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医学部6号館・東北メディカル・メガバンク棟竣工式

昨日、医学部6号館・東北メディカル・メガバンク(ToMMo)棟の竣工式が盛会に執り行われました。文部科学省からは冨岡政務官、村井県知事、奥山市長と三役揃い踏み、関係自治体の首長やその代理の方々、医師会関係、製薬協関係、OB関係等ご参加くださり、総勢300名ほどの集まりになりました。会場となったのは1階の吹き抜けロビー。床にはDNA二重らせんのタイルがデザインされているのですが、多数の椅子が配置されて今回はちょっと見えず……。
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その後、ToMMoの電算室、シークエンサー室、インシリコ解析室、地域健康センター、MRI施設等の内覧会となり、インシリコ解析室では来訪記念にサインをし、その画像を印刷して記念のお土産にするという粋な計らいがありました。目下、次世代シークエンサーの数は20台で日本でもっとも多いのです。
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ToMMoのゲノムコホート事業は、すでにリクルートが3万人を超えていますが、個人個人のゲノムを解析し、長期に健康調査を行うことにより、未来の個別化医療へと繋げることを目標としています。医学系研究科や大学病院にとっても大きな意味を持つこの事業はまた、健康調査の現場で粛々と活躍するゲノム・メディカル・リサーチ・コーディネーター(GMRC)や遺伝カウンセラーの方々など、多数の方々に支えられています。

【リンク先】


by osumi1128 | 2014-07-30 22:40 | 東北大学 | Comments(0)

『あなたは理系女子?』と『嘘と絶望の生命科学』

d0028322_22114042.jpg総合科学技術会議・イノベーション会議常勤議員の原山優子先生は、東北大学工学系研究科教授の頃から存じ上げていますが、お孫さんがいらっしゃるとは思えないくらいのパワフルな方で、大ファンです。その原山先生のご著書『あなたは理系女子? YUKO教授がつぶやく超「理系女子』論(イノベーションのための理科少年・少女シリーズ⑦』が言視舎から刊行され、過日ご恵贈頂きました。

原山先生は、銀座の良家の子女として幼少時代を過ごし(何でも「なぜ?」と訊く「なぜジョ」だったというお話ですが)、女子校に進むものの、お祖父様の勧めにより14歳で渡仏され、いったん帰国するものの、国内でバカロレア試験を受けて、大学はフランスで数学を専攻されます。
その後、ご結婚・ご出産を機に専業主婦をされたのち、ご主人の転勤に合わせてジュネーブへ。そこで今度は教育学と経済学を学ばれ、さらにスタンフォード大学の研究生として「イノベーション論」を学び博士号を取得。ジュネーブ大学で職を得て助教授になるも、経済産業研究所(REITI)に請われて帰国。そして、東北大学工学系研究科の教授になられて、MOT関係のお仕事の傍ら、CSTPの非常勤議員もこなされていたかと思えば、再度、渡仏されOECDの次長職に就かれ、レジオンドヌール勲章も授与されて、それはスゴい、と思っていたところ、ご帰国になってCSTP常勤議員に、という、波瀾万丈というか、ドラマティックなキャリアパスです(本書の第二部「とらわれない生き方」参照)。

そんな原山先生は男性からもファンが多いのですが、本書も「リケジョの勧め」のように見えつつ、実は「ジェンダーを超え、国境も超え、ワールドワイドに活動するための思考法と行動原理」を提示しており、男女関係なく参考になると思います。

大事なポイントは「二分法を超える」、「理系・文系」という呪縛から離れること。「はみ出す」ことを恐れないこと。「ななめからものを見る」こと。第一部の2節が実践的なアドバイスに満ちています。

中学3年生くらいから高校生、大学生、そして中学、高校の教員の方々にも是非、お勧めしたい書籍です。

拙ブログ:OECDに行ってきた


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本日ご紹介するもう一冊、『嘘と絶望の生命科学』(榎木英介著、文春新書)は、これまでに『博士漂流時代』や『医者ムラの真実』などを書かれた榎木さんの近著。帯にはこんなコピーが……。

