りたいと思ったからです。Pax6について説明されていたweb上の情報では「精巣におけるPax6の発現はほとんど無い」ことになっていたのですが、Pax6遺伝子が傷ついた変異マウスの父に由来する仔マウスにおいて行動異常が見られたことから、「やっぱり自分の目で確かめた方が良いのでは?」ということから始まったプロジェクトでした。現在、今までの研究人生で、もっとも仕込みの長い研究をしています。Pax6とX染色体という手がかりの先に、本質的に重要な事象が隠されていると感じています。

  1. Ryuichi Kimura,
  2. Kaichi Yoshizaki and
  3. Noriko Osumi*

Article first published online: 1 JUN 2015

DOI: 10.1111/joa.12318


by osumi1128 | 2015-07-01 08:30 | サイエンス | Comments(0)

黒木先生によるiPS細胞解説本

今年の4月25日付で上梓された『iPS細胞 不可能を可能にした細胞』を、著者である黒木登志夫先生からご恵贈頂きました。黒木先生にとっては中公新書シリーズ科学バージョン第三弾です。他にも『知的文章とプレゼンテーションー日本語の場合、英語の場合』などもありますが。
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私にとっては、『科学者のための英文手紙の書き方』(朝倉書店)が黒木先生と最初の出会いであり、本当に何度も読み返しました。癌研究の権威であることはその後に知ることになり、また、実は東北大学医学部のご卒業であるということを知ったのは、不束かなことに、岐阜大学の学長をされるようになった頃からだったかもしれません。この当時のことも、『落下傘学長奮闘記』(中公新書ラクレ)にユーモア溢れる筆致で書かれています。

さて、iPS細胞に関する書籍は多数出ていますが、黒木先生の新書はきわめてわかりやすい。それは、「知的文章」に対する持って生まれたセンスと努力や、いくつかの挿絵まで描かれる才能に加え、先生ご自身が長く癌の研究者として活躍されただけでなく、学長や日本学術振興会顧問など、大所高所から広く科学分野を見渡すご経験を積まれていることも少なからぬ影響があると拝察します。

本書では、後半のiPS細胞を用いた応用について(第七章 シャーレの中に組織を作る、第八章 シャーレの中に病気を作る、第九章 幹細胞で病気を治す)の部分も2014年頃までの最先端の研究について触れてあり、もっともアップデートされていますが、私自身はむしろ前半部分、第一章の「からだのルーツ、幹細胞」や第二章「iPS細胞に至るルート」の部分が、再度、生物とは、人間とは、ということを考える上で読み応えがありました。もちろん、明日から始まる今年の医学部二年生相手の「発生学」の講義でも、参考書籍として紹介するつもりです。幹細胞研究に関係した研究不正についても触れられています。

山中伸弥さんご自身が序文を書かれ、オビには顔写真まで載っているのは、山中さんも黒木先生の『がん遺伝子の発見』(中公新書)を読んで得た感動を大事に思っていたからでしょう。以下、引用します。

1996年、私は三年間のアメリカ留学を終え、日本での研究を再開しました。しかし、さまざまな困難の連続で、研究に対する情熱を失いそうになっていました。そんな時、一冊の本が、科学に対する情熱を甦らせてくれました。本屋で偶然に見つけたその本を、私は何度も何度も読み返しました。務めていた大学に、その本の著者の先生が講義で来られた時、勇気を出してサインをして頂きました。私にとって障害忘れることのできないその本とは中公新書の『がん遺伝子の発見』、著者は本書を書かれた黒木登志夫先生です。(山中さんの序文より)

どんな分野であれ、生涯の間にそういう本や、そういう論文が書けたら素敵なことだと思います。頂いたサインを見返して精進します。
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【iPS細胞に関連して】
週刊ダイヤモンド5/30号が出ました! ちょうど上記と関連した話題がコラムの4回めとして掲載されています。



by osumi1128 | 2015-05-24 23:19 | サイエンス | Comments(0)

第88回内分泌学会学術総会シンポジウムほか

昨日は第88回内分泌学会学術総会シンポジウムの座長と特別ランチョンセミナー講演にお呼ばれ頂きました。会長の伊藤裕先生@慶応大学医学部の熱い思いが随所に溢れ、ユニークな企画が満載の学会でした。

その特別シンポジウムは「現代科学における異脳たち」という副題が付いていて、以下の方々がご登壇。
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阪大の浅田先生のマシンガントークに始まり、ユーザ・インターフェース開発の五十嵐先生の開発アプリケーションのデモも面白く、東大に戻られた上田泰己さんのマウス脳や全身まるごと透明化のお話は、今後の展開がとても楽しみ。トリを務められた川渕先生は医療経済学のお立場からのご講演。拙い座長は後半2題の演者ご紹介をさせて頂き、シメはフロアにいらっしゃった井村裕夫先生を見つけて、こちらからご指名してまとめ的なご発言を頂くことができました。

