<   2006年 06月 ( 25 )   > この月の画像一覧

研究打合せ

昨晩カフェの資料を作成し、寝ている間に、そうだ、自分の分だけではなくて、全体合わせたチラシもあるといいかも、と思いつき、朝からまたPagesに取り組んだ。
マニュアルを読むのが嫌いなタイプなので、すべて、アプリケーションの反応を見て、自分のしたいことと摺り合わせていく。
(そのため、仕上がりは必ずしもパーフェクトに自分の意図したものではなかったりするが、それはそれで仕方ない)
たぶん、これって、素朴な学習過程なのではないかなと思う。
これができなくなったら老化現象だと信じているので、とにかく、ときどきに自ら新しいことにチャレンジすることを心がけている。

今日は11時からジャーナルクラブだったので、その前に午後の研究打合せやらカフェの配付資料などの印刷を秘書さんにお願いしてから臨んだ。
うちのジャーナルクラブはD3以上は英語を基本とするので、たぶんそれなりにプレッシャーも大きい。
とくに、例えば本日の担当者はD3の学生さんで、初めて「英語プレゼンデビュー」の日だったので、(本人ばかりか)こちらもそれなりに襟を正して臨むような気持ちになる。
選んだ論文がきちんとまとまっていて、プレゼンスライドも流れが出来ていたし、本人の英語も、多分、かなり書いた文章を頭の中で繰り返して覚えた形跡もあるが、複文もかなり入っているくらいで、完成度は高かった。
・・・という訳で、ほっとする。
お疲れ様。

*****
午後は企業との研究打合せのミーティング。
うちの研究室の研究テーマの中で、いわゆる「出口に近い」研究である。
簡単に言うと、「脳を活かすための栄養」をテーマにしているのだが、S社の健康科学研究所の所長さんもいらしてのミーティングになった。

本来学問に貴賤はないはずなのだが、研究業界の人々の意識の中では、やはり純粋科学であったり、学問として確立した歴史の長い領域が尊ばれる傾向というのが感じられるときがある。
逆に、一般市民は「それは、どう役に立つのですか?」という即効性の回答を知りたがる傾向にある。
「栄養学」というのは、科学者の間で一般的には格下に思われることが多いのではなかろうか?
でも、私はとても大切な学問領域であると信じている。
これを軽んじたがために、さまざまな問題が生じていると思われる。
各種代謝病、癌、アレルギー、そして精神疾患など、現代社会で問題となっている疾患に、かなりの部分、食物の影響があることは間違いない。
問題は、これまでそれをきちんとサイエンスにしてこなかったことだと思う。

産学連携においても、国の予算はこの領域にはあまり投じられてこなかった。
「ものづくり」という言葉に象徴されるように、何か製品や材料や、そういったものを作ることに繋がる、あるいは分析のための器械の開発などにおいては莫大な税金がつぎ込まれたが、それぞれの体質に合った食べ物であったり、それを補うためのサプリメントを科学的に分析することは少なかった。
あるいは、分析されても、他の学問領域から、そのデータを尊ばれるだけのものではなかった。

医食同源という言葉、あるいは「You are what you eat」という言葉には、先人達が食べ物を大事に考えた名残があるにもかかわらず、多くの人の意識から、季節に合った食べ物や、体質に合った調理法、その日の活動に応じた味付けなどのノウハウが抜け落ちているのが現代社会だ。
もちろん、24時間営業しているコンビニでは、何でも売っているし、たいていその中に欲しいものはあるだろう。
でもたぶん、人はコンビニだけに頼って生活してはならない。
工場で作られた食べ物だけを食べていてはいけない。

この20年くらいの医者の食事指導で、たぶん間違っていることは「コレステロールを含む食品は悪」というものだと思う。
確かに、血中コレステロールの値が高いことは心臓発作等のリスクファクターであることは間違いないが、だからといって、肉や卵を食べない方がよい、というのは大きな誤解である。
昔は、卵は「病人さんの食べるもの」であるくらい、栄養価の高いものと見なされていたが、この感覚が正しい。
つまり、沢山食べるべきではないが、体が弱っているときには即効性のある栄養素を含む、ということだ。

