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アルトマン先生国際生物学賞受賞記念シンポジウム

昭和天皇在位60周年を記念して制定された国際生物学賞の第28回目は、ジョセフ・アルトマン先生に授与されました。
その記念のシンポジウムが理化学研究所の発生再生研究センターで開催され、トークと座長をしてきました。
1925年生まれのアルトマン先生は御年87歳、数えで米寿ということですが、すこぶるお元気でした。
ちょうど成体ラットの海馬において、新たに神経細胞が産生されることをオートラジオグラフィーという方法で発見した論文が発表されてからちょうど60年というタイミングで、国際生物学賞という栄誉ある賞を日本から授与したことの意味は大きいと思います。

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国際生物学賞審査員の一人でもあり、シンポジウムをオーガナイズされた岡本仁先生が開会のスピーチ。
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成体脳神経新生を世界に広めたフレッド・ゲイジ研出身のゲール・ケンパーマン博士(右)、神経幹細胞の培養法開発で大きな貢献をされたデレック・ヴァン=ダー=クーイ博士(左)の奥に座っておられるのがアルトマン先生。
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同じく、審査員でもあり、天皇陛下へのご進講も務めた見学美根子先生のトーク。彼女は最後のアルトマン先生のご講演の座長も務められ、大活躍でした。
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富山大学の井ノ口馨先生は、CRESTの班でご一緒したことがきっかけで、成体脳神経新生の低下と、海馬からの記憶の消去との関係をCell誌に発表されました。その筆頭著者の北村さんがスライドに写っています。
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シンポジウム後に、発生再生センターのセンター長の竹市雅俊先生が持っておられたアルトマン先生のアトラス本にサインを頂いているところ。実は、竹市先生がお持ちだったThe Development of Rat Cerebellumは見学さんへ譲られていた、というエピソードがトークで披露されました。
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日本で最初にラットの神経新生について報告した石龍範先生も、編集されたNeurogenesisというSpringer社からの本にサインを求めて。

今回学んだいろいろなことは追ってまたブログでご報告します。
by osumi1128 | 2012-11-30 00:30 | サイエンス | Comments(0)

Reprint Cardというノスタルジー

昨日、第28回国際生物学賞の授賞式が、天皇皇后両陛下ご臨席をもとに行われ、米国パデュー大学名誉教授で御年87歳のジョセフ・アルトマン先生に、この栄誉ある賞が贈られました。
お昼の記念茶会では、皇后陛下と直にお話したニュー・ヨーク大学の方も「ハリケーンのこと、きっと回復できますから、頑張って下さいと励まされ、とても特別なかんじだった。素晴らしい!」と感動しておられました。
「天皇はこういうセレモニーが仕事なのか?」と問われたので、「いえ、一番メインのお仕事は、毎日、国民のために祈ることです」と答えたところ、びっくりしていました。
「だから、昨年の大震災が起きたことに陛下はとても心を痛めておられ、沿岸部の被災地に何度もご訪問になっています」と言うと、ちょうどハリケーンの後だったこともあって、感じ入っていたようです。

本日は、新学術領域班の合同の国際シンポジウムにも顔を出して、関係する方と学生さんの論文のディスカッションもあったのですが、夜は明日からのアルトマン先生受賞記念シンポジウムに備えて神戸に移動し、スピーカーズ・ディナーでした。
その折に、University College Londonの先生と昨今の論文事情などを話していた際、reprint cardの話になりました。

Reprint cardというのは、論文が雑誌に掲載され、その一部である自分の論文を「別刷りreprint」として綴じてもらったものを100部などオーダーしておくのですが、後日「貴方の論文のreprintを下さい」というリクエストが「葉書」で届くという時代がありました。
「いろいろな国々から、いろんな切手が貼ってあって、まだ当時学生だったのにDear Professor Dr. John Parnavelasっていう宛名で届くんだよね。あれは良いrewardだったなぁ……」

もちろん、今でも、「論文」はとくに駆け出しの若い方にとっては「名刺代わり」であることに変りはなく、セミナーに呼ばれたときなどには別刷りや自分で印刷したものを持参します。
また、オープン・アクセスになっていない雑誌の場合、図書館でその雑誌のオンライン契約をされていない場合には、「貴方の論文のPDFファイルを下さい」というリクエスト・メイルが届きます。
でも、そのような「電子リクエスト」よりも、リアルなreprint cardは、もっと自分の論文が出た喜びを実感として感じられる<ご褒美>だったのです。