浅田稔先生@阪大
五十嵐健夫先生@東大
上田泰己先生@東大
川渕孝一@東京医科歯科大

研究には、メカニズムの理解のための「Why」の研究と、応用のための「How」の研究があると思います。五十嵐先生の研究は、「どうやったら種々のインターフェースの使い勝手を良く出来るか?」という目的を持つ、典型的な「How」の研究だと思います。上田先生も、最終的には「生物の中でなぜ<時間>に応じた現象が生じるのか?」という「Why」の研究を目指していると思いますが、今回のご紹介の中心は、昨年2本のCell誌論文として出された「組織をまるごと透明化」する技術についてだったので、どちらかというと「How」が中心。浅田先生の広範なお話には、ロボカップのように「どうやったらFIFAで人間チームに勝てるロボットを創れるか?」や、そのために「ロボットに自主学習させるにはどうしたらよいか?」という「How」のプロジェクトと、そのことによって、「なぜ子どもは自然に学習できるのか?」というような「Why」のテーマも含まれているように思いました。

現在、自閉症の病態発症の分子レベルの理解を多面的なアプローチで進めようとしているところであり、浅田先生の研究プロジェクトの中で、胎児の動きをシミュレーションしていたものに興味をそそられました。自閉症研究というとすぐに「社会性」という話になりますが、感覚運動系の連合具合などはもっと注目されて良い神経基盤なのではないかと考えます。




by osumi1128 | 2015-04-25 12:44 | サイエンス | Comments(0)

研究室の1コマ:顕微鏡とスマホ

良い解析方法を確立して、かけた時間に比例するデータが出るフェーズに入った学生さん。コンフォーカル顕微鏡でZスタックかけて1枚の画像を得るのに6分かかる。それを何十枚もひたすら繰り返すとのこと。ちょうど毎週の進捗状況報告ミーティングでそんな話になり……。


私:ところで、その6分の間、スマホとか見てないよね?ww
学生さん:(ギクッ)
助教さん:あれ? 電話かけたら繋がるよね……?ww
学生さん:あ、いや、そんなには……(ごにょごにょ)
私:どこかの大学で、授業中にスマホをいじなかったらポイントがたまる、というアプリを利用しているって聞いたことがあるけど……。
講師さん:共通機器室に行くときにスマホを大隅先生のところに置いていって、触らなかったご褒美に先生からコーヒーチケット出すっていうのはどう?
学生さん;それは嬉しいですが(笑)……いえ、そんなことをしなくても、大丈夫ですっ!
(あくまでブログネタとお考え下さいww)


私が大学院生の頃は、まだ顕微鏡撮影はディジタル化されていませんでした。暗室で蛍光顕微鏡のフィルム撮影をするのに、何種類か露光時間を変えて、長いときには10分以上、息を潜めていたことを思い出します。その間、暗い中でいろいろなことを考えました。うまく撮影できているかな、このデータの次には何を撮ろうかな……など。


19世紀の解剖学者のカハールは、生涯に260本もの論文(ほとんど単著)を書いた方ですが、当時は写真として撮影するのではなく、標本を単眼の光学顕微鏡で見ながらスケッチしたものを図として添えていました。カハールは美しい顕微鏡スケッチを何枚も描きながら、神経組織の成り立ちに思いを馳せていたことでしょう。そのときに考えたことが、そのまま論文のテキストにもなったかもしれません。


スマホは便利な道具です。私の生活は、もはやスマホ無しでは成り立ちません。スケジュール確認もすぐできないし、乗換えを調べることもできません。地図アプリを便りに訪問先までアクセスするのは日常的。Googleさんに問いかければ何でも教えてくれるし、Facebookにアクセスすれば、友人の今日の様子を垣間見ることができます。


でもきっと、スマホが利用できない、利用しない時間も大事にしなければならないのでしょうね。一日は誰にとっても24時間しかないので。




by osumi1128 | 2015-03-27 22:23 | サイエンス | Comments(0)

江戸時代の木製顕微鏡から最先端イメージングまで:GTCカバーアートより

先のエントリーで国立科学博物館(かはく)の企画展のことを取り上げましたが、関連情報をクリップしておきます。

インターネットミュージアム:

国産顕微鏡100年展 ~世界一に向けた国産顕微鏡のあゆみ~

江戸時代の木製顕微鏡は、間近で見ると本当に丁寧な細工がしてあって素敵だなと思っていたのですが……。
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それが使われていたカバーアートを思い出しました(正確には、本日参加していた研究発表会でリマインドされましたww)。日本分子生物学会のオフィシャル・ジャーナルであるGenes to Cellsの2014年12月号の表紙がこちら。
表紙:透明化試薬で目指す『続・解体新書』?
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こちらのカバーアートでは、杉田玄白先生の前に顕微鏡が置かれていますが、実は最先端の「透明化」技術の論文の内容がデザインされているのです。4匹のネズミのうち2匹が透明化されていて、その試薬が酒瓶のような器の中に入っています。玄白先生の衣装には透明化試薬の化学式(亀の子ですね)が描かれていたのには、指摘されるまで気づきませんでした!

