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手の表情〜『手の美術史』読後感

数年前から毎年、慶應大学医学部のMCBIIという講義の1コマを担当しています。
メディカル系の基礎科目では、「発生学」は「解剖学」の中で扱われるのが伝統的なのですが、慶應さんのこの講義シリーズは、細胞生物学、分子生物学と発生生物学を合わせたような講義になっていて、まさに、日本の再生医療のメッカの一つである医学部に相応しいカリキュラム構成です。
しかも講師陣がゴージャスで(あ、私は別として……ですが)、それぞれの分野での専門家を揃えています。
ワタシだって聴きたいくらい。
大学院生やポスドクさん達も聴きに来て、教室はいつも満杯。
今日は、途中でこちらからの質問を入れたりしたので、ちょっと時間が押して、最後にたくさん質問を受けることはできませんでしたが、大学院生の質問を学部生が聞く、というのも良い勉強だと思います。

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愛読している「フクヘン。」さんのブログで紹介されていた『手の美術史』(森村泰昌著)をどうしても読みたくて、アマゾンで注文しておいたものが出張前に届いていたのですが取り込んでいて、先ほどやっと開くことができました。

中学の美術の先生は、今から思うと、ずいぶんといろいろな基礎を教えて下さったのだと気付くのですが、確か1年か2年生くらいのときに「手のデッサン」をしました。
自分の手にポーズを付けて、それを2Bくらいの鉛筆でスケッチブックに素描したのでした。
決して上手く描けたとは思えないのですが、描くことは楽しい、と思った記憶があります。
学部生の頃「組織学実習」でやらされた組織標本のスケッチは、どうやっても観たものの美しさを表現することができず、大いに挫折感を抱いたものですが、三次元的なものの輪郭などを捉えるのは、また異なる脳活動なのかもしれません。

森村泰昌というアーティストは、いわば「古今の名画のなりきりフォト」という作風で独自の世界を展開していて、例えばフェルメールなどがこんな風に扱われたりします。
「なりきり」といっても模倣ではない訳で、そのズレ感が現代的です。

本の中で取り上げられた「手」たちは実にさまざまな表情をしていて、本当に面白かったですね。
見てすぐ「あ、あれだ」と分かる絵も多いですが、分からなかったものは最後に「解答集」のように全体が載せられていて、ミステリー好きの心をくすぐったりもします(笑)。

それにしても手だけ見て「あ、あれだ」と分かる脳機能というのも、本当に面白い。
確かハトにピカソとルノワールの絵を見分けさせる、という実験があったと思うのですが、その場合に、絵をかなり細かく分割してランダムに再構築しても分かるらしく、ヒトの認知とは異なるのではないか、というような考察がなされていました。
でも、手という部分だけ見ても、「これはあの画家の作風だ」とか、「あのポーズから切り取られている」と気付くのですから、案外ヒトも、部分毎に画像記憶がストックされていたりするのかもしれませんね……。

数学科のK先生がお好きなカラバッジョ満載。
フェルメールは3点入っていて、もう一人気になるジョルジュ・ド・ラ・トゥールも3点ほどあったのですが、非常に気になる「ダイヤのエースを持つイカサマ師」が無かったのが残念。
この手の表情も面白いと思うのですが。
ちなみにカラバッジョのいかさま師より、こっちの方がもっとイカサマ師っぽいです(だからどう、ということはないのですが……笑)。
by osumi1128 | 2009-04-29 00:54 | 雑感 | Comments(0)

神経学会サテライトシンポジウム&CREST脳科学国際シンポジウム

1週間ぶりに戻って来た仙台は、お花見の頃よりも冷え込んでいて、ちょうどアイルランドと同じくらい。
月曜日朝なので掃除から始まって、いくつか会議もあり来訪者もあり、あっという間に夕方でした。
東北大学の生命科学研究科で毎年必修の講義として行われる「生命倫理」の講師として、京大の加藤和人さんが来仙されていたので、関係者数名と夕食をご一緒しました。
科学コミュニケーション業界でも名の知られた方ですが、海外のコミュニケーション関係の会合に日本からの参加が少ないことを嘆いておられました。

関連して、サイエンス・エンジェル・ブックを東京大学理学研究科広報の横山広美さんに取り上げて頂きました。
こちらのサイエンスエンジェルブックというエントリーになります。

