<   2013年 06月 ( 13 )   > この月の画像一覧

ゴッホ展@宮城県美術館に行ってきました

d0028322_18193425.jpg久々のアート系ブログ更新です。
先々週から先週にかけては、学会が2つあって、どっぷりサイエンス漬けであったこともあり、今日は宮城県美術館で開催中の「ゴッホ展:空白のパリを追う」を見てきました。

チケットに使われている作品は「グレーのフエルト帽の自画像」という作品で、パリもしくはアルル時代に描かれたものです。
フィンセント・ファン・ゴッホは30数点の自画像を描いたとされていますが、その心理学的考察はともかく、今回8点の自画像と、1点の弟テオの肖像画が集まりました。
テオの肖像画は、これまでゴッホの自画像と思われていたものが、耳の形や髭の色などから、弟の可能性が強いという分析が為されたものです。
他にも、X線撮影による解析などにより、下に描かれていた絵が明らかになってわかったこと、絵の具の劣化のことなど、ゴッホ研究が一段と進んでいるのだとわかりました。

地元紙の河北新報さんも主催者となっていて、ゴッホ展の号外も配布されていました。
それを読んだところ、パリでゴッホがテオと暮らしていたアパルトマンの部屋が、なんと日本人の所有となっているというのです!
所有者は、鹿児島市の財団法人陽山美術館で評議員を務める会社役員の井後吉秋氏。
10年ほど前に偶然、売りに出されているのを知り、「貴重な文化財として保全したい」として購入を即決(!!!)。
河北美術展の審査員を務める洋画家の大津英敏氏が一昨年にこの部屋を訪れる機会に恵まれたということで、写真が2点、河北新報号外に掲載されていました。
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(河北新報号外より大隅撮影)
この部屋の窓から描かれたパリの風景の作品もいくつか展示されており、過去と現在が繋がったような気持ちになりました。
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新しく県美が手に入れたというルオーの版画集「ミセレーレ」からの作品も展示されており、白黒のルオーというのが新鮮でした。
小企画展:新収蔵 ルオー版画集 『ミセレーレ』

宮城県美術館は常設展として地元の彫刻家、佐藤忠良氏の作品も多数展示しています。
この作品は佐藤忠良館入り口に展示してあるものですが、同じモデルによるこちらの作品の方が有名かもしれません。
帽子・夏(ARTLOGというブログ)

県美の見どころはさらに屋外にもあります。
「アリスの庭」や建物の北側の庭は、いくつかの屋外展示作品もあり、個人的にはなんともユーモラスなフェルナンド・ボテロのものがお気に入り。
6月は仙台でもっとも緑が美しい季節なので、梅雨の合間の休日を楽しむ家族連れの方も多数おられました。
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もう一つ、県美を訪れる楽しみは、カフェ・モーツァルトが入っていること。
本館の方が「カフェ・モーツァルト・フィガロ」、佐藤忠良館の方が「同パパゲーノ」です。
フィガロのランチは1000円くらいから。
画像はキッシュのランチです♫
この季節ならテラス席もお勧め。

ゴッホ展@県美は7月15日まで、あと2週間となりました!
次は広島に巡回のようですね。
by osumi1128 | 2013-06-30 19:08 | アート | Comments(0)

ライティングの筋トレ

よく「仙台通信、読んでます。よく書かれますね!」と仰る方には「ブログ書くのも<筋トレ>なんです」とお話します。
本を読むのは「入力系」で、これは知識を得たり感性を研ぎ澄ますのに必要ですが、「出力系」は運動機能も使うので、<イメトレ=イメージ・トレーニング>だけでなく、<筋肉トレーニング=筋トレ>が必要です。

タイピングの速度を上げることができれば、時間当たりの作業効率が上がります。
誰でも「一日は24時間しかない」のですから、やりたいことがいろいろある方には、密度を上げるしかありません。
(あるいは、ミスを少なくする、というやり方もありえますね……)

さらに若い方々にお勧めするのは、「まるごと他の方の文章を書き写す」というトレーニングです。
これは、実際にどの芥川賞作家さんだったかの受賞インタビューか何かで昔読んだことがあり、なるほどな、と思いました。
文章を書き写すことによって、その作者の言葉遣い、句読点、リズム、間、などを「体得する」ことを目指すのです。