カネと名誉と成果
ブラック企業化する研究室
STAP細胞事件の背景をえぐるレポート
これまたずいぶんと煽るなぁ……とドキドキしながら読み進めたのですが、いちおう想定内のものでした。

STAP論文をめぐって騒ぎが大きくなったときに、「生命科学分野でなぜ、このように論文不正が多いのか?」と訊かれることがありました。複数の要因があり、それらは絡みあっていて、何から挙げるのが良いかは難しい。きっと、その方の立ち位置によるのでしょう。

榎木さんがもっとも重要視しているのは「バイオ研究は労働集約型である」という点です。ここで言う「バイオ研究」とは従来の自律的・牧歌的な「生物学研究」ではなく、多数のピペド(ピペット奴隷もしくはピペット土方)が研究を支えるような構造になっている状態と捉えておられます。

その次に挙げられているのが「大学院教育の抱える問題」です。20年前の「大学院重点化」以降、大学院の入学者数が2003年頃にピークを迎え、その数年後、2006年を堺に日本から出される論文数が、世界的な傾向とは逆行するように減少していったことは、まったく関係が無いとは思えません。ここで問題だったのは、大学院生の数を増やしたときに、教員の数も比例して増やさなかった(むしろ、その後、運営費交付金の削減により、技官や若手教員ポストが減っていった)ことがあります。

さらに「生命科学の産業化」に言及されています。これは、科学技術基本計画に「ライフサイエンス」が重点分野として盛り込まれたあたりからが本格化したものと思われます。

その他、「論文雑誌の罪」などもありますが、このような背景をもとに、バイオ研究では研究不正が生まれやすいのではないかと議論されています。

私自身は、時代的に榎木さんよりも淘汰圧が低い環境で育ち(ジェンダー問題はここでは置いておくとして)、現在まわりを見渡しても、ここで例示されるほど「奴隷」のように働いている方を目にしないので、今ひとつ「ピペド」という言葉には実感が無いのですが、生命科学の領域によっては「職人的」な面や、時間をかければかけるほど成果が上がる実験があることは理解できます(個人的には「職人的」な面はむしろ好きです)。また、生命科学分野で輩出される大学院生の数に見合って、バイオ系の産業が日本で育ってこなかったことも事実です。国立大学の独立行政法人化にせよ、競争的資金の増加にせよ、種々の施策の悪い面の影響がとくにこの10年くらいの間に蓄積してきたこともあります。

もしかすると、これらのさらなる背景としては、戦後の経済成長時代と同じ発想から逃れられない硬直化した組織、という構図があるのかもしれません。この閉塞感から脱却するには、集団の中のマイノリティーの「ななめから見る」発想が大事なのかもしれないと考えています……。

やれやれ、この分野はどうも、書評というより、自分の意見になりがちですね……(反省)。


by osumi1128 | 2014-07-29 23:24 | 書評 | Comments(0)

Rico's R & D

広報室の方が魔女の宅急便のキキ風キャラのイラストを描いて下さいました。名前はRicoと言います。お伴はGingerというネズミ(どっちかというと大きさ的にラットかな……)。シリーズ化される予定です。
PR Office members have created a character named Rico, who reminds me Kiki in "Majo-no takkyubin". Her buddy is Ginger, a rat (perhaps). To be continued.
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by osumi1128 | 2014-07-25 00:06 | RICO's comics | Comments(3)

内館牧子さん新刊『毒唇主義』サイン会に行ってきました

軽妙なエッセイも書かれる脚本家・作家の内館牧子さんは、「東北大学相撲部総監督」という肩書もお持ちです。学友会相撲部の「監督」になられたのは、内館さんが2002年の秋から3年間、東北大学大学院文学研究科人間科学専攻宗教学分野」の社会人修士大学院生として所属されており、廃部寸前だった相撲部が「藁にもすがる思い」で、横綱審議委員でもあった内館さんを口説き落としたからなのは、残念ながらWikipediaに載っていませんね。