話は「今の論文は、ちょっとチーム型が増えたことも、若い人たちにとって自分の仕事という感じがタイリなくなっているんじゃないかなぁ……」というあたりにも飛びました……。
「昔は良かった」というノスタルジーは、平安時代の文書にも残っていると聞いたことがありますww

明日のシンポジウムのスケジュールはこちら(PDF)です。
by osumi1128 | 2012-11-28 00:23 | サイエンス | Comments(0)

グローバル時代の「カタカナ語」

『三四郎』の最後は、主人公が美禰子をモデルとした絵の前で「迷羊、迷羊」と口の中で繰り返すシーンで終わるのだが、この「迷羊」にはストレイ・シープという送り仮名が振られている。
夏目漱石の時代に制定された旧日本国憲法は、漢字とカタカナで書かれていたが、現在の日本国憲法は、漢字と平仮名だ。
カタカナの変わりに平仮名を用いたことは、民主主義の時代に変わったということの象徴に見える。
「和語や漢語」を「平仮名と漢字」で表し、カタカナは外国語や擬音語・擬態語などの一部の言葉にあてる、というルールは、戦後に固まってきたのだろう。

明治維新の前後、当時の先進国である西洋諸国から、医学や科学の知識とともに取り入れた用語には漢字で表される日本語が対応している。
大学の授業で「<細胞>も<小胞体>も<染色体>も<遺伝子>も、中国語として先にあったのではなく、日本人が訳語として漢字を利用して新しく創造したのです」と話すと、中国人留学生が「信じられない!」と不服そうな顔をするが、このことは案外、知られていないことかもしれない。
例えば顕微鏡観察により発見されたコルクの断面の小さな区画に、もともとは「独房、小部屋」を表す「cell」をいう語があてられ、当時の日本人はその意見をじっくり考えて「細かい」「ふくろ<胞>」という言葉を編み出した。
そうやって、逐一、新しい日本語を創っていく作業そのものが、日本における近代化、西洋化のプロセスだったのだ。

思えば、日本は他国の文化・文明を、悪く言えば見境なく、よく言えば柔軟に受け入れる国民性があり、その参照先は、それぞれの時代に変わってきた。
明治時代頃までは、学者といわれる人たちが、ゆっくり訳語を考える時間があったのだが、今は、生命科学分野でも、ゲノム、エピジェネティクス、トランスポゾンなど、もう、訳語でなくて「そのままカタカナで行っちゃいましょう!」的な時代になってきた。
おそらく、もっと著しいのは情報科学分野ではないかと思う。
コンピュータのマニュアルを読むとカタカナが氾濫していて、私には日本語として意味が理解できないことが多い(苦笑)。
何より、それは日本語として美しくない。

だが、もし、現代のように世界中で物事の変化が速いときに、新しい用語をいちいち日本語に訳している暇が無いのだとしたら、その表記の仕方について、もう少し配慮をすべきなのではないだろうか?
おそらく、英語(などの原語)とそのカタカナ語の間にスムーズな参照が為されることが重要であるのだが、現在の日本語のカタカナ表記は、この時代の変化に対応できていない。

一例を挙げよう。
「東北メディカル・メガバンク機構では、ゲノムメディカルリサーチコーディネータを募集します。」

これは、英語で書けばgenome medical research coordinatorsなのだが、普通の方々がこの長いカタカナ語を見て、どこで区切るのかがすぐわかるかどうか。
では、元々の単語の区切りに「・」を入れて「ゲノム・メディカル・リサーチ・コーディネータ」とすればよいかというと、これはこれで長くなりすぎる。
最近、自分で書く文章の中のカタカナ語は、なるべく「・」を入れるようにしているのだが、確かに目立ちすぎという感じが否めない。
また、普通の「・」の使い方は「and」に相当するような「並立」の意味があるので、単に単語を区切りたいという意図とは異なる印象を与える可能性もある。

