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再び奈良女子大学に行ってきた:シンポジウム「理数教育における魅力の創造」に参加

前回は2015年の11月に講義のために伺ったのですが、奈良女子大学の理系女性教育開発共同機構Core of STEMという組織が主催するシンポジウム「理数教育における魅力の創造」の講演に呼ばれて、再び奈良へ。

学長、担当理事の先生もご出席の中、同プロジェクトに関わる吉田信也先生が3月に行ったシンポジウムの報告として、「なぜ、女子生徒は理数系の科目に魅力を感じないのか、ではどうすれば良いのか?」についての奈良女子大の取り組みについてお話になりました。

興味深いと思ったのは、国語、社会、数学、物理、化学、生物、地学の教科に対するイメージとして「情緒的である」という感じ方に関しての高校生徒で男女差が見られたこと。もちろん、国語に対しては男女ともに情緒的であると捉えている人数が多いのですが、数学や物理に対して男子生徒は「情緒的である」と捉えているのに対して、女子生徒はそうではない。

これは、男子生徒は数学や物理に対して「ロマン」を感じることができる、そのような先人のロールモデルの気持ちを共有したり、追体験できるということなのではないかと思いました。

ともあれ、女子が好まない物理に対して、もっと身近なところから導入する工夫ができるのではないか、ということで、そのような教材やテキストを作ろうとしているようです。例えば「光」を学ぶのに、日焼け止め、虹、ダイヤモンドの輝きなどの入り口が考えられるなど。

私の講演は「なぜ理系に進む女性は少ないのか?」という、訳本のタイトルと同じ題目で60分の時間を頂きました。過日のTEDxTohoku Universityのときは15分の持ち時間でしたが、60分あると、かなり多数の事例を挙げて話すことができます。小さいときからの「刷り込み」が女性の理系進学を阻むこと、「無意識のバイアス」に気づくことや、「意識を変えること」、「ネットワーキング」などの重要性などについて話しました。
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その後、東北大学サイエンス・エンジェルの2名もショートトークを行いました。
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環境科学研究科および理学研究科の女子大学院生です。

奈良女子大からも、学部生(なんと、一家4人のうちお父さん以外が奈良女関係とのこと)と大学院生が発表。
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参加者の中には、奈良女子大学附属高校の女子生徒さんも。
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終了後の懇親会では、さらに意見交換を。個人的には、女子大が女性のリーダー育成に果たす役割も大きいと思っています。
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by osumi1128 | 2017-04-16 22:39 | 科学技術政策 | Comments(0)

脳科学の未来:RIKEN脳科学総合研究センター20周年記念行事に参加した

理化学研究所脳科学総合研究センター(BSI)が設立20周年を迎えるにあたり、今年はいくつかの記念行事が開催されましたが、その最後となるシンポジウムの末席に登壇しました。会場内300名、ストリーミング配信での参加者450名とのこと。
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所用により、利根川先生のご講演の途中から聞かせて頂きましたが、1997年に初代所長の伊藤正男先生のご尽力により設立された通称「脳センター」は、この20年の間に世界的に認知される研究所になったと思います。画像は利根川先生の使われたスライドの一部ですが、世界の主要な脳科学の研究所と、その業績を研究室あたりの論文数として示しています。
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文字通りゼロからのスタートでここまで到達するのは、そんなに簡単なことではありません。著名な研究者をリクルートし、さらにリニューアルを繰り返して地位を向上させていくことには、大きな痛みも伴うものですし、研究者のみならず事務系の方々や広報室などのチームワークもきわめて重要と思います。同様に、少し遅れて作られた理研のCenter for Developmental Biology (CDB)も、その意味では大いに成功した例だと思います。

第二部では、米国からの帰国途中という山中伸弥先生をはじめ、6名の方の多様なご講演を楽しみました。とくに、高知工科大学の西條辰義先生のご講演は初めて伺うものでしたが、人間としての特徴は、相対性と社会性に加えて、近視性により資本主義と民主主義が進んだが、今後は「現在の自己に重きを置くバイアスを克服する自己制御メカニズム」が無いと、地球の将来は危ういというご指摘をされ、その面で脳科学は貢献できるのではないか、ということを話されました。もしかすると、ヒトは長谷川眞理子先生の言うところの「おばあさんシステム」によって進化できた面もあるので、「7代先の子孫」のことを考えることを、もっと習慣にできるのではないだろうか、などと考えながら拝聴しました。この課題は、もう少し吟味して、いつかまとまった文章にしたいと思います。