ちなみに、内館さんが大学院を目指した理由は『養老院より大学院』(講談社文庫、Kindle版もあり)などに詳しいのですが、かいつまんで言うと、当時「相撲の世界にも<男女共同参画>を!」という意見が優勝杯授与の際に土俵に上がることができなかった女性知事から出されて、内館さんはそれに「待った!」をかけたく、相撲は神事として派生したものであり、他の伝統文化や民俗行事などにおいて「男性限定」「女性限定」のものがあっても、それは「男女差別」にはあたらないというお考えであったものの、もっと理論武装すべきと考えて、「そうだ! 大学院へ行こう。大学院で大相撲を勉強しよう」と決心されたというのです。

内館さんが東北大学相撲部の監督に就任してから、部員の数は2桁に、Cクラスで優勝して、Bクラス入り……と快挙が続き、廃部の危機は免れました。今は女子マネージャーも5、6人くらいいるそうです。その後、内館さんは無事に修士論文も提出されて仙台から離れることになり、監督は退かれたものの「総監督」に就任。相撲部への応援は続いています。

最近では、東北地方の相撲のジュニア大会で見どころのある少年を見出して、「医学部志望? じゃぁ、進学するなら東北大学よ!」と勧め、その生徒は見事、今春、東北大学の医学部に入学し、さっそく国公立大会で入賞!!! 下記は医学系研究科Facebookからの引用です(前列中央が医学部学生の千葉大介さん)。
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さて、その内館さんの新刊『毒唇主義』のサイン会がジュンク堂さんで開かれるとのことで、行ってきました。今回はツーショットの撮影もOK!だったのですが、こともあろうにiPhoneを忘れ……orz ガラ携での画像なのが残念です。頂いたお名刺の肩書は「東北大学相撲部総監督」のみ! サイン会には中学生くらいの、お相撲をやっているらしい、でもまだ身体の細い男の子が、薔薇の花を一輪携えて来ていて、素敵だな、と思いました。
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ちなみに、サインの言葉は以下でした♫
男も女も横綱も
強さより深さ

by osumi1128 | 2014-07-19 22:49 | 東北大学 | Comments(0)

日本分子生物学会理事のコメント(拙ブログに仮置き)

拙ブログは管理人の所属する組織・団体とは別に個人で管理しておりますが、連休明けまでの間、学会HPの更新作業ができませんので、本人の承諾を得てここに掲載します。こちらは、日本分子生物学会の理事会のMLに本日、出されたご意見です。

【追記】日本学術会議の方からも近々、意見表明が為される予定と聞いています。

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学位審査を含む様々な審査や試験制度は、我々の社会の成立を支える根幹の一つと言っても過言ではありません。たとえ失望を招く結果であっても、皆がその結果を遵守し社会が成り立っています。今回の早稲田大学の調査委員会の結論のように、博士論文が重大な欠陥を含むことは認めながら、間違って製本提出された原稿であるとみなし、、、、学位取り消しは無しと判定していては、社会の根幹を揺るがします。全ての職業人はおろか、小学校入学から大学に至るまで受験を経験する幼稚園児から高校生までに、早稲田大学の責任者は一体どのように説明できるのでしょうか。

上村匡

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皆様
「仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった。」というのは、極めて重い指摘だと感じます。この指摘に対して早稲田大と教員の皆さんがしっかりと向き合う必要があることを、教育研究者の声として社会に届けていく必要もあると考えます。
五十嵐和彦


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【追記】
皆様
早稲田大学の小保方氏の学位認定と、その後のCDBのSTAP細胞の論文取り下げ事件は直結しております。本学位論文が、その内容に限らずその後の波及効果も含めて、今までに取りさげられた学位論文の中でも最悪のレベルに位置することは明白であります。その学位を認可するという今回の早稲田大学の調査結果は、(少なくとも日本における)PhDの価値および大学院教育の意義を完全に否定するものとなります。これは、先進国においてあり得ない事態といえます。
渡邊嘉典

by osumi1128 | 2014-07-18 22:01 | オピニオン | Comments(10)

学位論文

数日前に本学医工学研究科の修士課程学生さん3人が訪れて、STAP細胞論文等についてお話しました。来週、インタラクティブな講義でディスカッションをする予定とのことで、「そもそも<再現性>とは?」「科学と社会の関係」などについて話しました。

「再現性」は科学を生業とする誰もが重要と思っていますが、それは「どの程度」のことなのかは、もしかするとラボによって基準が異なるかもしれないことを指摘しました。例えば「100回の試行」をして、「2回再現」されたらば、それは「再現性があった」と言って良いことなのかどうか? 100回行わなくて「10回の中で2回成功」したら? じゃぁ、「5回のうち2回」だったら???