科学者を目指す方々は、小説ではなくて、論文を書き写すのがベストです。
さすがに、Cellのフルペーパーを書き写すのは大変かもしれませんが、Brief Correspondenceのような、1000〜1500 wordsくらいの文章を、1時間程度で一気にタイピングするのは、良い筋トレになります。
周りに人がいなければ、発音しながらタイプすると、音声の出力とそれを聞き取る聴覚の刺激により、さらに単語の記憶が強化されるでしょう。
科学的な文章の場合には、論理構成、つまりロジックが重要なのですが、リズムや接続詞等の使い方でその雰囲気を身体に叩きこむには、タイピングが一番です。
幸い、英語の文章をタイプする場合には、「漢字変換」が必要ないので、自分が打ったものをモニタ上で見て確認しなくてもできます。

ただし、その前提条件としては、ブラインド・タッチできるまで、タイピングを習得しておく必要があります。
キーボードを見ながらですと、お手本にする文章(モニタ上であれ、印刷したものであれ)に集中することが困難で、リズムを感じるところまでいかないかもしれません。
ミスタイプは多くの場合、打っていて手の感覚?で気づくので、直しながらタイプしますが、必要であれば後でまとめてスペルチェックをすればよいでしょう。
大事なのは「速さ」です。
なので、タイピングにおけるブラインド・タッチは、現代の仕事のスキルとして必須であり、できれば高校生くらいまでの間に習得しておくのが良いと個人的には思います。

「出力系」のために筋トレが必要なのは、スピーキングにおいてもそうなのですが、これについてはまた次回……。
by osumi1128 | 2013-06-29 10:30 | 若い方々へ | Comments(0)

Neuro2013関係:科学者にとっての科学コミュニケーション

神経科学学会+神経化学会+神経回路学会合同のNeuro2013という学会が、国際生物学的精神医学会と直列に続くかたちで開催されており、昨日はサテライト・シンポジウムをオーガナイズしたのですが、本日はお昼の教育講演のセッションの1つをチェアしました。

講演を行ったのは、Dr. I-Han ChouというNatureのSenior Editorの方です。
タイトルは「Communication of science in digital age」ということで、研究者にとっての科学コミュニケーションにはどのようなやり方があるか、ということなのですが、今の時代は(ご両親は台湾、本人は米国で育って現在は編集者をしている彼女にとっては)いろいろなやり方がありますね、ということで、従来の科学コミュニケーションでは、以下のようなものがもっぱらでした。
Publish papers(論文を出す)
Discuss with lab mates(研究室の中で議論する)
Discuss at conference(学会等に言って議論する)

ところが、現在では、上記に「加えて」以下のようなやり方がありえます。
Discuss at webinars, Google+(ウェブセミナーやGoogle+で議論する)
Scientist blog(ブログに科学の話題を書く)
Social media(FacebookやTwitterなどで科学について議論する)
Prepublication access(論文出版前に原稿をweb上に上げる)
Postpublication review(論文出版後に査読する)
Reference sharing(出版された論文をまとめたり、それをwebに上げる)
Data sharing(データそものもを共有できるようにwebに上げる)

そう、つまり、これまでのように「雑誌」や「マスメディア」という手段に頼らなくても、自分で広く発信することが可能であり、またそれを読んだ人たちが、科学者であれ、そうでない方であれ、自由に意見を述べたり、批判したり可能な時代になったということです。

Dr. Chouは座長をする私が、いったいどんな人間なのか、当然ながらGoogle検索をかける訳ですね。
そうすると、ローマ字で入力すると一番上に上がってくるのはTwitterアカウントのsendaitribueのようです。
なので、「今朝すでに、このセミナーのことをtweetしていたようですが」とDr. Chouからmentionされましたww
当然ながら、私がどんな話題について発言したり、リツイートしているのかも公開されていますから、およそ、表面的には私がどのような人間なのかわかる訳です。
残念ながら、英語ブログのSendai Tribuneは、Noriko Osumiというタームのタグが付いていないので、検索上上には挙がってきませんね。
日本語より更新頻度が低いですし……。

彼女は「ブログは誰でもできる科学コミュニケーションです」と主張しています。
誰かの論文について批評するのでも構わないし、science policyについての意見でも良いでしょう。
あるいは、何か新しいテクニックについて取り上げることも意味がありますね。
神経科学のグループ・ブログに関しては、Stanford, UCSD, UCLA, Rockfeller Uなどで、大学院生たちによるものが立ち上がっているとのことでした。

日本のweb情報の扱いについては、どうも「2ちゃんねる」に代表されるような、匿名による書き込みの印象が強く、「アヤシイ情報」だと思われたり、「ブログ書いている暇があったら、実験すべき」というボスもいるかもしれず、「mixi」や「Twitter」でも実名は使わない風潮があり、ようやくFacebookの導入で実名の時代に入ったかな、という感じなので、個人が自分の立場で情報発信するための前提条件が他の国とは違うようにも思います。

