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『背信の科学者たち』にみるデジャブ

紀元2世紀:プトレマイオス(天文学)
17世紀初期:ガリレオ(物理学)
17〜18世紀:ニュートン(近代物理学)
18世紀:ベルヌーイ(数学)
19世紀:ドルトン(化学)、メンデル(遺伝学)、ダーウィン(進化学)
20世紀:バート(心理学)、野口英世(細菌学)
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科学の世界にいれば誰もがその名前を知っている上記の偉大な科学者が、すべてなんらかの「研究不正」、あるいは不正と言わないまでも、科学者としての倫理規範に抵触していた、という事実は、案外知られてはいません。いわば、研究不正は科学の歴史とともに、どんな分野においても存在したと言えるのですが、その数が増えてきたのは、明らかに科学が国家と結びついてからでしょう。

欧州出張の機上でちょうど読み終えた本書『背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?』(講談社)の原著は、1970年代からの米国における論文不正事件の多発を背景として1982年に発行され、その和訳の初版本は化学同人社から1988年に出帆されました。日本でもいくつかの科学不正事件が生じたことを背景に2006年に講談社からブルーバックスとして再出版されたものの、絶版になっていたのですが、(幸い)STAP細胞事件がきっかけでこの6月に再刊になりました。電子書籍としても読めます。原著者はウィリアム・ブロードと、ニコラス・ウェイド。どちらもプロの科学ライターで、Science、Natureなどの科学記者として、さらにはNew York Timesなどの新聞でミスコンダクト報道に関わってきた方です。科学史や科学技術論にも詳しく、本書はそういう分野の資料としても役立ちます。訳者である牧野賢治氏は、初版発行時には毎日新聞の科学記者をされており、その後、1980年代末から2009年まで東京理科大学で科学地術社会論を教えられたとのこと。

本書「まえがき」には次のようにあります。
 これまでの伝統的な科学観によれば、科学とは精密な論理のプロセスであり、客観性こそ科学研究に対する基本的な態度である。科学における主張は、綿密な検証と追試(再実験)によって厳格にチェックされる。こうした自己検証的な科学のシステムによって、あらゆる種類の誤りはすみやかに容赦なく排除される。

筆者らは、このような伝統的な科学の性質に対する見解に疑問を持ち「科学が現実にどのように機能しているかを探求」すべく本書を著したと言います。その結果わかったことは、大多数の論文は誰に顧みられることもなく、追試も検証も為されないこと、科学者自身が他の科学者の不正に気づいたとしても、それを質さないこと、科学者もその社会の権威に弱いことなど、上記のような科学者が信じている「自己検証的な科学のシステム」は、実際にはうまく働いていないということでした。

本書では、1981年に米国下院科学技術委員会における証人喚問の場面から始まります。調査小委員会の議長はアルバート・ゴア・ジュニア、証人として召喚されたのは米国アカデミー会長のフィリップ・ヘンドラーその他の科学者。取り上げられていた問題は、ハーバード大学やエール大学という一流の研究機関で生じた研究不正についてでした。その場において、証人である科学者たちが「科学には自己検証機能がある」ことを繰り返したことが、議員たちの不満を募らせたと本書には記されています。「…データの捏造者の比率がいかに小さいものであっても、事件が二〜三ヶ月に一件表面化するだけでも、科学に対する信頼は深刻に損なわれてしまう」のに。

冒頭のプトレマイオスを始め、本書では多数の研究不正エピソードが取り上げられていますが、中でも私が注目したのは「第3章 立身出世主義者の出現」で取り上げられた「アルサブティ事件」です(以下、ネタバレですので注意)。