本日はさらにお知らせをいくつか。
東北大学脳科学グローバルCOE拠点メンバーの糸山教授が会頭を務める第50回日本神経学会総会の市民公開講座が、下記の通り開催されます。現在、参加者の事前登録を行っています。

日時:2009年5月23日(土)12:30〜15:00
会場:仙台国際センター メインホール
テーマ:身近な脳と神経の病気を良く知ろう
講演:「脳卒中を予防し、治そう」 冨永 悌二
    「神経内科とは?—その病気いろいろ—」 田代 邦雄
    「パーキンソン病になったら」 水野 美邦
ウェブサイトはこちらになります。


最後は、藤田保健衛生大学の宮川剛さんと共同で主催するCREST脳科学国際シンポジウムのお知らせです。


CREST脳科学国際シンポジウム
「海馬ニューロン新生:神経機能と精神疾患への関わり」
6月2日〜3日
淡路夢舞台国際会議場
CREST「脳学習」大隅チーム及びCREST「精神・神経疾患」宮川チームは合同で、標記国際シンポジウムを開催いたします。
脳の発生発達、ニューロン新生、記憶と学習、精神疾患、モデル動物などに興味のある方におかれましては、ポスター発表等の積極的なご参加をどうぞよろしくお願いいたします。
詳細ページ、オンライン登録はこちら


本国際シンポジウムはSchizophrenia Research ForumというNPOのweb pageにも掲載されました。
論文やミーティング、グラントの情報まで掲載されているだけでなく、とてもインタラクティブなサイトになっています。
このようなNPOも研究サイドと社会の架け橋として重要ですね。

ポスターは下記になります。
(かなり良いデザインだと気に入っています♪)

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by osumi1128 | 2009-04-28 00:50 | お知らせ | Comments(0)

ロンドン経由で無事帰国

結局、最後まで目覚まし時計のセットの仕方が分からず仕舞いで、携帯アラームを朝4:27にセットし、モーニングコールを4:30に頼みました。
最近の目覚まし時計は多機能になっていて、しかも取説はないし……。
やっぱりシンプルな旅行用目覚まし時計を買わないと……。

学会の方で用意して下さったシャトルバスが5:30発で、その次の7:00の便だと、ちょっと不安だったので、雨の降る真っ暗の中の出発でした。
同乗者は5人いましたが、誰も無口で……(笑)。

シャノン空港に着いたのが6時過ぎ。
自分の乗る便は8:45だったので、アイルランド土産を買ってもまだ時間たっぷり。
小さな空港は歩く距離が短いなど、何かと楽な面も多いです。

10時過ぎにはヒースロー空港に到着。
ターミナル1からターミナル3にひたすら歩いて移動。
が、成田便のチェックインのためのカウンターは13:00以降にならないとオープンしないとのことで、……うーん、とにかく座るところを探して、例のワトソン先生の本を読破。
本というのは時間をつぶすのに最適ですね。
たしか「一人でしてサマになること」が本を読むことだと、林真理子が文春に書いていたと思います。

……という訳で、16:35発の成田便に無事に乗り継ぎました。

*****
最終日の話に戻りますが、新しいテクニックの紹介の中で、スイスのグループのBlue Brain Projectは圧巻でした。
個々の神経細胞の素過程のデータを何百万も組み合わせて、まずはラットの大脳皮質における神経活動についてスパコンなどを利用し、コンピュータ・グラフィクスで示す、という段階なのですが、建築学科の学生さんなども参加してのヘテロな集団によるプロジェクトだそうです。
結局、研究者が行っていることは、個々のデータの抽出で、それは定量的なものであればグラフなどにして示される訳ですが、それらを積み上げて再度CGにし、それを観ることによって脳の活動を理解するというのは、分かり方のレベルが変わってくるのだと直感しました。
ラットからマウス、霊長類、そしてヒトへと展開することが予定されています。
もちろん、発生の過程などをシミュレーションするという展開もあるでしょうし、神経細胞の数倍の数があるグリア細胞の働きも加味するという方向性もありますね。
見せられたCGはアートとしても非常に完成度が高くて素晴らしいものでした。

最終日、ポスターセッション2として発表を行いました。
ちょうど論文として出したところだったので何よりでした。
ランチタイムと夕方の2回のプレゼンタイムがありましたが、他の人のポスターを見る時間が足りなかったのが残念。

