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イベント報告:The world needs science, science needs women

先日告知したイベントの報告です。
NPOイコールネット仙台さんが主催し、東北大学女性研究者育成支援推進室が協力した「理系女性の輝く未来〜その現状と課題〜」で、講演およびパネル討論のコーディネータを務めました。
講演内容は「今年は女子学生入学百周年」という前振りで始め(今年一杯、このバージョンです♪)、『リーン・イン』『理系女子的生き方のススメ』とともに『なぜ、理系に進む女性は少ないのか?』も紹介しつつ、「個々の能力が活かされるダイバーシティーのある世界へ!」というメッセージを、やはりちょうど今年が400周年という支倉常長ローマ法王謁見のために建造されたサン・ファン・バウティスタ号の復元した船の画像に「リケジョが未来を切り拓くッ!」という荒木飛呂彦せんせい風のタイトルを付けて発信し♫、最後に、8月8日の東北大学女子学生入学百周年記念シンポジウムのご案内で結びました。

パネル討論では、東北大学大学院生命科学研究科修士課程在学中に起業した大草芳江さんが自己紹介を兼ねて、過日TEDxTohokuで行ったプレゼンを行い、科学を介して「考える教育」を広めるいろいろな活動を紹介されました。
ちょうど先週に行われた「学都仙台・宮城サイエンス・デイ」は、最初にNPOのnatural scienceが40名を一部屋のセミナー室に集めて始まり、今や参加者7000名超えという成長ぶり。
「自分のやりたいことが無かったから自分で有限会社を作った」と淡々と話す大草さんは、「人生で影響を受けた方やメンターはどんな方ですか?」という質問に対して「とくにいません」というお答え。
きっと、あと何十年かしたら、博士課程に合格して、でも進学しなかった大草さんを快く送り出してくれた指導教授の先生の広い心に気づくときがくるのかもしれませんね。

次に自己紹介されたのは、東北大学サイエンス・エンジェルの一人、高根侑美さん。
現在、医学系研究科の博士課程3年生です。
高校当時、医学部進学希望であったところ、担任の先生の勧めもあって東北大学医学部保健学科放射線技術専攻に入学し、学部の3年生頃から医療画像による診断についての研究に興味を持ち始めて大学院に進学したということでした。
「これまでの人生で、生物学が専門だった高校の担任の先生にもっとも影響を受けました」という高根さんに、「現在、困っていること、もっとこうだったらいいな、ということは何でしょう?」と問いかけると、「周囲にはどうしても女性が少ないので、いろいろなことを相談する女性の先生がもっといたらいいなと思います。サイエンス・エンジェルの活動は、そういう意味で同じ女子大学院生と交流できるのが嬉しいです」と答えてくれました。

3人めの船津利佐さんは、上智大学のフランス語学科の卒業で、2つほど海外広報関係のお仕事をされたあと、日本ロレアル社に入社され、企業広報のお仕事に携わっておられます。
日本ロレアルはちょうど設立50周年とのことで、今年はことのほかお忙しいご様子でした。
企業の広報としては、トップ、研究所、ブランド、人事、戦略的プロジェクトなどを広めること、そして社会貢献事業も担当されておられます。
私が船津さんを存じ上げるようになったきっかけも、この「ロレアルーユネスコ女性科学者日本奨励賞」関係でした。
ちょうど、2011年には、東北大学サイエンス・エンジェル制度に特別賞を頂いたことは、何度か拙ブログでも紹介しています。

ロレアルグループは創業1909年で、現在は世界最大の化粧品会社となっていますが、従業員72600名のうち研究者が3800名いて、そのうち女性は55%ということでした。
日本ロレアルは2300名の従業員のうち、研究者が220名、女性は62%と、多数のリケジョが活躍されているようです。

元々、化粧品の購買対象が圧倒的に女性が多いという背景もあり、ロレアル本社はユネスコと連携して、1998年から「ロレアルーユネスコ女性科学賞」という賞を設立して、女性科学者の支援を行なって今年で15周年とのことです。
ちょうど今年、東大名誉教授の黒田玲子先生が、この賞を受賞する栄誉に輝きました。
船津さんからPowerPointのファイルをシェアするお許しを頂いたので、こちらに掲載しておきます。
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ロレアル本社も日本ロレアルも、若手の女性に対する奨励賞の授与も行なっています。
拙ブログ:第7回ロレアルーユネスコ 女性科学者日本奨励賞
また、昨年からは「リケジョの日」を制定し、講談社Rikejoとの連携による活動も展開されています。
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さらに、東北復興支援のプロジェクトとしては、バスで被災地を回ってヘアカットなどを行う「美容師の力プロジェクト」や、「石巻市HANA荘推進プロジェクト」などを行なっておられて、船津さんご自身も昨年はほぼ毎月、石巻を訪れておられたと知りました。
最後のメッセージスライドが素敵だったので、こちらに転載してシェアしたいと思います。
“世界は科学を必要とし、
科学は女性を必要としている”

