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映画「Woman in Gold」を観ました

羽田発JL45便の機中で「Women in Gold」という新作映画を観ました。クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」を巡る実話に基づいた作品です。アデーレの夫フェルディナンドの依頼によりクリムトが描いたこの肖像画は、ナチスによって不当に押収された後、オーストリアの美術館に半世紀以上。飾られていたのですが、アデーレ・ブロッホ=バウワーの姪にあたる女性が自分が遺品の正当な受け取り手であるとして、母国オーストラリアを相手に訴訟を起こすというストーリー。(画像はWikipediaより拝借しました)

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グスタフ・クリムトは大好きなアーティストで、「アデーレ・ブロッホ=バウワーの肖像」は彼がお得意とする、金箔をふんだんに使った装飾的な女性のポートレイトですが、この逸話は不学にして知りませんでした。マリア・アルトマンというアデーレの姪と、同じくオーストリアにルーツのある、シェーンベルクの曾孫にあたるかけ出し弁護士ランディ・シェーンベルクが、絶対に勝ち目はないだろうという裁判に挑むというチャレンジを軸としつつ、ナチの時代にどのように家族が引き裂かれ、不当に財産が没収されたのかという歴史的な振り返りが随所に挟み込まれていました。


訴訟が行われたのはマリアがすでに80歳の頃とのことでしたが、オーストラリアの国や美術館として、すでに国の宝として公開されているアデーレその他のクリムト作品を手放すことはしたくないという思惑もあり、本当に複雑でデリケートな事件だったのだと想像します。作品は現在、ニューヨークのノイエ・ギャラリーに展示されているとのこと。リアルに観に行かなくっちゃ!


ちなみに、このブログ投稿は機中より。これから羽田のラウンジ以降に届いた40件のメールを処理します……。


【追記】

日本公開は11月27日(金)からとのことです♬

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』クリムトの名画をめぐる、奇跡の実話 - 主演ヘレン・ミレン



by osumi1128 | 2015-08-31 15:40 | アート | Comments(0)

知のフォーラム国際シンポジウム「発生と発達障害」関連倫理セミナーのこと

今週月曜日から水曜日にかけて行った東北大学知のフォーラム脳科学「発生と発達障害Development & Disease」は無事に終了しました。オーガナイザーの下郡智美先生@理研BSI、瀧靖之先生@東北大学加齢研、ゲストスピーカーの皆様、short talkの皆様、ポスター発表の皆様、参加者の皆様、そして、準備から実施まで支えて下さった知の創出センターの方々と、瀧研究室、大隅研の皆さん、本当に有難うございました。
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遺伝子・分子や細胞が中心となる神経発生の分野から、脳の進化、そして間を繋ぐ発達障害の動物モデル、自閉症等の臨床という流れのセッション構成でした。分子の話は、もう少しイントロが多めでも良かったかもしれませんが、こういう組み合わせで研究者が集まることは決して多くないので、それなりの意義があったのではと思っています。画像は2日目レセプション前の集合写真。参加者の入れ替わりも多かったので、延べ人数として70名くらいであったかと思います。

さて、木曜日の午前中に研究倫理に関するセミナーを、インドのタタ研究所のShubha Tole先生に行って頂きました。セミナーというよりもワークショップで、いくつかの課題について、グループディスカッションをして発表しあうという形式。
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例えば、以下のような事例が提示されます。(追って日本語版にします)
Data Manipulation/bad record keeping
a) You have a colleague who doesn’t keep good lab records.
--Do you keep mum and do nothing?
--Do you lead by example and show them your books and hope they improve?
--Do you tell them once? More times? How long before you tell the PI.
--Do you tell the PI at all or is it not your job- if the PI finds out on her own that’s ok but you don’t need to tell them?
--What if it’s a colleague with whom you collaborate and whose record keeping or lack thereof affects your project.
b) At lab meeting you see data that you know can’t be real- there was no time to produce it since you last saw that particular project being presented, or the machine that was necessary to produce that data had been shutdown for the past 2 months when the data was supposed to be produced. What do you do. Keep quiet? Discuss with someone (whom). Anything else?
---what if the person is a senior colleague or the PI themselves.
c) What if you see inconsistencies in a grant that the PI or a post doc wrote that has got funded before you joined the lab, and now you notice that some data in the grant isn’t quite right or worse- taken from a paper you came across.
What do you do. Keep quiet? Discuss with someone (whom). Anything else?