イラク出身のエリアス・A・K・アルサブティは、17歳でバスラ医科大学に入学し、「ある種のがんの検出に有効な検査法を開発した」ことを政府に伝え、政府はよく調べもせずにアルサブティをバグダット医科大学の5年次に入学させて研究資金を与え研究施設を作らせた。がんの検査法開発は実際には芳しい成果とはならず、代わりに労働者のがん検診を行って金を稼いだ。社会主義国家においてこのような金稼ぎが問題となったときには、すでにアルサブティは国外逃亡。ヨルダンのハッサン皇太子に近づき、フセイン国王医学センターでの研究を認めさせた。さらにヨルダン政府に依頼して米国派遣。アルサブティが参画したのはテンプル大学の微生物学者ハーマン・フリードマンの研究室だった。まずは無給のボランティアとして仕事が与えられ、大学院課程で学んだ。この間にも新しい白血病のワクチンに関する捏造論文を書いていたが、ともあれ学位取得が繰り返し失敗であったために、テンプル大学は去らなければならず、次にジェファーソン医科大学のE・フレドリック・ウィーロックのもとに移った。ウィーロックはアルサブティを「ヨルダン王族の若くして才気にあふれる学生」であると信じこみ、ラボメンバーに加えた。その1万ドルの資金援助はヨルダン当局から為された。この間に、博士号を取得していないにも関わらず虚偽の身分を騙ったりしたが、ラボ内でのデータ捏造が同僚から告発され、ウィーロックはアルサブティを解雇する。ラボを去る際に研究費申請書と論文原稿を持ち出し、それらを用いて盗用の論文を「チェコスロバキアの雑誌」に発表するも、ウィーロック研のめざとい学生に発見される。その頃、アルサブティはテキサスのM・D・アンダーソン病院に異動していたが、これも、病院トップとかけあって「ヨルダン国軍の軍医総監」の紹介状を見せて、まんまとポジションを得たもの。この時代にアルサブティは論文を盗用により量産し、「無名の雑誌」(日本のものも3つあり)に送りつけて掲載を勝ち取っている。自身の所属先をヨルダン王立科学協会やイラクの私設研究室にすることにより同僚の目にふれさせず、投稿先が人目につかない雑誌であったために、盗用された方の著者もまったくわからずに論文不正の発覚には時間がかかった。アルサブティが24歳の時点で履歴書には43編の論文がリストされており、虚偽のPhDも書かれていた。アルサブティはその後も捏造論文を量産し(2年で20本程度のペース)、アメリカ・カリブ大学での学位を取得し、バージニア大学での医学研修プログラムに採用されたが、不正は最終的には発覚する。1980年には自分の論文を盗用された原著者たちが騒ぎ出し、『サイエンス』誌にも事件が掲載されたのである。

論文がインターネットで検索できる現代であれば、アルサブティの不正はもっと早くわかったのではないかと思いますが、この事件にしろ他のものにしろ、「不正は繰り返される」「より助長され悪質になる」という原則が見て取れます。それにしても、次々と所属先を変える際に、採用者がアルサブティの経歴をきちんとチェックしなかったことは、数年にわたって彼が捏造論文を量産できることにつながり、多くの科学者が自分の論文を盗まれることになったのではないでしょうか。

科学者の営みは、突き詰めれば真理を探求することですが、もちろんそのことに伴う「名誉」も大きなモチベーションになることは、他の職業となんら変わらないでしょう。程度の差こそあれ、名誉欲は誰にでもありえるもので、それは小さな子どもが親から褒められたいという気持ちの延長にあるものです。

現代の科学者が不正の誘惑にかられる背景には、「名誉」に加えて「職を得る」ことや「研究費を獲得する」も加わります。原著の書かれた1982年という時代背景には、冷戦終結とともに、米国の国家予算配分が軍事から科学研究に大きくシフトしたことがあります。巨額の資金が科学分野、とくに生命科学分野に流れ込みました。その結果、研究人口が増加し、研究者間の競争が厳しくなったことが研究不正の通奏低音として響いています。日本では当時はまだ対岸の火事だったのですが、1996年に制定された「科学技術基本法」以降、科学と産業の結びつきが強くなり、米国の後を追いかけて研究不正が生じているように感じます。本書で挙げられている研究不正の例は、歴史的な順序は逆なのですが、今、日本で起きているいくつかの重大な事件の既視感があります。