基本的に「美味しいもの」は「体にいいもの」である。
この場合の「美味しいもの」は、ジャンクフードの耽溺性とはとは異なる。
美味しい味とは、糖や脂肪の甘みであり、コラーゲン質の食感である。
進化を経て確立された感覚を失ってはならない。

*****
早稲田の事件は論文捏造疑惑にまで発展している。
他の研究者から「再現性が得られない」とされている論文の成果をもとに、巨額の研究費が支払われ、そこから私的流用されたのだとしたら、何重にもがっかりすることである。
しかも、そのかなりの部分が「振興調整費」という枠であったため、「女性研究者育成モデル事業」なども、今年の予算に関してとばっちりを受けることになりそうだ。
その原因が一女性研究者にあったかと思うと、やるせない気持ちである。

さて、いよいよ明日がサイエンスカフェ。
皆で楽しまなければ!
by osumi1128 | 2006-06-30 02:30 | Comments(6)

配付資料作成中

いろいろ大がかりになってきた明後日のカフェなのだが、やっぱり基本的には、まずメディアテークに来て下さった方々に満足して帰ってもらいたいと思う。
今日は午後、教授会を含め夕方までずっと会議だったので、その後、午後のメールチェックをしてからようやく配付資料を作り始めた。
(まさに泥縄)

しかも、プレゼンスライドをKeynoteで作ったので、そこからPowerPointに移した資料を作るのはちょっとなあ……と感じ、Keynoteの親戚のPagesを使ってみようと思い立った。
なかなか魅力的なニュースレターなどのレイアウトサンプルが並んでいて、適当にテンプレートを選んでできるかな、と思ったら、テキストと画像の貼り込みで躓いている。
やれやれ……。

乗りかかった船というか、新しいことにチャレンジするのは「脳を活かす」ことだと信じて、なんとか2ページ分くらいの資料はこれで作ってみようと、これから頑張ります。
よって、本日はこれにて。
by osumi1128 | 2006-06-28 23:04 | Comments(0)

ファシ説明会を開きました

梅雨なのだが、このところあまり降雨量は多くなく、湿度は高いが気温は25度どまりで、まあ過ごしやすい。

d0028322_2346176.jpg
本日午前中に本部のある片平キャンパスで会議だったのだが、こんなものを見つけた。
色合いが本当はもう少し綺麗な紫なのだが、これは百周年カウントダウン広報用掲示板とでもいおうか。
ヘッドクォータービルの入り口には「ロゴタピスリー」が架かっている。
これであと360日くらいの気分を盛り上げようということらしい。

*****
今日は東北大学サイエンスカフェのファシリテーター説明会を開いた。
ファシ代表に任命した医学部4年のHさんは、テキパキと仕事をこなしてくれるので有り難い。
さらに、ファシ代表代理をはじめ、うちの大学院生たちには非常にお世話になる。
さらに、農学部、医学部、工学部、歯学部、加齢研などなど、20名余の学生さんたちが心強いファシリテーター役を務めてくれる。

思い起こせば、高校時代に「文化祭委員」をしていたことがある。
うちの高校の文化祭は「辛夷祭(こぶしさい)」というのだが、クラス別の出し物やら、クラブ独自の屋台など、場合によっては3年生までかなり熱心だった。
確か、パンフレットに載せる広告をもらいに、高校の近所の、みんながクラブの帰りに立ち寄るお蕎麦やさんやら、パン屋さんやらにご寄付を頂いたりしたのだが、今やっていることも当時とあまり変わらないかも。

段取りを考えたりするのが好きな質なのだろう。
裏方の仕事も面白いと思う。
いろいろなアーティストを招いてイベントを企画するなんていうことも、職業としてやってみたかったことではある。
まあ、外国人研究者を招聘してシンポジウムを組むなんていうのが、その研究者バージョンかな。