でも、Dr. Chouに言わせれば、「就職のときに、採用側があなたの名前を検索して、何も引っかからなかったら、それは存在しないとのと同じでしょう」ということなのです。

なので、自分のCVや業績をResearchgateやLinkedInなどにまとめておくことが大事、それも一つの科学コミュニケーションだ、とDr. Chouは主張しています。

セッション後に、「いやー、おおすみさん、彼女の言うことはわかるけど、そんな時間は無いよ……」と仰った先生もおられましたし、そのご意見は比較的上の年代では多いと思います。
そういうestablishされた先生は、まぁ、必要ないかもしれませんが、私自身は若い方には「自分の業績をResearchmap(日本版で、さらに日本語の業績も簡単に入力できる)などにまとめておいた方が良いですよ」とお勧めしています。

科学コミュニケーション寄りの話に戻って、思い出すことは、数年前にとある新聞社の方とお話した際に、「もっと科学記事を紙面で扱ってもらえませんか?」と伺ったら、「新聞は<悪を暴く>のが本業です。科学者は自分で発信すれば良いでしょう」と言われたのですね……。
その当時、すでにブログを書き始めた頃だったのですが、「そうか、限られた紙面を争うのではなく、自分で大事だと思うことは、自分で伝えればよいのだ」と気付かされた瞬間でした。

そういう意味で、今回、大会前日に今回の発表に関するプレスリリースの記者会見を行い、その内容を大学のHPに掲載して頂きました。
マウスの超音波発声に対する遺伝および環境要因の相互作用: 父親の加齢や体外受精が自閉症のリスクとなるメカニズム解明への手がかり
追って、さらに詳しい解説記事を載せるつもりです。
ちなみに、Nature的には、open scienceの観点から出版以前に原稿を掲載することはOKとのことです。

なお、彼女のキャリアは、学部はハーバードで心理学、PhDはMITで認知科学、ポスドクはUCSFでシステム生理学を修めた後に、フリーのサイエンス・ライターを経て、Nature Neuroscience編集部、そして現在はNatureの日本支局勤務というキャリアパスです。
セッション後に若い方が質問に来ていたときに「広く科学を知ったり扱いたかったから、編集者になりたかった」と話していました。
是非、次はそういう観点からもセミナーをお願いしたいと思いました。
by osumi1128 | 2013-06-21 00:08 | 科学 コミュニケーション | Comments(0)

書評『記憶をコントロールする 分子脳科学の挑戦』

d0028322_0192211.jpg2010年に日本神経科学学会から「時実賞」を受賞された分子レベルの記憶研究者、井ノ口馨先生の近著『記憶をコントロールする 分子脳科学の挑戦』(岩波科学ライブラリー)が届いて、仙台から伊丹までの飛行機の間に一気読み。
私にとっては長年の共同研究者であり、高校の先輩でもある井ノ口先生は、そのご講演もとても魅力的な方なのだが、本書はそういうご講演をベースに書かれているので、記憶に関する研究の歴史から現在までを、たいへんわかりやすく解説されている。

More 続きはこちら
by osumi1128 | 2013-06-19 00:25 | 書評 | Comments(0)

基礎研究へのリスペクトと研究倫理

本年2月 22 日に内閣官房長官の下に健康・医療戦略室が設置されていましたが、先週の金曜日に、「健康・医療戦略」が閣議決定されました。
健康・医療戦略(2012年6月14日付け、PDF)
ここでの問題意識は以下になります。
世界に先駆けて超高齢化社会を迎えつつある我が国にあって、政府は、世界最先端の医療技術・サービスを実現し、健康寿命世界一を達成すると同時に、健康・医療分野に係る産業を戦略産業として育成し、我が国経済の成長に寄与することにより、我が国を課題解決先進国として、超高齢化社会を乗り越えるモデルを世界に拡げていかねばならない。

すでに、昨年6月に「医療イノベーション5か年戦略」が取りまとめられていたのですが、
同戦略に掲げられている施策のうち、実行すべきものは速やかに実行し、新たに追加すべきものは、速やかにこれに盛り込むという方針で、同戦略の充実を図るべく見直し行い、ここに新たに「健康・医療戦略」を取りまとめた

ということになります。

そして、以下の項目が「産業競争力会議」との整合性を取りつつ、とくに盛り込まれました。
・医療分野の研究開発の司令塔機能(日本版 NIH)の創設【各論1.(1)】
・医療の国際展開【各論4.】
・健康寿命延伸サービスの創出【各論2.】
・健康・医療分野における ICT の利活用の推進【各論3.(4)

