再び奈良女子大学に行ってきた:シンポジウム「理数教育における魅力の創造」に参加

前回は2015年の11月に講義のために伺ったのですが、奈良女子大学の理系女性教育開発共同機構Core of STEMという組織が主催するシンポジウム「理数教育における魅力の創造」の講演に呼ばれて、再び奈良へ。

学長、担当理事の先生もご出席の中、同プロジェクトに関わる吉田信也先生が3月に行ったシンポジウムの報告として、「なぜ、女子生徒は理数系の科目に魅力を感じないのか、ではどうすれば良いのか?」についての奈良女子大の取り組みについてお話になりました。

興味深いと思ったのは、国語、社会、数学、物理、化学、生物、地学の教科に対するイメージとして「情緒的である」という感じ方に関しての高校生徒で男女差が見られたこと。もちろん、国語に対しては男女ともに情緒的であると捉えている人数が多いのですが、数学や物理に対して男子生徒は「情緒的である」と捉えているのに対して、女子生徒はそうではない。

これは、男子生徒は数学や物理に対して「ロマン」を感じることができる、そのような先人のロールモデルの気持ちを共有したり、追体験できるということなのではないかと思いました。

ともあれ、女子が好まない物理に対して、もっと身近なところから導入する工夫ができるのではないか、ということで、そのような教材やテキストを作ろうとしているようです。例えば「光」を学ぶのに、日焼け止め、虹、ダイヤモンドの輝きなどの入り口が考えられるなど。

私の講演は「なぜ理系に進む女性は少ないのか?」という、訳本のタイトルと同じ題目で60分の時間を頂きました。過日のTEDxTohoku Universityのときは15分の持ち時間でしたが、60分あると、かなり多数の事例を挙げて話すことができます。小さいときからの「刷り込み」が女性の理系進学を阻むこと、「無意識のバイアス」に気づくことや、「意識を変えること」、「ネットワーキング」などの重要性などについて話しました。
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その後、東北大学サイエンス・エンジェルの2名もショートトークを行いました。
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環境科学研究科および理学研究科の女子大学院生です。

奈良女子大からも、学部生(なんと、一家4人のうちお父さん以外が奈良女関係とのこと)と大学院生が発表。
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参加者の中には、奈良女子大学附属高校の女子生徒さんも。
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終了後の懇親会では、さらに意見交換を。個人的には、女子大が女性のリーダー育成に果たす役割も大きいと思っています。
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# by osumi1128 | 2017-04-16 22:39 | 科学技術政策 | Comments(0)

大英自然史博物館展とセットで行こう!:科博企画展「卵からはじまる形づくり」

年に1回の社会人向け講義のために神保町の東京堂さんへ行った帰り、かねてより訪問しようと狙っていた国立科学博物館の企画展「卵からはじまる形づくり〜発生生物学への誘い(いざない)」を観てきました。

日本発生生物学会が設立50周年という節目でもあり、科博さんとのコラボで成立した企画。学会挙げての豪華企画陣もさることながら、オープンキャンパスのレベルをはるかに超えたプロっぽい展示制作物になったのは、工藤光子さんというキーパーソンのおかげ。流石です♬
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展示会場には多数の「生の標本」があり、顕微鏡などを使って実際に自分の眼で見ることが可能です。説明のパネルもとてもわかりやすいものになっています。それでも、ちょっと難しいと思うことがあれば、遠慮なくアシスタントに入っている現役研究者やその卵たちに訊いてみると良いと思います。

今日はちょうど、トークショーの時間に重なったこともあり、東北大学から企画運営に関わっている生命科学研究科の田村宏治さんと、倉永英里奈さんにもお目にかかれました。画像はDuoトークをされた太田欽也さん@Academia Sinica, Taiwan(真ん中)と新美輝幸さん@基礎生物学研究所(右)と、MCの田村さん(左)。太田さんがキンギョの尻尾が二股になる仕組みについて、新美さんはカブトムシの角の二股についてトークをされました。
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毎週末、トークショーが企画されています。事前申し込みは必要ありませんので、気軽に立ち寄れそうです。詳しくはwebをご参照あれ。

また、大型連休の間には、実際にニワトリ胚を取り出して観察する実習もあります! 子どもさんに是非、観て欲しいです。胚の心臓がバクバク動いているのを観ると、本当に感動します。こちらは要予約です。申し込みはこちら