“The World Needs Science,
Science Needs Women”


イベント終了後は、主催団体代表の宗片さんも交えてお茶を頂きながら、女性の力をもっと活かすにはどうしたら良いかについて話しました。

関連して、今朝の河北新報の記事に下記が掲載され、百周年記念シンポジウムの告知もして頂きました。
多数のご来場をお待ちしています。
河北新報ニュース:元祖リケジョ、資料公開へ 日本初の女子大学生・黒田チカ(2013年7月28日)
by osumi1128 | 2013-07-28 11:22 | ロールモデル | Comments(0)

リケジョ応援シンポジウム告知(7/27)

今年は日本初のリケジョ百周年を祝うイベントがいろいろありますが、次の土曜日、リケジョ応援のシンポジウムに登壇です。
パネリストの大草さんは、東北大学出身で、会社とNPOを運営している若い女性。
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(大草さんのブログ宮城の新聞より転載)
日本ロレアルの船津さんは、ロレアル社の女性科学者応援企画を推進。
下記は2011年に東北大学サイエンス・エンジェルの活動に賞を頂いたときの画像です。
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今年の東北大学サイエンス・エンジェルの高根さんも一緒に、リケジョの未来について語ります。
是非ご参加下さい!
理系女子の輝く未来~その現状と課題~
●日  時:7月27日(土) 13:30~16:00
●場  所:エル・パーク仙台 セミナーホール 141ビル
      (仙台三越定禅寺通り館)5F
●内  容:
  ★講演
   講師:大隅典子氏(東北大学大学院医学系研究科教授、
          東北大学女性研究者育成支援推進室副室長)
  ★シンポジウム
   パネリスト:大草芳江氏(有限会社FIELD AND NETWORK 取締役、
          NPO法人natural science 理事)
         船津利佐氏(日本ロレアル株式会社 コーポレート・
          コミュニケーション本部 マネージャー)
         高根侑美氏(東北大学サイエンス・エンジェル、
          東北大学大学院医学系研究科 博士課程後期3年)
   コーディネーター:大隅典子氏
●参 加 費:無料
●託  児:対象は原則として、6ヶ月以上小1まで
       上のお子さんやしょうがいのあるお子さんについても
       ご相談ください
       託児利用料:お子さん1人1回につき300円
●申込方法:名前・住所・電話番号・FAX番号を明記の上、電話、FAXにて申込
●主  催:NPO法人イコールネット仙台
●連 絡 先:TEL:090-1398-5065(佐藤) FAX:022-271-8226

by osumi1128 | 2013-07-21 15:16 | お知らせ | Comments(0)

『リーン・イン』に学ぶリーダーシップ

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拙翻訳本『なぜ、理系に進む女性は少ないのか?』(西村書店)は、実は『リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』(シェリル・サンドバーグ著、日本経済新聞出版社)と同じタイミングで上梓されました。
著者のサンドバーグ氏のリーダー論はTEDパフォーマンスですでに見ていたので、読まなければと思っていたところに、「『なぜ、理系に進む女性は少ないのか?』けっこう同じようなことが書いてありますよ」と教えて下さる方が複数おられたので、急いでお取り寄せ。
なるほど、巻末には50ページほどの横書きの引用文献や原注が挙げてあり、まさか本人がこんなに調べた訳はないよね?と思ってあとがきを読むと、社会学者のマリアンヌ・クーパーという方がかなり調査に関わり、根拠となる文献等を調べられたようです。
さらにそれをライターのネル・スコーヴェル氏が「女性のリーダーが増えれば世界はもっと平等になり、もっとよくなるという揺るぎない信念」に基いて書かれたものだとわかりました。

