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仙台市景観シンポジウムで考えたこと

火曜日に「仙台市景観シンポジウム」のパネルディスカッションに参加しました。
参加者は120名くらいだったのではと思います。
パネリストはほかに
大山 健太郎氏  アイリスオーヤマ(株)代表取締役社長
三浦 均氏  (株)JTB東北団体旅行仙台支店支店長
涌井 史郎氏  桐蔭横浜大学医用工学部特任教授

コーディネーターは小松 俊昭氏  金沢工業大学研究支援機構産学連携室コーディネーター
そのほか、コメンテーターとして楠本 修二郎氏  カフェ・カンパニー(株)代表取締役社長 が参加されました。

授賞式が大幅に長引いたので、2時間の予定が1時間半しかありませんでしたが、コーディネーターの事前の打ち合わせや采配がよかったので、ちょうど3巡、発言できました。
参加された方々はそれぞれ違う立場だったので、様々な意見や提案等が出ましたが、こういう話題は身近ですから、誰でも参加できるのが楽しいですね。

私自身は、1巡目では今回の景観賞大賞になった「テレビ塔のライトアップ」にまつわる話として、出張の帰りの新幹線から、あるいは普段、車で帰宅する際にも眺めてほっとすることと、実はそのライトアップの電気系統の施行に関わったのが、うちの研究室の秘書さんの一人のご主人だった、ということを話しました。
仙台という街は人と人の距離が近いということですね。
2巡目は、美しい景観を保つためには、その地域にいる人々の意識も大切で、規制も必要であることについて、スイスや国立市のことを例に挙げて述べました。
3巡目は、地域に開かれた大学として、これからどのように関わるべきかということを話しました。
昨年の百周年記念祭の際には、片平キャンパスを2日間、大々的に解放して、2万人の人出がありましたが、次の百年、学都仙台のシンボルとしてどんな展開ができるか考えていくべき時期だと思っています。

打合せのときにも話題になったのですが、「仙台の人は質実剛健ですね」「<見所はどこですか?>と尋ねると<見るほどのところは特にありませんよ>と答える。<食材王国って、何が美味しいのですか?>と訊くと<何でも美味しいです!>と答える。それでは何が見るべきところか、美味しいのか伝わりませんね」このあたりが、「発信力」の欠如を示しているのでしょう。
ある意味、かつては豊かな米処を抱えてきて農閑期の努力をしなくても済んだこと、東北地方の中では中心地なので、宣伝をしなくても人は勝手に集まってきたこと、旧制高校としては二高であって一高の次だと思っていたり、東京の流行を数年遅れで追いかけていれば間違いないと思っていたこと、関連して、新幹線が開通してからは独自の文化圏を築くよりも東京に近くなってしまったこと、などなど、現在の置かれた位置づけにはいろいろな原因があると思われます。

10年前に仙台に来たとき、まだスタバの支店が1軒もなく、東京に戻る度に「お客様の声」に「是非、仙台に出店してください!」と書きまくった甲斐あって(笑)、それから2年後くらいに仙台一号店ができました。
上記のシンポのコメンテーターの楠本さんは、10年前にカフェを出店して、うまくいかずに撤退した、というお話でしたが、ちょっと時期尚早だったのですね。
私が見るところ、カフェにしろレストランにしろ、週末に外食する人の絶対数がまだ足りないように思います。
県外からのお客さんも、日曜日の3時頃に帰っていくのですよね……。
「それって、早くない?」
「でも、道が凍りますからね……」
いや、夏でも高速道路に通じる道は3時頃から帰路の渋滞が始まります。

でも、この10年で少しずつ、センスと元気の良い小さなお店が確実に増えてきていますね。
たいてい、30代のオーナーさんだったりシェフだったりします。
そういうお店が潰れると困るので(笑)、サポーターとしてかなり頻繁に通っています。
景観にしろ飲食店にしろ、支えているのは結局は「人」なんだと思います。
by osumi1128 | 2008-01-31 00:47 | 雑感 | Comments(0)

グローバル化を阻むもの

グローバルCOEの国際カンファレンスに引き続いて、CREST「脳学習」の小林チームとの合同研究会を終えてお昼に帰仙しました。
こちらは昨年は福島の方で開催していただいて、今回は仙台の方がお世話係になっての開催でしたが、若手の発表、若手の座長ということで盛り上がりました。