原著の刊行以降も、「ボルチモア事件」など、とくに生命科学・医学領域で多発した研究不正を受けて、1989年に現在の研究公正局(Office of Research Integrity, ORI)の前身であるOffice of Scientific Integrity(OSI)が設立されました。これは米国国立健康研究所(NIH)予算に関わる研究不正を扱いますが、組織的にはNIHから独立しています。また、1990年代半ばからは大学等の研究機関における研究不正の処理手続きが整備されてきました。ORIは、起きてしまった不正への対応だけでなく、その予防としての教育にも力を入れています。先般、ORIのトップが辞任するという報道が為されたところですので、「日本版」ORIを設立するのであれば、現状に則した実行性のあるものでなければならないでしょう。


by osumi1128 | 2014-06-30 22:41 | 書評 | Comments(0)

STAP細胞の遺伝子解析からわかったこと

速報というよりは、改めて自分の頭の整理のために記しておきたいと思います。

STAP細胞論文発表直後に面白いと思ったことが2つありました。そのうちの1つは「ES細胞では寄与できない胎盤に寄与する」という点です。論文の疑義が出された頃の拙ブログ(3/12付)では、「もしかして初期胚由来の細胞を用いてキメラ形成実験をしたのでは?」という予測をしてみましたが、これははずれ。6月16日の若山会見やCDBからの発表により、それは遺伝子解析の結果、「TS細胞が混入した細胞」である可能性が濃厚になりました。


ES細胞は、胚盤胞と呼ばれる時期の内側の細胞「内部細胞塊」を元にして作製されるため、もはや胎盤へ寄与することはできません。一方、TS細胞(trophoblast stem cells)は胚盤胞の外側の栄養膜(trophoblast)を元にして作製されるため、胎盤には分化できますが、胎仔の細胞を作ることはできません。遺伝子発現解析によれば、STAP細胞がマウスの脾臓細胞とTS細胞の中間の状態のような性質を示すことがわかりました。また、より胎盤形成に寄与するとされたFI細胞(FGF-induced STAP細胞)は、TS細胞とES細胞の中間の性質を示すことから、両者の混ぜ物である可能性が高いようです。

一方、別のSTAP細胞解析結果からは、染色体異常が見つかり、8番染色体の数が多い「トリソミー」という状態になっていることがわかり、これもES細胞が元になっていたのではないかという可能性が濃厚です。

さらに、若山氏から渡されたマウスから得られたとされるSTAP幹細胞の遺伝子解析結果は、細胞を標識するために人工的に導入したGFP遺伝子の挿入位置が、元のマウスのものと異なることも示されています。この解析された細胞の由来については不明です。

結局、「本当に胎盤になるの?」という疑問については、ES細胞から作られたキメラの場合でも、胎仔由来の血球細胞が胎盤に入り込むために、GFP標識が光って見える可能性がある、ということが真実だったようです。やれやれ……。
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より詳しい説明については、下記、日経サイエンス8月号の特集記事が多数の図もあり、概ねわかりやすいものと思います。この記事では、論文のストーリーに合わせて、そのときどきに違う細胞が使われた可能性が指摘されています。

日経サイエンス8月号:STAP細胞の正体

ちょうど8月号が手元に届いたので、読んでみて気付いたことがあります。それは「Myc遺伝子は細胞がストレスを受けると高いレベルで発現する」という1文です。不勉強で知らなかったのですが、これはいくつかの知見を繋げるヒントになると思われました。

iPS細胞を作るときに用いられた「山中4因子」はすべて「転写制御因子」という、組み合わせによって細胞の性質を規定する因子ですが、そのうちの1つが「c-Myc」です。もともとはBurkittリンパ腫で同定され、癌細胞において高く発現することが知られる因子だったので、iPS細胞を移植した際の癌化に関係するのではないかと思われ、実際にc-Mycを入れなくてもiPS化できる技術が開発されています。