こんなはずでは、というくらい気分は泥縄なのだが、果たして金曜日はどうなることやら?
by osumi1128 | 2006-06-28 00:04 | Comments(0)

英語の勉強

某ネット書籍販売サイトで注文していたDa Vinci Codeの朗読CDが先週やっと届いたので、行き帰りの車の中で聴いている。
先に日本語で読んでいたので、ああ、こういう場面だな、と理解しやすい。
最初から6章までを2回続けて聴いているが、2回目はさらに単語やフレーズが分かるようになる。

朗読しているのはPaul Michaelという俳優さんで、50を超えるaudiobooksを出しているとのこと。
某ネット書籍販売サイトは日本語版で探したせいか、あまり朗読CDがなかった。
今度は英語版で探してみよう。
たぶん、女性の朗読のものだと、もっと参考になるような気がする。
女性の作家のものを探せばよいのだろうか?

しばらく前に「小学校における英語教育」について議論になっていたかと思うのだが、例えば「国語」の時間を削ってまですることではないと思う。
まず母語でしっかりと論理と情動を伝えられるようにならなければ、外国語をいくら喋れても意味がない。
どちらも中途半端では、仕事をするにはまったく役に立たない。

改善すべきと思うのは、RとLやSとThを含む音をカタカナ表記する際に、区別できる新しい文字を作ると良いのではということだ。
語の先頭の子音が違うと、まったく意味の違う単語になってしまうことがある。
「外国語由来の言葉には日本語にはない音がある」ということを意識させることは大事ではないかと思う。

*****
早大の研究費不正使用問題で、文科省には対策チームができた。
問題となった振興調整費の支給を受けている全国の150箇所の研究機関には経理実態の緊急点検の指示がなされ、さらに支給規模の大きな機関には現地調査が入るという。
梅雨空のように憂鬱なできごとである。
M先生が女性であったことも、残念に思う。
by osumi1128 | 2006-06-26 23:42 | Comments(2)

塩竃寿司ツアー

元ご近所だったSさんが和光に異動してしまったのだが、「美味しいお寿司禁断症状」緩和のために来仙し(いや、ホントはもちろん御用事があったのだが)、Kさんと、Sさんと入れ替わりで赴任されたNさんとともに塩竃にお寿司を食べに言ってきた。
殻付きガゼウニ、鰹の酢の物、ボタン海老、各種マグロなどなど口福至極の一時。
美味しい物は元気の元です。

仙台通信としてもう一つ、仙台放送で「シリーズ東北大学100年物語」という番組が始まったのですが、こちらは映像がウェブで見られます。
「仙台放送ホームページ」から、「ニュース」に入って頂き、「シリーズ東北大学100年物語」をクリックして下さい。
東北大学ロゴバスや、本部に飾られた垂れ幕などの記念イベント開始の様子や、流体研のM先生(広報担当でもある)のレポートによる日本初のジェットエンジンのお話があります。

******
さて、1月25日のポスドクのキャリアパスについてに関しては、F.T.さんという企業の方から最近コメントを頂きましたので、こちらに全文掲載しておきます。
(F.T.さん、有難うございました)

<その後、F.T.さんから削除してほしいというご連絡がありましたので、削除致しました>

上記は企業の現状の一面をよく表しているのだと思います。
この現状をどんな風に変えていくか、ですね。
もちろん、「変える必要はない」という考えはもっともなのですが、「大学も変わらなきゃ」を一生懸命やっているところですから。


・・・が、元総合科学技術会議議員のM先生の事件などが起きると、また締め付けが厳しくなるのだろうなと悲しくなります。
以前にも書きましたが、日本は恐ろしく内需拡大的発想をしたがる国で、細かな書類を何重にもチェックするために多くの教員や公務員が働いています。
非創造的、非生産的業務に多くの力を注ぎ、そこに人件費が使われているのですね。
かといって、チェックを民間に任せたときに姉歯事件のようなことも起きてしまうし。
全体が大人じゃないってことなんでしょうかね?