もう一つの大事な問題は、日本語の音は必ずしも他の原語の音に対応していないので、それをどのように表記するのが適切か、ということだ。
メディカルの「ル」は「l(エル)」の発音で、「リサーチ」の「ル」は「r(アール)」の音である。
あるいは、カタカナの「シンクタンク」は日本語の発音どおりであれば「sink tank」であって沈んでしまう!!!
かろうじて、私の好きな「ヴーヴ・クリコ」などは「v」の発音がわかる表記の仕方があり、これを「ブーブ・クリコ」と書かれたら美味しくなさそうに思うが(笑)、世の中では必ずしも浸透してはいない。
地元のFMで「ほーぷほーみやぎ」というキャンペーンを聞くと、一瞬、元の意味「Hope for Miyagi」が出てこない。

グローバル化に対応するために小学校から英語を教える、そのことも大事だが、私は日本語以外の言葉をカタカナ表記する際に、例えば少なくとも以下のようなルールにすることを提案したい。

・原語の単語の区切りに相当する部分には「半角スペース」を入れる
・「l」の音に相当する場合は「ラ* リ* ル* レ* ロ*」と表記する
・「th」の音に相当する場合は「サ* シ* ス* セ* ソ*」と表記する
・「f」の音に相当する場合は「ファ フィ フ* フェ フォ」と表記する
・「v」の音に相当する場合は「ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ」と表記する

これでも足りないところは多々あり、「メール*」よりは「メィル*」の方がベターだろうし、「ウェブ」もアクセントの位置が「ブ」であってはならないのだけど、とにかく、カタカナ語の表記を変えるだけでも、日本人にとっての英語の垣根が少し低くなるのではないだろうか?
グローバル時代に求められるのは、こういう小さな変革の積み重ねだと思う。
by osumi1128 | 2012-11-23 09:38 | オピニオン | Comments(1)

三度さきがけへ:東北大学の男女共同参画のこれからに向けて

d0028322_22495144.jpg前エントリーでご紹介しました、男女共同参画委員会による第10回東北大学男女共同参画シンポジウムが、総長、理事、関係各位ご列席のもとに、本日無事に開催されました。
ご来賓の文部科学省、板東久美子高等教育局長は、開会時のご挨拶から最後のパネルディスカッション、その後の茶話会までご参加頂きました。
板東局長は内閣府の男女共同参画局長時代から存じ上げており、文科省の生涯学習局長も歴任され、本年より、いわゆる大学=高等教育局のヘッドとなられた方で、確か、高等教育局長としては遠山敦子、元文部大臣に次いで二人目の女性局長だったかと思います。
最初のご挨拶も、たいていこういう偉い方の場合には、部下が原稿を用意して、それを読み上げるというパターンが多いのですが、原稿無しですべてご自分の言葉で語られました。
是非、遠山様元大臣に続いて、文科省のトップに、政治家ではなく行政官出身として、上り詰めて頂きたいと思います。
(ちなみに、我が東北大学総長の里見先生の開会のご挨拶も、原稿にほとんど目を落とすことなく、終始聴衆の方を向いて話されたのも、リーダーのスピーチとして「イイね!」と思いました。)

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by osumi1128 | 2012-11-18 23:39 | 東北大学 | Comments(0)

第10回東北大学男女共同参画シンポジウムのお知らせ

d0028322_20395750.jpg東北大学は1913年に日本で初めて女子大学生を受け入れた大学です。
当時、文部省からは「女子を入学させるとは、いかなることか?」というお叱りの手紙が届いたのですが、「大学として傍系入学を認めるポリシーである」として突っぱねた、というあっぱれな返信が歴史資料館に残されています。
平成13年から男女共同参画委員会が立ち上がり、昨年でちょうど10年目を迎えてシンポジウムを開催する予定が、震災により見送りとなりました。
今度の日曜日、11月18日に第10回のシンポジウムを開催します。
是非、多数のご参加をよろしくお願いいたします。

ちなみに、ご講演を行う経済学研究科の吉田浩教授は、これに合わせて世界32ヶ国の幸福感に関する調査結果に関するプレスリリースを出されました。
「女性の社会進出は男性の幸せを押しのけるか?」 -男女共同参画と男性・女性の幸福感- (PDF
要点だけかいつまむと、男性の幸福感と女性の幸福感の間には「正の相関」が見られ、女性の幸福感が男性より伸びたとしても、それによって「男性の幸福感が阻害される」ことはない、という結果だったそうです。

【関連拙ブログ】
梅の季節に:ロールモデルはキュリー夫人だけじゃない
【東北大学女性研究者育成支援推進室HP】
MORIHIME
by osumi1128 | 2012-11-15 20:43 | 東北大学 | Comments(0)

祝:大隅良典先生第28回京都賞ご受賞!

