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『論理が伝わる「書く技術」』

d0028322_22484371.jpgかつて企業は大学に期待することなく、独自に人材を育てる余裕があったものが、昨今は即戦力が求められるということで、「コミュニケーション力」などを付けてほしい、という要望が強いようですが、それって、そもそも高度な専門教育を行う大学・大学院で行うべきことなのか、よくよく考えると変な気がします。
日本語だけでも良いので、人の話を聞くこと、メモを取ること、資料を調べること、自分の意見を言うこと、長い文章の要旨や会議の議事録をまとめること、論理的な文章を書くこと、これらは、高校までに身に着けておいて頂く訳にはいかないのでしょうかね?
そういう基本的なスキルがあった上での専門教育なのではないかと、ふと思うのです……。

とはいえ、現状がそうでないので、大学のセンセイは学生さん(だけじゃないけど)に対して各種文章の「添削」(←この言葉は好きではありませんが)をするのがお仕事の結構な部分を占めることになります。

最近読んだスキル本の中で、『論理が伝わる「書く技術」』(倉島保美著、講談社ブルーバックス)は、文章作成のノウハウがとてもわかりやすくてお勧めです。
副題の<「パラグラフ・ライティング」入門>が、この本のエッセンスですね。

「おわりに」から引用します。
 文章指導をしていると、「なぜ、日本では論理的な文章の書き方を、大学で指導しないのですか?」と質問されることがあります。私には2つの理由が考えられます。

 1つは、コミュニケーションを重視しない文化だからです。日本人はもともと農耕民族(=定住)であり、ほぼ単一民族なので、日本はハイコンテクスト文化と言われます。つまり、明確に伝達せず、相手の意図を察しあう文化です。そのため、明確に伝達することにあまり価値を置いていないのです。

もう一つが何かは、本書を読んでみて下さいww

来年は、「研究推進・倫理ゼミ」でプレゼン・スキルを教えるときに、少し「文章作成との対比」を取り入れてみようかなと考えました。
by osumi1128 | 2012-12-22 22:56 | 若い方々へ | Comments(2)

今どきの男女共同参画とは?

数日前に、内閣府男女共同参画局からの報告書「男女共同参画に関する世論調査(平成24年10月)」が発表になり、ちょっと話題になっていました。
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(この図はFacebookで標葉龍馬さん作成のものを拾ってきました。元図よりはるかにわかりやすい)
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきか?」という問いに、賛成、どちらかと言えば賛成、どちらかと言えば反対、反対、わからない、という選択肢があり、その回答(この図では「わからない」を除く)を男女、年齢別にグラフにしたものです。

全体的には、男性がこの考え方に賛成が多く、女性の反対が多いのですが、年齢別に見ると、若い女性のところが微妙に「コンサバ」的だという点が面白い。

これに対して、各種新聞の論調が異なるという御指摘があったので、それも載せておきます。
朝日新聞:「夫は外、妻は家庭」初の増加 20代顕著、内閣府調査
読売新聞:「夫は働き、妻は家庭」20歳代男女で大幅増
産経新聞:震災のせい?「妻は家庭を守るべき」51% プラス10ポイント、初の増加
Wall Street Journal(時事通信):「妻は家庭」5割が賛成=初の増加、反対上回る—内閣府調査

私は、今どきの若い女性が「やっぱり結婚して、家庭に入って楽したい♬ そういう白馬の王子様が見つかるまでは働こう」というような意識なのかなぁ、と思いました。
(結婚適齢期の30代男性は、すでに「いや、僕だけの収入じゃ足りないから、君もちゃんと働いてよね」と考える人が多くなっているのに対して)
もしかして、自分のお母さん世代は、悠々自適で、お父さんよりも生活をエンジョイしているように見えるのかもしれません。
でも、最近の経済状況から、白馬の王子様はなかなかいないのですね……。
例えば、こんな記事があります→「丸の内OL「私の2倍の年収じゃないと結婚イヤ!」

こういう状況が、晩婚化と少子化を招いているように思います。
そして、生物学的には、晩婚化も(男女ともに)少子化も、人類自身のサステナビリティという意味では非常に問題なのですが……。
by osumi1128 | 2012-12-20 00:16 | オピニオン | Comments(1)