読み始めていちばんびっくりしたことは、サンドバーグ氏がラリー・サマーズの弟子であり部下であったこと。
サンドバーグ氏にとっては、元財務長官であるサマーズは「師と仰ぐ」方なのだが、私がその名前を知ったのは、かの有名な「サマーズ発言」により、ハーバード大学の学長を退くことになったというエピソードから。
そう、まさに拙翻訳本の原著「Why aren't more women in science?」は、「サマーズ発言」があったことをきっかけに世に出た本と言っても差し支えありません。

「サマーズ発言」とは何かも『なぜ、理系に進む女性は少ないのか?』にかなり詳しく書いてあるのですが、簡単に言えば、当時ハーバード大学学長であったサマーズが、2005年1月に全米経済研究所の後援によって開かれた会議において、科学や工学分野になぜ女性が少ないのかについて、生得的な違いがあるという主張に受け取ることができる発言をしたために、キャンパス内外で大きな波紋を呼び、最終的に学長に対する不信任議案が同年3月に提出されて可決されたという、ハーバード大学始まって以来のエピソードです。

ちなみに、この点は『リーン・イン』ではまったく触れられていないのですが、決議前の2月に行われたハーバード・クリムゾン紙の調査では、サマーズの辞任を19%の学生が支持したのに対し、57%の学生が辞任に反対した(Wikipediaより)という事実に鑑みれば、サンドバーグ氏がサマーズを擁護する立場にいたとしても不思議はありません。
ともあれ、この点は『リーン・イン』の中身からはとくに重要な点ではないので、これ以上は言及しないでおきましょう。
(いつか、お目にかかることがあれば、個人的には訊いてみたい点ですが………)
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タイトルとなっている『LEAN IN』とは、もともとの語源としては、バイクなどに乗って高速でカーブを曲がる際に、曲がる側に身体を傾けることによってスピードを落とさず攻めて走り抜けることを意味します。
まさに、世界銀行、財務省、マッキンゼー、グーグル、フェイスブックと、どんどんキャリアアップしてきたサンドバーグ氏のライフスタイルに相応しい、躍動感のあるタイトルです。
(画像は女性ライダーカメハッピー氏のフォトログより拝借しました)

本書は、単なる「サンドバーグ氏の半生記とキャリアアップのためのヒント集」というよりも、実際に「性差についての無意識のバイアス」が存在することを種々の根拠をもって示していることに、もっとも価値があると思います。

たとえば、履歴書の名前が「ハウディ(女性)」か「ハワード(男性)」かによって、人物評価が異なるということ。
(拙翻訳本にも同様の研究論文が引用されています)
バリバリの履歴を持つ「ハウディ」は嫌われ、「ハワード」は好かれる傾向にあるのですが、それは、男性からだけでなく、女性からも同様であるということは、男性だけでなく女性もまた(米国でさえも)「女性は家庭を守るべき」というバイアス、伝統的な女性のステレオタイプに囚われていることを意味しています。

あるいは「女性エグゼクティブは女性に厳しい」と非難されるのは、男女ともに女性上司に対しては男性上司に対してよりも「暖かさや優しさ」を期待することの裏返しであり、性差によって上司に対するダブル・スタンダードが存在することがあるのです。

そもそも、サンドバーグ氏自身が本書で述べているように、TEDのパフォーマンスでFacebookのことを主題とするのではなく、「もっと女性リーダーを増やすべき」という主張をすること自体、「そんなことをしてキャリアに傷つかない?」と心配されたというエピソードも、バイアスに影響されています。
でも、ある時点から、誰かが主張しなければならないと感じるようになり、彼女はそのアクションを取る決意をし、さらにTED後のフィードバックを受けて本書が世に出た訳です。

序章では、リベリアで女性たちによる非暴力抵抗運動を率いて内戦集結に尽力し、2011年にノーベル平和賞を受賞したリーマ・ボウイーとのエピソードが紹介されています。
彼女の自伝『祈りよ力となれ』の出版記念パーティーがサンドバーグ氏の自宅で開かれた折、リベリアのような国で内戦の恐怖や集団レイプに苦しむ女性たちを助けるには、アメリカの女性はどうしたらよいか?という問いに対して、ボウイー氏は「もっと多くの女性が権力のある地位に就くことです」と答えたというのです。
指導的な役割を果たす女性がもっと増えて、女性が抱える問題やニーズをもっとつよく主張できるようになれば、すべての女性が置かれた状況は改善されるにちがいない。(序章「内なる革命」より)