高円宮妃久子殿下を名誉総裁とする稲盛財団第28回京都賞授賞式および講演会にお招き頂きました。
今年は、Ivan Edward Sutherland博士(先端技術部門)、大隅良典博士(基礎科学部門)、Gayatri Chakravorty Spivak教授(思想・芸術部門)の3名に栄えある賞が授与されました。

サザランド博士はコンピュータ・グラフィックスや対話的なインターフェースの技術開発に関しての先駆的な業績を挙げられた方です。
またSpivak教授は、京都賞で初めてのインド国籍の受賞者で、『サバルタンは語ることができるか』という代表的な著作に表されるように、現代の「知と権力の共犯関係」を深く掘り下げるとともに、教育者として故郷やバングラデシュの農村での識字教育などを実践されています。
本ブログでは、もっとも分野の近い大隅良典先生について、一般向け講演会「酵母から見えてきたオートファジーの世界 —細胞内リサイクルシステム」の内容からレポートしたいと思います。
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画像は基礎生物学研究所プレスリリース(2009年8月10日)より
Developmental Cell電子版 7月21日号 掲載論文から引用

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by osumi1128 | 2012-11-11 21:05 | サイエンス | Comments(0)

帝王学&女王学

ミツバチやアリやハダカデバネズミは「女王」を頂点とする階級社会を構成している。
ミツバチでは「ロイヤル・ゼリー」で育てられた雌が女王になるというから、氏より育ちなのだろうか。

人間の場合に、いわゆる「帝王学」と呼ばれる後天的介入がリーダーを育てるために必要であることは古今東西、いろいろな事例がある。
「鞄持ち」やら「私設秘書」やら、いろいろな言い方もあるが、要はon the job training(OJT)をするときに「コイツは磨けばもっと輝くだろう」と思う部下には、さらに一段上の教えを授ける訳だ。
アカデミアの世界でもそれは同様。
良いラボの出身者が良い業績を挙げるというだけでなく、研究費申請書の書き方や、面接での受け答えの仕方なども、下書きや陪席をさせることによって身につけさせることができる。

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by osumi1128 | 2012-11-08 18:27 | 若い方々へ | Comments(0)

ビューカード申請で気づいたJR東日本の旧体制の部分

d0028322_2025182.jpg311東日本大震災の起きたのは14:46でしたから、皆、午後の業務に勤しんでいたところです。
もちろん、JR東日本管轄の東北新幹線もそれぞれの車両が時間通りに運行していたはずですが、エリア情報が伝わって地震の9秒前に非常ブレーキがかかったということで、結果的に誰も負傷しなかったというのは、日本の技術の素晴らしさだと本当に思います。

……が、そういうハードの部分ではないところでは、ちょっと「イケてない」ことに気づきました。
ことの発端はというと……

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by osumi1128 | 2012-11-04 20:48 | 雑感 | Comments(2)

祝:山中さん文化勲章受章と再生医療の未来

11月3日は文化の日。
Wikiせんせいによれば、その謂れは以下のようになっています。
1946年(昭和21年)に日本国憲法が公布された日であり、日本国憲法が平和と文化を重視していることから、1948年(昭和23年)に公布・施行された祝日法で「文化の日」と定められた。日本国憲法は、公布から半年後の1947年(昭和22年)5月3日に施行されたため、5月3日も憲法記念日として国民の祝日となっている。

なので、「ハッピーマンデー制度」の対象ではなく、今年のように土曜日に当たると「残念」な感もあり。
いっそのこと、ハッピー・フライデー(土曜日が祝日の場合には金曜日が振替休日)にしたら良いのではないかしらん?
個人的には月曜日が休日にずれるよりも、早く週末が来る方がリズムが乱れなくて好きですね。

さて、文化の日には文化勲章が天皇陛下から授与されるのですが、山中伸弥さん、ノーベル賞受賞後、このたび文化勲章も受賞されます。
重ね重ね、おめでとうございます!
その報道を取り上げるタイミングを逸してしまったのですが……
産経ニュース:山中伸弥さんが喜びの会見「感謝したい人の名前だけで本になる」
東北大学プレスリリース:小田滋本学名誉教授が平成24年度文化勲章受章候補者に決定

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by osumi1128 | 2012-11-02 17:29 | サイエンス | Comments(0)