もしかすると、話が具体的になると、ラボによって基準が異なるかもしれないと話しました。あるいは「コピペ」の問題も、「メソッド(材料・方法)」のパートではどこまで許されるか、分野によっては「イントロ」にはオリジナリティーが無いので、前任の方のものとかなり似ていてもOKとみなされる分野もあること、結果のパートでも、修士論文くらいであれば、前の学年の方や同じラボの同級生の文章とかなり似ている可能性もあるのではないか、などについて指摘しました。このあたり、本当に分野によって、実際、ラボによって異なる可能性があります。

さて、本日、早稲田大学理工学研究科の学位論文について発表がありました。以下、引用します。
理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが3年前に早稲田大学に提出した博士論文について、大学の調査委員会は「内容の信ぴょう性が低く、学位が授与されることは到底考えられない」としながらも、これは小保方リーダーが誤って下書き段階の論文を提出した過失によるもので、完成した論文は別にあったなどとして、博士号の学位取り消しには当たらない判断しました。
このことは見過ごしてはならない大きな問題だと思います。

「学位論文」は、研究職というキャリアを目指す人達にとって、大事な通過点の最初の1つであり、「どんな学位論文を書いたか」はその後の研究者としての評価に少なからぬ影響を与えるものであると思います。現時点において、日本でも世界的にも、学位の審査は、学位を与えるに足ると認定された研究機関がその任に当たり、その評価はいわゆる「学位論文」と呼ばれる書面とそれを元にした面接で評価されます。つまり「学位論文」は、研究者のキャリアにとって大事な最初の「作品」であり、その「出来」が次の職を得るのに重要な「手形」になるわけです。

ただし、「学位」は例えば「医師免許」のような国家試験ではなく、それぞれの大学院が授与するので、日本全体での統一基準が1つの「モノサシ」で測られる訳ではありません。それは、学問がとても多様であり、価値判断に多様性があることによります。つまり、「国家試験」やあるいは「センター試験」のような統一性を求めることは難しいのです。

しかしながら、今回の調査委員会からの発表は、同大学の学位認定基準について、大きな疑問を持たせる結果になったことはとても残念です。例えて言うならば、スキーのバッジテストで「どのゲレンデなら取りやすい」というようなことをあからさまにしてしまった、という解釈になってしまうのではないでしょうか? あるいは、学位申請の時点で基準に達していなくても後から修正すれば良い、ということになってしまうと、何のための学位審査かということになります。学位審査は、万難を排して準備して臨んで、その過程において切磋琢磨されることもまた博士としての資質に重要であるとみなされています。

今回の決定は、皆さん、おかしいと思いませんか? これは当該大学のみならず、全国の学位取得者や、これから学位を取得しようとする方々が提起すべき大きな問題だと思います。さらに言えば、日本の「博士号」という資格が世界でどのようにみなされるかという質保証の問題です。




by osumi1128 | 2014-07-17 23:21 | サイエンス | Comments(26)

WEBRONZAトークイベントでお話してきました


昨日の月曜日、WEBRONZAのトーク・イベントに高橋真理子さんよりお声がかかり、最相葉月さんとともにお話ししてきました。

場所は丸の内エリアの期間限定みんなの仕事場「3X3Labo」というところ。50名ほどの聴衆を前に、高橋さんが進行役を務められ、これまでに掲載された41本の関連記事の中からのいくつかを挙げて本事件の振り返りを行いつつ、適宜、高橋さんや最相さんからの質問に答えたり、お二人がコメントを入れたり、というスタイルでした。
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追って、WEBRONZAの方にレポートが載るとのことですので、拙ブログでは最後に自分のまとめで使ったスライドを挙げておきます。
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すでに別記事でも述べましたが、ある意味、日本で対応が遅れていた論文不正問題について、今が本腰を入れて取り組みべきタイミングなのかもしれません。