さて、1つ前のエントリーで「無事に終了」と書いたのですが、実はさにあらず。
木曜日、金曜日の蔵王が吹雪きだったことは仕方ないとして、一つ大失敗をしてしまいました。
旅費の手続きに必要な書類として、コピーを取るために外国からのゲストスピーカーのお一人のパスポートを水曜日の朝に仙台のホテルを出るときに預かったのですが、それを返却しないまま、その方は東京の用務に向かわれました。
その晩、パスポートが無いことに気付いてこちらに連絡され、「すみません! それは私がまだ預かっています!!!」ということが判明。
幸い、出国は日曜日の朝なので、時間的な余裕はそれなりにあったのですが、宅急便で送るのはなぁ、と思っていたところ、東京エリアからの参加者のMさんが、「僕は金曜日の夜に帰るので、そのときに届けましょうか?」と申し出て下さいました。
昨晩、ゲストスピーカーからも受け取った旨のメールが入り、一件落着。
やれやれ……。
Mさん、本当に有難うございました。

*****
上記の失敗の言い訳をするつもりはないのですが、実は今回、グローバルCOE主催で国際カンファレンスを開催するにあたり、事務処理等でさまざまな困難に直面し、パスポートの返却忘れも、若干の関係があります。

そもそも、日本の多くの大学では、海外への送金ができません。
したがって、講演者を招聘する際には、その費用は日本円で支払うか、日本の銀行口座への振り込みになります。
で、航空機等の運賃について、見積もりの書類も必要なので、今回は、日本の旅行会社を使うことにしました。
さて、その航空運賃なのですが、例えば、サンフランシスコの方に来ていただくとしたら、自宅(もしくは大学)からSFO空港まで、まあ、普通は自分の車で行きますね。
車は駐車場に停めておくでしょう。
その駐車場代は旅費には入れられないのですね。
で、成田から仙台までは、「最低運賃」にするために、(書類上)上野から(成田エクスプレスではなく)京成ライナーを使っていただくことになります。
成田ー仙台便の連絡が良かったとしても、これは認められません。

さて、仙台、蔵王の滞在が4日だったとします。
この費用はどう計算されるかというと、まず、招聘者の「略歴」の提出を求められます。
諸外国では年齢はかなり個人情報なので、略歴にも書かないことが多いのですが、それも出せ、と言われます。
まあ、普通は「手続きに必要なので、教えてね」と訊けば答えてくれますが。
なぜ、年齢や略歴が必要かというと、それによって、「日当・宿泊費」の単価が計算されるからです。
つまり、実際にかかった費用が支払われるのではなく、若い人、Assistant ProfessorとシニアなFull Professorでは日当・宿泊費が異なるのです。

さて、上記のように、駐車場代や仙台ー成田便を申請できないことなどもあるので、「謝金」を支払ってカバーしようと考えるとします。
すると、ここに「税金」がかかってきます。
招聘者は当然、アメリカ在住なので、税金はそちらに払っているので、日本に支払うのは適当ではありません。
そのことを証明するために、Internal Revenue Serviceというところが発行する証明書が必要です。
単なる「税金の支払い明細」等では駄目だと、仙台中税務署から言われました。
これを手に入れるには1ヶ月くらいはかかるとのことです。
もし、この証明書を提出できないと、税金は、謝金だけでなく、旅費、宿泊費等すべて含めた費用全部にかかってきて、それを誰かが支払わなければなりません。
(今回の場合には、私が拠点リーダーですので、私に払えということでした。大学が被ることができないので。本当に払わなければならなくなると数万円に上ります)
で、「証明書が必要なので、持ってきてね」とメールには書いたのですが、やはりそんなことは一度もしたことがなく、持ってきた書類はやはり訳にたたないということでした(溜息)。