論文はこちら。
Susaki EA et al., Cell, 2014

Whole-Brain Imaging with Single-Cell Resolution Using Chemical Cocktails and Computational Analysis


by osumi1128 | 2015-03-24 19:00 | サイエンス | Comments(0)

大アマゾン展&国産顕微鏡100年展@国立科学博物館

学会2つ(神経発生討論会@九大と解剖・生理合同大会@神戸)をハシゴして仙台に戻る前にも一つ東京で研究発表聞きますが(インプット過多は体に良くない……><)、その話の前に、先日、見てきた国立科学博物館の特別展と企画展のご紹介。

国立科学博物館(愛称:かはく)の評議員を仰せつかっているため、過日の会議の後に現在開催中の展示を拝見する機会を得ました。

大アマゾン展(特別展)
アマゾンに生息する種々の生き物の剥製、標本やビデオなどが展示されています。
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中には、水槽にリアルなお魚たちも……。
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生き物系のみならず、文化的な展示もあり。
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こちらは、酋長の飾り。アマゾンの派手な鳥の羽毛を活かした芸術品ですね。
思ったよりも女性の来場者が多い印象でした。
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圧巻だったのは、最後の方にある4Kの巨大モニタでのビデオ上映。たしか10分くらいかかるものでしたが、見応えたっぷり。4Kは凄いですね! 女優さんには辛いでしょうが(苦笑)、自然界の生き物や風景を鑑賞していると、そのリアルさ、というより、もしかすると、リアルよりも多い情報に圧倒されます……。
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公式サポーターは「さかなクン」です(笑)。とある場所で、さかなクンと2ショットも撮影できます!?
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とても、とてもお勧めです! 6月14日までです。

国産顕微鏡100年展(企画展)〜世界一に向けた国産顕微鏡のあゆみ〜

もう一つは、ちょっとマニアックかもしれませんが、昨年のノーベル化学賞が「超解像顕微鏡」であったこともあり、顕微鏡の常設展に加えての企画展が開催中。

かはくの建物は昭和初期くらいでしょうか、重厚で木の彫刻やステンドグラスが素敵なのですが、シンメトリーな建物中央の吹き抜けを活かして、初めての国産顕微鏡の拡大模型がどーんと展示されていました。
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古い木製の顕微鏡などの展示も常設部分にあります。自分が使ったことのある国産顕微鏡も展示されていて、懐かしく思いました。

それから、現在「地球館」がリニューアル工事中であるために、なんと皆さん大好きな恐竜の骨の展示などは、普段の場所から移して展示されており、むしろ近くで見られるというお得感!(笑)。
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最後は、外の鯨の大きな模型を眺めて下さいね〜♬ 記念撮影スポットでもあります。
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かはくはボランティアさんも活躍しています。広報誌は「milsil(ミルシル)」という名前。PDFは下記から落とせます。

Facebookページもあるので、是非フォローを♬(ちょうど表紙画像がクジラですね)

by osumi1128 | 2015-03-23 22:38 | サイエンス | Comments(0)

岡部繁雄先生のセミナー:「観察」は科学の基本

医学系研究科共通機器室主催、ニコン仙台支店の共催により、東大の岡部繁雄先生のセミナーが開催されました。
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最新の顕微鏡技術として以下について、ご自身のシナプス(神経細胞の結合部)に関するデータを中心にしてご発表。
1. In vivo二光子顕微鏡
2. 透明化
3. 三次元電子顕微鏡
4. 超解像顕微鏡
「観察する」ことは科学の基本です。よく観ること、細かく観ること、違いを見出すこと、それが新しい発見に繋がります。そのために、人類はレンズを作って望遠鏡や光学顕微鏡を生み出し、細かい方向では電子顕微鏡を作りました。上記の新しいイメージング技術は、さらに新しい発見を生み出すことでしょう。To see is to believeです。

岡部先生は最後に1枚のスライドを示されて、新しい技術の創出がさらに新しい発見を生み出し、それが次のニーズを生み出すという循環になれば良いと話されました。
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ちょうど、昨年のノーベル化学賞が超解像顕微鏡技術に関するものでもあり、新しいイメージング技術は大きな注目を集めている分野です。研究科の共通機器室にもN-SIM/A1Rという超解像顕微鏡が整備され、やや遅れていた形態系機器も充実していくものと思われます。司会を務められた権田先生、大盛会のセミナーお疲れ様でした!
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by osumi1128 | 2015-02-24 17:27 | サイエンス | Comments(0)