日本人参加者はいないと思っていましたら、現在留学中の方で一人、ポスター発表されていて、(オフィスへの電話は別として)学会中初めて日本語を使いました。
しかも、元々東北大にいらしたということで、世間は狭いです……。

最終日夜はGala Dinnerでした。
チケットは95ユーロと結構高めで、参加者は60名くらいだったかと思います。
講演会場だった部屋を2時間くらいでディナー用に配置換え。
前菜がスモークサーモン、メインコースは選択だったのですが、ダックをチョイス。
デザートはアイスクリームと何かの付け合わせ。
ダックは隣の方のフィレビーフの方が美味しそうだったのですが、なんとなくイギリスではビーフを食べない習慣になっていて……あ、アイルランドだったのですが(笑)。

スピーチなどいっさい無しに食事が始まったのは嬉しいことです。
おあずけ状態で長々とスピーチを聞くのは苦痛ですから。
デザートも終わりかけた頃に、主催者代表のKevin Mitchelから、関係各方面への感謝の意を込めた短いご挨拶がありました。
その後、アイルランド民族音楽とダンス(ダンサーの一人はKevinの姪御さんとか)のパフォーマンス。
ケルト音楽はちょっと演歌っぽい情緒感があって、元々好きだったのですが、ダンスを観るのは初めて。

*****
成田空港駅で電車待ちの間にエントリーします。
【画像追加です】
会場・宿泊施設だったManor Houseのロビー。グランドピアノの上に、いつも百合の花が活けてありました。この階段を上がって左側に、会場となったGalleryという部屋がありました。
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こちらもロビーの奥にあるマントルピース。気温は夜は10℃より下がりますので、いつも火が焚かれていて、なんともいえない暖かさを醸し出しています。夜に撮影した方が、そんな感じに撮れたかもしれません。
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アイルランド民族音楽のパフォーマンス。ちょっと暗くてすみません。男性がパーカッション。真ん中の女性がボーカルや笛。右側の女性は笛やバイオリン担当でした。
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メインテーブルにはKeynote Speakersが。
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私がご一緒していたテーブルの方々。
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こちらがダンスを披露して下さったお嬢さん方。タップダンスのように靴を鳴らすものもありました。
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by osumi1128 | 2009-04-26 13:14 | 旅の思い出 | Comments(0)

Limerickのお城を観に行く

本日3日目は、遺伝学寄りの話題が中心でした。
午後にオプショナルツアーの時間が設けられていて、バスで小一時間のところにある石造りのお城を観に行きました。
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約400年くらい前のものだそうです。
上の方まで上がるのに、狭い階段を上がるのが、ちょっと苦手。
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この一帯は観光客用に古い村の様子を再現していて(さしずめ明治村ってところ?)、ニワトリなどが放し飼いされていたり……。
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これはアイリッシュウルフハウンドでしょうか……。かなり大きい犬です。
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綺麗なお花は気持ちがなごみます♪
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この花は何というのでしょう?
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タンポポも咲いています。イースターが終わって春ですね。取り損ねましたが、八重桜などもあり。
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ツアーの最後は、本場のギネスビールを自分で注ぐ、という趣向。Englandと異なり、こちらのギネスはちゃんと冷えていました!
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ツアー後に、食事もまともにする時間なく、ナイトセッションが始まったのはきつかった(涙)。
リタイアしてやってみたいことリストの中に、小規模の学会や国際会議のお世話をするNPOを作る、というのがあります。
かなりリストの下の方ですが(笑)。
主催者を兼ねていると大変な部分もありますし、年会費を取る学会とは異なり自由度の高い運営形態が可能になると思います。
今回はオーガナイザーの一人のKevin Mitchelさんのご兄弟がツアー会社か何かをされているらしく、良い会場が手配できた次第。
豊かな自然の中での会議は、脳にとっても良い刺激です。
by osumi1128 | 2009-04-24 07:41 | 旅の思い出 | Comments(0)