これからの分子生物学会

第35回日本分子生物学会が阿形清和先生を年会長として、「年会の新しい姿を模索する」というテーマのもとに福岡で開催されています。
演題同士の関係がわかる、iPadやスマホに適したwebサイトの構築や、ポスターの3分トークなど、いくつもの斬新な取り組みがあります。

前日の理事会から出向いて、初日のシンポジウム「大量シークエンス時代の医療分子生物学」、男女共同参画委員会主催ランチョンイベントと緊急フォーラム「研究不正を考える」に参加しました。

「ヒトES/iPS細胞における、遺伝子発現およびDNAメチル化の大規模解析」という演題を、山中伸弥さんが話すはずだったのですが、ノーベル賞授賞式と重なって、代わりに大学院生の大貫茉里さんが発表し、冒頭のジョークから最後の総合討論まで、実に立派な発表でした。

今回のランチョン企画「全員参加の生命科学研究を目指して(パートII:生の声を聞こう!」は、後藤由季子委員長からのこれまでの活動のまとめの後、塩見春彦先生のご講演「意識改革の必要性について」があり、男女ともに無意識のバイアスがあることなど指摘されました。
(先日のNAISTで紹介した「女子学生の方が成績はいいんだよね……」というのも、そういうバイアスが露呈している症例です)

その後、テーブルディスカッションとなり、テーブルごとに異なるテーマでディスカッションが為された後に、各テーブルからのポイントの披露がありました。
この手の企画では一方的に聴くだけよりも、自分で話すこともできる参加型は満足度があったのではないかと思います。
参加者の男女比は4:6くらいだったように思います。
分子生物学会では男女共同参画企画への男性の参加者が、年々増えてきていることは好ましいと感じます。

夕方の緊急フォーラム「研究不正を考えるーPIの立場から、若手の立場からー」では、分子生物学会に深く関係されていた方の論文不正に対する対応について、まず小原雄治理事長からの経緯のご説明がありました。
学会としては、所属機関の調査委員会の報告を待ってからアクションしたかったのですが、その報告がとても遅くなったということがあります。
現在、学会から所属機関への問い合わせをしています。

その後、若手教育問題WG初代座長であった中山敬一先生による「捏造はなくせるか? 現在・過去・未来」という講演がありました。
まず、中山先生は若手教育問題WGが開催したシンポジウムで講演をされた方に関わる疑惑であり、少なくとも何らかの責任を取るという形で辞職された、という事実から、何らかの関与はあるとして、「任命責任」としての謝罪をされました。
生命科学系研究における捏造の問題の根幹には、「データの再現性が取りにくい」ということがあるのですが、それを夏目徹博士の作製された「ラボ・ロボット」の正確な実験と人間が行った実験との比較というデータを元に、「もし、正確な実験を行うロボットがすべての実験を行なって再現性が得られれば捏造は無くなるかもしれない」という未来の話でまとめられました。
【ロボットの動画はこちらを参照のこと(感動的です!)】

その後、パネル・ディスカッションとして、小原先生、中山先生に加えて、岡田清孝前理事長、篠原彰第17期広報幹事とともに次期理事長として参加しました。
フロアからは「学会としての対応が遅すぎる」というご意見を皮切りに、「他のセッションと重なる時間帯で行うべきではない」「不正を監視する第三者公的機関は必要か?」「再現性が怪しいデータが得られたときはどう対応すべきか?」「当学会のオフィシャル・ジャーナルGenes to Cells誌掲載の論文不正については追求できるのではないか?」等、種々の意見や質問が為されました。

この問題は来期への引継ぎとなりますので、きちんと対応していきたいと思います。

明日また福岡に戻ります。
生化学会のシンポジウムの方でトークがあります。
by osumi1128 | 2012-12-13 19:00 | オピニオン | Comments(0)

奈良先端大に行きました:「イクジイ」の勧め【リンク追加】

1991年に設立された奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)に行って来ました。
陸路で行くと、京都から近鉄奈良線で高の原で降りて、さらに車で15分程度の生駒市というところにあります。
正門から入ってすぐの管理棟の建物に、「祝:山中伸弥先生、ノーベル生理学・医学賞受賞!」の横断幕が……。
山中さんがiPS細胞を樹立する研究を開始されたのは、このNAISTの助教授になられた頃だったからですね。
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by osumi1128 | 2012-12-09 09:47 | 若い方々へ | Comments(0)