さて、実際に招聘者が来ますと、本当にその人が日本に来た、ことを示す書類として、パスポートの顔写真等の頁と、入国スタンプが押してある頁をコピーする必要があります。
(これは、まあ、仕方ないかなと思います)
さらに、航空券の全体のコピーと半券(stub)を出せと言われます。
航空券がどんどんEチケット化している時代に、そんな紙はなくても飛行機に乗れてしまうのですが。
とどのつまりは、復路の半券も帰ったら送れ、と言われます。
(ちゃんと来たかどうかは重要ですが、出国したかどうかは、本来、国際カンファレンスを開催することと何ら関係ないはずですし、カンファレンスでちゃんと講演を行えばその費用に見合う労働をした訳で、帰ってからまで何かしなければならないのはtoo muchだと思います)

……という訳で、外国人を10名呼べば、上記の手続きが10倍かかることになります。
こんな状態で、「グローバルCOE」として、より国際的な教育研究拠点として活動せよ、というのは矛盾もよいところです。
また、現時点では事務方の大多数の英語力が、上記のようなやりとりを直接招聘者とするレベルにはないため、本来、研究者がしなくても良いはずの用務に時間を取られることになります。
つまり、日本全国で研究力が損なわれている訳です。

日本が本当に国際化を目指すのであれば、こういう事務処理の合理化を図らなければなりません。
海外からの招聘にあたって必要な書類は、旅行計画、航空券等の領収書、パスポートの写しくらいで良いと思いますし、ホテル代や食事代はかかった分を大学が直接支払えば済むことです。
国際競争力をつけるということは、無駄なところにエネルギーを使わないことだと思います。
どうも、日本は参勤交代の時代から、必要ないことまで真面目に仕事にしてしまう傾向があり(鎖国の世の中で徳川安泰のためには良い制度だったかもしれませんが)、今、変えなければ駄目だと感じます。
by osumi1128 | 2008-01-27 01:10 | 科学技術政策 | Comments(0)

国際カンファレンス@蔵王無事終了

今日は朝から蔵王は吹雪でした。
お陰様で、第1回めの東北大学脳科学GCOE主催国際カンファレンス@蔵王が無事に終了しました。
海外からの参加者も、背骨の具合が悪くなったというお一人を除いて皆来て下さいましたし、昨晩のポスターセッションにもずっと付き合って下さいました。
拠点メンバー以外の研究室からも多数の参加者があり、合計で80名くらい。
とくに、若い方達がたくさん(もちろん、英語で)質問をしていたのが良かったです。

NHK仙台支局の記者さんも取材に来て撮って行かれました。
何事もなければ、本日の「てれまさむね」で放映されるでしょう。

オーガナイザーのY先生と、研究室の方々、事務局の方々、お疲れ様でした!

*****
ところで、昨日、GCOEのweb担当の人といろいろ話をしていた折に聞いたこと。
「いつも、どんなキーワードでGCOEのweb siteを訪れるかを調べてますが、ここ数日の一番のヒットは、人名です。しかも、先生方の名前ではなくて、学生さんなんですよね」
「へー、誰?」
「Kさんですが」
「あー、F先生のところの学生さんね。最近、彼女の論文が出た関係で、どうもプレス発表だか、新聞報道だかがあって、それがかなり反響を呼んでいるせいだと思う」
「そうなんですか?」
「だって、<性格とBMI>(この場合はbrain machine interfaceではなく体格の指標の方)がテーマだもの。私は数日前に朝のラジオで聞いたけど」
別の方も「あ、それ、ネットで見ました」
「確か3万人だかなんだかくらいの、かなり大規模な疫学調査だから、それなりに<相関性>はでるのかもね」

という訳で、「脳科学を社会に還流する」のに、学生さんにも大いに貢献していただいているグローバルCOEなのでした。
by osumi1128 | 2008-01-24 17:48 | 東北大学 | Comments(0)

明日から東北大学脳科学GCOE国際カンファレンス

明日から東北大学脳科学GCOEの第1回国際カンファレンスが蔵王で開かれます。
昨日から本日と、ゲストスピーカーの外国人の対応に追われています。
とくにランチタイム・イングリッシュ・レッスンの受講者の学生さんやポスドクの方々には、「実践編」として担当の外国人を決めて対応をお願いしています。

本日は、世界遺産に登録されるのではと期待されている中尊寺に出向きましたが、仙台よりさらに数度低くて、めっちゃ寒かったです。
風邪気味のJohnを連れ回した格好になって申し訳なかった次第。