2日目終了&科学者を育てるには

先ほど2日目が終わって部屋に戻りました。
皆さんこれからディナーに出掛けたりするのでしょうが、眠いのでリタイア。
日本人参加者がいない国際学会は久しぶりです。

さて、お約束の画像をアップします。

こちらが学会会場となったAdare Manor Hotelです。
ハリーポッターのホグワーツ校に見えません?
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川も流れていたりして、泊まっている部屋からも見えます。
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講演が行われるのはGalleryと呼ばれる教会のような部屋です。
天井がとても高くて、ステンドグラスなんかもあったりします。
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コーヒーブレイクはこんなお部屋です。
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2日目のランチタイム。
ま、味は問わないということで……(^_^;)
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*****
初日の夜、Keynote Addressをしたのが、古くからの友人John L. Rubensteinでした。
彼はスタンフォードの出身で、学位は生物物理。
ポスドクをパスツール研究所で行い(だからフランスが大好き)、戻って精神科医としての研修をした後に、UCSFでPI職を得た方です。
脳の発生メカニズムを知ることが精神疾患の理解につながるだろうと考えて、特異的に発現する遺伝子のクローニングを行い(今Dlx1と呼ばれている遺伝子は、最初彼の論文では娘の名前にちなんでTess-1と付けられてました)、さらにそのノックアウトマウスを作り、どんな異常が生じるか表現型を調べるというスタイルで一連の仕事を行いました。
その過程で、初期の脳がどのようにパターン化されるか、別の言い方をすれば、神経系のフレームワーク構築の遺伝的プログラムを明らかにしていきました。
そして今、ついに精神疾患の解析のところまで辿り着きつつあります。
彼の場合には自閉症をターゲットとしています。

2日目のKeynoteはフランスINSERMの認知イメージングユニットを率いるStanislas Dahaeneという方でした。
こちらは初めてお目にかかるので、Wikipediaで調べたところ、元々は数学を専攻され、その後、実験心理学により学位を取り、認知機能の理解をテーマにしています。
今回のタイトルはWiring the Brain for Reading and Math: the Neuronal Recycling Hypothesisとなっていました。
生まれつき何も書きこまれていない状態から、すべて学習によって習得するのではなく、すでにインストールされている脳機能を使い廻すことによって、「読み書き」や「そろばん」を会得する、という説を主張しています。

お二人とも、現職に就くまでのキャリアパスに幅がありますね。
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ちょうど、今年度もまた文科省の人材委員会に関わることになり、科学技術人材育成について、第4期の基本計画策定も見据えた議論を行うので、いろいろな方がどのような道を歩んできたのか、感心を持っています。
今回、旅のお伴に連れてきた本も、先日編集部より謹呈された『DNAのワトソン先生、大いに語る』(ワトソン著、吉田三知世訳、日経BP社)で、ワトソンおじいちゃんの自慢話でもあるのですが(笑)、彼の時代のアメリカの教育システムについて、なかなか参考になる記述があります。

例えば、1940年代のシカゴ大学やインディアナ大学では、30代(!)の学長が大学改革を進めたこと。
学長というのは、学問を成し遂げた方の名誉職なのではなく、大学をより良く運営していくことを専門とする方であるべきなのかもしれません。
また、大学や大学院ではきちんと講義がなされ、それは比較的少人数のクラスで、学生の理解度や進路によって、多様な選択肢があることも、日本との大きな違いでしょう。
そのためには、教員の数は現状の4倍くらいは必要ですね。
大学1年の頃から、どの講義を選択するかなどについても相談できるアドバイザーも大切でしょう。
また、良い教員・研究者をリクルートするためには、教授会の民主主義に任せていては難しいかもしれません。

それにしても、日本の大学における「専門教育前倒し」はいつから始まったのでしたかね?
これに加えての「理系文系」を高校時代から分けることも、学問の幅を狭くし、学際的研究人材やイノベーション人材を育てるにはほど遠い高等教育体系になってしまったことは、ポスドク問題よりもさらに根が深いと思います。
「数学が苦手だから文系」「英語が嫌いだから理系」って、高校2年までに進路を決めて、それで良い訳ないでしょう???
「専門前倒し」も「理系文系」も、効率を追求する(but必ずしも合理的ではない)日本人のメンタリティーの表れなので、改革は容易ではない気がします。
……とはいえ、このままでいいのか? どうするニッポン!?
by osumi1128 | 2009-04-23 04:42 | 旅の思い出 | Comments(0)

東北大学「科学者の卵 養成講座」ほか

今朝は5時起き。
かつてギリシャでの学会に行く際に、寝坊して目的のフライトを逃した経験があるため、「寝過ごしたらどうしよう」とあまりに不安だったので、1時半、3時、4時半と起きていました。
だいたい90分の眠りのサイクルですね(笑)。
成田で「目覚まし時計」を買おうと思っていたのですが、時間も無くて忘れました。
リヨンのホテルにあった目覚まし時計は、本当にセットできたのかどうか著しく不安。
さらに、携帯アラームは何故かたまに働かないことがあり(例えば、メールの着信と重なったり、何時ジャストというアラームは「通知できませんでした」になるというアヤシイ動き)、絶対的な信頼性が無くて……。