私自身、東北大学では医学系研究科附属創生応用医学研究センターの脳神経科学コアセンターや、国際共同大学院プログラムNeuro Globalの立ち上げなどに関わっているので、常に戒めようと思っていることですが、同じ分野の研究者同士が集まって「◯◯学は素晴らしい!」と自画自賛するだけでなく、どうやって社会の期待に答えていくか、より広い研究コミュニティの中でどのように認知され、さらに伍していくのかが問われていると考えられます。

ちなみに、講談社さんが書籍展示販売をして下さっていました。拙著『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』も好調な売れ具合で、ありがとうございました。私自身は理研BSI編集のブルーバックスを購入しました♬
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by osumi1128 | 2016-12-11 15:18 | 科学技術政策 | Comments(0)

久しぶりのサイエンスアゴラ参加

今年は文化の日から4日間で開催された、日本最大の科学コミュニケーション&アウトリーチ&アドボカシーイベントである「サイエンスアゴラ」に出展参加しました。

東北大学サイエンス・エンジェル(SA)企画:理系女子を増やすためには:東北大生が思うこと

3名のSAがそれぞれのテーマで、女子のための理系キャリアパスについて語り、来場者とも意見交換するという企画でした。ターゲットとして想定していた女子中高生の来場者は少なかったのですが、集まって下さった方々は問題意識の高い方々でしたので、議論は盛り上がっていました。
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なんと、理系女性研究者の草分けのお一人である坂東昌子先生がお立ち寄り下さいました。このあと放射能関係のご用事で渡米とのことでした。ありがとうございました。
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他に切羽詰まっていることがあり、たくさんのブースを覗いて回る心の余裕が無かったのが残念ですが、同じA会場の中で、目に止まった展示のご紹介。
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こちらは、子どものための科学の本を100冊展示されていたブース。福音館書店さんが一番多いようでした。
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これは、竹内昌治さん@東大生産研のERATOプロジェクトのブースの体験コーナー。子供たちがカラフルな砂粒のようなものを、切り抜いた細胞らしき台紙の上に貼り付けているところ。SAさんの今後の企画にも応用できるかも、と思ってφ(..)メモメモ えらく女子たちの食いつきが良いようです。

SIPやImPACTなどの国プロの展示や企業からの出展も増え、ますます大きくなっているアゴラ、今後はどういう方向に向かうのでしょうね。個人的には、このサイズでなくても良いので、もっと地方開催してほしいと思います。全国の3〜4ブロックを毎年巡回するなど。

また、科学や技術に興味のある子どもたちを、どのように進学やキャリアに導いていくかについては、単に楽しい実験コーナーを設けるだけでは駄目だと思います。

ともあれ、久しぶりにお目にかかれた方などもあり、また、今回は前日に開催されたSAOGの同窓会にも参加できてネットワーキングできました。SAはこの10年ですでに200名の方々が輩出されています。交流がうまく続けば大きな力になりますね。

by osumi1128 | 2016-11-06 23:54 | 科学技術政策 | Comments(0)

神経科学分野における日中韓の連携

韓国の神経科学学会Korean Society for Brain & Neural Science (KSBNS)にご招待を受けてソウルに行ってきました。といっても、会場はソウル郊外のKINTEXという新しいコンベンションセンターで、隣接のホテルに前泊し、朝から夕方まで一日のみの参加で、またもや韓国料理をほとんど食べる機会が無く……。仙台から直行便で2時間という距離感も、なんとなくパスポートを忘れそうになるくらいの近さです。

登壇したセッションはChina-Japan-Korea Joint Colloquiumという枠で、それぞれの国の神経科学学会の会長が揃い踏みで座長をし、3時間の間に各国2名ずつが発表するというもので、内容も多岐にわたるものでした。韓国の学会の会長であるBong-Kiun Kaang先生が冒頭で、今後この3国が世界の中で北米、欧州に次ぐ第三の拠点になるべきというスピーチをされました。