でも、もし酸などのストレスが細胞に与えられてMyc遺伝子が発現するのであれば、これは生体内での「癌幹細胞 cancer stem cells」の誘導に関係した現象なのではないかと思われます。この点こそが、私自身がNature論文(の上っ面だけ)を読んで面白いと感じたことの2つ目でした。他のストレス(トリプシンなどの酵素処理や機械的ストレスなど)によってもMyc遺伝子が発現するものなのか興味が持たれます(すでに関連する論文は出ていると思いますので、どなたか調べて何かわかったら教えて下さい)。ちなみに、c-Mycは正常な初期発生でも発現がありますが、そのあたりも「細胞ストレス」というという観点から見直すと面白いかもしれません。

その他マウスの購入等の記録から「エア実験」の可能性も疑われており、STAP細胞に関するNature誌の論文2報については、そのストーリーを成り立たせているデータそのものの信頼性が著しく損なわれているように思われます。美しいストーリーに合わせた図を作ることがサイエンスなのではありません。ストーリーに合わなかったら、そこから新しいストーリーを考えだすことこそ、サイエンスの醍醐味だと私は思います。

【参考】

【追記141101】
理化学研究所の遠藤高帆研究員が、実験に用いられたとされる細胞遺伝子解析結果を論文発表されました。それによると、論文(取り下げ済み)の記載と齟齬があることがはっきりしました。とくに、キメラ作製により胎盤になるとされたFI細胞は、90%がES細胞、10%がTS細胞である可能性が私的されています。上記の予測は正しかったと考えられます。


by osumi1128 | 2014-06-26 22:59 | サイエンス | Comments(3)

東北大学部局HP比較

大学のホームページは、科学コミュニケーションの一形態ですが、それぞれ個性があって面白いですね。最近では大阪大学の職員募集ページがトンでいます(昨年度はもっと個性的だったのですが……)。

おっと、仙台通信なのですから、ライバル大学?の引用をしている場合ではありません。本学のHPについての話題です。大学本部扱いのサイトは、現在、グローバルサイトの新規構築途中なので、今日は部局の話題を。

加齢医学研究所の所長が脳トレの川島隆太先生に変わったことを機に、HPの全面改訂がなされました。
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いわゆる「ブロック型」で斬新さを出していますね(上部にリンク先の帯は残っていますが)。メインバナーは数枚が送られるもので、クリップした画像は、副所長の本橋ほづみ先生の「リレーエッセイ」のバナーです。このコーナーは、研究内容ではなくて、加齢研教授の「趣味」を見せるとこなのだそうです。本橋先生はキッチンで「角煮」を作る様子と、とっておきのスパイスの画像になっています。

こちらは理学研究科・理学部さん。アカウントが「sci」っていうのもカッコいい。作りは上部横のリンク先、その下が3分割で、左のカラムにリンク先各種、右はバナーが並べてありますが、注目すべきは真ん中のエリア。そこをさらに3分割して、記事のリード文を画像とともに載せていてビジュアルな効果を狙っています。「クマ目撃情報」などがあるのが青葉山キャンパスらしいです。すでにオープンキャンパス情報も挙がっていますね。ちなみに、東北大学のオープンキャンパスは、日本で第二位の集客力を誇ります(第一位は早稲田大学)。
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HP管理を行っているのは「広報・アウトリーチ支援室」で、バナーをクリックすると独自のサイト(ブログ形式)に飛びます。ここも写真を大きめに使った作りで、キャンパス内の様子がよく伝わってきますね。

アウトリーチ系で言えば、「科学者の卵養成講座」という全国の高校生向けのプログラムのサイトも可愛いです。
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それから東北大学原子分子材料科学高等研究機構WPI-AIMRもカッコいい。こちらは横に分割されている作りです。最新情報・プレスリリースは小さいサムネイル画像とともに常時6つ程度を掲示しておくようですね。
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下のものは、昨年、大リニューアルしたのが大学病院サイトです。清潔そうな白をベースにしてロゴマークのオレンジを活かしたカラーコードですね。このトップページの真ん中にはお知らせの部分があり、下の方に移ると、大きめのバナーのフラッシュ、さらに下には採用情報や子育て支援なども直接アクセスしやすいようになっています。
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病院長の肝いりで現在、広報チームは大幅増員されて、各種イベント対応なども頑張っています。あ、オリジナルの手洗い歌「おててテトテト」も是非、見て・聴いて下さい!