ともあれ、モーニングコールも頼んでおいたので無事に起きました。
空港までは予約してあったタクシーで30分ほど。
エールフランスをパリで乗り継ぎます。
シャルルドゴール空港での待ち合わせが3時間くらいだったので、その間に昨日の画像をアップしたのでした。

で、無事に乗り継いで、アイルランドのシャノン空港というマイナーな空港に降り立ちました。
荷物も無事に出てきて何より。
またタクシーで宿泊先に向かったのですが、周りはイギリス郊外の田園風景。
って、ここはアイルランドなのですが、初めてなので、スコットランドとの違いがまだよくわかりません(笑)。
Adare Manor Hotel & Golf Resortというのは要するに、昔のお屋敷をホテルとゴルフコースにしたとところです。
後でまた画像は掲載しますが、ハリーポッターの世界に出てくるような建物。
芝生と樹木はターナーの絵。
4日滞在の間に、どこがアイルランドなのか判別できるようになりたいものです。

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さて、無事にワイヤレスのネットにお部屋からもつながり、一安心。
日本時間で夕方以降のメールをチェックしていましたら、数学科のK先生から、「東北大学 科学者の卵 養成講座」のHP開設のお知らせが届いていました。
なんとも可愛らしいロゴマークなので、是非みて下さい!

東北大学では、今年度の間に50回を迎えるサイエンスカフェや、三年間の科学技術新興調整費の支援が終わり、今年度から学内事業として継続されるサイエンス・エンジェル制度当脳科学グローバルCOEが主催する(元祖)「脳カフェ」など、さまざまな科学アウトリーチ活動を行っており、4月15日に開催された総合科学技術会議・第11回基本政策推進専門調査会における大学における科学技術理解増進活動の例として取り上げられましたが、なんと東北大学ホームページのトップページから探せないのですね。
今後は、このような大学のCSR活動こそ、HP等を用いた情報発信が必要だと痛感しました。
ちなみにご近所の秋田大学HPでは、トップページに社会貢献が載っているのは流石!
大学の規模などが異なるので、そのまま参考には難しいのですが……。

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学会はWiring the Brainというもので、神経新生、軸索伸長、シナプス形成等の分子メカニズムから、神経機能、精神疾患までをカバーするもので、まさに今の自分の興味の対象でした。
本日は18:00から最初のKeynote Lectureで、長年の業界の友人であるJohn Rubensteinが話します。
by osumi1128 | 2009-04-21 23:50 | 東北大学 | Comments(0)

リヨンにて〜ヨーロッパの路地考

ただ今シャルルドゴール空港にてフライト接続待ち。
1時間10ユーロのインターネットに繋いでいます(涙)。
値段が高いことだけでなく、英語版がちゃんと対応していないなど、この国でのアクセスには神経を使いますね……。

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今回の最初の訪問先はボジョレーワインでも有名なリヨンです。
実は、ローマ時代には首都だったということで、パリよりも古い歴史を誇っているとのこと。
残念ながら初日は22:10着のフライトで入り、翌々日の朝7:15に発つという短い滞在だったので、古い遺跡などを観に行くような余裕はなく、朝からインサ工科大学リヨン校の共同研究者の元を訪れて、東北大学—インサ・リヨン校の連携プログラムについての打合せと、セミナーをしてきました。

理工系のグランゼコールであるインサ・リヨン校は工学系や材料系が強い大学で、東北大との交流は、20年ほど前は研究者ベースだったのですが、昨年に連携についての締結を行いました。
今後はダブル・ディグリー等の教育レベルの連携を深めていく予定です。
この夏にサマースクールを開校し、東北大からの学生を15名程度、2週間ほど受け入れることになっています。
フランスへの留学のメリットとしては、お互いに英語が母国語ではないので対等な関係が築けること、なんといっても食べ物が美味しいこと、米国や豪州にはない歴史と文化に触れられることなどがありますね。
今回はライフサイエンス系の連携先について、脂質科学関係のMichel Lagarde博士のところと情報交換をしました。