神経科学分野では、Society for Neuroscience(SfN、北米神経科学学会)が毎年、3万人規模の学会を開催し、日本からの参加者も1000名を超えています。欧州にはFederation of European Neuroscience (FENS、欧州神経科学連合)の開催する学会が隔年で開催され、こちらの参加者はたぶん5000人程度だったかと思います。日本は毎年開催される神経科学大会の学会員が5500名程度、学会の参加者が3000人くらいです。韓国、中国と日本を合わせると学会員として12000人程度になるので、2年に一度、East Asia Neuroscience Meetingを開催してはどうか、ということを提案されていました。確かに、日本からSfNやFENSに参加するのは、旅費も時間もかかりますし、何しろ時差のあるところで戦わなければならないというのが不利な点です。これらの学会に替わる国際学会として日中韓の学会で済むなら、こんな有り難いことはありません。

しかしながら、いくつかの問題が実際にはあります。

まず一つ目は、現実問題として、日本の神経科学大会は5年先まで会場が押さえられていて、今から日中韓の国際学会を組み込むとなると2021年よりも先のことになるでしょう。仮に日中韓学会を2年に一度行うとして、日本に回ってくるのが6年に一度だとしても、かなり前もって予定しておく必要があります。

二つ目は、それぞれの学会の運営体制が非常に異なる可能性があり、それらが一緒になって行うというのは、かなりのエネルギーが必要だということがあります。日本の中でもいくつかの学会が合同大会を行うことがよくありますが、日本語で交渉することができてさえ、「合同大会は大変だ」という声はよく耳にします。

そして三つ目で、これがもっとも重要かもしれませんが、学会のレベルの問題です。日中韓の個々の学会が比較してどうか、ということは置いておくとして、日中韓学会がSfNに匹敵するレベルになるのであれば、遠くにいくより楽だし理想的ではあるのですが、現実にはそこまでにはならないように思われます。となると、どれだけの参加者となるのか、日本からの参加者を考えた場合には、国内学会にさらに「加えて」行くだけのメリットがあると思えるか、という点が問題になるでしょう。国内学会の「代わりに」行くという気軽さになれば別ですが、学生さんにとってはハードルが高いかもしれません。

いずれこのような日中韓問題は、どのような学会でも考えることが必要なのかもしれません。ただし、日本でどのくらいの人々がこういうポリティカルな問題を深く考えられるかというところも心配な点があります。例えば、Kaang先生はMolecular Brainという雑誌の創設編集者なのですが、この新興の雑誌を立派な国際誌に育て上げました。日本では、生命科学系のどの学会の雑誌も良い論文を集めるのに苦労している現状があります。研究以外のことに割かれる労力が多すぎるということが一番大きな問題だと思うのですが……。

ともあれ、塩野七生先生の『ギリシア人の物語』を読みながら、ギリシアの都市国家(ポリス)がペロポネソス同盟によってペルシアからの侵略を食い止めたことなどを頭の中で反芻しました。本日はローマの知人のところでセミナーです。
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画像は最後の集合写真(ただし、ご講演の後にすぐにサンフランシスコに向かった尾藤先生が入っていないのと、私の握手が逆向きだったのが……)。

by osumi1128 | 2016-09-30 14:58 | 科学技術政策 | Comments(0)

科学における創造性と使われる言語について

先月の『新潮45』の特集記事が「世界<日本化>計画」というもので興味深く読みました。かねてより我が国における英語教育については種々思うことがあります。
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特集の中の、科学ジャーナリストの松尾義之氏による「なぜ日本人は毎年ノーベル賞を取れるのか」という記事では、他のアジア諸国と異なり日本では「日本語=母語で科学や技術を勉強することができた」ためノーベル賞受賞者が非西洋諸国の中でもっとも多いということが主張されています。同様の内容は、言語生態学者の鈴木孝夫氏の論考「日本語と日本文化が世界を平和にする」の中にも登場します。

我が国では、江戸末期から西欧近代文明を取りれるため、幕府の蕃書調所(ばんしょしらべしょ)を中心として、西洋文明の言葉の意味を正確に理解した上で、もっとも適した「漢語」に翻訳されました。大学で細胞生物学などを教えるときに、クラスに中国人の留学生がいると、「<細胞>も<染色体>も、日本で作られた訳語ですよ」と伝えることがあります。彼らは中国での翻訳が先だと思っていることが多いのです。

さて、松尾氏の主張は、科学分野の勉強をする場合に、母語で深く学ぶことが可能であるために、オリジナリティのあるアイディアに繋がるのではないかということです。また、母語であるために、日本独特の感性と結びつきやすいことも、ユニークな発見をもたらすという側面もあります。つまり、科学における創造性に関して、自在に操れる母語を使うことが可能な日本は、独特の立ち位置にあるという訳です。