直近の従軍慰安婦問題に対する某政治家の発言などを聞くにつけ、日本の国の民度を上げて精神的に豊かな国になるためには、リーダーとなる女性を増やすことが喫緊の課題だと思います。

そのためにどうしたらよいか、以下、やや長いですが本書から引用しておきます。
一つ大きな障害となっているのは、職場はだいたいにおいて実力主義だと大勢の人が信じていることである。つまり、集団ではなく個人を見て、結果の差は実力から来るのであって、男か女かは関係ないと判断する。トップの座に就いている男性は、自分が享受している恩恵に気づいていないことが多い。なぜなら−−男だからだ。だから、女性につきまとう不利益に目が向かない。下の地位にいる女性のほうも、男性がトップにいるのはそれだけ能力があるからだろうと考えがちだ。だから現在のルールに従ってがんばれば昇進できると信じ、ジェンダー・バイアスの存在に疑問を提出することも、声を上げることもしない。その結果、不公平なシステムがいつまでも続く。これは男女両方の責任である。(「10章 声を上げよう」より)


これから社会に出ようとする若い女性、男性、そして、そういう若い世代を育てる教員や、実社会で受け入れる側の世代の方々皆が「無意識のバイアス」に気づくことが、人的多様性に富む豊かな社会への最初の一歩だと思います。

【関連リンク】
サンドバーグ氏によるTEDパフォーマンス:なぜ、女性のリーダーは少ないのか?
拙理事長メッセージ2013年夏
by osumi1128 | 2013-07-20 00:11 | 書評 | Comments(3)

トップダウン vs ボトムアップ:その1(研究費の場合)

d0028322_7564145.jpg先週木曜日のNature誌において、Ichiko Fuyunoさんが書かれたNews記事において、「日本版NIH」のことが取り上げられました。
Outcry over plans for ‘Japanese NIH’
Researchers fear reforms will bring cuts to basic science.
Ichiko Fuyuno

お電話で取材を受けてコメントが引用されました。
“I feel at odds with the concept,” says Noriko Osumi, a neuroscientist at Tohoku University in Sendai and president of the Molecular Biology Society of Japan. “It lacks respect for scientists’ free-minded creativity, which is the foundation of the country’s scientific strength.”

拙ブログでも繰り返し述べていますが、日本におけるmedical/health scienceの進め方において、現状を是とする立場ではありません。
先日のNeuro2013のシンポジウムでの高橋政代先生の言葉をお借りすれば、「基礎研究の次のステージの<応用研究>が日本ではとても貧弱」であり、これはとても大きな問題だと思っています。
(政代先生のスライドでは、
基礎研究>応用研究>臨床研究>治験>……という、治療に至るまでの何段階かが示されていたのですが、ノートをラボに置いてきたので、追って追記します。)

「貧弱」な理由には2つあって、一つは、「応用研究」に興味のある研究人口が少ないこと、もう一つは「応用研究」としてトップダウン的に配られる研究費を用いた研究の中で、「まだまだ基礎研究レベル」なものが多々あることだと思います。
政代先生は「もっと応用研究をする研究者が増えてほしい」と発言されていましたが、現状において、医療従事者の過酷な労働条件では、研究をする時間が取れないであろうという点と、基礎研究者の中には「応用研究なんて価値が低い」というスノッブな考えを持っている方も少なからずいるかもしれない点、あるいは、現状の「理学部系」の教育過程では「ヒトとの接点」を教える人材やコマが無いことなど、問題は多岐にわたります。
生命科学分野における「基礎研究」はtreasure huntingの側面がありますが、応用段階では、同じような実験を細々と条件を変えて至適なところを求めるなどの忍耐力も必要です。
基礎研究者は、そういう「体力・忍耐力」に欠ける方も多くいます。

つまり
health science関係の予算を一元化して、一気通貫にしたら、格段に進む!
かとういうと、そう簡単ではないと思うのです。

さらに、私自身は、この新たな施策により国全体が「基礎研究軽視」に傾くことを危惧します。
「明日の医療に役に立つ」ことばかりを求めていては、10年後の芽が枯渇するでしょう。
いったい何の役に立つのかはわからないけれど、「それは面白い」と言える研究もリスペクトされなければならないと思います。
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このタイミングでちょうどご献本頂いたのが『科学者の卵たちに贈る言葉 江上不二夫が伝えたかったこと』(笠井献一著、岩波科学ライブラリー)です。
時代が違うといえば、確かにそうなのですが(著者が1939年生まれ)、競争が激しくなった今の時代だからこそ、江上先生のピュアな言葉がとても心に響きます。