ランチは打合せも兼ねて、いわゆるファカルティー・クラブで頂きました。
昼からワインがサーブされるのがラテン系の国らしい。
もっとも、午後にセミナーですからあまり飲めませんが(苦笑)。
前菜が生ハム、メインは鶏のカレー煮込み、クスクス添え、デザートにタルトタタン(林檎のタルト)。
ちゃんとコースになっているのがさすが。

14:00からのセミナーには30名くらいの学生さん、ポスドクの方、PIの方が参加。
アラキドン酸による神経新生向上効果について話しました。
さらにディスカッションをしてから、一旦ホテルに戻って、メールの処理やら何やら。
あっという間に夕ご飯の時間……。

夕食はLagarde博士と奥様、同じラボのPI格の部下に相当する助成、日本人ポスドクのMさんとご一緒に、旧市街に出掛けました。
ローヌ川の近くになります。
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Old CItyにはこんな感じの石畳の細い路地が。いかにもヨーロッパの歴史のある街の雰囲気を醸し出します。
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右側の白髪の紳士がLagarde博士、左側がNathalieさんです。
こういう石畳って、それにしても歩きにくいですね〜。
日本の平らでつるつるの道路に馴れてしまっていることを実感。
逆に、本場で作られる皮底の靴は、日本では滑りやすくて困るのですが、こういう石畳を歩くなら問題ない訳ですね……。納得。
こんな感じの外にも席のあるレストランが集まっています。
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お食事を頂いたのは、こちらのこじんまりとしたレストラン。

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前菜には「リヨン風サラダ」を頼んだのですが、どこがリヨン風かというと、ポーチドエッグを載せてあるところらしい。
日本風に言えば「温玉サラダ」ってことね。
で、メインディッシュはやはり、その土地の珍しいものにしようと思ってオーダーしたのがこちら。
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不思議な茶色い塊は、要するに豚の内臓等で作ったソーセージです。
リヨンに近いディジョンのマスタードのソースがかかっています。
味の方は、日本人Mさんが「お勧めしません」と言っていただけのことがあり(笑)、付け合わせのリヨン風ポテト(だったと思います。グラタンになっているもの)が一番美味しかったです。
デザートは、焼いたメレンゲ、アイスクリーム、その上に生クリームが載っかったものになってしまったのですが(←自分で頼んだくせに!)、ちょっと味が平坦で残念。
やっぱり、フランス語を勉強して、もっとちゃんとオーダーできるようにしたいです……(←リタイア後のwishing listに入れます)。

こちらは帰り道の路地。うーん、良い雰囲気♪
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こんなゴシック建築の教会もありました。
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遠くの丘にライトアップされているのはバジリクと呼ばれる聖堂。三脚などは使わないのでぶれてますが……。
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夜景の川も魅力的です。
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Lagarde博士、お世話になりました!
このお返しは仙台で!!!
by osumi1128 | 2009-04-21 17:02 | 旅の思い出 | Comments(0)

スキポール空港にて【画像アップ】

アイルランドで行われる国際学会出席と、それにからめて将来の共同研究先を訪問してセミナーと打合せをするために欧州出張です。
今回はオランダのスキーポール空港でトランジット。
訪問先がリヨンなので、ちょっと連絡が悪いフライトです……。

最近の出張ではコンピュータ持参が必須!なので、日本時間が常に表示されてしまうのが善し悪しです。
1週間くらいの欧州出張なら、あまり無理して現地時間に合わせるよりも、ひたすら「夜更かししているモード」で過ごすというのが得策と思っていますが、それにしても「今は日本は夜中の3時か……」と思うのは、ちと辛い……。

スキーポール空港もかなりのハブ空港で、人の動きは多いので、レストラン、カフェ、バー、ギフトショップ、デューティーフリー等充実しています。
面白いと思ったのは、花屋さんで、お花の種と球根(!)も売っていたこと。
あれー、スキポールは何度かトランジットしたはずだけど、気付きませんでしたね……。
チョコレートの塊を売っているカフェは、なんともヨーロッパ、です。
Bubblesという名前のシャンパンバーもお洒落。
明日以降に画像をアップします(デジカメとのコネクタが預けたキャリーバッグの中なので)。

成田便では、セミナー用のKeynoteファイルを作り、新たに抱えている論文のチェックをし、眠れなかったので映画を観ました。
2008年のアカデミー賞だった「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の特殊効果は凄いですね〜。
「老化したブラッド・ピットの顔だけを切り取り、別の役者の胴体と繋ぎ合わせる(Wikiより)」ことによって合成した画面とは!