『背信の科学者たち』にみるデジャブ


最相さんは、「<役に立つ>臨床応用を追求することよりも先に、<成熟した身体の細胞を用いて作製する人工的な幹細胞>には、種々の変異などが生じているものを元にしている可能性があるので、その安全性についての検証をもっと進めるべき」という趣旨のコメントを残されました。90分という時間は思いの外短く、もっと仰りたいことはたくさんあったのではと思います。

高橋さんはSTAP騒動とは結局「科学と社会が近づいた」ことであるとまとめられました。その通りだと思います。ですので、次回何かこの話題について話すことがあれば、上記のスライドに「科学コミュニケーションの重要性」や、その下位項目として、「健全なアドボカシー」「誠実なアウトリーチ」などを加えようと思いました。
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終了後に1時間ほどの交流会が催されました。「それでもやっぱりO氏を擁護したい」という参加者の方もおられましたが、いろいろな方々にお会いできて何よりの機会でもありました。
【画像はすべてWEBRONZA提供】


by osumi1128 | 2014-07-15 22:56 | 科学 コミュニケーション | Comments(4)

ISSFAL2014@Stockholm〜FENS2014@Milan

2つの国際会議とその合間のロンドン訪問の記憶のために。
最初の訪問地はストックホルム。最高気温が16℃くらいが連続し、完全に持っていく服の選択を間違えました……。あまりに寒かったので、途中の日に会場を抜けだして、本店のあるH&Mを目指して街を歩いていて、偶然見つけた地元デザイナーのお店で、フエルト一枚地のコートをゲットして事なきを得ましたが、その後はまったく役に立たず(苦笑)。そんなことも思い出です。
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国際脂肪酸脂質研究会議とも訳すべきISSFALという学会は2年おきに開催されるのですが、今期の会長がKansas University Medical CenterのSusan Carlson教授で、大会長がUniversity of GothenburgのBrigitta Strandvik教授(ちょうど下記の画像では朝のセッション前のショットで、並んでお話しているところ)。
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餌の高度不飽和脂肪酸のバランスがn-6過多になると、マウスの脳構築が異常になるという内容でポスター発表をしました。シンポジウムのショート・トークで同じ方が何度も話すのはどうかなぁと思ったのですが、もしかするといくつかのポスターで最初応募していて、それぞれ別のセッションで口頭発表に選ばれたものの、本人が来れずにボスが発表していたのかもしれません。

比較的小さめの学会なので、最終日の夜に着席で行う「ガラ・ディナー」があり、今回の会場はVasa Museumという博物館での開催でした(日本語サイトはこちら)。スウェーデン海軍が造船し、ときの王朝の名にちなんだヴァーサ号というゴージャスな帆船が、出港直後にあえなく沈没し、後にそれを引き上げて博物館としたものです。17世紀の帆船がかなり良い保存状態で残っていますが、その無駄に豪華なレリーフなどを見ると、重心が高くなりすぎたことがよくわかります。ちょうど偶然、旅のお伴に連れて行った文庫本がジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』(草思社文庫)だったので、この沈没後にヴァーサ王朝が途絶えたことがとくに印象に残りました。