夕方、関係者2名のセミナーもあり、その後、welcome dinnerを近所の馴染みの店で。
by osumi1128 | 2008-01-22 23:16 | 東北大学 | Comments(0)

Stay hungry, stay foolosh(Steven Jobsの講演より)

数日前でしたか、ついにMacBook Airが登場!
ご存じない方は、今ならアップルのweb siteのトップをご覧下さい。
これは絶対に欲しいですね〜。
出張に2kg近いのMacBookを持ち歩いていて、いつ腰痛になっても可笑しくない状態ですから、健康のためにも是非必要です(って、言い訳?)
なんといってもスタイリッシュでカッコイイ!!!
初期トラブル回避のために、数ヶ月待つつもりですが。

さて、そのAppleの創業者の一人、かの有名なスティーブン・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの映像のサイトを、サイエンス・エンジェルのKさんが、昨日、MLで流して下さいました。

「自分は大学を出ていないので、今日は最もそれに近い日になりました。……これから皆さんに3つの話をします。……」
という出だしで始まる15分ほどの映像を観て、涙腺が緩くなってしまいました。

いろいろなバージョンがweb上に載っているらしいのですが、簡潔な日本語字幕付のものをご紹介します。
ジョブスの卒業式スピーチを字幕で
by osumi1128 | 2008-01-20 15:15 | 雑感 | Comments(0)

シンポジウム:未来を開く科学と市民

センター試験の日には雪が降りやすい、というジンクスは東京でもかなりの確率で当たると聞きますが、仙台ではちょうど昨晩降りました。
今朝はうっすらと雪の残った道路を歩いて研究室まで。
途中、スタバで朝食休憩しましたが、さすがに寒かったですね。

*****
東北大学のグローバルCOEの一つ材料インテグレーション国際教育研究拠点の先生から、1月29日に行われるシンポジウムのご案内を頂きました。
基調講演はナンシー・セルベジ(ハーバード大学芸術部セラミックス部長)という方で、
Artists engaged with Science and the challenges of Global Sustainability「芸術家として科学と地球的持続可能性の課題に取り組む」というタイトルとのこと。
午後の部のパネルディスカッションのメンバーもゴージャスです。
・キャシー・マグローフリン(全米森林協会上席副代表、PLT会長、パネル後に講演もあり)
・オリバー・ケルハマー(環境アーティスト)
・ルース・オゼキ(映像作家、小説家)
・ニコラス・クラフ(西イングランド大学初等教育部門長)
(ワールド・スタディーズ・トラスト理事)
・ナンシー・セルべジ(前述ハーバード大学芸術部)


そして、総合司会を行うスティーヴン・ヘッセ(「ジャパン・タイムズ」シニア環境コラムニスト、中央大学教授)さんは、ヘルマン・ヘッセのお孫さんなのだそうです!



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by osumi1128 | 2008-01-19 19:14 | 東北大学 | Comments(0)

瀬藤さんのセミナー、杜の都景観シンポジウム

お陰様でお腹の調子はだいぶ戻りました。
それだけのことで活動力が著しくアップしますので、やはり健康が一番です。
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本日は、脳科学GCOEの主催セミナーとして、このたび浜松医大の分子解剖の教授になられた瀬藤光利さんをお呼びしています。
昨年、Cell誌に発表された論文でカバーを飾り、それが荒木飛呂彦さんの漫画だったために、生命科学業界以外からのアクセスが殺到して、なんとCellのサーバが一時ダウンした、という逸話を持つ方です(笑)。

【セミナーを終えての追記】
昼休みの時間に慌ただしくエントリーしましたので、セミナー後の追記です。
今日のセミナーは薬学系の方々も多く参加されて盛況でした。
「詳しくは論文を読んでいただけばよいので……」ということで、大きなブレイクスルーを生みだすような画期的なイメージング系技術開発の歴史や、ご自身の研究スタイルに至った背景などを中心に話され、とても面白かったです。
個人的には、「質量分析でイメージング」ができると考え、田中耕一さんがノーベル賞を受賞される前に島津製作所に持ち込んで機器開発をされたということが、やはり、人と違うなぁと思いました。
まだ助手の頃だったということで、他の会社からは断られ続けたところに、島津は引き受けたというのも、やはり、田中さんが育てられた土壌が反映しているのでしょう。