誰もがまだ気がついてないところから重要な研究課題を見つけだしなさい。他人に大事だと言ってもらえないと大事だと思えないような自信のなさではいけない。自分の選択に自信をもって、それを育てなさい。(「4 つまらない研究なんてない」より)

確実に結果が予想できるような実験なんて、やってもあまり意味がないじゃない。どんな結果になるかわからない実験こそ価値があるのよ。そうして、もしも予想もしなかった結果になったら、そこにはまだ誰も知らない何かが隠れているということなんだ。世界をあっと言わせる大発見になるかもしれないんだから、君は大喜びしなければいけないよ。(「6 実験が失敗したらよろこぶ」より)


もとに戻ると、「日本版NIH」はどうしてもトップダウンの研究費としての側面が強いものになると予測します。
それを推進する上で、「ボトムアップ」な研究を蔑ろにしてほしくない、というのが私の主張です。
by osumi1128 | 2013-07-14 21:25 | 科学技術政策 | Comments(0)

東北大学縁の女性研究者#4:栗原和枝先生

栗原和枝先生は、東北大学で初めての理系女性教授です。
御着任は1997年で私は1年違い。
当時は反応化学研究所というところの教授でしたが、2001年改組により多元物質研究所になり、さらに2007年からは世界トップクラス拠点WPIの原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)に移られました。
ご専門は「界面化学」という分野、とくにナノ界面に関することです。
栗原研のwebサイト

私自身は研究上の接点は無いのですが、日本学術会議の折や、学内外の男女共同参画委員会関係でご一緒することが多くあります。
東北大学の女性科学者育成支援事業、「杜の都女性科学者ハードリング支援事業」の立ちあげに関して、栗原先生はその施策立案のところから、学内の事業準備に関して、多大な貢献を為されました。
「ハードリング」というネーミングは栗原先生のご発案です。
それは、女性が科学者としてのキャリアを続ける際に、ロールモデルの不足、出産育児による負担、介護による負担など、いくつかの障害=ハードルがあり、支援事業では、女性がそのハードルを越えていくお手伝いをしましょう、という意味なのです。
そして、ハードリングという競技では、ハードルは倒してもOK。
つまり、さまざまな障害をみんなで超えて、みんなでハードルを倒していけば、障害が無くなる、ということでもあります。
この事業は3年間、文部科学省の支援により行われた後、現在は学内経費で続けています。
「東北大学サイエンス・エンジェル」もこの事業により行われているのです。

栗原先生とお話をしていると、本当に周囲の方々に気を配って、慎重に物事を進められるというご様子がよくわかります。
そのことは、きっと研究を遂行される上でも良い方向に活かされているのだと推察されます。
科学者に必要なのは、とんでもないことを想像する楽天性とともに(それだけでは、ただの夢想家です)、なんども、さまざまな方向から検証する慎重さです。

ちょうど今年5月、栗原先生は国際純正・応用化学連合から、IUPAC 2013 Distinguished Women in Chemistry or Chemical Engineeringという栄えある賞を授与されました。
AIMRウェブサイトより:栗原教授、IUPACより"世界の卓越した女性化学者"に選出

栗原先生、益々のご活躍をお祈りしています!

JST男女共同参画アドバイザリーボード栗原先生からのメッセージ
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by osumi1128 | 2013-07-09 20:24 | ロールモデル | Comments(0)

仲野せんせいのセミナー&仕事のスキル:ファイルの「リスト・時系列管理」のススメ

d0028322_823241.jpg昨日、阪大の仲野徹先生のキャリアパスセミナーがあって、大入り満員、立ち見まで出る大盛況でした。
「研究する人生 研究の進め方から論文の書き方・通し方まで」というタイトルで、なかなか聴き応えがありました。
参加できなかった方のため、自分自身の備忘録としてFacebookに書き込みしていたものを転載しておきますね。
まずは何より確実なデータ。トップダウンよりボトムアップ。納得いくまで同じ実験を繰り返す。図表の作成には手間と時間を惜しまない。描きながら考えるのが大事。結果を短いセンテンスで言えるところまで高める。