関連情報は5号館のつぶやきさんのエントリー泥棒に縄をなわせるにまとまっていますので、どうぞ。
by osumi1128 | 2006-06-26 00:26 | Comments(4)

第九の日

東北大学サイエンスカフェの担当が来週金曜日と迫ってきた。
昨日(感覚的には)、大学の広報課やカフェWGの方々と打合せの会議があって、当初よりさらにあちこちの会場に映像配信する予定と聞いた。
そもそも、仙台放送など3社のTVクルーも来ることになっているし、岩手と八戸の会場とは「双方向」コミュニケーションするらしい。
どんどん大がかりな方向に進んでしまっているのだが、もう乗りかかった船なので仕方ない。
どんな仕掛けの会であるかによって、こちらのプレゼンや聴衆への質問の仕方なども変わるのだが、本当に直前までドタバタである。
ま、結局、京都の国際会議やらで事前準備は後手後手に回っているのではあるが・・・
一応、携帯端末から質問の投稿や、四択でどれにするかを投票できたりするシステムを組んだというので、それを使ってみよう、ということになっている。
(携帯を使わない方のためには、ファシリテーター→入力担当者が連携して投稿する)
私としては、カフェっぽくできたらそれで良かったのですが・・・
(今回は缶ジュースではなく、ちゃんとコーヒーが出ます。ただし、紙コップだけどね)

*****
で、一緒にカフェでトークする瀬名さんに近著の『第九の日』(光文社)を頂いたので、さっそく昨日と今日で読破。
著者による紹介はこちらの2006年6月16日をご参照あれ。

昨年『デカルトの密室』を頂いて、初めて瀬名さんの「ロボット小説」を読んだのだが、実はこの『第九の日』の中の「メンツェルのチェスプレイヤー」が連作の最初。
なるほど、そう思ってチェックすると、ケンイチの正体はぎりぎり最後まで分からないようにしてありました。
ロボットの「自由意志」がらみのテーマはこの中ですでに扱われている。

「モノー博士の島」や「第九の日」では、サイボーグやロボットと共存する近未来が描かれていて、なかなか考えさせられた。

カフェでは私は「脳をつくる遺伝子レシピ」というタイトルで話をするので、あんまり相手方の本を読んでしまうと、そちらに引きずられるかな?
打合せのときに見せたスライドよりも、もう少し専門的なものに変更しようと思案中。
とにかく、持ち時間20分というのはあまりに短い・・・


PS:でも、『第九の日』の帯にある「いま「物語」の力が世界を救う!」や「「心」は神の奇跡なのか?」はよいとして、「瀬名秀明、畢生の恋愛科学小説!」というのは、編集者さんが付けたんでしょうか?
by osumi1128 | 2006-06-25 02:00 | 書評 | Comments(0)

脳のフレームワークとニューロンの移動・その2

数日ぶりに仙台に戻りました。
やっぱり京都よりも涼しいのは快適です。
まだ戻っていないメンバーもいて、ラボは少し空いた感じですね。

そうそう、昨日書き忘れたのだが、京都の学会は国際会議だったので、Asia Pacific Perspectives Japan Plus(時事画報社)という雑誌が置いてあり、特集がWomen's Powerで表紙がダイエー会長兼CEOになられた林文子氏だったので手にとって見ると、我が友数学科のKさんも載っていました。

今日のエントリーは書きかけになっていた研究のお話の続きです。
「その1」はこちらにあります。

*******
さて、野村さんはまず、Pax6の機能が失われると、腹側へ移動するニューロンが境界部に留まらない、ということの再現性を調べました。
このためには、終脳の細胞を標識してどこに移動するのかを観察する必要があります。
かつて私自身は、全胚培養という方法で、ラット胚をまるごと試験管(実際はガラスのバイアル)の中で培養し、生体為害性のないDiIという蛍光色素でニューロンの移動を調べたのですが、野村さんはGFPというお馴染みの蛍光タンパクを発現させる遺伝子を、培養胚に電気穿孔法で導入するということによって観察しました。
野村さんは私以上に手先が器用で、全胚培養の技術も1回教えてすぐに自分でもできるようになったので、私が観察したことの再現性はすぐに確かめられました。