*****
お約束の旅の画像です。
まずこちらはお花と球根のお店。チューリップはあとでトップ画像にしましょう。
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お花の種も売っています。ハロウィン用カボチャなどもあり。
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蓮もありました。この画像は、大船鎌倉の大仏なのでは?(めちゃ懐かしいです)
(注記:すみません、大船は観音様でした。こちらは鎌倉は長谷にあるむき出しの大仏様です)
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こちらは左がシャンパンバー、右がチョコレートやデザートが売りのカフェ。
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シャンパン、ワイン、ビールなどに合わせて、スモークサーモン等が食べられます。
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カフェオリジナルのチョコレート製品の数々。ここが最後の乗り換え空港だったらお土産に買うのですが……。なにせ旅の始まりなので断念(涙)。
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こちらが上記のチョコレートの塊。たぶん量り売りするのだと思います。
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by osumi1128 | 2009-04-20 02:59 | 旅の思い出 | Comments(0)

アラキドン酸のこと

世の中のボスにはひっきりなしに電話して、情報収集や根回しをされる方も多いですが、私は電話が苦手なタイプです。
会ってお話しするのは良いのですが……。

ですので、受ける電話も、そう多くはないのですが、今朝(って水曜日のことですが)メールの処理をしていたら最初にかかってきた電話は知らない方からでした。
ご家族に精神疾患の方があり、今回の報道を知って、「実験台にして下さい」と。
「申し訳ありません。臨床は行っておりませんし、個別のお問い合わせにはお答えできないのです。また、私たちは臨床につなげるための動物実験などの基礎研究を行っていて、臨床研究については、別の研究者がされることになると思います。云々」とお答えしました。
「何年かかったら臨床研究に進むのですか?」という電話の向こうの声の切実さに胸が痛みました。
最後には「是非、研究頑張ってください。応援しています」と仰って電話を切られました。

秘書さんや広報室の方で御対応頂いていることも多いのですが、新聞数紙に出たり、ネットでニュースクリップされているために、依然としてこういうお問い合わせ等が来ます。
きっと、山中さんのところなんて、日々たいへんなのではと推測します。

一番クリップされているのが下記の毎日新聞2009年4月8日付けの記事です。
<以下引用>
アラキドン酸:心の病に予防効果?…卵・海藻含有の栄養素

 卵や海藻に多く含まれる栄養素「アラキドン酸」が脳の神経細胞の生成を促すことを、東北大などが動物実験で突き止めた。神経細胞の生成の減少は精神疾患に関係しているとの説があり、食品が精神疾患の予防や治療に役立つ可能性を示した成果という。7日付の米科学誌プロス・ワンに発表した。

 アラキドン酸は脳の発生に重要な役割を担う脂肪酸の一種。全脂肪酸中に4%のアラキドン酸を含む餌を与えた母ラットの母乳を、生後直後の子ラットに飲ませると、神経細胞の生成数は、アラキドン酸なしの場合に比べ30%増えた。生まれつき神経生成が少ないラットに同じ餌を与えると、それまで見られた不要な音に反応しやすい状態が改善した。この状態は統合失調症患者らに見られる。

 アラキドン酸は体内で合成できない。大隅典子・東北大教授(神経発生学)は「脳の発生期に適切な栄養を取ることで、心の病を予防できる可能性がある」と話す。【西川拓】


こちらを読み直していまして、ちょっとだけ補足したいと思います。

アラキドン酸はリノール酸から酵素によって代謝(=変換)されることによりできますが、例えば遺伝子を元にしてタンパク質が合成される、という風には「合成」されません。
また、ヒトは比較的この代謝機能が十分ではなく、とくに新生児や老人では落ちていることが報告されています。
したがって、食物等から取り入れるべき必須脂肪酸として位置づけられています。

ちなみに、2007年7月、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)により設置された国際的な政府間機関であるコーデックス委員会の総会で、ベビーミルクの規格において、DHAを配合する場合同量以上のアラキドン酸の配合を推奨することが合意されたということがあります。
脳は乾燥重量の60%が脂質であり、その中の15%がDHAで10%がアラキドン酸であること、世界一健康だと思われている日本人の母乳のDHAとアラキドン酸の割合から、粉ミルクでも約1:1になるように、との規格に決まったと聞いています。
各国別に見ると、母乳中のDHAの量は(おそらく食生活の違いにより)大きな違いがあるのですが、アラキドン酸はほとんど一定であるということも、重要性を示唆する気がします。