こちらについては、昨年3月に開催されたノーベル・プライズ・ダイアログ東京2015にパネリストとして参加したときのこと、田中耕一氏(つい「先生」と言ってしまうのですが、いつも「僕は<先生>ではありません」と否定されます……)が言われたことに近いものがあります。田中氏は「日本の<漫画>がユニークな発想に繋がる」と主張されています。

ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2015報告書

脳科学の観点からは、母語で論理的な思考が確立する前の段階からの英語教育にはメリットもディメリットもあると考えられます。二ヶ国語を操ることができるバイリンガルの人の脳を機能的脳イメージングにより調べると、「バイリンガルの人は脳の広い部分が活性化している」ことがわかります。これは、脳の多くの部分を使っていることになるので性能が良い、という捉え方もありますが、一方で「脳に負荷をかけている」ことでもあります。したがって、キャパの大きい人であればメリットが大きいかもしれませんが、キャパの小さい人にとっては過剰な負担になるかもしれません。

バイリンガルの人の脳については、例えば、こんな一般向けの記事も参考になるでしょう。
バイリンガルな人の「脳の構造」についての最新報告

もちろん、インターネット上では英語のコンテンツ方が日本語よりも圧倒的に多いので、英語を理解できることは非常に得であるという面はきわめて重要であると思います。とくに、日本から英語で発信する部分が圧倒的に足りていないので、このようなスキルを持った人材は必要と思います。ただ、国民のどれだけの人々がどのレベルで英語を習得することを目標にしているのか、単に義務教育における英語の授業を中学校から小学校に下ろしただけでは宜しくないと思うのです。逆に、国語=母語でしっかりロジックを教える、客観的な文章を理解し、書けるようにする教育は、もっと必要ではないでしょうか。

大学院教育の現場でも、英語化の波は押し寄せており、学会発表も英語で行うところが増えつつあります。先生方の中には「深い議論がしにくくなって、教育的な面から心配だ」という声も聞かれます。うちのラボでは以前よりオフィシャルなセミナー(論文紹介や進捗報告)は英語で行っているので、大学院生たちはたいへんだと思いますが、なるべく終了後に日本語でもフォローのディスカッションをするように心がけています。

結局のところ、言語であれ、科学であれ、教育は画一的で簡単な方法は無いと思った方が良いと思います。一人ひとり、相手に寄り添って、そのレベルや性格、向き不向きに合ったやり方を取るしか無いのでしょう。

【参考】
日本語の科学が世界を変える(松尾義之著、筑摩選書)


by osumi1128 | 2016-07-30 23:59 | 科学技術政策 | Comments(0)

兵庫医科大学にて研究倫理講演ほか

過日、兵庫医科大学に研究不正に関するファカルティ・ディベロップメント(FD)の講師として呼ばれて、「科学への愛と誇り:誠実な研究活動を進めるには?」というタイトルで講演をしてきました。

FDということは、全員参加的な義務感で皆さん来られていると思うので、なるべく柔らかい話や、自分ならどうするかを考えてもらうような構成を心がけました。そのときのスライドのうちの1枚がこちら。
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直接お声がけ頂いた池田啓子先生、ありがとうございました。セミナーの前に寄らせて頂いて、講師の菅原文昭先生の直近の研究成果として、円口類のヌタウナギの脳の領域化に関するお話を伺えたのも何よりでした。菅原先生がCDBの倉谷滋先生のところで行った研究で、近々Natureに掲載とのことです♬ 

倉谷研の大石博士らが飼育繁殖が難しかったヌタウナギの胚を得られるようにしたというのも大きなドラマですが(その成果としては、すでに2013年のNature誌に掲載)、菅原さんは高校教師を数年努められた後に、思うところあって神戸大学で博士号を取得して、倉谷研に参画したという方。つまり、ストレートに学部、修士、博士と進んだキャリアではないのです。

「超ローテクです」と菅原さんは謙遜されていましたが、とにかく貴重なヌタウナギの胚を用いて、どのような指標を見るのか、いつでも実験できるマウスのようなサンプルではないからこそ、よくよく考えて論文にするときの状態までイメージしてデータを得ていたのだなぁと良くわかりました。ますますのご活躍を!
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セミナー後には、学長先生、時期学長先生らも交えてお話させて頂きました。ありがとうございました。

by osumi1128 | 2016-02-06 22:05 | 科学技術政策 | Comments(0)

東北大学の女性研究者育成(まだまだ頑張らないとね……)