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次の訪問地はロンドン。University College Londonの眼科学研究所で長くPIをされている大沼信一教授との研究打合せのほか、昨年、東北大学女子学生入学百周年記念シンポジウムに基調講演でお呼びしたVeronica van Heyningen先生のお誘いで、Royal SocietyのSummer Exhibitionとそれに付随したSoiree(晩餐会)という、彼女に言わせると「Very British」な催しに参加しました。ドレスコードがブラックタイということだったので、絽の着物を着て行きました。Summer Exhibitionは要するに、Royal Societyが行うアウトリーチ活動で、今年は22の展示があり、1週間の間、市民公開されていますが、最初に行われたのが19世紀の半ばという伝統があります。まぁ、それを引きずっているので、Royal SocietyのFellowの方々とその同伴者が、ブラックタイという大層な格好をして参加する訳ですね。
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晩餐会は着席でしたが、お料理は並んで取ってくるビュッフェ形式。ところどころ「サイエンス」っぽい遊び心があったのは面白かったです。例えば、こちらのデザートの苺に添えたクリームが入っているのはプラスチックの試験管。
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Royal SocietyのFellowの方々は、やはりオックスブリッジ系が多いとのことでしたが、2011年の神経科学大会に基調講演にお呼びしたUta Frith先生とご主人のChris Frith先生、脳神経科学グローバルCOE時代の市民公開講座をお願いしたSemir Zeki先生などUCLの方、それから、齧歯類の行動解析研究者なら知らない人はいない、University of EdinburghのRichard Morris先生などにお目にかかれて何よりでした。モリス先生はスコットランドの正式な衣装を付けておられました。左側がVeronicaで、右側がSimonです。
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Royal Societyの建物の中には、随所に著名な科学者の肖像画や写真が飾ってありました。例えばこちらは、1964年にノーベル化学賞を受賞されたDrothy Hodgikin博士のもの。
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ちなみに、大沼先生は東北大学理学部化学専攻のご出身で、昨年から「日英交流150周年」関連行事で忙しくされているとのこと。ぜひ、若い方々に海外での経験を、と強調しておられました。

長州ファイブ来英150周年関連行事 ~日英学術交流150周年~

UCL大沼教授インタビュー前半「海外に出て研究することの意味」

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最後はミラノ。ロンドンもすでに暑かったのですが、ミラノはさらに気温が高い日が続きました。ラボメンバーも2名に合流して欧州神経科学会議FENS2014に参加しました。
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学会の規模としては、6000名超え、北米神経科学大会SfNよりは小さいですが、日本の神経科学大会の倍くらいのサイズ。欧州各地で開催されるのがSfNよりは良いですね。日本からの参加者も確か200名以上とのことでした。ミラノを訪れるのは3回目でもあり、そもそも日本での仕事の締切などあって、どこも観光には行けませんでしたが、夕ご飯を皆と頂くのに街に出るだけでも、フレッシュな気持ちになれました。でも、未だに「最後の晩餐」などは観たことがないので、次回機会があれば是非、予約をしっかり入れて見に行きたいですね。食べ物画像は別途掲載します。

機器展示の一番良い手前のところのブースは、電気生理関係のNARISHIGEさんでした。社長がお着物をお召になっていたのでパチリ(お顔が暗くなってしまってごめんなさい)。絽の小紋に白い博多帯が涼しそうでした。神経科学大会でもたいへんお世話になっています
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FENSのPresidentは、今期がオランダのMarian Joel先生から、フランスのMonica Di Luca先生へのバトンタッチで、次回第10回の開催はコペンハーゲンです。下記、最後のアナウンスをするDi Luca先生。2年に一度の大会の間には、地区大会やビギナー向けのSchoolなどが開催され、とにかく各種のアドボカシーや、若い方々をエンカレッジする活動が盛んだなと思いました。SfNも同じなのですが、Past PresidentとPresident ElectがCurrent Presidentをサポートする体制も、継続性という意味で見習うべきところかもしれません。
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by osumi1128 | 2014-07-13 21:09 | 旅の思い出 | Comments(0)

STAP騒動について海外在住日本人研究者のご意見【追記しました】

欧州の学会を2つはしごして、帰国の途に着いたところです。ミラノの欧州神経科学学会は7000人くらいの参加者があり、日本人は200名くらいとのこと。北米神経科学大会(SfN)のように3〜4万人ほどは大きくなく、一応、基礎から臨床までカバーされており、欧州各国で開催(次はコペンハーゲン)というのも、DCやサンディエゴと場所が固定されているSfNよりも嬉しさがありますね。

さて、国外で活躍されている日本人研究者にお目にかかって、外から見てこの騒動はちょっとどうなのか、ということになり、以下のようなご意見を頂きました。ご本人の許可を得て掲載させて頂きます。【末尾にさらにコメントを追加しました】