夕ご飯は学生さんやポスドク数名と一緒に和食系へ。
いろいろな話題が出ましたが、荒木さんのお話になり、「アートとサイエンスの共通性」「独創性を生みだすには」といったことが印象に残りました。
浜松に新しい研究室を立ち上げ、教育のdutyが増えるのは大変かと思いますが、是非また御来仙頂きたいと思います。

*****
来週29日に「杜の都景観シンポジウム:杜の都の魅力と創造」というシンポジウムがせんだいメディアテークで開催され、そちらにパネリストとして参加することになっています。
第10回目になる仙台市都市景観賞の表彰式も兼ねていて、今回の都市景観大賞は「テレビ塔ライトアップ」です。
研究室から自宅に帰るときにも3本のテレビ塔がよく見えますが、なんといっても、新幹線で帰仙するとき、車内放送で「まもなく仙台到着」を告げる音楽がかかる頃、ちょうどよく見える、という条件付けが為され、この美しいライトアップを見ると「戻ってきた」という感覚になります。

昨日、このシンポジウムのコーディネーターをされる金沢大学産学連携室コーディネーターの小松俊昭さんが仙台市都市景観課の方とお見えになり、簡単な打合せをしました。
小松さんは金沢市の方で地域のブランディングや都市再生に関わっていらっしゃるとのことでした。
金沢は何故かこれまでご縁がなく、まだ一度も訪れたことがありません(涙)。
是非、これを機会に、新しい金沢駅東広場や金沢21世紀美術館を訪ねたいと思いました。
by osumi1128 | 2008-01-18 12:42 | サイエンス | Comments(0)

つながる科学

年末に罹った腸炎の再発(なのか、再感染なのか?)で、この2日、お腹に力が入りません。
ラボドクターのMさんに伺うと、やはり最短の治療は「食べないこと」というので、やっぱり、少し良くなったからといって食べないことにします。
基本的に薬を使うのは好きではなく、痛みがあるのは無理をするな、という身体からの警告と受け取って養生するしかありませんね。
死ぬような病気ではないので。

*****
14日の日経朝刊の紙面に「科学技術立国の裏側ー中ー 意識改革、企業の戦力に」というコラムが掲載されていて、東北大学の高度技術経営キャリアセンターのことも取り上げられていました。
ここしばらく、メディアで「博士の就職難」という論調の記事が続いて、各方面で「そんなことはない。雇用した企業の満足度が一番高いのはPD>博士>修士>学士というデータがある」と訴えてきたのですが、今回の日経の記事はこれまでよりも好意的と思います。
現状を変えるための取組のいくつかを具体的にレポートしています。
最後の結びは、早稲田大学のプロジェクトに関わる方の談話で、「本当は大学の研究しかアタマにない教員の意識改革こそが必要だ」となっていました。
実際のところは、これは高いハードルです。
そういう先生のところに行かないことが先決かもしれません。

もちろん、アカデミアにはアカデミアにしかできないことをするのがまず第一で、そうでなければ利益を追求する企業体になるべきだと思います。
そのために、研究に税金が投入されるのであれば、その分のCSR (cooperative social responsibility)が必要なことは、私には自明に思えます。
それは、「この研究は<役に立ちます(役にたつはずです)>」ということを伝えるだけではないと考えます。
「この研究には、こんな歴史があって、こんな人たちが関わってきて、今、こんなことが面白くて、世界的にはこの研究室はこんな位置づけで、これからこんな風に発展するのではないか」ということそのものを、市民に<伝わる>ようにしていかなければならないと思います。

5号館のつぶやきさんの数日前のエントリーでヒトの研究が始まる時、動物の研究が終わるという記事が書かれました。
その中で、次のようなくだりがとても気になりました。
 その頃でも、ウニやカエルの受精研究の意義を述べる時に、それが「ヒトでは研究することが困難な受精のプロセスを明らかにすることに貢献する」ということを強調して、論文のイントロやディスカッション、さらには研究費の申請書類に書かれるのが普通でした。今でも、ヒト以外の動物を使った研究をしている我々が論文を書いたり、特に研究費の申請をしたりする時に、その意義を強調する時に「ヒトでは研究することの難しい**の研究の基礎データを得るために有用な研究である」などということをついつい書いてしまうものです。