次に、この現象が「細胞自律的か、非自律的か」ということを調べました。
これは、多種類の細胞が共存している胚を扱う発生生物学者にとって、とても気になる問題です。
実は、終脳の背側の神経上皮細胞、すなわち、ニューロンになる前の未分化な細胞ではもともとPax6が発現しています。
ところが、ニューロンに分化するとPax6の発現は失われ、でも、そのニューロンはPax6を発現している終脳神経上皮細胞層の表面を移動します。
したがって、Pax6の機能が失われたことの影響が、ニューロンそのものに対するものなのか(細胞自律的)、それとも、移動する環境に対するものなのか(細胞非自律的)を明らかにしないといけないのです。

そこで、GFPを発現するトランスジェニック(TG)ラットを用い、移植する細胞をこのTGラットから得ることにしました。
Pax6の機能が失われた変異体の遺伝子型を持つTGラットから得られた終脳の細胞をドナーとし、正常な野生型のラット胚終脳に移植し、その動きを見ると、ちょうど正常な野生型で見られたのと同じパターンで、Pax6 -/-TGラットの細胞は終脳の背腹境界部にきちんと配置されました。
これに対し、野生型のTGラットの細胞をPax6 -/-胚に移植すると、Pax6 -/-胚を標識した場合と同様に、細胞は終脳の腹側に侵入してしまいました。
すなわち、Pax6の機能が失われたことの影響は細胞非自律的であることが分かりました。

では、このような細胞非自律的な影響というのはどのような分子メカニズムによるのでしょう?

実は、このあたり、論文でのストーリー展開と、実際の研究の順番は異なっていました。
野村さんはまず、終脳の腹側に「進入禁止マーク」が付いていると想定し、そのような「反発因子」の候補について、in situハイブリダイゼーション法により、Pax6 -/-胚で発現の異なる遺伝子を見つけようとしたのですが、各種semaphorinなどを調べてもあまり芳しいデータは得られませんでした。

そこで発想を変えて、「進入禁止解除」となるような効果のある因子がないか、培養系でスクリーニングすることにしたのです。
最初に、全胚培養下で終脳の背側のニューロンをGFPで標識し、その後、終脳を取り出して器官培養系に移し、その培養液にさまざまな試薬を添加してみました。
すると、EphA-Fcという試薬に「進入禁止解除効果」があったのです!
Ephとephrinは特異的に反発効果を持つ細胞表面分子なので、この結果はとてもpromisingに思えました。

では、ということで、各種ephrin類の発現を調べてみると、ephrinA5という分子が野生型胚終脳の腹側に特異的に発現し、この発現がPax6 -/-胚終脳で下がっているということが見いだされました。
つまり、私たちはついに鍵となる分子を捕まえることができたのです。

論文では順序が逆で、先にephrinA5の発現パターンの比較を載せて、問題となる分子の局在をまず示し、さらに、終脳背側から移動するニューロンにはephrinA5と結合できるEphA3という分子が発現していることも示しています(発生生物学における分子メカニズムの証明のための3カ条その1)。
その次に、上記のEphA-Fcを用いた「阻害実験」を述べています(3カ条その2:必要条件の証明)。

次に、もしこのephrinA5を移動経路の途中で発現させた場合(異所性発現)に、移動ニューロンを停止させる効果があるかどうかを調べることにしました(3カ条その3:十分条件の証明)。
これは、全胚培養下で細胞の標識をDiIで行い、そこにさらに電気穿孔法でephrinA5を発現させるという難易度の高い実験でしたが、見事予想通りに、細胞はephrinA5が発現している領域には侵入できないことが確かめられました。
おまけの実験として、Pax6 -/-胚の腹側(進入禁止マーク解除領域)にephrinA5を発現させると、やはり細胞はephrinA5が発現している領域には侵入できず、Pax6 -/-胚の表現型を正常に回復することができました。