古川黎明高校へ再び

昨日はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の宮城県古川黎明中学校・高等学校に行ってきました。
元々は女子高だったものが改組されて中高一貫教育になったところです。
場所は、新幹線なら仙台から一駅、15分程度の古川という駅からタクシーで約10分。
ちなみに、こういう最短・最速ルートでは旅費は出ません(苦笑)。
国の予算のベースは「最低運賃」です。念の為。
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※学校の許可を得て画像を撮影掲載しています。

この日は、午前中に「絆プロジェクト」で訪れたASEAN諸国90名ほどの生徒さん達に、書道や茶道、SSH関連コーナーなどのデモンストレーションがあり、午後は公開授業、そしてSSHの運営指導委員会という、学校側としては盛りだくさんな一日だったと思います。

古川黎明のSSH指定校としての位置付けは、「グローバルな科学リテラシーを理数系の生徒以外にも広げる」というところにあり、さらに中高一貫教育であることを生かして、より早期に動機づけするなどの効果も期待しています。

授業参観はほとんど初めての体験で、今の高校生のリアルな実態(の一部)を観察する良い機会でもありました。
「言偏(ごんべん)」という国語系で表現力を付けるカリキュラムでは、各グループごとにテーマを立てて、各自のお勧めの本を紹介する、というプレゼンの実践を行なっていたのですが、「つかみ」を工夫したグループあり、個人的なエピソードを交えての紹介で聴衆を惹きつけたり、と頑張っていました。
「図を書いてケプラーの法則を理解する」という授業では、理系ではない生徒さん達に、分度器とコンパスで作図をしてもらって、火星の軌道が楕円っぽい(点をさらに加えていけば、滑らかな線になる)ことを理解する、という、手を動かす作業を中心としていました。

こういう高校生を受け入れた大学で、どれだけその学生たちの能力を引き出しているのか、ということに思いを馳せるとともに、どこかの時点でシラバスに縛られない教育、教師等とのインタラクションから学ぶ、究極には自分で学ぶという方向に変換することが必要であって、そこに大学院教育の抱える二律背反的な問題があると感じました。

6月の委員会での報告以降の活動報告では、ベルギー訪問、ケンブリッジ大訪問、タイの王女様の科学高校の1つChulabhorn Science High School Satunとの協力関係を結んだことなどの国際的なものも多数あり、昔とは違うなぁ、と思いました。
ちなみに、王女様はProfessor Dr Her Royal Highness Princess Chulabhorn Mahidolというお名前です(化学でPhDをお持ちです)。
タイにおける科学振興のために全国に12のサイエンスハイスクールを設立し、少数精鋭ですべて国からの支援で科学を目指す子どもたちを育てようとしています。

SSHの活動としても、東日本大震災においてもっとも震度が大きかった地域であることから、災害に関係するフィールドワーク(気象台、東北大学災害科学国際研究所等の見学)などを踏まえた文化祭での発表や、種々のテーマ研究などの様子を伺いました。
古川黎明の場合には、大学がすぐ近くに無いので、どのような課題学習をさせるかなどに、今後の工夫が必要であると思われました。
また、個人的にはプレゼン力も大事ですが、「正確に伝わる文章を書く力」や「論理的な思考」、「統計的肌感覚」のようなものを身につけることが、理系文系を問わず、現代を生きるためのスキルのベースであると考えます。
ともあれ、高大連携などを進める上で、とても参考になる経験をさせて頂きました。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!
by osumi1128 | 2012-12-06 07:57 | 科学 コミュニケーション | Comments(0)

田中真紀子文部科学大臣ご祝辞@第28回国際生物学賞にて

先日行われた第28回国際生物学賞の授賞式ですが、おそらく選挙でお忙しい中、田中眞紀子文部科学大臣がご列席になり、来賓のお祝辞を述べられました。
ちゃんと要所要所で、アルトマン先生の方を向かれてスピーチされておられましたし、授賞式後の茶会ではもちろん英語でご対応されてました。