解釈と展開。新しいデータが出たらそれを元に考えるので、次の実験が変わることがよくある。できるだけ厳しく解釈する。一度に一つのことを考える。同時に、出来るだけ甘く考えて、妄想を膨らませてみる。そのバランスが大事。ベストの結果とワーストの結果の両方考えておく。その対処法も含めて。欲しいデータと出来る実験のバランスも、大事。ロバストな研究と夢のような研究とのバランス。仲野せんせいは8:2くらいとのこと。

上手なデータの組合せ方。引き合うデータをクラスタリング。似たもの同士をあつめる。実験を実際に行った順序は無視。結果を説明しやすいクラスタリングを。おお、懐かしのKJ法のご紹介。組合せたカードの内容を言語化するのは、確かに大事。組合せを変えてみることも。孤立データをどうするか。不要なデータは捨てる。孤立させないために追加実験という場合も。データには軽重がある。

オッカムの剃刀で削ぎ落とす。単純化すること。仮定は少なく。より単純な説明が可能なら、その方がベター。研究の世界は、いわばアブダクションである、というお話も。データを元にストーリーを組立てて、納得させられるか。データを出しながら書くこと。

目指すは一本の矢。主張はするが言い過ぎない。論理に破綻は無いか。論理的構築が決まればタイトルは自ずと決まる。論理の飛躍はないか。論理の糸が細くないか。不足のデータは補足する。傍証の蓄積、反論の棄却。小学校の高学年程度に理解できる理屈でないと通用しない。論理がひっくり返るような結果が出るかもしれない実験は先に行う。

親切な心で論文を書く。アブストラクトとイントロダクションを魅力的に。最初が駄目なら読んでもらえない。査読者は必ずしも専門家では無い。親切な心と感謝の心。素人とエキスパートの両方が納得できるように。読後感をさわやかに。最後のセンテンスも大事。大事なデータをどこに配するか。弱気なコメントで終わってはダメ。

いざ投稿、そして改訂。エディターのレビューワーも人の子。どの雑誌に投稿するか。カバーレターを丁寧に。本文よりも膨らまし気味に。レビューワーの忌避は有効。指名の効果は不明。レビューワーにはできるだけ素直に従う。親切なリバイスを。

というあたりが重要なメモです。
このブログに載っけてシェアします♫

最後の方のスライドからのメモはこちら。
生命科学研究、受難の時代? 一つの論文に必要なデータの膨大化。研究のスピードと研究内容の変化。テニュアポジション獲得の困難性。いかに生き抜くか。オリジナリティのある研究を。勝てるテーマを選ぶ。やりたいこととできることを意識。足下を確かめつつ星を眺める。単位時間あたりの研究成果を最大限に。ムダな実験をしない。常に上手くいかなかったときのことを考える。いろいろな相場感を身につける。引いて考えること。自分のデータだけで考えてもダメ。ラボメイトのデータから考える。

これに触発されて、本日のテーマは「仕事のスキル」として、PC上でどのようにファイルを管理するかという話をします。

その前に、仲野せんせいのご著書のご紹介。
『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』
拙ブログの書評:『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』【ちょこっと加筆】

ちょうど昨日、Facebook繋がりの方と話題になったのですが(Macユーザの方)、ファイルの一覧って、デフォルトはたぶん「カラム表示」なのだと思いますが、私には圧倒的に「リスト表示」の方が仕事がしやすいのです。
その理由は以下になります。
1)ファイルやフォルダが保存した時系列に並べられる
2)そうすると、直近に動きのあったファイルやフォルダが上にくる
3)動きの無い下に回ったファイルやフォルダは格納の時期だとわかる

私の場合には、on-goingのファイルやフォルダはすべてDropbox上に置いており、一日に10〜50くらいのフィアルの処理(原稿チェックから日程調整星取表まで)あるので、「時系列処理」が必須です。
それは人の記憶が時系列というタグがつきやすいということに基づいていると思います。
人の名前、その他のタグは、タグそのものを思い出すことが困難だったりしますが(若いうちは大丈夫?)、「たしか昨日か一昨日くらい」「1ヶ月前くらい」という記憶のタグは、かなりロバストです。
時系列整理はもともとは有名な野口悠紀雄先生の本『超整理法』にもとづきます。

また、この管理の仕方では、フォルダの階層を深くすることは避けています。
例えば、せいぜいが下記のようなかんじです。
Dropbox>秘書さんとの共有フォルダ>直近のタスクのフォルダ>ファイル