さらに、スウェーデンのグループですでにephrinA5のノックアウト(KO)マウスを作製していた方がおられましたので、このKOマウスを供与してもらい、Pax6-/-と同様の終脳神経細胞の配置異常が見られるか、GFP標識してみました。
マウスの輸入手続きに時間がかかり、さらに動物実験施設で飼育するためにクリーンアップしなければならず、本当に実験することができるまでに1年近くかかったことになります。
このあたり、in vivoの動物を扱わなければならない研究は時間とお金がかかるという典型ですね。
でも、結果は見事にephrinA5 -/-マウスでPax6-/-胚と同様の終脳神経細胞の配置異常が観察され、すべての結果が一貫して次のことを示していました。

Pax6はまず終脳の背腹領域区分という脳のフレームワークを作る。
終脳の背腹境界を目印として、終脳背側で生まれて腹側へ移動する神経細胞が配置される。
終脳の腹側にはephrinA5という反発因子が発現することにより、終脳背側で生まれて腹側へ移動する神経細胞が侵入できない。


実は、論文では違った観点のreviewerに当たり、こちらにとってはあまり興味のない追加実験を要求され、3ヶ月の間にそれをこなしてデータとして載せていますが、私から見れば上記の本質とは異なる、枝葉末節のことだと思っています。
私たちの作品には必要のないことと思いましたが、論文を早く通すために従いました。
改めてこうして1本の論文が出来上がるまでを振り返ってみると、なかなか感慨深いものですね。

*****
さて、上記の内容を読まれた方で、「え?おかしいんじゃない?」と思われる方がおられましたら、するどい!
で、その答えは論文の中に書いてあります。
by osumi1128 | 2006-06-23 01:13 | Comments(1)

IUBMB共同参画シンポ無事終了!

今日のプレゼンの準備がなかなか終わらなかったということもあり、数日ご無沙汰してしまいました。
共同参画関係の英語に関してボキャ貧だったからです。
しかも、示そうとする資料が日本語のものしかなくて、英語に直すのに物理的にも時間がかかりました。

お陰様でIUBMBにおけるGender Equality Symposiumが無事に終わりました。
私が悲観的に予測していたよりは、はるかに多くの方々が来て下さったようで、準備した要旨の100部がなくなってしまったところをみると、それ以上に集まったのかもしれません。
もし参加者でこのブログを見ている方がおられたら、心から御礼を申し上げます。

IUBMBの第20回大会長である本庶先生にOpening Remarksをして頂きましたが、さらにIUBMB本体の現会長であるMary Osbornさんも来て下さり、一言ご挨拶だけと思ったら、最後まで聴いて下さいました。
メンターの重要性、親は初等教育の教師への働きかけなど、重要なポイントを再認識しました。

詳しくは分子生物学会のHPの方に掲載予定ですが、日本の現状、アメリカとカナダの例を知ることができ、活発な討論になって、終了予定の20:30を45分もオーバーして、それでも沢山の方々が残って下さっていたのが有り難かったです。
毎日新聞の京都支局からも取材に来て下さいました。

総合討論の最後の方で、北大のAさんが言われた比喩が(生物学者を対象とした場合に)含蓄に溢れていたので紹介します。
DNAの複製でleading strandはすーっとDNA合成されるのに対し、lagging strandは少しずつDNA合成される。でもどちらも結果としてDNA複製することには変わりがない。もしかすると、女性研究者はlagging strandの合成のように、少しずつ時間がかかるかもしれない。でもサイエンスに貢献していることには変わりない。(大隅意訳)


Aさんは「したがって、評価の際にも考慮が必要」ということを述べておられました。
評価の物差しはなるべく沢山必要だと思います。
人物の評価だけでなく、部局や研究組織の場合もそうだと思います。