食品でアラキドン酸の含有量が多いものは、100gあたりですと卵、豚レバー、わかめ、というような順番です。
(魚にも含まれますが、魚はDHAの含有量も多いということです。)
だからといって、もちろん単一の食品ばかり食べることはお勧めしません。
みのもんたさんが、毎日違うものを「お嬢さん、これです!」と勧めて下さることで、多様性が生まれている訳ですね(笑)。

誰かが「アラキドン酸って、何かの恐竜みたいな名前ですね」って言ってたけど、なるほど、確かに、そんな響きもありますね(^_^;)
by osumi1128 | 2009-04-16 01:42 | サイエンス | Comments(0)

『猿橋勝子という生き方』

京都までの新幹線の中で、岩波科学ライブラリーの近著『猿橋勝子という生き方』(米沢富美子著)を読みました。

プロローグは1954年3月1日のビキニ諸島沖で行われた米国による水爆実験のことから始まります。
広島・長崎の原爆の影に隠れ、第五福竜丸の船員達が第三の被爆を受けたことが取り上げられるのは、さほど多くありません。
この悲劇がいったい、どのように猿橋先生と関係するのだろうと思って読み進むと、いわゆる「死の灰」の成分を分析されたり、水爆実験による海水の放射能汚染について、米国側が主張していたものよりもはるかに酷い状況であるというデータを出されたのが猿橋先生だったのでした。

2007年に亡くなられた猿橋先生のお名前は、小さな時から母を通じて聞いていましたし、お名前を冠した「猿橋賞」は女性科学者に与えられる賞として30年弱の間にすっかり定着してきましたから(私たちの世代では数学科の友人K先生や、名古屋大学の森郁恵先生も受賞者です)、非常に身近な方のように思っていたのですが、科学の世界でどのようなことをされてこられたのか、きちんと理解していませんでした。

戦前の、まだ女性が大学に進学できなかった時代(1913年の東北帝国大学のケースは例外的なものです)、いったんは高等教育を受けることを諦め民間企業に就職したのですが、どうしても学びたいという欲求が高まって、猛勉強をして東京女子医専(現東京女子医大)を受験したこと、創立者であり憧れの吉岡彌生先生の面接を受けて、現実とのギャップにがっかりし、帝国女子理学専門校(現東邦大学理学部)に入学したことが、結果としては猿橋先生の進むべき道であったということでした。

いわゆる「外研」先の東京大学で手取り足取り教えられた三宅泰雄先生という師が最初から「研究者になるべき人物」として導いて下さったことが、人生で最大の出会いであったようです。

平塚らいてうから依頼され、「婦人科学者相互の友好を深め、各研究分野の知識の交換をはかるとともに、世界の平和に貢献する」ことを目的として掲げた「日本婦人科学者の会」を設立したのが38歳の1958年。
当時、米ソが行っていた水爆実験の危険性について主張した猿橋先生は、種々の婦人団体から非難を浴びる、なぜなら、それらの団体は親ソ連であったから、というエピソードは、今でも科学的データやそれにもとづく主張がさまざまな団体の哲学と合わないことによって無視されたりすることを思い出させます。

猿橋先生の女性研究者育成のスタイルは、「差別はおかしい」という理念を声高に叫ぶのではなく、まずは科学者としての研究成果で実績を見せるということがあり、さらに実際にご自分でアクションを起こされるというものでした。
退官記念のお祝い金を元に「女性科学者に明るい未来をの会」を創立し、「猿橋賞」を設立したのが1980年。
日本学術会議会員に立候補して初めての女性会員として当選(←当時のシステム)されたのが1981年。
学術会議の中に「女性研究者の地位分科会」を作られ、政府への要望を出さるなどの運動をされました。
さらに私財1500万円を投じて「公益受託・女性自然科学者研究支援基金」を設立され、上記「明るい未来をの会」の財政的基盤を作られました。

何よりも「科学を通じて社会貢献する」という哲学が猿橋先生の人生を貫いていたものだったと思われます。

ちなみに、この本の著者である米沢先生もまたパワフルな女性研究者です。
癌の手術をされた後の病室でも執筆されていたとのこと。
偉大な先輩の方々には頭が下がります……。
by osumi1128 | 2009-04-13 23:39 | 書評 | Comments(1)