関連部局である東北メディカル・メガバンク機構のHPはこちら。昨年のリニューアルの際にブロック型に変わりました。地域住民の方に向けて、リクルートへの誘導を意識した作りになっています。専門家向けの部分ですが、研究内容の公開や、倫理面の検討なども、階層が深くならないよう配慮されていますね。質の高い広報誌phraseや折々に活動の様子を伝えるニュースレターなどの冊子PDFもダウンロード可能です。

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さて、医学系研究科・医学部のサイトですが、先日マイナー・リニューアルを行いました(ほんとはこれを一番お知らせしたかったのです♫)。トップ画像を大きくして数枚載せています。また、研究科紹介の動画もリニューアルされ掲載されました。

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私達のサイトは広報室が立ち上がって管理を始めてから、「バリアフリー」であることに気をつけています。文字のコントラストや色調などの配慮に加え、トップバナーにも例えば「オープンキャンパス」という文字を入れ込んであり、視覚障害を持った方がアシストツールをPCに入れてこのサイトをマウスオーバーすれば「オープンキャンパス」という音声情報を得ることが可能です。

うちのサイトの悩ましいのは、とにかく「お知らせ」の類が多いことです。1週間の間に平均10件ものニュース、イベント、採用情報等が持ち込まれるので(それはそれで有難いことですが)、ここの運用あたってあまりビジュアル化ができていません。また、組織内検索やニュースポータルとしての性格が強いために、現時点では「読ませる記事」が少ない状態です。このあたりも、今後、マイナーな改訂を続けていくつもりです。
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3月から専任の助教のIさんを迎え、FacebookおよびTwitterの運用もより活発になりつつあります。理学研究科さんに習って、学生さんの「広報サポーター」制度を導入しました。彼らの活躍も楽しみです。学内の広報チーム同士が切磋琢磨する環境が整いつつあります。研究教育機関としての節度と品位あるpublic relationsをどのように展開するか、とくに「伝わってほしい」方々へどのように「伝わるようにする」のか、知恵と工夫が必要だと感じています。

是非、いろいろなご意見などありましたら、広報室までお寄せ下さい。あ、是非、Facebookに「イイね!」もよろしくお願いしますm(_ _)m


by osumi1128 | 2014-06-21 20:33 | 東北大学 | Comments(0)

東北大学大学院医学系研究科オープンラボ参加者募集のお知らせ(予約制)

過日の大学院説明会は仙台開催、東京開催ともに盛況に終わりましたが、さらに今年は東北大学医学系研究科の大学院で学びたい方のために「オープンラボ」を企画しています。
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予め申し込んで頂いて、訪問・見学したい研究室(ラボ)との日程等をアレンジします。研究室によっては実際の実験を体験してもらうこともできます。
・6月16日~7月31日(17:00まで) 応募受付け
申請書等の詳細はこちら

なお、脳神経科学コアセンターでは、上記オープンラボ企画に参加しています。下記の「光操作研究会+技術検討会 in 東北大学 2014」の機会も利用できます。受付を開始しましたので奮ってご参加下さい。とくに、次年度以降に大学院受験を検討している方の参加をお待ちします!
シンポジウム:2014.8.21(木)~22(金)
東北大学医学部星陵キャンパスそば 艮陵会館(ごんりょうかいかん)
8/21(木)12:30 受付開始

技術検討会<形> :8/18(月)~21(木)大隅研12名定員
技術検討会<光1>:8/22(金)~23(土)八尾研10名定員
技術検討会<光2>:8/22(金)~25(月)松井研04名定員
光操作研究会 2014 年度当番幹事:
東北大学大学院医学系研究科・脳神経科学コアセンター
新医学領域創生分野
准教授 松井 広(まつい こう)
matsui*med.tohoku.ac.jp (「*」を「@」に変換してください)


by osumi1128 | 2014-06-12 12:18 | お知らせ | Comments(1)