*****
今日はシンポジウムの前に「キャリアフェア」という企画を見てきました。
バイオディスカバリー社というところのIさんが中心となって企画されていて、簡単なコーチングセミナーや、企業に就職した方の講演、出店している会社との面談コーナーなどがありました。
もっと人が集まっているかと思いましたら予想よりは少なく、でもこれは学会HPの不備などの問題もあるように思いました。

コーチングセミナーを聴いてみましたが、「履歴書や自己アピールは相手の気持ちに立って書きましょう」「面接は、日程伺いのメールのやりとりからもう始まっています。メールで人物が判断されるので、迅速に、誠意をもって、社会人としての対応をしましょう」というような話は、日頃自分が学生さんやポスドクさんに言っていることと同じだなあと感じました。
「じゃあ、今から二人組になって、面接担当者と応募者の役を演じてみて、どのように相手に伝わったかを評価してみましょう」というのは、参加型、「気づき」重視の、流行の教育学の手法ですね。

それで思いましたが、せっかくの国際会議だったのですから、「論文の書き方スキル講座」とか「プレゼンテーションスキルセミナー」などの企画もあれば良かったかもしれません。
まあ、大きな学会ですから、何から何までやろうとしても難しいことは確かですが。

*****
学会はまだ2日残っていますが、私は明日仙台に戻ります。
締め切りの過ぎた書類等が待っています(涙)。
あ、それだけではなくて、学生さんがnew dataがあるとメールで連絡してくれているので、それを見るのが楽しみです。
by osumi1128 | 2006-06-22 01:21 | Comments(2)

IUBMB初日

国際生化学分子生物学会が今日から始まりました。
Opening Ceremonyに皇太子殿下がご臨席されるということで、セキュリティーチェックが非常に厳しく、またきっと直前までいろいろ段取りが大変だったのだろうなと推測しました。

長い会議の期間で私は前半に用事があり、今日から参加ということになりました。
Openeing Ceremonyは、当初天皇陛下というお話も出たらしいのですが、先日アジアにご訪問された直後ということもあり、皇太子殿下になったようです。
セレモニーを待つ間に傍にいた外国人参加者から、天皇制についてどう思うか、などの質問を受けました。
「女帝」などに関して何が今の論点であるかを説明し、私個人としては「家族の問題であるので、それは当該ファミリーに任せたい。ただし、日本のRoyal famirlyはきちんとトレーニングされた特殊な使命を担っていて、それは何物にも代え難い面があるので、存続してほしい」という意見を述べました。

例えば、1時間に渡るセレモニーの間に、(必ずしもご興味のある話ではないでしょうに)一秒たりとも居眠りすることもなく、気品のある姿勢でそれぞれの方々のスピーチに耳を傾け、その後、お言葉を述べる、という役目をまっとうに果たすのは、やっぱり皇室の方々ならではの任務かなと思うのです。
お小さい頃から、そういうトレーニングを受けてこられたのかなと、今日の皇太子殿下もそうですが、今上天皇もやはりそうだと折に触れお見受けします。
たたずまいが美しいということは、それだけで価値があると私は思います。
それは、放っておいて得られるものではないと思われます。

Openig Ceremonyとその後のLecturesの間に、Royal receptionの代わりとしてTea partyが設けられていました(参加者は特別講演等に限定です)。
外国人、とくに歴史の浅い国であるアメリカからの参加者は大喜びです。
皇太子殿下は学会主催者のH先生の先導により順々にテーブルの間を回られましたが、この会の招待者すべてとお話するわけにもいかず、難しいものですね。
私の知り合いのMBFさんなどは、自分の専門を説明した後に「殿下は水運についてのご研究をされていたということですが」「ええ、そうです。オックスフォードでも勉強しました」「それで、英語がお上手なんですね」などとお世辞を言っておられました。