東北大学は開学の理念として「門戸開放」「研究第一」「実学尊重」を掲げ、1913年に日本で初めて、女子学生の入学を受け入れた……という台詞はスラスラと出てくるのですが、直近の女性研究者比率は頭打ちです。
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一番の理由は、東北大学は全体の80%くらいの教員がいわゆる「理系」であるため、「理系女子」の比率が変わらないことには、なかなか現状打破は難しい。しかも、平成26年度のデータで他大学と比べると、実はビリなんです……。
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ちなみに、名古屋大学さんは、森郁恵先生、鳥居啓子先生@ワシントン大学(兼務)、上川内あずさ先生……と生命科学系にピカピカのロールモデルがおられるだけでなく、各種の支援もあいまって女性比率もダントツです。

本学の第3期中期計画では、「女性研究者の対平成27年度比で50%以上の増員を目指した女性研究者支援の取組の加速化」と「女性教員比率を19%に引き上げることを目指した採用等の取組及び管理職等(課長補佐級以上)の女性職員比率を15%に引き上げることを目指した育成等の取組を強化する」ことが盛り込まれていますので、相当頑張らないと……。

構成員の多様性は組織の元気度に影響します。過日、アカデミー賞の候補者が白人ばかり……という話題がありましたが、こういうことは悪気はなくても容易に起こりえます。なぜなら、みな「自分の仲間」に対するシンパシーが高いからです。賞を選ぶ側の構成員が白人に偏っていると、ノミネートされる側にもバイアスがかかります……。そのあたりのことについては、上記の鳥居先生が最近、サイエンスポータルに書かれた記事にもありましたが、拙翻訳本『なぜ理系に進む女性は少ないのか』にもいくつかの事例とともに紹介されています。

……という訳で、来月は2つ学内の関連セミナー等に登壇します。そのうちの1つ多元物質研究所主催のものは、上記の森郁恵先生にご講演も頂きます。所長の村松淳司先生自らがパネルディスカッションのコーディネータ。生命科学研究科の杉本亜砂子先生も加えて、3名の女性研究者と村松所長、さてどんな展開になるか??? どうぞ奮ってご参加下さい。
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多元物質科学研究所男女共同参画イベント

女性研究者採用加速に向けたセミナー



 多元研における女性教員の比率はここ数年、1~3%という非常に低い状態であり、現在139人の多元研教職員の内、女性教員はわずか4名という状況である。多元研では、将来の女性研究者採用加速に向けた具体的な方策がないのが現状である。 この現状を踏まえ、今回、女性研究者採用を加速するにはとのようなシステムづくりが必要であるかについてのセミナーを開催することとした。本セミナーは男女共同参画という観点のみならず、トップマネージメントセミナーという位置付けとして開催したいと考えており、特に教授層にご参加いただきたいと考えている。

開催概要

開催日時:平成28年2月23日(火)15時より
開催場所:東北大学片平キャンパス 南総合研究棟2 大会議室

(第1部) 講演会
  「前例をつくり、道をつくる」(仮題)
  講師:森 郁恵 教授 (名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻 )
(第2部) パネルディスカッション ~女性教員採用に向けたシステムづくり~
  パネリスト:森 郁恵 教授 (名古屋大学大学院 理学研究科)
大隅 典子 教授 (東北大学医学研究科)
杉本 亜砂子 教授 (東北大学生命科学研究科)
  コーディネーター村松 淳司 教授 (東北大学多元研 研究所長)

連絡先
 永次 史 (東北大学 多元研)
 TEL&FAX: 022-(217)-5633
 e-mail: nagatugi@tagen.tohoku.ac.jp











【鳥居啓子先生が書かれた記事】
【関連拙ブログエントリー】




by osumi1128 | 2016-01-27 17:56 | 科学技術政策 | Comments(0)

大学における研究費不正を防ぐためのシステム改革

過日「大学における研究費執行をどのように改善すべきか?」という記事を書いたが、その補足をしたい。実は、これから述べる改革案は、あと1年余で訪れる「労働契約法改正」の対策ともリンクする。