「医は仁術」に見る和魂洋才

過日、国立科学博物館で開催されている「医は仁術」を観てきました。常設展は高校生まで無料ですが、さすがに特別展は大人1500円、小中高校生が600円。それでも見応え充分の企画だと思います。館内撮影自由(フラッシュや動画は禁止)というのも太っ腹。ちなみに、昨年度の来場者数は237万人に上ったとのこと。

江戸時代の各種の展示から、徳川幕府の築いた安定的時代に、日本の医学・医療のレベルがいかに高かったかが、今日の長寿に繋がっているのだと感じられました。

医学部の学生さんは必ず医の倫理の講義で「ヒポクラテスの誓い」を学ぶはずですが、それよりも日本なら「医は仁術」を伝えた方が良いかもしれません。下記は特別展HPより。
「仁」は、儒教で重視された“他を想う心”である。
古来より“和”を大切にしてきた日本で、「仁」は身分の上下なく、誰もが持つべき思想として人々に受け入れられた。
気配り、気遣い、おもてなしのように、「仁」の心は日本文化の根幹となった。
その「仁」が育んだ日本の医。それは途切れることなく脈々として今に繋がっている。
私自身は、なぜ日本の解剖図はリアルではないのか、という文化的な違いに興味があります。例えば、有名な『ターヘル・アナトミア』という解剖図譜が翻訳されて『解体新書』になった訳ですが、銅版画で描かれた図と、木版で作成された図のタッチはずいぶん違うように思われます。
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上記はオリジナル。
下記は翻訳の挿絵(裏が透けてますが……)。
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ちょっとわかりにくいかもしれませんが、銅版画の方がより細かく線が引けるので、「線で影を表す」のが西洋流。輪郭線を描いてしまうのが和風。西洋流は「光と影」で表すのに対して、和風は「輪郭」が大事。

そのような道具とスキルの違いが、認知機能にどんな影響を与えたのか夢想します。西洋医学に習って腑分けを始め、絵師にスケッチを取らせてなお、それらの絵が「リアル」ではない、でもその向うにリアルなものを見ることができるのが日本特有の認知様式なのでしょうか。漫画MANGAも輪郭中心の作風ですし。
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最後の「パラパラ漫画」のコーナーでは、女医のお母さんが主人公で、ちょっと涙腺が……。次の週末までなので、お時間のある方は是非、上野の科博にGO!

【参考リンク】
東北大学デジタル図書館:解体新書

by osumi1128 | 2014-06-09 23:55 | アート | Comments(0)

基礎医学分野のマスタープラン:生命科学研究のあり方は?

過日、日本学術会議主催により「第22期学術の大型研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2014)」のお披露目的なシンポジウムが乃木坂の講堂で行われました。


自分にとっては、第20期から会員を続けて卒業予定の今期の大きな仕事の1つが、このマスタープラン策定でした。上記「提言」には以下のようにまとめられています。


国家的な大型研究プロジェクトの推進には、長期間にわたって多額の経費を措置する必要があるため、社会や国民の幅広い理解を得ながら、長期的な展望をもって戦略的・計画的に推進していくことが強く求められる。本分科会は、日本学術会議「日本の展望―学術からの提言 2010―」の実現に向けて、大型研究計画の観点から学術の方向性を明らかにするために、新たに学術大型研究計画 207 件(区分 I 及び区分 II の合計)と重点大型研究計画 27 件を取りまとめ、その内容をマスタープラン 2014 として提案する。


研究者が研究を行う「研究費」は、以下のようなカテゴリーから成り立っています(話をシンプルにするために、国立大学の研究者のケースに限定)。

1) 文科省から配分される運営費交付金から配分される分(光熱水道費なども含む)
2) 科研費(競争的だがボトムアップ。数百万から数億まで)
3) トップダウンのテーマに沿った競争的研究費(CREST、さきがけ等。数千万円〜億程度。今後の健康医療系はこの枠なのか?)
4) 国のプロジェクトの委託研究費(各省庁、内閣府)
5) 財団の研究費(競争的)