アルトマン先生のご業績をとてもうまくまとめてあったので、その内容をここに残しておきたいと思います。

第二十八回国際生物学賞授賞式 文部科学大臣祝辞

 天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、第二十八回国際生物学賞授賞式が晴れやかに挙行されますことを心からお慶び申し上げます。
 ただいま受賞の栄に浴されたジョセフ・アルトマン博士に対し、心から敬意と祝意を表したいと存じます。
 哺乳類の成体の脳において、神経細胞が新しく生まれることはないと信じられてきましたが、アルトマン博士は、1960年代にこの定説を覆し、恒常的に神経細胞が新生していることを発見し、ひとたび損傷すると修復不能であると考えられてきた成体の脳が、一部で再構築を繰返していることを明らかにされました。現在、神経細胞の新生に関する研究は大きく進展し、神経科学の一分野として発展しており、アルトマン博士の業績は、世界の学術の進歩に大きく貢献した研究者に授与される国際生物学賞にふさわしいものです。
 人類は、あくなき真理の探究を通して新しい知を生み出し、今日の社会と文明を築いて参りました。学術研究は、個々の研究者の自由な発想と知的好奇心・探求心に根ざした知的創造活動であり、それ自体が優れた知的・文化的価値を有するものです。       
 文部科学省といたしましても、優れた研究者がその能力を遺憾なく発揮できるよう、基礎研究を強化し、研究環境の整備を着実に進めるとともに、国際的な頭脳循環の中でグローバルに活躍できる若手研究人材の育成を進めて参ります。
 結びに、アルトマン博士の研究の更なる発展を祈念申し上げるとともに、国際生物学賞の運営に御尽力いただいております国際生物学賞委員会をはじめ、関係各位の御努力に対し、感謝の意を表し、お祝いの言葉といたします。

         平成24年11月26日  文部科学大臣   田 中 眞紀子


基礎研究の重要性を皆さんにご理解頂くためにも、昭和天皇在位60年を記念して設立されました国際生物学賞のことも、みなさんにもっと知って頂きたいと思います。
この賞では、昭和天皇を初めてとして皇室の方々が携わってこられた生物学の基礎的な研究に対して表彰しています。

そういう観点から言えば、ちょっと「イケてない」のはその名前ですね。
京都賞や日本国際賞は日本からの賞であることが明白なのに対して、International Prize for Biologyは、残念なことに「どの国からの賞」であるのかがわからないのです……。
Hirohito Prize for Biologyとするのは、日本の伝統から言って皇族の方のお名前を付けるのは恐れ多いことなのだと思いますが、より現代に合った国際的な賞になった方が、日本国民にとっても意義のあることなのではないでしょうか?
by osumi1128 | 2012-12-03 17:48 | サイエンス | Comments(0)

井ノ口先生と下條先生

本日、日本学術会議主催の市民公開シンポジウムが開催され、オーガナイザー側の立場で開会のご挨拶と、座長を行いました。
毎年行なっている脳神経関係の公開シンポジウムなのですが、今年のテーマは「脳と意識」でした。
神経科学分科会推薦の演者をどなたにするのかについて、お一人はすぐに『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤 (講談社現代新書) 』などのご著書をお持ちの下條信輔先生@カリフォルニア工科大学にしたいと思い、御内諾を頂いた上で、もうお一人はもう少し「生物学寄り」の研究者にしたいと考えて富山大学の井ノ口馨先生にお願いしました。
井ノ口先生のご専門は「記憶」なのですが、結局のところ超短期記憶が「意識」の大元に関わるという見方をすれば、記憶と意識は繋がる話ということになりました。
実はお二人とも私にとっては高校の先輩にあたるのですが、なんと同級生であったことはご講演をお願いして初めて認識しました。

脳神経関係は、いろいろなアプローチがある学際的な領域です。
今回のテーマである「意識」というのは、科学として解くには難しい面も多い、かなりの「ハード・プロブレム」でもある訳ですが、下條先生のお話は、その中でも解くことが容易い「イージー・プロブレム」の例を取り上げておられました。
井ノ口先生は、記憶の記銘、想起、パーマネント記憶への移行について、動物実験を行う立場からの御発表でした。

その他に4名の先生方のトークを聴いて、消化しきれないくらい頭がパンパンになってハイになった状態で、両先輩と夕食をご一緒して、さらにbrain stormingしました。
あ、サイエンス以外のお話もとても面白かったです♬
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by osumi1128 | 2012-12-01 22:33 | サイエンス | Comments(0)