ここしばらく問題にしていたのが上記の「医療分野の研究開発の司令塔機能」の部分です。
各論の「いの一番」に挙げられています。
1.新技術の創出(研究開発、実用化)
-日本の官民の力の再編成による目標への挑戦-
(1)政府部門における研究開発の推進と重点化
革新的な医療技術の実用化を加速するため、医療分野の研究開発の司令塔機能(「日本版 NIH」)を創設し、政府部門における医療分野の研究開発の推進と重点化に向けた取組を着実に実行する。


重点的な疾患としては、がんが大きく挙げられています。
その他挙げられているのは、難病・希少疾病、免疫・アレルギー疾患、小児疾患、B 型肝炎や肝硬変、インフルエンザ等の感染症、認知症やうつ病、動脈硬化を中心とした生活習慣病です。
また、再生医療については以下の書き込みがあります。
エ その他
ⅰ 疾病の根治を目指す治療法の開発や、他に代替手段の無い重篤な疾患の治療方法の確立等に向けて、再生医療研究について、基礎から臨床まで一貫した支援を実施し、早期の実用化を目指す。

これらを推進するために、
3)医療分野の研究開発の予算の一元化及び戦略的・重点的配分
総合戦略の実施のために必要な医療分野の研究開発関連予算について、これまで関係各省に計上されてきた当該予算を一元化し(調整費など)、総合戦略に基づき戦略的、重点的な予算配分を行う。

ということになっています。

たぶん、行政サイドで今後の問題となるのは以下の部分でしょう。
4)研究開発の推進体制の整備
① 研究管理の実務を担う中核組織の創設
総合戦略に基づき、個別の研究テーマの選定、研究の進捗管理、事後評価など、国として戦略的に行うべき実用化のための研究を基礎段階から一気通貫で管理し、実務レベルの中核機能を果たす独立行政法人を設置する。

そして、「日本版NIH」については、工程表(p27、PDFファイルでは末尾に掲載)や下記の書きぶりからは、「今すぐ行う訳ではない」と読めるのですが……。
② 医薬品・医療機器の開発支援機能の強化
オールジャパンの医薬品・医療機器開発支援体制の整備
ア 大学・研究機関等における我が国の優れた研究成果を確実に医薬品の実用化につなげることができるように、基礎研究等から医薬品の実用化まで切れ目なく支援するためのオールジャパンでの創薬支援体制として、関係府省の連携を強化し、関係府省・創薬関連研究機関等による創薬支援ネットワークを「日本版 NIH」の創設に先行して構築する。
(中略)
創薬支援ネットワークの本部機能を担う「創薬支援戦略室」を日本版 NIH の創設に先行して構築すると共に、有望シーズを保有する研究者と実際に共同研究等を行う創薬関連研究機関等の機能及び機関間の連携を強化する。あわせて PMDA について、このネットワークと緊密に連携する医薬品・医療機器の研究開発に関する相談事業の整備・強化を行う。

「健康・医療戦略」では、以下、インフラ整備、実験動物の取り扱い、国際標準化など、当然ながら必要な事項が並びます。

とりあえず公表された書類からは、いきなり「日本版NIH」に3500億、というようなことにはなっていないので、先日、ライフサイエンス系7学会の共同声明や、生物科学連合54学協会の共同声明が、強い危機感を表明したことは(そんためだけではないと思いますが)それなりに功を奏したのかもしれません。

上記の「健康・医療戦略」は、もちろん我が国として重要な施策であることは疑いもありませんが、一貫して主張しているように、純粋な基礎研究の推進も国として大切なことです。
芽が出るように、種を撒いたり、水や肥料をやったりすることがおろそかになっては駄目で、面白そうな芽が出たときに、苗床から植え替えるような仕組みや、それを見つける目利きの存在も大事でしょう。
基礎科学研究をリスペクトし、支えることが、我が国の文化であって欲しいと願います。

研究費の支援という意味で言えば、約10倍規模と言われる米国NIHの予算の半分は基礎研究に充てられています。
(研究費でPIの人件費も賄われるなど、制度が大きく異なるので、単純な比較は難しいのですが)
さらにNSFが支え、場合によってはDARPAからも基礎研究が支援されます。
簡単に「一元化」すれば良い訳ではないと個人的には考えます。