研究者の自由な発想に基づいた研究は上記の1)2)に相当します。現在、1)の部分が年々減少しつつあり、学内でも各種業績に基づき「傾斜配分」される方向にあるので、20年前よりも研究者を取り巻く競争的環境が厳しくなっていることについては、別の記事でも述べました。

3)については、毎年、世界を含めた研究動向の調査結果などをもとにして、我が国として推進すべきテーマが設定され、それに沿ったプロジェクトの公募が行われます。4)のカテゴリーに相当する研究費は、大型の設備の設置や機器の開発も含み(例えば「京」など)、その予算を出す省庁が現場の研究者を含む有識者と相談しつつ進めます。5)はそれぞれの財団の支援したい方向性などによって、若手向け、女性枠などがあります。なお、ERATOなど大型で人物重視のものは、数も少ないのでここには含めていません。

いわゆる「大型研究費」は、2)4)の中に各省庁からいろいろあるのですが、2010年から始まった日本学術会議の「マスタープラン」という取り組みは、いわば「研究コミュニティーのボトムアップな意見に基づく大型の研究計画の<提案>」という位置付けです。つまり、4)の枠について、少数の研究者・有識者が関係省庁と協議して施策化するのではなく、より広い研究コミュニティーの合意をもとにした提案(マスタープラン)の中から、該当する省庁・担当局課の事情とマッチングするものがあれば予算化してほしい、というアドボカシー活動といえます。今回の207件のマスタープランの中で27件の「重点大型研究計画」は、第22期日本学術会議としてとくに「今、イチオシ!」、「ぜひ予算化を!」という位置づけです。


さて、今回のマスタープラン2014は、3年前から入念な準備をし、限りなく透明化を図りつつ進めたという点において、2010年とそのマイナー改訂の2011のときよりベターなプロセスになっていると思います(その経緯については、分科会の議事録に残され公開されています)。しかしながら、そもそも「学者たるものはお金に関わるべきではない」という精神が大事と思われている方もおられますし、「生命科学分野の研究は、加速器や天体望遠鏡を作って、皆でそれを利用する物理学系のスタイルとは異なる」という意見も多数ある中で、今回のマスタープラン2014は策定されました。実際、ボトムアップというスタイルを取りましたが、応募件数としては理工学系が過半数を占めていましたし、マスタープランに選ばれたからといって予算が付いている訳ではありません。

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研究予算の策定について、どのような組織がアドボカシーを担うのか、日本のアドボカシーはまだよちよち歩きの段階だと思います。特定の個人や学問領域への我田引水ではなく、より広い科学者コミュニティーのコヒーレントな意見をどのようにまとめるか、そういう訓練が足りない段階に見えます。自分の領域以外の研究領域に関して踏み込んだ意見を言いにくいことは、日本において「評価」という文化が育ちにくいことや、原発事故などの分析や検証とそれに基づく科学者からの発信に乏しいことと関係があり、さらに言えば、学位授与などの面でも離れた分野の研究室からの学位論文についての評価の甘さなどに繋がっているのではないかと思えます。

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また、「これらの研究が重要なので予算化してほしい」という要求は、要するに「研究するのにお金が必要です」という訴えである訳ですが、国民の税金をもとにした研究費を頂くからには、自らが襟を正して望む必要があると感じます。

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提言には、以下のように学術会議としての予算化の希望を求めています。


マスタープラン 2014 で策定された大型研究計画は、今後、科学技術立国を旨とする我が国の将来に資するために、国として計画に措置されるべきである。このため、大型研究計画が、国や自治体等の学術に関わる政策に速やかに反映されることが求められる。


ともあれ、このプロセスに関わらせて頂いた経験は(最後27課題を選定するヒアリングなどは3日間、朝から晩まで缶詰でした……)、広い学術分野全体を見渡すという上で貴重なものであったことについて感謝します。



by osumi1128 | 2014-06-02 13:50 | 科学技術政策 | Comments(1)