Tole先生は最初に「Are you a good person?」と訊きます。当然ながら「Yes」と答えるとして、ではこういう具体的な事例に直面したとき、あなたはどうしますか? という問われると、結構答えるのに躊躇してしまったりします。

また、上記の事例では、a)からb)、c)と進むに従って、レベルが高く?なっています。つまり、倫理的に行動する習慣は、a)のレベルで身につけておかないといけないということでもあると思います。

現在、CITIなどのe-learningシステムもできていますが、対面で少人数のワークショップなども必要であることを実感しました。学会などで始めることを考えたいと思います。
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by osumi1128 | 2015-08-29 14:50 | 東北大学 | Comments(0)

知のフォーラム脳科学国際シンポジウム「脳の発生と発達障害」

いよいよ本日午後から東北大学知のフォーラム脳科学イベント第二弾、国際シンポジウム「Development & Diesease」が始まります。脳の発生、進化に関するメカニズムについての研究と、発生発達の不具合によって生じる発達障害の基礎研究、臨床研究の分野で著名な先生方を招聘しています。

昨日はスピーカーズディナーにお集まり頂き、すでに種々の意見交換を行いました。どんな展開になるか、とても楽しみです!
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by osumi1128 | 2015-08-24 07:15 | 東北大学 | Comments(0)

お勧めの本『ワンダー きっと、ふるえるー』

本書の主人公オーガストは「ふつうの男の子。ただし、顔以外は。」という設定になっている。生まれつき顔の形成に異常がある10歳の男の子が、米国の小学校で過ごした1年の間の出来事について、本人、姉、本人の友達、姉のボーイフレンド、姉の友達などの視点から描かれている。フィクションだが、作者のR・J・パラシオ氏の体験したエピソードに基いて構想され、きちんとした科学的な取材も為されている。

実は、初めて携わった研究が顔面発生craniofacial developmentであるため、東北大学の医学部や歯学部の「人体の発生」についての講義の中でも、顔の発生とその異常については、ついつい思いを込めて話をしてしまう。顔が「普通に」発生するだけでも、どれだけ多数の遺伝子たちが正常に働く必要があるか、その働きを阻害するような薬物としてどのようなものがあるか、生まれた時点で体の形に異常のある「先天奇形」の頻度はどのくらいか、などなど……。そして、日本人で頻度の高い口唇裂の子どもの画像を見せながら「この子どもの奇形をなぜ治療する必要があるのか」という質問をする。引き出したい答えは、医学的な理由だけでなく、「顔」が人間にとってはそのアイデンティティの象徴でもあるという、認知的、心理的な側面もあるということ。締めくくりの言葉は「この教室にいる皆さんは、こんな複雑な発生過程がすべてうまくいって、ここにいるのです。奇跡だと思いませんか?」

オーガストは顔の奇形があるために、「チーズえんがちょ」などのいじめに合う。物心ついてから慣れているとはいえ、信頼している友達に裏切られたと気づいたときには、とても落ち込む。たまたま行きがかり上、オーガストのことを悪く言ってしまった友達は、そのことがオーガストの耳に届いたと知って深く後悔する。小さい時から弟の顔を見慣れている姉でさえ、心の片隅に「自分の弟が奇形だと友達に知られたくない」という気持ちがあることに気づいて、そのことに傷つく。本書には、そんな子どもたちの心の揺れの様子が、普通のことばで書かれている。400ページを超える本なのに、どんどん読み進められるのは、会話を自然な日本語に訳された翻訳者の力量の賜物である。

オーガストは顔の奇形はあるが、とても頭がよく、ユーモアのセンスもある。その人柄によって友達を得ていき、やがて意地悪な同級生の側にいた子もオーガストを助け、クラスの結束力が固まるところが本書のハイライトではあるが、この達成感・爽快感を味わえるのは、それまでのエピソードでかなり心がふるえさせられるから。