一方で、科学者がリスペクトされ国から支援されるためには、自らの襟を正すことも必要だと、今回、共同声明関係に巻き込まれたときに真剣に思いました。
良い研究を行なって、それがハイ・インパクトなジャーナルに掲載され、そのことによって大きな研究費を獲得したり、プロモーションしたり、という良いサイクルで回ればよいのですが、さらなる研究費獲得のためや、自らの次の職のために、ハイ・インパクトなジャーナルに掲載されることが目的化し、それを「効率よく」達成するためにデータの捏造や改竄が生まれる……という現実が(科学者全体の数から言えば圧倒的に少ないと思いますが)確実にあります。
(小さな声で)あと、54学協会の声明文の末尾に挙げられている学協会代表者、53人が男性っていうのも、「科学者集団というのは、旧体制を守りたいだけなの?」っていうイメージなんじゃないかなぁ……。
(顔写真で載せると、さらに年齢も想像できるので、よりオジサンの印象が……)

ちなみに、日本分子生物学会では研究倫理についての理事長報告および理事会声明を発出し、現在会員アンケートをオンラインで行なっています。

【最近の記事より関連まとめ】
英国の事例(The Independent誌より):The bad science scandal: how fact-fabrication is damaging UK's global name for research
ワイリー・サイエンスカフェ:インパクト・ファクターの濫用にストップを|細胞生物学分野の主要ジャーナルが採択した宣言DORAに、Traffic誌が支持を表明
DORAの宣言(PDF)San Francisco Declaration on Research Assessment
日本分子生物学会の研究倫理に関する理事長報告および理事会声明
by osumi1128 | 2013-06-18 09:34 | 科学技術政策 | Comments(1)

山崎直子さんの講演:さぁ、宇宙へ飛び立とう!

d0028322_22483961.jpg今年は、支倉常長が伊達政宗公の命を受けてローマ法王謁見の航海に出発して400年、東北大学は日本で始めて女子学生を受け入れて100年なのですが(←しつこいww)、世界で女性宇宙飛行士が誕生してちょうど50年、しかも、それは本日!ということを、山崎直子さんの講演で知りました。
日本で二人目の女性宇宙飛行士である山崎さんは、1986年、中学生の頃にスペース・シャトルの事故を目撃し、亡くなった女性宇宙飛行士の夢を繋げようと決心したのでした。

高校のテニス部での経験は、その後、11年間という長い間、宇宙飛行士として本当に旅立つための訓練を遂行するのに役立ったといいます。
大学時代は、1年間アメリカに留学して英語もマスター。
一回目の宇宙飛行士応募では採用されなかったものの、その後JAXAに入社してから2回目のチャレンジで見事合格。
そこからの訓練の日々は、いつ、本当にいったい飛ぶことができるのかわからない不安があったと言います。
もっともそれは、どの宇宙飛行士も皆そうなのですが、だからこそ、類まれなる忍耐力のある人が選ばれていくのでしょう。
あ、審査基準には自国の歴史や分化の理解度なども含まれ、実際に狭い宇宙船の中でのコミュニケーションにとても大事ということでした。

途中、宇宙食の話、宇宙ステーションでのミッションなど、実体験に基づくリアルなお話はどれも聴衆を魅了して止まないものでしたが、さらに、最後のパートは「宇宙から見た、地球、太陽、月」など、どれもスクリーンいっぱいに宇宙の美しい画像が広がり圧巻でした。
きっと、今日のお話を聞いたことがきっかけで宇宙飛行士を目指した、という少年少女が会場内に多数いたのではないかと思います。

宇宙船の中は狭いので整理整頓が大事、というお話を受けて、宇宙から見える地球の画像について「地球も実は限られた空間であり、それを大事に維持していくことが必要」というお話は説得力のあるものでした。
また、宇宙から見ると、空は青くなく、太陽も普通の星と同じように光っている、というのもなるほどと思いました。
普通の地図の向きと違う向きから地球を眺めると、ちょっとどこなのかわかりにくい、いかに普段は固定的な見方に囚われているか、という指摘には膝を打ちました。

ちなみに、講演そのものもよどみなく、随所で笑いも取り、素晴らしいものだったのですが、終わって、小さなお子さんの質問にも、オヤジの(失礼!)ツッコミにも真摯に対応しておられるのは流石と思いました。
山崎さんからチカラを頂いた90分でした。
有難うございました!