******
今回の国際会議における任務の一つは、本日のHayaishi Memorial Lectureの座長でしたが、Co-chair personであった方に「僕が紹介するから、貴女は感謝状を渡す役だ」と言われ「???」
そんなこと全く連絡受けてないぞ、と思いつつ「ああ、そうですか」と答えたのですが、やっぱりねえ・・・。

本日最後のスケジュールはGet togetherという簡単な懇親会で、雨が降らなかったので宝ヶ池のお庭が楽しめて何よりでした。
知り合いに会ってお話をするのに時間を使うので、ほとんど何も食べられず仕舞いなのですが。

国際会議ではよく抄録集やカタログの入った「学会バッグ」が渡されますが、今回は黒いデイバッグの中に傘まで入っていました。
でも、数日に渡る国際会議で、2キロくらいありそうな抄録集を持ち歩く気はしないのですが・・・
ちなみに、北米神経科学学会では日替わりのタイトル集になっていて、持ち運びは楽でした。
配布されたCD-ROMを活用するしかなさそうですね。

*****
すみません、サイエンスの話の続きはまた明日ということで。

研究の話の続きは、さらに明日に回します。
ごめんなさい。
by osumi1128 | 2006-06-18 23:48 | Comments(0)

お豆腐屋さん

昨日の続きの前に、今朝見てきたお豆腐作りについて。

お豆腐屋さんは朝が早いと聞いていたが、やはり普段は朝5:30から始めるらしい。
土曜日は7時頃からとのことで「7時から8時の間に来なさい」というのを
8:30にまけてもらった。

午後にとある講演を行うレスリーさんとその娘のジュリアちゃん、そして今回の企画(後述)に関わるERIC国際理解教育センターというNPOのSさんを8:15にホテルに迎えに行った。
実はSさんは同じ高校の隣のクラスだった方で、今回20数年ぶりに再会。
確か高校の間に留学したのだったか、記憶が定かでないが、綺麗な英語を流暢に話す。

今回のリクエストは12歳になるジュリアちゃんが肉も魚も食べない主義で、お豆腐は大好きとのことで、初めて日本に行くのなら是非お豆腐を作るところを見てみたい、ということが発端。
私も、作り方は知っていても、実際に街のお豆腐屋さんを覗くのは初めて。

お豆腐作りの全行程は、一晩大豆を水に浸ける、水と合わせて大豆を挽く、圧力釜で8分ほど加熱、おからと分離する器械にかける、出来た豆乳ににがりを入れる、用途に応じて固める、用途に応じて切り分ける、というもので、実は1時間もかからなかった。
お豆腐屋さんのご主人は外国人の見学者ということで張り切っていて、出来たての豆乳や、出来たてのお豆腐を振る舞って下さる。
ゲスト親子も大喜びでデジカメで写真を撮りまくり。
このあたりは良い井戸水が出るらしく、そちらも使っているとのこと。

今回得た知識としては、アメリカ産大豆は油揚げ用にはむしろ適している、とか、油揚げ用の場合には豆乳がかなり温度がさめてからにがりを入れる、などのトリビアルなもの。
私は近所なのでお土産にお豆腐2丁頂いて帰った。

*****
午後の講演のメインはレスリーさんのお話とワークショップで、科学者がアウトリーチする際に気を付けることと、そのスキルを学ぶ、というもの。
この手の「アメリカ流教育法」は、ファカルティーデベロップメントの際などにも経験したことがあるのだが、ちょっと日本人には馴染まないところがややあるようには思う(Ice breakingから始めましょう、など。まあ、そうしないと「学び」ができないからというのだが)。
ただ、「聴衆の種類によって言葉遣いの違いを意識してみよう」「分かり易い喩えを工夫してみよう」「非言語的コミュニケーションを取り入れてみよう」などは、普段気を付けてはいることだが、再度の確認になった。

ちなみに、ERICのホームページはこちら
角田尚子さんという方が(今回も来られていたが)頑張っておられる。

*****
月末にトークセッションの予定の瀬名さんの新刊が出た模様。
瀬名NEWS参照。
by osumi1128 | 2006-06-18 01:38 | Comments(0)