たぶん、研究者自身がこういう考え方の呪縛から解かれなければならないのではないかと感じました。
本当に面白いことは、科学や生物学の素養がない人が見ても面白いはずです。
絵画や音楽のように、知識がなくても(あればあったでもっと面白いですが)楽しめるのに近い共感は、純粋科学でも得られるのではないかと思うのです。
でも、そのためには<伝わるようにする>努力も必要なのだと思います。
大学にしろ、学会にしろ、アカデミアの中だけで閉じていて、研究費申請のときだけ「これは、きっと将来、役に立つでしょう」と逃げていてはいかがなものか。

先日紹介した文科省の会議では、委員のお一人のTさんが「こういう予算で、基礎的な発生や再生の研究も支援されるべき」と述べられていました。
私は基本的に、極めて基礎的な、生命の基本原理を明らかにするような研究が、これからも日本で脈々と続くべきと思っていますが(そういう伝統があったからこそ、山中先生のiPS細胞に繋がったと思います)、一方で、この予算にお金が付くから、関係ありそうな研究ならそこに乗っかろう、というのはどうかと感じます。
やはり、基本的には「個人研究」が大事にされることが研究費制度の根幹にあるべきで、もう少しそのあたりの制度設計がしっかりしてほしいと思っています。
省庁も、「いかにiPS細胞につぎ込んで、それによって成功したか」に乗っかりたいというのは、箱物行政に似た短絡さを感じます。

再度<伝わる科学>の話に戻ると、そのためにはいろいろなレベルの仕組みや仕掛けが必要だと思います。
「知ることを面白い、楽しい、と思えるような」、あるいは「想像力を使わせるような」初等中等教育、お金だけが大事ではないという社会の雰囲気……そういったことも前提条件になるでしょう。
もちろん、アカデミアサイドの努力も不可欠ですが、アウトリーチ活動に長けた研究者ばかりではありませんから、いろいろな人の助けも必要だと思います。
研究って面白いと思って下さる市民、「それって、どこが面白いの?」と突っ込んでくれる評論家、研究者と一緒にボランティアをして下さる方、あるいは、何かの研究からインスピレーションを得て作品を創るアーティスト、そんな多様な方達とアカデミアが、企業までもが、つながったら素敵なのではと考えます。

よく考えると、「その研究って面白い!」と思って資金援助をしてくれる大金持ちがいたら、もっといいですね(*^_^*)
国にだけ頼るのもいかがなものかと。

【関連記事:リンク張り直しました】
先日届いていた、東京電力のCSRとして刊行している科学情報誌Illium第38号の特集が「発生・再生」でしたので、K_Tachibanaさんのこちらのエントリーをどうぞ。
by osumi1128 | 2008-01-16 22:29 | 科学技術政策 | Comments(0)

サイエンスとアートの良い関係

この連休は成人の日が1月第二月曜日に設定されたことによって毎年巡ってくるのでしょうが、おそらく全国的にお初釜を行っている社中も多いのではと思います。
私の師匠である先生のところでは昨日だったのですが、京都で用事があって今年は欠席。
三が日も着物を着なかったので、「そうだ、京都に着物で行こう!」と思って、濃い緑色の縮緬地に小さな羽子板の小紋で出かけました。
(ちなみに、以前、この小さな羽子板の模様を見て「これは酒瓶ですか?」と訊いた人がいました。季節を考えて訊いて欲しかったですねー笑)

インドほどではありませんが、伝統的な衣装を着る習慣が今でも残っていることはいいことだと思っています。
なんといっても季節感や物語があるし。
残念ながら、ボタンやファスナーなどの金属やプラスチックを使わない衣装なので、確かに着るには一定の技術が必要で、若干時間もかかります。
原則的には、丸ごと着物を洗うのは手間暇お金がかかるので、長襦袢の「半襟」を付け替えるのですが、一昨日の晩、久しぶりにお裁縫道具を取り出しました。
この余裕が普段はなかなかなくて……。
連休だったのは有り難いです。