平成25年4月1日の労働契約法の改正により、1年ごとの有期労働契約が繰り返されて通算5年を超える場合には、無期労働契約に転換されることになるが、当然ながら、大学にはすべての有期労働契約職員を定年制の雇用形態にする財源は無い。したがって、5年を超えないように、いわゆる「雇い止め」が生じることになる。これは平成30年4月以降に一斉に生じる可能性が高い。研究室主催者の元で研究費執行業務に当たる事務職員の多くはこれに該当する有期労働者なので、大問題となることが考えられるのだ。
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さて、日本の大学の研究費執行システムに無駄が多いことはすでに述べた。研究室と部局と重複している業務が多々ある。さらに加えるならば、紙媒体ベースなので承認のための判子がいくつも押され、その分の時間の無駄と、責任の曖昧さが生じやすい点も問題であろう。ではどのようにして、無駄を無くし、なおかつ研究費執行における不正を防ぐようなシステムにすればよいだろう?(註:筆者は、研究倫理教育の推進や意識の醸成は必須であると考えるが、精神論だけで不正防止が可能であるとは思っていない。また、ごく少数の不正を行う者のために、より多くの人々の貴重な時間が失われるような「チェック機構の強化」は合理的ではなく、国としての研究力を損なうので極めて宜しくないと考える。)

その改革案だが、特段の秘策という訳ではない。欧米に倣うという理解でも良いし、日本でも「民間企業的」な対応に変えるだけである。

具体的には次のようなことが骨子となる。
1)研究費執行業務を電算化・ウェブ化する
2)研究室において研究費管理および研究費執行業務を行う職員は、部局の事務系職員を充てる
3)1名の事務系職員は執行金額の規模に応じて、必要により複数の研究室の研究費管理および執行業務を行う
4)物品を発注する研究者はPIの承認を得て、PIは研究費執行業務を行う職員に物品発注を委託する
5)納品の検収はそれぞれの研究費執行職員が行う

補足すると、まず1)により、大学全体として大幅に必要な職員の数が減る。この職員の方々に2)の研究費執行業務を行って頂く(あるいは、大学としては、徐々にもっと特化したスキルを活かせるポジションを増やしていくのが良い)。研究費執行職員(追って何か良い名称を考えよう。とりあえずグラント・マネージャー<GM>と呼ぶことにする)は、現状の研究室の「秘書」のように、研究室に物理的に滞在する必要があるとは思わない。ほとんどの処理はリモートで、オンラインで行えるだろう(客人にお茶を出すための要員が必要な研究室は、きっとリッチなので、研究費でもポケットマネーでも、別に有期雇用職員を雇用すればよい)。

研究費執行不正を防ぐポイントは3)〜5)の部分である。このGMは、少なくとも大学の雇用試験を突破して任期無しの雇用形態の方々であり、「研究室のために、研究室の費用で」雇用されているのではない。忠義を果たすべきなのは、研究室ではなく大学である。もし、研究費執行で問題が生じれば、大学のブランドに傷がつく、という意識で職務に当たる方々である。PIは研究費を具体的に何に使うかについて一定の専門性と権限を有するが、不正な発注が行われていないかどうかは、日々、研究費執行職員が職務としてウォッチする。したがって、架空発注や預け金のような事例が生じることは「システム」として防ぐことが可能となる。

現状のまま平成30年を迎えると、多くの有期雇用の方が「雇い止め」によって、ただ職を失うことになる。中には、高い能力のある方もいるはずなので、(現状でも行われているが)一定の試験などを行うことによって、GMなどの立場で無期雇用に進むことができれば良いだろう。GM業務に長けた方が長く仕事を続けて頂ける方が、5年毎に新しい「秘書」を雇用するより、はるかに無駄がないとも言える(ナントカと畳は新しい方が良い、などと考える方は別)。

以上の改革案は、Facebook上での議論も元にしている。実例として、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、内閣府により設置され、文科省直轄ではなく、いわば「私学」であり、すでに研究費執行システムは上記のようなものになっているということを、その設立に深く関わられた北野宏明氏(ソニー・コンピュータサイエンス研究所取締役所長)からコメント頂いた。新しい組織を作るときの方が、既存のシステムをスクラップビルドするよりも容易なのかもしれないが、大学ランキングの低下や研究力の低迷が続く今、大きなテコ入れが必要なのではないだろうか? 何より、ここで提示した改革案は、大学にとっても、職員にとっても、研究者にとってもwin-winであると考えられる。

本年より第5期の科学技術基本計画が開始されるが(2015年12月18日付CSTI答申はこちら)、計画を実行するのは「人」であり、人をないがしろにした計画では絵に描いた餅である。不正の生じにくいシステム作りは、人材をどのように活用するのかが鍵となろう。




by osumi1128 | 2016-01-03 16:01 | 科学技術政策 | Comments(8)

大学における研究費執行をどのように改善すべきか?