このイベントを主催したのは、NPOイコールネット仙台という団体です。
来月主催される『理系女子の輝く未来〜その現状と課題〜』という講演&シンポジウムに参加します。
東北大学サイエンス・エンジェルもパネリストとして登壇予定。
●日  時:7月27日(土) 13:30~16:00
●場  所:エル・パーク仙台 セミナーホール 141ビル
      (仙台三越定禅寺通り館)5F
●内  容:
  ★講演
   講師:大隅典子氏(東北大学大学院医学系研究科教授、
          東北大学女性研究者育成支援推進室副室長)
  ★シンポジウム
   パネリスト:大草芳江氏(有限会社FIELD AND NETWORK 取締役、
          NPO法人natural science 理事)
         船津利佐氏(日本ロレアル株式会社 コーポレート・
          コミュニケーション本部 マネージャー)
         高根侑美氏(東北大学サイエンス・エンジェル、
          東北大学大学院医学系研究科 博士課程後期3年)
   コーディネーター:大隅典子氏
●参 加 費:無料
●託  児:対象は原則として、6ヶ月以上小1まで
       上のお子さんやしょうがいのあるお子さんについても
       ご相談ください
       託児利用料:お子さん1人1回につき300円
●申込方法:名前・住所・電話番号・FAX番号を明記の上、電話、FAXにて申込
●主  催:NPO法人イコールネット仙台
●連 絡 先:TEL:090-1398-5065(佐藤) FAX:022-271-8226

by osumi1128 | 2013-06-16 22:54 | ロールモデル | Comments(0)

元駐日スウェーデン大使ご訪問+やっぱり科学が好き

水曜日はラボのセミナーや教授会(月2回)もあるので盛りだくさんな曜日なのですが、本日は元駐日スウェーデン大使で現在は東京大学の総長室顧問をされているStefan Noreen(ステファン・ノレーン)先生が東北大学を訪問され、昼食をご一緒しました。
しっかりと「東北大学は1913年に日本で始めて女子大学生を受け入れて、今年ちょうど百周年です♫」というアピールをしておきました。
同席されたのが、カロリンスカ研究所に留学されていた川島隆太先生ということもあり、「東北大学は脳科学も強い」というポイントも強調。
もちろん、日本で他にも多数の素晴らしい脳神経科学分野の研究者はいらっしゃる訳ですが、「東北大学のセールス・ポイント」として絞るとすると、ライフ系では日本で初めて癌の集団検診を始めた黒川利雄先生(第10代総長)、センダイウイルスを発見された石田名香雄先生(第15代総長)などに加えて、脳科学も伝統です。
そもそも、解剖学の布施源之助先生や、第12代総長にもなられた大脳生理学の本川弘一先生(東北大学医学部同窓生の『どくとるマンボウ青春記』にも登場)など、脳科学の伝統があります。
【参考】
東北大学総合学術博物館のすべて Ⅵ「脳のかたち 心のちず」-東北大学・脳の研究・心の研究

ノレーン先生は大変気さくで社交的な方で、そりゃー、大使たるもの、決してネガティブなことは、初対面の相手に言ったりしないよね、と学びました。
科学者はどうしてもcritical thinkingという面が強いので、「いや、でも」とか「それもあるけど……」という否定的な発言をしがちです(←反省)。

今後、東北大学としてカロリンスカ研究所等との連携を強めたいという、こちら側の意向によるご訪問だった訳ですが、さてどうなるかはwe shall seeです。
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まぁ、そんな日だった訳ですが、今日は久々にラボメンバーのスリリングなデータを見て嬉しくなりました。
予見が正しいことがデータで証明されることほど、科学者にとってエキサイティングな瞬間はありません。
もちろん、毎日そういう日ではない、というところが難点というか、忍耐力が無いと科学者はやってられないと思うのです。
そのような忍耐力は「stupidness」と呼ばれることもありますね。
やっぱり科学者は
Stay hungry, stay foolish.

な存在なのだと思います。

私にとっては、科学の楽しさは「スピード、変化、自由」だと思います。
科学は自分だけが行う行為ではなく、世界中で科学者達がしのぎを削っているので、その躍動感やダイナミックさは、それが好きな人にとっては麻薬のようなものです。
そして、科学の世界の中では、皆、学生さんであれ教授であれ、未知の真実を知らないというレベルにおいて平等だし、どんなアイディアで研究を行なってもよい自由があります(というか、あるべきだと思います。
そんな訳で私は「やっぱり科学が好き♡」です。
by osumi1128 | 2013-06-12 22:49 | 東北大学 | Comments(0)

「基礎研究」とは?