着物は不思議なことに、かなり「直線」で出来上がっていて、それを「着付ける」ときに自分の身体に合わせます。
もちろん、身幅などは仕立てのときに採寸して合わせて頂いているのですが、それでも着付け方でゆったりともきっちりとも着られます。
この「直線断ち」の良いところは、畳んで仕舞うのに省スペースということもありますが、なんといってもリサイクルしやすいことです。
着物として仕立てられたものが、痛んできたらほどいて羽織になったり、襦袢になったり、あるいはパッチワークして座布団になったり、着物を包む布に生まれ変わったり。

今朝、一晩吊しておいた着物を畳みながら、そういえば英語では畳むも折るもfoldだなぁ……などと考えていました。

*****
土曜日の晩、NHK教育のサイエンスZEROで「アートと科学のフシギな関係」という番組を見ました。
植物が一杯並んでいるので何かと思えば、それらの植物から出る微弱な電流を音に変換して、訪れた人にリアルタイムで聴かせるとか、大きな鉄板の上に砂を置き、鉄板をこするとその振動によって砂が移動して、美しい幾何学模様になるとか、「光学」の発達により点描画が生まれたとか(これはよく知られたことだと思いますが)、非線形の式で描かれる模様をコンピュータ上で刻々と変化させ、そこで美しいと感じたものを残したグラフィック系アートとか……。

ディレクターは『論文捏造』を書かれた村松秀さん。
村松さんはアートもお好きなので、こんな番組を仕立てられたのですね。
コメンテーターは東大工学部教授の大島まりさん。
一昨年くらいにご出産され、しばらくお目にかかっていませんでしたが、サイエンスZEROにも復帰されましたね。
ご自身も綺麗な方なのですが、妹さんが建築家だとのことで、なるほどと思いました。

村松さんからご案内を頂いていて、この番組を見るために、土曜日、テレビのチャネルをしばらく前から教育テレビに合わせて待機していたところ(なにせ、ザッピングできない質なので、そうしておかないと忘れて他のチャネルを見続けてしまいます)、サイエンスZEROの1つ前の「トップランナー」という番組では「マガジン・デザイナー」の野口孝仁さんという方が出ていました。
an anやnonnoの時代から「雑誌」という媒体が結構好きで、女性誌に関してはかなり「創刊号マニア」でもあり、編集者という職業もやってみたかったものですから、この番組は思わず見てしまいました。

「究極のグリッド」を目指しているとのことで、あ、「グリッド」というのは、雑誌の誌面を区画に区切って、写真や文字を割り付けるスタイルのことなのですが、確かに、彼の手がけた『東京スタイル』などでは、それが際だっていますね。
逆に『FRAU』などでは「宝石箱をひっくり返したような感じ」になるよう、面白いコラージュがたくさん使われています。

今はデザインはほぼコンピュータ上で行う訳ですが、例えば表紙にどのように画像と文字を組み合わせるか、などの作業の際に「手で考える」という表現をされていました。
そして、「あ、ここ!」という位置がぴたっと決まるのだそうです。
こういう感覚は、実験をしているとき、データを見直しているときなどにもありますね。
逆に、「決まらない」感覚のときは、何かが足りない、何かがおかしい、というような。

*****
東北大学脳科学グローバルCOEでは、年度末に向けてAnnual Report(名称未定)を作成しようと計画していますが、どんなものに仕上がるか、どうぞ乞うご期待!
「伝わるサイエンス」「面白い脳科学」「リアルな研究者像」そして「脳科学なら東北大!」を目指します。
by osumi1128 | 2008-01-14 11:53 | サイエンス | Comments(0)

オールジャパンの幹細胞研究に向けて

今年初の出張は木曜日、文科省での「第1回幹細胞・再生医学戦略作業部会」という会議でした。
丸の内の三菱ビルの仮住まいからお引っ越しして虎ノ門の新しい庁舎に移ったのですが、コンビニやカフェなども充実して、霞ヶ関エリアの方々のQOLが少し向上したように思えます(^◇^)
会議は公開だったのですが、非常に多数の傍聴者があり、NHKのカメラクルーも入っていて、会議の前からテンションの高さを感じましたが、議事次第を見ると「副大臣挨拶」で始まるとのこと。
うーーーん、かなりの熱の入れようですね……。