昨年も12月最後の金曜日には大きな記者会見があったようだが、今年は研究費の不正使用に関して、億を越える金額のものが、会見前からニュースに流れた。前代の教授の頃からの「預け金」が見つかったということらしい。大学が法人化以降、会計管理はどんどん明瞭化されている中で、今頃こんな事例があったのかと驚きを禁じ得ない。

さて、研究コミュニティーとしては「こんな事件があると、また種々の管理が厳しくなって余計な雑務が増えるのではないか」と戦々恐々している方が多いのではないかと思う。研究費使用の不正は分野を超えたインパクトが大きい。

そのような中、「こういう問題は<単年度会計>のためだ」という意見がネット上では多く見受けられた。例えば、理研の中川氏がまとめたtogetterを参照のこと。
200名弱がネットで投票を行って、そのうち77%の回答が「単年度予算のルールを撤廃する」というものであった。

また、神戸大の榎木氏もYahooニュースに以下のような文章を載せている。
確かに、私自身、ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム(HFSP)の研究費を頂いたときに、予算が普通に繰り越せることにびっくりし、本当に有難いと思った。とくに初年度の研究活動はいろいろなことが予定どおりには進まないことも多いので、執行できなかった経費を自年度繰越しすれば良いだけなのは、無駄な物品購入を防ぐ効果もあるだろう。実際、文科省の科学研究費でも所定の手続きにより次年度繰越や、前倒しでの執行も可能になりつつある。

しかしながら、例えば今回のような研究費使用のルール違反は、仮に単年度会計を撤廃しても生じるのではないかと私自身は考える。最大の問題は、倫理観の欠如であろう。研究倫理の徹底は当然として、単年度会計云々より、もっと根本的に不正が起きにくく、なおかつ、研究者も大学の事務系職員も余分な仕事が増えないような仕組みを考えるべきなのではないだろうか?

ここでは、米国で見聞きしたり、間接的に聞いた執行方法について考察してみたい。

例えば博士研究員が研究に必要な物品の購入を考えたとする。彼・彼女はネットでカタログを見て、その情報をラボの「発注システム」上でオンラインで入力する。ボス(PI)が買っても良いと判断すると、「Approved」をクリックする。秘書もしくはラボマネージャーが、承認された物品の発注を行う。品物が宅急便で届くと、元々の物品を必要とした博士研究員が先の発注システム上で「Received」をクリックする。Invoiceがラボ宛に届くと、秘書もしくはラボマネージャーが研究費執行用の所定のクレジットカードで決済する。クレジットカードで執行できる予算は決まっており、カード会社からは毎月、執行額や残高が届く。

これに対して、日本の大学では、以下のようになるだろう。

博士研究員がカタログを見て(場合によってはPIの判断を仰ぎ)代理店に発注する。代理店の営業担当者が運ぶ品物は、まず部局事務の「検収センター」で「見積もり」伝票と同じ品目の物品が届いたかどうかのチェックを受け、その後、研究室に納品される。「見積もり・請求・納品」のいわゆる「三つ組伝票」を元に、研究費の代表者(もしくは秘書)がエクセルファイル上で所定の書類を作成する(←紙媒体!)。三つ組伝票のうち、納品書はラボに保管され、請求書とともに研究室からの伝票が部局の用度係に届けられる。用度係はその伝票を元に、大学の会計電算システムに入力する(二重の入力の手間)。用度係から代理店に入金が為される。

私が助手(現在の助教に相当する職位)だった頃は、カーボン紙(←若い方は知らない?)を間に挟んで、手書きで伝票作成をしていたのだから、エクセル入力になっただけでも革新と言えなくは無いが、日本の大学ではいかに無駄が多いシステムを未だに行っているのかわかるだろう。まぁ、江戸時代から行われている「内需拡大」の名残なのかもしれない。あるいは、大学のあるような地方都市では、雇用の確保にもなっているだろう。

米国のシステムでは、クレジットカード会社が残高計算をしてくれる(日本だって、大きな企業だったら、ある程度以上の職位の方なら仕事用のクレジットカードを持たされて、それで決済できる)ので、その分の人件費は大幅にカットできる。ラボの秘書さんやラボマネージャーは、かなり大きなラボは別として、一人の秘書さん(ラボマネ)が2つ3つの研究室の発注の面倒を見る。もし、不正な納品が行われた場合に、研究室に所属する秘書の場合には、それを告発すると自分の職が失われるかもしれないが、複数のラボに関与していれば、そういうリスクも経るだろう。