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大隅さん

おっしゃられる通り、こちらには情報が不足しており、不正確な点や、的外れな点もあるかと思いますが、私の意見を聞いていただいてありがとうございます。以下、少し加筆修正しましたが、これでよければ、大隅さんのブログに掲載していただいて結構です。

研究者も含めて、人々がひたすら理研、CDBの側を責めているのを見ると、とても異常な感を持たずにはいられません。理研も正すところは正し、今後も間違った方向に進んでいるときには、周りから意見すること必要だという点は私にも良く分かります。追試が必要かどうかは、理研と周りの科学者が、科学的根拠に基づいて冷静に議論をするべきだと思います。もし追試の必要性が明らに否定された場合、つまり、STAP 細胞を支持する実験結果が何も存在してなかったことが明らかになれば、追試を中止すべきだというのは正しいと思います。税金を使っているのだから、、、という点も分かります。

私が憂慮していることは、第一に、不正が起きたときに責められるべきは、不正をはたらいたもの、および場合によっては、それを見逃した他の論文著者であるという第一原則が、はっきりしないようになっていることです。会社が何か不祥事を起こした場合は、会社のトップが責められますが、それと同じ論理で、マスコミ、一般市民が理研の責任を追求しているように見えます。このような構図が科学の世界で当たり前になると、今後苦労するのはほかの大学、研究所です。不正を完全に防ぐことは不可能です。将来不正が起こらないように、いろいろなシステムを改善することは必要ですが、同時に、今後起こった場合にどういう対応が求められるか、そのルールをはっきりさせておくことが必要です。大学、研究所が過剰に責められる前例を作っては今後のためになりません。また、不正の調査を徹底的に行うには、聞き取りや、データの解析等、様々な要素を総合的に考慮して判断する必要があるため、一定の時間がかかること。調査委員会の結論は重いものですので(最終的に法律問題にもなりますので)、中途半端に不正を認める発表はできないこと。従って、裁判の判決と同様、調査委員会の発表は、保守的になってしまうことが多いこと(疑いだけでは罰せられないこと)。これらのことが十分理解された上で、粛々と手続きが行われる環境が保証されていることが必要です。

一方で、こういった点に反して、改革委員会の報告書、提言には「推測」の範囲を超えない記述が多々存在し、それに基づいて理研の批判をしているのには、とても違和感があります。

今回の論文取り下げまでに半年しかかかっていない一因はもちろん不正があまりにもひどかったことがあると思いますが、一部の著者が抵抗する中、半年という短い時間で(他の不正のケースと比較して)、これまでに分かった誤りのリストを詳細に与えたうえで、取り下げまでこぎつたことについて、理研に一定の評価を与えてもいいのではないかと考えます。取り下げの申請は基本的には著者によるもので理研によるものではないことがルールだと思いますが、理研の働きかけがあって取り下げをまとめることができたのだと理解しています。

小保方さんの採用過程が通常の手続きを経ていない点が指摘されていますが、アメリカでは公開セミナーなしで、教授たちの推薦に基づいて、大学院を出たての若手にフェローなどのポジションで小さい研究室を持たせて自由に研究をする機会を与えるような制度があります。若手にチャンスを与えるということは当然危険がともなうことですが、独立のassistant professorのポジションも含めて、こういう機会が比較的たくさんあることが、アメリカでの研究者のモチベーションを高めること、ひいては科学の発展の土台を作っているのだと思います。独創的なアイデア、可能性を持っている人をいかに引きつけるかは大学にとってなによりも大事なことで、大学同士がしのぎを削っているわけです。CDBがこれまで先進的なシステムで若手にチャンスを与えてきたことは評価こそされるべきで、結果的にたった一人の悪い研究者を生んでしまったことで、そのようなシステム自体を否定してしまうことは、今後に悪影響を与えるのではないかと思います。CDBがこれまで若手にチャンスを与えて来たことは、評価されるべきことで、結果的にこういうことが起きたことによって、そういうシステム自体が否定されるべきではないと思います。もちろん、長期間、同じ幹部で運営してきて、チェック機構がはたらかなくなってきていた点等、改めるべき点があることは大事な点です。