今回の会議は、昨年11月に京大の山中伸也さんがヒトの皮膚の細胞からiPS細胞(inducible pluripotent stem cells)ーいろいろなメディアでは「万能細胞」と呼ばれる細胞ーを作ることに成功した、という論文発表を受けて、日本としてこの分野の研究体制を早急に戦略的に考える必要がある、とのことになり、年末ぎりぎりにメンバーが揃えられ、松の内の10日の朝からの会議となった次第です。

会議の内容はいずれ文科省のHPにも公開されるはずですが、とりあえずは、傍聴席にいらしたK_Tachibanaさんの投稿によるサイエンスポータルの記事をご覧下さい。

議論に移る前に、まず山中さんからの要望が述べられました。
12月に京都で開催されたシンポジウムは残念ながら参加できなかったのですが、ほぼそれと同じ内容とのことでした。
山中さんのプレゼンはいつもとても味があるのですが、「現在は駅伝を山中研が一人で走っている状態。アメリカでは<チーム・ハーバード>や<チーム・MIT>や<チーム・UCSF>などが第1区、第2区…と走りつないでいる。早急に、<チーム・ジャパン>を作る必要がある」という比喩で話されました。

ここからが大切なことなのですが、<チーム・ジャパン>として、<iPS細胞研究コンソーシアム>を作りたいというお話で、それはバーチャルな組織で、いくつかの研究室や研究者が参加し、連携を図って研究を推進し、全体として強い特許を取るなどを目指しています。
そのためには、いくら組織ばバーチャルといっても、具体的に国際特許を取るための人材(弁理士や英語が堪能な弁護士などなど…)の確保を、是非早急に行わなければなりません。
また、治療開発研究を進める上では、法整備も必要です。
受精卵から作られるヒトES細胞と違って、生命倫理に抵触することは少ないiPS細胞ですが、その利用のガイドラインを早急に作らなければならないでしょう。

私はこれに加えて、「コンソーシアムでは社会とのインターフェースとなる広報的人材も必要不可欠」ということを強調しました。
K_Tachibanaさんは「トップダウン的」というのはどうか、というご意見のようでしたが、私は科学コミュニケーションを専門とするポストの創出という意味では、トップダウンに行うことに、現時点で意味があると思っています。
このようなプロジェクトにおいて科学コミュニケーションの必要性が<見える>形になることが、大きな波及効果をもたらすと考えるからです。
このような立場の方は、元研究者(年齢問わず)でも構いませんし、ライター系の方で科学に興味のある方でもよく、数名がチームとなって自律的に進められるような体制が好ましいと思います。

ちなみに、すでに文部科学省再生医療の実現化プロジェクトでは(財)先端医療振興財団 研究事業推進課の方で広報関係をバックアップされているようで、おそらく12月25日のシンポジウム「多能性幹細胞研究のインパクトーiPS細胞研究の今後」の折に配布されていた一般向けのパンフレットは、なかなかよくできていたと思います。

iPS細胞はどうしてもその「応用面」が強調されますが、山中さん自身も繰り返し述べておられましたように、「今後、iPS細胞を使うことで、生命現象の基本原理がさらに理解されるようになる」といった「基礎研究面」も等しく大切です。
科学コミュニケーションでは、そういうことも伝える必要があります。
また、iPS細胞以外の幹細胞研究も並行して進めるべきでしょう。
さらに言うと、幹細胞研究だけが重要なのではなく、ライフサイエンス系であれば癌、免疫、脳科学など、それぞれが競い合って、全体として日本のレベルがさらに向上することが望まれます。

本当は、マウスのiPS細胞の論文が発表されたときには、次にヒトiPS細胞ができることはほぼ確実だったのですから、その時点でこのような会議を設定するべきだったのだと思いますが、それを今言っても始まりません。
とにかく大事なことは、いろいろな会議のために山中さんを引っ張り出さずに、研究に専念して頂けるような状態になるべく早くするということでしょう。

【追記:メディアの関連記事】
読売新聞
日経新聞
朝日新聞
毎日新聞

【追記2:K_Tachibanaさんの追加エントリー】
こちらになります。

【追記3:5号館のつぶやきさんの関連エントリー】
ヒトの研究が始まる時、動物の研究が終わる
私は必ずしもそう思ってはいませんが、それについてはまた改めて。
by osumi1128 | 2008-01-12 10:51 | 科学技術政策 | Comments(0)