実は、本書を翻訳された中井はるのさんから依頼を受けて、ごく一部、遺伝学のあたりについて翻訳が適切かどうかなどの確認に関わらせて頂いた。ネット上の書評などから、本書がすでに多数の方に読まれて、その心を「ふるえ」させていることがよくわかる。科学者である私も、心から本書をお勧めしたい。ただし、人前では読まないように。心がふるえて対応に困るかもしれません。

印象的なカバーや章の扉のイラストは、Tad Carpenter Creativeというチームによるものらしい。オーガストの顔だけでなく、他の登場人物のイラストも片方の目のみしか描かれていないのは、誰も完璧な人間ではない、という本書の通奏低音を可視化したもののように感じる。

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by osumi1128 | 2015-08-16 17:19 | 書評 | Comments(0)

「DOHaD」という概念

先日、第4回DOHaD研究会という学術集会にお招きを受けて講演をしてきました。「DOHaD」というのは「Developmental Origin of Health & Disease」という言葉の頭文字を合わせたもので、「健康や病気の起源が発生過程にある」という概念を表す良い日本語が見つからないので、とりあえず「ドーハッド」と発音しています。幕末から明治の頃、「細胞」やら「神経」やら「皮質」やら、漢字を上手く使って西洋から輸入した専門用語の訳語を作っていった頃に比べて、今の研究業界が忙しすぎるのでしょう。「mitochondoria」の「糸粒体」という訳語は廃れて「ミトコンドリア」という片仮名になったり、同様に「astroglia」が「星状膠細胞」よりも「アストロサイト」と呼ばれるように、漢字の訳語を作っても定着しなかったものもありますが。ともあれ、「細胞」は中国で発明された用語ではないことは、日本人として覚えておこう、と学生に伝えています。

話がズレました……。
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DOHaDの概念は、例えば第二次世界大戦中にオランダが大飢饉に陥り、その頃に胎児期を過ごした方に、各種の代謝病などが多いということが、フォローアップでわかったことなどが元になっています。私自身は、このときに統合失調症の発症も増加したという論文に出会ったのがDOHaD説を知るようになったきっかけですが、研究の最初に触れたのが発生生物学であり、奇形学にも近かったため、DOHaDはある意味当然すぎる概念にも思えました。

現在、DOHaDは「種々の病気の罹りやすさに胎児期の影響がある」という見解であり、母体を取り巻く環境、つまり、栄養や感染や薬物暴露に注意しましょう、というキャンペーンに繋がるのですが、私はこれは狭すぎる考え方だと思います。英語の「Development」は日本語の「発生」と「発達」の両方を含むものであり、胎児のみの影響ではなく、幼児期の発達も重要だと思われます。2013年に発表した論文では、そのような観点で思春期前の神経新生に、その後の不安やびっくり度に影響する「臨界期」があるのではないかということを示しました。
プレスリリース:精神疾患発症脆弱性の臨界期を示唆(PDF)

今回のDOHaD研究会の講演では、さらにその概念をもっと広げることができるのではないか、という主張を行いました。それは、「生殖細胞形成」の過程での微妙な不具合が、受精後の個体の発生〜成長、最終的に行動に影響を与えうるということです。具体的な事例として、父親が加齢すると自閉症の発症率が上昇します(例えばReichengerg et al., 2006)。我々は、父親マウスが加齢すると、その仔マウスが生後初期に示すコミュニケーション行動や、さらに成体になってからの社会性や常同行動にも影響することを見出しています。これらは、我々の論文としては未発表ですが、例えば以下のような論文が出ています(多数ありますが、1つだけ挙げておきます)。


父親加齢によりDNAに変異が生じることや、DNAのメチル化というエピジェネティックな変化が生じることについて、ここ数年で多数の論文が出ています。精子形成は1個の幹細胞が多数分裂し、数千個の精子を作る過程なので、種々の変化が生じやすいともいえます。子どもの発生というと、つい母親側の影響を重視しがちですが、実は父から受け継ぐ影響も無視できないのです。このような「次世代継承エピゲノム変化」は、今後、もっと追求されていくべきと思っています。




by osumi1128 | 2015-08-13 23:03 | サイエンス | Comments(0)