常々、日本のマスコミの、政治家の言葉尻だけを捕まえて喜んでいる低レベルな姿勢に飽き飽きしていましたが、いまはそのターゲットが理研になっているようで心配です。日本の研究システムをいかに良くしていくか、それに向かってこれまで行われてきた試みの客観的な評価という、より大きな、建設的な問題を棚において、これまで少なくともいろいろな点でうまく機能していた組織の解体を、短絡的に言い出すのはとても危険に思われます。日本の科学者が、もっと大局的に、長い目で物事を考え、建設的な方向に物事が進んでいくことを望んでいます。


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【追加コメント】

建設的な議論が行われるためには、結局何が目指すところなのかということを見失ってはいけないと思います。

1、不正ができるだけ起こらないようにすること。
2、不正が起こったときに対応するシステム、ルールを作ること。
3、一日も早くみんながこの問題から解き放たれること。
4、若手や女性が十二分に才能を発揮できる環境を作ること。

これらの4つを頭に入れて、そのために何をするべきかを考えるべきだと思います。
いま人々がやっていることは、こちらから見ると「ボトムアップ」の間違い探しではないでしょうか。
もちろん、1あるいは2を大儀にやっているのだと思いますが、

行き過ぎると本当に大切なものを見失ってしまうのではないでしょうか。

*****
<以下追記>
日本分子生物学会はリンク先に示しますように、STAP論文疑義についての実態解明を求めており、まさに上記の1〜4を望んでいます。(中身を読んでいないと思われる?方々の)伝言ゲームの間に意図とは異なる受け取られ方をされている場合もあるようですが、関係者の処分や当該研究機関のあり方については、一切述べておりません。また、個人的には、当該研究機関でまったく今回の不正に関係の無い皆さんが一日も早く、良い研究に専念できることを祈っています。



by osumi1128 | 2014-07-10 00:09 | サイエンス | Comments(5)

日本分子生物学会理事長声明への補足

日本時間では金曜日の午前中に、三たびの日本分子生物学会理事長声明が発信されました。これは「理事長」からの発信として、「理事会」すなわち30名の理事すべてにお諮りした上で発出されているものではありませんが、研究倫理委員会や執行部の方々のチェックを受けた上でのweb掲載という意味でオフィシャルなものと思っております。他の理事からの声明についても順次HPに掲載される予定です。若干補足をしておきたいと思います。削った文の主なポイントは以下になります。

(第二段落)報道関係者が今でも多数訪れる結果となっているこのような状態は、発生再生研究センターで日々研究を行う、当該論文とはまったく関係のない研究者にとって適切な研究環境とはいえません。
(第三段落)の研究不正問題の背景には、適切な学位審査を含む研究者育成システムについての問題などもありますが、ここまで研究コミュニティー以外が巻き込まれたのは、論文発表当初に不適切な記者発表や過剰な報道誘致が為されたことに原因があり、それらは生命科学研究の商業化や産業化とも関係していると考えられます。多数の生命科学系研究機関を擁する理化学研究所が日本の重要な研究組織として世界に誇れる存在であることは、それらの研究機関に所属する多数の日本分子生物学会会員にとっても、それ以外のさらに多くの会員にとっても極めて重要な問題であると思われます。
前者は、Nature論文筆頭著者が再現実験を開始したことにより、普通の研究不正対応ではありえないような対応がなされ、そのことによって多数の報道関係者が研究所を訪れるであろうことを危惧してのコメントです。また後者は、背景としての学位審査の問題や、近年の生命科学研究の商業化、産業化について言及しており、特許申請についての疑義も含めてコメントに加えたかったところですが、極力、論文不正についてにしぼったコメントにするために省きました。改めてブログで取り上げたい事項です。

現在のCDBの環境については、高橋政代リーダーの発言も内情を反映したものと思います。
以下も最近の参考記事です。

ともあれ、これまでの調査委員会の報告に加えて、各種の報道を勘案すると、再現実験に科学的な意味を見いだせない、というのが分子生物学会の立場であるということになります。
日本人には頼朝より義経を贔屓にするメンタリティがありますが、今回のケースはそういう構図ではないと思います。

by osumi1128 | 2014-07-05 08:36 | 科学技術政策 | Comments(11)