カード会社が入っている場合に、不正なお金の流れ方もチェックされやすいだろう。繰り返し、巨額の発注が特定の企業に対して為されているときに、大学本部に連絡するようなルールを作っておけばよい。

この際、根本的に日本の大学の研究費会計システムをIT化してはどうだろうか? 外れ値の不正のために、すべての研究者に対して現行のシステムの人力でのチェックを厳しくするだけでは、ますます、我が国の研究力は低下してしまうと思った方が良い。



by osumi1128 | 2015-12-27 23:32 | 科学技術政策 | Comments(2)

研究不正のエビデンス

今月18日に第5期科学技術基本計画が閣議決定された。
科学技術分野への投資額として「2020年にGDPの1%」という目標が掲げられ、総理の言葉として「若手研究者が最大限、力を発揮できる環境を整備していく」と報道されている。科学技術政策に関連する問題として、2015年の最後の月に研究不正について振り返りたい。

2014年に生じた大きな研究不正問題は、広く国民まで巻き込んだ「事件」となった。当時、これはあくまで「はずれ値」であって、大多数の研究者は不正には関わっていないのだから問題ない、という意見や、再現性の無い論文はやがて淘汰されるのであるから目くじらを立てるほどのことはない、という見方もあったし、もっと多数の論文不正が関わる事例もある、という指摘もされた。(そもそも、種々の不正は研究業界だけに見られるものではなく、今年で言えばオリンピックのエンブレム問題や、マンション杭打ちデータ捏造なども報道されているが、ここでは触れない。)しかしながら、Retraction Watchというサイトによれば、リトラクト(撤回)された論文のワースト30のうちに、日本人研究者が責任者として関わっているものは5報もある(現時点)。あるいは、国別で言えば、米国、中国、ドイツについて第4位が日本である。

●Retraction Watchについての説明はこちらの白楽ロックビル先生のブログ参照

FangらのPNAS論文によれば、論文不正の増加は、世界的にはおよそ2000年頃からとみなすことができる。
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この時期は、世界中(とくに米国、中国)において論文数が伸びた頃に一致しているが(下図参照)、単に数が増えたから比例して論文不正が増えたというよりも、論文総数に対する「割合」が3倍以上に増えているので(B図)、不正行為自体が増加したことを示していると考えられる。

我が国の論文数の伸びは、1980年代から2000年まで米国に比例して増加したが、その後、物理・化学・生物等の分野では、2004年頃をピークとして論文数は伸び悩んでいることは科学技術推進において大きな問題である。(豊田先生のつぼやきブログから拝借)
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論文数が伸び悩んでいるにも関わらず、2004年以降にも論文不正が生じてきたのだとすれば、それは頻度が増加していることになるのではないか。したがって、健全な科学の営みを継続するためには、単に研究費をつぎ込めば良いということではなく、なぜ、どのようなときに不正が生じるのかについて深く考えて真摯に対応する必要があるといえる。

今年度から、それぞれの研究機関における研究の公正性に対する取り組みが本格的に始まっている。CITIなどe-leaningを利用した研究倫理講習などは最低限のことである。「どのような取り組みをすれば科学における研究不正を防ぐことに繋がる効果が高いのか」などについては、社会科学系の研究者にぜひ取り組んで頂きたい研究テーマである。過日、BMB2015という学会の研究不正関連セッションにおいて、全体討論のときにワシントン大学の鳥居啓子先生が紹介されていたが、米国ではグループごとに異なる指導をした後で、研究不正に対する意識がどのように異なるかなどを調べた研究にもとづいて、研究倫理に関するワークショップなどが行われているという。研究不正対応にもエビデンスが必要であろう。

【参考サイト】
上記PNAS論文をもとにした考察など、西川伸一先生による記事の1つ。考察として、「研究費予算額で個人のキャリアが決まる競争社会型のアメリカの制度に近いほど不正が増え、それに伴い撤回が増える」ことを指摘されている。

黒木登志夫先生のご著書が来年上梓される予定と聞いているが、それまでの間はこちらの『iPS細胞』(中公新書)の中に書かれた研究不正への考察を参照のこと。
上記書評について拙ブログ




by osumi1128 | 2015-12-20 12:21 | 科学技術政策 | Comments(1)