北村さん@利根川ラボのセミナー

昨日、MITの利根川先生のラボでポスドクを4年半ほどされている北村貴司さんのセミナーを開催しました。
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北村さんは海馬と神経結合している嗅内野と呼ばれる脳の領域に、島細胞(island cells)と海細胞(ocean cells)という構造を見出し、時間的に数秒程度離れ2つの出来事を結びつけて記憶することを負に調節していることを発見し、2014年にScience誌に発表されました。アイランド細胞とオーシャン細胞は、昨年のノーベル賞受賞者の4名のうちのお二人、モーザー夫妻が嗅内野で見出したグリッド細胞としても働いているとのこと。画像は理研のプレス発表より拝借(日本語版英語版)。
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今回は日本神経科学大会でのシンポジウム発表のために一時帰国され、各地でセミナーをして回られ、この日が最後のセミナー。元々のお人柄もありますが、ジョークも折り込みながら、クォリティーの高いデータを披露して下さいました。井ノ口馨先生の元でも2009年のCell誌の筆頭著者であり、利根川研での4年の間に4本の論文発表に関わり、きわめて生産性が高い。ちょうど、日本神経科学学会奨励賞も受賞され、若手のホープとして期待されています。

個人的には、利根川先生のエピソードが面白かったです。50名ほどのメンバーがいるラボなので、ラボ内野球大会を毎年行っていて、利根川先生のチームが負けそうになると、「チェンジ!」と言われて4番のエースを引き抜いて勝利。そこまで勝負に拘るからこそ、1987年に日本人として始めてノーベル生理学・医学賞を受賞されるという栄誉に繋がったのでしょう。その後、なぜ神経科学に転じたのか、是非、今度詳しく伺いたいと思います。
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9月の知のフォーラムの国際シンポジウムに利根川先生をお呼びしていますが、その前日、9月27日に読売新聞社との共催により市民公開講演会を開催します。現在、参加者受付中です。とくに、高校生・大学生・大学院生は登壇して直接、利根川先生に質問する方を募集しています。詳細は以下を御覧ください。

科学者の卵HPより:利根川先生講演会のお知らせ
(現在、読売新聞のサイトに不具合があるようです……)
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by osumi1128 | 2015-08-07 21:06 | サイエンス | Comments(0)

超簡単シンガポールチキン

本日、医学部ゼミ生有志との納涼会に出した「超簡単シンガポールチキン」のレシピ公開です♬ なぜ「超簡単」かというと、炊飯器任せだからなのです!
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8名程度のパーティー料理として作りやすい分量でご紹介。
【材料】
鶏モモ肉:2枚
粗塩:適宜
米:2合
生姜:1片
大蒜:2片
ウェイバー:小さじ2杯
水:2合炊きに合わせた分量より気持ち少なめ
パクチー(香菜):適宜

【作り方】
1)鶏モモ肉の皮ににフォークでブツブツと穴を開ける。
2)身の方に粗塩を刷り込み放置。
3)その間に生姜と大蒜を細切りにする。
4)お米を洗って分量に合わせた水を入れる。
5)ウェイパーを入れる(炊いている間に適度に混ざる)。
6)鶏モモ肉をお米の上に重ねて間に生姜と大蒜を挟み、鶏肉の上にも載せる。
7)普通に炊飯器のスイッチを入れて炊飯。
8)炊きあがったら鶏モモ肉を取り出してスライスする。
9)ご飯と鶏モモ肉を盛りつけ、適宜パクチーを載せる。
10)好みでチリソース(分量外)など付けても良し。

準備に15分、後は放置、という超簡単レシピです♬ 少人数なら半量でも大丈夫。もっと手を抜くのなら、生姜と大蒜をチューブ入りのものにすることもできます。ウェイパー万歳! 是非お試しあれ。
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by osumi1128 | 2015-08-05 23:00 | 味わう | Comments(0)