なので、急いで仕上げるべきフォルダは、つねにモニタ上で上位に位置することになり、アクセスが良いのです。
階層を深くすると、いちいちフォルダ名を付けなければなりませんが、「リスト表示」の場合には、例えば、新しく作ったファイルは、とりあえず「ひとりぼっち」で置いておいてもOK。
何かそのファイルの改訂バージョンなどたまっていけば、それを「クラスター」にして初めて「フォルダ」を作成するのです。
新しくファイルを作る際に、それを入れる階層のフォルダに、いちいち名前を考える手間もありません。
ずっとひとりぼっちのファイルは、時間が経つにつれて自然に下の方に下がっていきますから、一週間ごととか一ヶ月ごとなど、ファイルの整理をする際にメインマシンの「処理済み」フォルダに放り込みます。
最近はメモリの容量が大きいので、滅多なことではファイルは削除しませんね。

また、ファイル名自体には「OsumiCorrespondence130705」のように、少しだけキーワードをタグとして付けておきます。
カラム表示の場合に、例えば「text.ver.1」などのようなファイル名を付ける学生さんが多いようですが、私とのやりとりの間に、ファイル名を変えておきます。
そうでないと、私にとっては「誰のテキスト」なのかわからなくなるからです。
日付を頭に付けると、カラム表示でも日付順にはなりますが、あたまに日付が付いているのは、何のファイルなのか、瞬間的な視覚認知が悪いですね。
ファイル名に付いたタグは、PC内の検索の場合にも効果を発揮します。
というのは、現在の検索エンジンは優秀なので、PowerPointの中のテキストまで検索してくれることは確かですが、それよりも、「ファイル名」でのキーワード検索ができれば、圧倒的に早く結果が表示されます。

上記の仲野先生の御講演にもありましたが、「単位時間あたりの研究成果を最大限に」することはとても大切です。
ファイルの管理ひとつでも、「単位時間の処理速度を上げる」ことが可能なのです。

たぶん、研究を初めて間もない学生さんには「カラム表示」の方が自然なのかもしれませんが、どこかの時点で自分の仕事が複雑になっていくときに、「違うやり方」もあるということを知っておくのは大事だと思います。
また、「異なるやり方に適応する」柔軟性自体も、クリエイティブな発想ができるかどうかに関わると考えられます。

という訳で、「リスト表示・時系列管理」、お勧めです!!!
by osumi1128 | 2013-07-06 09:32 | 若い方々へ | Comments(0)

「日本版NIH」関連まとめ

学会出張やゲスト対応に追われていた間にアップデートされた声明等がありますので、まとめておきます。

「日本版NIH」これが最初?(3月29日付第5回産業競争力会議)
第5回産業競争力会議配布資料7(PDF)
p2に「ライフサイエンス分野の研究開発、研究開発投資の司令塔として「日本版NIH」(仮称)を設置し、各省関係予算の運用を一元化。関係する既存組織の統合や民間資金を含めた十分な予算規模の確保も指向」とあります。

第5回産業競争力会議議事録(PDF)
p10に甘利経済再生担当大臣の発言として「医療分野における研究開発の司令塔である<日本版NIH>の設置をすべき」という言葉が載っています。

第2回健康・医療戦略参与会合(4月25日)資料5(森下参与提出):J-NIHへの提言(PDF)

健康・医療戦略(PDF)(6月14日付閣議決定)
解説については拙ブログ参照:基礎研究へのリスペクトと研究倫理(6/18)

*****
研究者・科学者サイドからの発信

7学会共同声明(6/10)「健康医療分野における研究助成のあり方について(緊急声明)
-「日本版 NIH」構想と裾野の広い基礎研究の必要性- 」(PDF)


生物科学連合(54団体)緊急声明(6/11):「日本版 NIH」構想における資源配分と人材育成プロセスへの懸念(PDF)

大阪大学生命機能研究科(6/14):「日本版NIH」構想に対する危惧と要望

RU11(11大学による学術研究懇談会)(6/19):「優れた学術基盤」が支える「日本版 NIH」構想について(PDF)

日本学術会議会長談話(6/21):「真に成果の出る日本版 NIH 構築のために 」(PDF)

関連拙ブログ:
「日本版NIH」じゃぁだめでしょう(6/1)
7学会緊急声明(6/10)
基礎研究へのリスペクトと研究倫理(6/18)
「基礎研究」とは?(6/11)
by osumi1128 | 2013-07-02 08:41 | 科学技術政策 | Comments(0)