科学者たるもの、「言葉の定義」から始めるのが大事でしょう、ということで、「日本版NIH(仮称)」の話の前提条件として、「基礎研究」について。

私自身も議論に参画させて頂いた第3期の科学技術基本計画の中で、基礎研究にはいわば2つあることが定義されました。
基礎研究には、人文・社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。すなわち、前者については、新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積(多様性の苗床)を形成することを目指し、萌芽段階からの多様な研究や時流に流されない普遍的な知の探求を長期的視点の下で推進する。一方、後者については、次項以下に述べる政策課題対応型研究開発の一部と位置付けられるものであり、次項2.に基づく重点化を図りつつ、政策目標の達成に向け、経済・社会の変革につながる非連続的なイノベーションの源泉となる知識の創出を目指して進める。

震災直後に出された第4期の科学技術基本計画では、対応する部分がありませんので、とりあえず、我が国の科学技術政策における「基本計画」は上記の定義に基づくと考えるべきと思われます。
すなわち、基礎研究には
(A)自由な発想・ボトムアップの基礎研究
(B)政策誘導・トップダウンの基礎研究
があるということです。


たとえば、うちのラボの場合でいうと、昨年のEMBO Jに出した「サイクリンD2という分子の局在により、哺乳類大脳皮質構築における神経幹細胞の維持と神経細胞への分化のバランスが制御される」なんていう研究は(A)に相当しますし、今年の「心の病の発症しやすさに関する臨界期をマウスでモデル化した」というJ Neurosci掲載のものは(B)に相当します。

上記の(B)の例は、動物を用いた研究ですが、「近い将来、精神疾患発症の予防に繋がってほしい」という願いに基づく、「出口指向性」があるのに対し、(A)の例は、そのこと自体が複雑な哺乳類大脳皮質構築という生命現象における真理の追求が主たる目的です。
私自身はどちらの研究も研究者にとって「わかる喜び」をもたらしますし、それを科学者以外の方々とも共有できたら嬉しいと思っています。

(A)の研究は、研究者一人ひとりが、自分の頭で何か面白い研究はないかと探し、追求するものですから、十人十色、きわめてさまざまな分野にわたる研究がありえます。
対する(B)の研究は、我が国の状況に合わせて、「今、どこの出口を見据えた研究を行うか」という意味で、絞られる必要があります。
すなわち、基礎研究の特色として
(A)自由な発想・ボトムアップの基礎研究=多様性
(B)政策誘導・トップダウンの基礎研究=重点的
ということになります。


いわゆる「日本版NIH」は(本家とは異なり)(B)の基礎研究から、トランスレーショナル・リサーチ、臨床研究までをシームレスに繋ぎたいという意味においては、これまでの重複を解消するなどの取り組みが大事でしょうし、どのような「出口」をまず考えるのか検討すべきであり、いきなり「分野は何でもいいですよ」ということはリスクが大きいと思います。
また、(A)の基礎研究はもともととは質的に異なるものなのですから、この部分を削ることがあってはならないでしょう。

第3期科学技術基本計画では以下のように書かれています。
なお、基礎研究全体が下記2.に基づく重点化の対象となるのではなく、例えば科学研究費補助金で行われるような研究者の自由な発想に基づく研究については、政策課題対応型研究開発とは独立して推進されることを明確化し、理解の徹底を図る。

第3期の議論が為される中では、例えば以下のような扱いも述べられていました。
基本計画特別委員会の重要政策中間とりまとめより)
大学を中核として研究者が自由な発想に基づいて取り組む萌芽段階からの研究は、科学の発展及びイノベーション の創出双方の源泉である。萌芽段階からの多様な研究を長期的視点から推進し、国全体として、いわば「多様性の苗床」として新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積を形成・確保することが必要である。


第3期の計画が十分に実行されるよりも前に、震災が起き、第4期の基本計画も震災対応に追われて、「基礎研究」に対するリスペクトが、いつの間にか失われてしまったように思います。
今一度、この点を見据えた上で、「日本版NIH(仮称)」(←この名称が適切かも含め)の中身を考えて頂きたいと思います。

なお、正確に言うとNIH予算の中には結構上記の(A)に相当するような研究も含まれますが、さらに米国においてはNational Science Foundation(NSF)から基礎研究への支援が為されています。
下記はとても参考になる冊子と、その日本語訳サイトです。
Unlocking the secrets of science: where discoveries begin(NSF冊子)
科学の秘密の錠を開ける
by osumi1128 | 2013-06-11 13:17 | 科学技術政策 | Comments(1)

7学会緊急声明

「日本版NIH(仮称)」に関する生命科学系7学会の共同声明発表の記者会見を行うために、お昼前から東京に行ってきました。
先週ブログに書きましたように、官邸主導で進められている「日本版NIH(仮称)」構想について、(1)(本家のNIHのように)医療に繋がる研究を一気通貫に一元化して支援すること自体は試してみてもよいが、その仕組み作りのときには研究者の意見もちゃんと聞いて下さいね、ということと、(2)その予算をどうするかというときに、ボトムアップな基礎研究を無くすようなことはしないでね、という趣旨の共同声明(明日、各学会HPにアップ予定)を7つの学会(日本生化学会、日本癌学会、日本細胞性物学会、日本免疫学会、日本神経科学学会、日本ウィルス学会、日本分子生物学会)の賛同のもとに作成し、まずは、官邸にお届けしました。
菅内閣官房長官宛の書面を、世耕副官房長官に直接お渡しして取次をお願いし、野田先生(癌学会)と石川先生(生化学会)とともに、10分ほど副官房長官室で面談しました。

その後、厚労記者クラブで7学会の代表が集まっての記者会見となり、野田先生が司会をされ、声明とりまとめ役であった石川先生が趣旨説明を行い、質疑応答となりました。

出口を見据えた基礎研究ではない、生命分野の真理の探究という基礎研究を行う研究者も多数抱える分子生物学会の立場からは、自由な意志に基づくボトムアップ研究の重要性と、そのことを通じての研究人材育成の面を強調しました。

集まられた記者さんが厚労記者クラブ系ということもあり、本当は個人的にはもう一つ言いたかったことがあったのですが、それは胸に仕舞って帰って来ました。
何かというと、生命科学分野の基礎研究それ自体も、他の自然科学分野の基礎研究と同様に「文化の一部である」ということです。

ずっと前に、たしか岡田節人先生が文化功労者になられたときのことだったか、岡田先生が皇居に参内されたところ、そのとき同じように選ばれた人間国宝の方が「最近は、科学の分野の方も選ばれるのですね……」と話された、というエピソードを伺ったことがありました。
その芸術家にとってみれば「文化勲章や文化功労者というのは、芸術、文学、そういった<文化>に対して与えられる栄誉」であって「科学は、ちょっと違う」というご認識だったのでしょう。

でも、亡くなられた昭和天皇も、今上天皇も、生物学者としての側面もお持ちですし、秋篠宮殿下は国産の鳥類のゲノム研究をPNAS誌に発表されています。
降家された紀宮清子内親王も、山階鳥類研究所の研究員をされていたと思います。

例えば、シンガポールも科学技術には力を注いでいますが、多様な自然科学の研究分野をすべてカバーするという国策は取らず、生命科学系では幹細胞研究や、癌、免疫、感染症、神経科学などの医学応用可能な分野が中心です。
そのことを悪いというつもりは毛頭ないのですが、日本において「いつ役に立つかはわからない」研究を行うことができれば、それは国としての成熟度や豊かさを表すものであろうと思うのです。

生物学の研究も文化の一部です。
問題は、今の日本がどの程度、そういう「出口の見えない」基礎研究をも支えられるかでしょう。
ルネッサンス期のようなパトロン、どこかにいませんかね?
ロードマップを作りなさい、とか、これこれには資金は使えません、とか言わないで、「あなが最もエキサイトするようなサイエンスを見せて下さい」と自由と身分の保証を与えて頂くのが、いちばんのイノベーションの近道かもしれない、なんてことを夢想します。

註:本日のエントリー後半部分は、執筆者個人の意見であり、所属する組織の立場を表すものではありません。

【各種リンク】
7学会共同声明(日本分子生物学会HP掲載PDF)
NHKニュース:日本版NIHに7学会が声明
共同通信:日本版NIH創設で学会が声明 基礎研究縮小の懸念
拙ブログ:「日本版NIH」じゃぁだめでしょう
by osumi1128 | 2013-06-10 20:32 | 科学技術政策 | Comments(2)

夏はモヒート

d0028322_18475944.jpg本日の仙台の最高気温は25℃超え。
一年のうちでもっとも日の長いこの季節の休日の夕方にぴったりの飲み物といえば、モヒート!です。
Facebook上で見かけて、居ても立ってもいられなくなって、近所に走りました。
……結果として、バカルディもハバナ・クラブも無かったのですが(泣)、ともあれ、ミントとライムとソーダ水もゲットして飛んで帰り(暗くならないうちに飲み始めないと、正統派のモヒートではありませんww)、今年初めてのモヒートを楽しみました♫

簡単な割に美味しいカクテルです。
是非、ミントたっぷりの手作りをお勧めします!

作り方はこちら
by osumi1128 | 2013-06-09 19:13 | 味わう | Comments(0)