発生生物学の歴史の最初は「観察」でした。その後、イモリの胚などを用いた「実験発生学」の時代となり、さらにショウジョウバエが導入され、線虫が導入され、ノックアウトマウスが作られるようになり、それらの学問の潮流の中で、2012年のジョン・ガードン先生&山中伸弥先生のリプログラミングに繋がったことを忘れてはいけないと思います。発生生物学に関係する分野のノーベル賞をたどるだけでも、そのことがわかります。科学者の純粋な興味が、やがて他の方の手で大きなイノベーションに発展するのです。

ちなみに、パンフレットの最後の方にうちの助教の木村君が撮影した精細管におけるPax6の発現の美しい画像が載っていたのは想定外ww(訊いてないですよ!) ピンクが精母細胞の核で発現しているPax6です。精子形成における機能の解析はこれからのお楽しみ♬
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同じく、6月11日まで開催されている大英自然史博物館展のチケットで、こちらの企画展も観ることができますので、ぜひお立ち寄り下さいね。
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大英自然史博物館展の方では、個人的には、実物観たのが初めての始祖鳥の化石が、思っていたよりずっと小さかったこと、ドードーのCGがよく出来ていたことが印象に残りました。あと、藻類学者のKathleen Drewや植物学・地質学者のMarie Stopesなどの女性科学者がいたことも覚えておこうと思いました。日本にも、もっと本格的な自然史博物館があると良いですね。
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# by osumi1128 | 2017-04-08 17:27 | 科学 コミュニケーション | Comments(0)

第1回TEDxTohoku Universityに参加

「Ideas to spread」をコンセプトに世界中で展開されているイベントのTEDの姉妹版、TEDxTohoku Universityが本学学生さんの企画運営により開催され、トークをしました。

TEDは今や「TED風プレゼン」という言い方ができるほど、現代のトークやプレゼンの仕方にインパクトを与えました。もちろんその「スタイル」が重要というよりも、15分のトークの中にいかにストーリーを組み込むか、何がメッセージなのか、そのシンプルさ、メッセージ性が強い影響を与えたのだと思います。東北大学工学部キャンパスのカタール・サイエンス・ホールを会場として、TEDxTohokuや日本のTEDxの経験者で本学出身の方が力を合わせて、本日のイベントが成立しました。

私のトークは、オープニング・セレモニーの後、10名のトークの中の最初でした。事前の打合せによりテーマは「もっと科学に女性を! Women need science, Science needs women」として、科学分野において女性の参画が足りないこと、その背景となっている無意識のバイアス、それに気づくことや、メンター・ネットワーキングの重要性について話をしました。トークの後のブレイクや懇親会で、何人からも声をかけて頂けたので、昨日のリハーサル含め、週末返上で行った甲斐がありました。
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東北復興関係のトークもいくつかありました。もっともスタンディングオベーションを得たのは、予想通り、ライフブリッジの櫻井亮太郎さん。東北の魅力について発信しているユーチューバー、Chris Broadさんの活動も素晴らしい。真ん中の花魁の衣装の方はLily Norikoさん。同時通訳の会社Lily's Transupportを運営いる方です。最後のトークをされました。留学の経験は無しって、すごいなぁ……。
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今回の企画運営チームの約半数が留学生というのもユニークな点だったと思います。辛子色のトップスの女子たちは、その隣の2名の男子とともにエンターテイメントとして2曲披露した、本学学生のブルーグラスのユニット。
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個人的には、学友会に昇格したアカペラコーラス部del mundのユニット、Cloverさんたちが良かったかな。披露したのは「ふるさと」と「なごり雪」でした。
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全体代表はChanon君。タイからの留学生。
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お疲れ様! そして、次もイベント開催できるように頑張って下さい!

TEDxTohoku UniversityのFacebookページはこちら

(いずれ、プレゼンはスクリプト付きでウェブにアップされる予定)

ちなみに、本日は「世界自閉症啓発デー」でもありました。もう一言、自分のイントロ、加えた方が良かったと反省……。最後になってスライド2枚削ったので、あと18秒あったのに。

# by osumi1128 | 2017-04-02 22:17 | 東北大学 | Comments(0)

大内憲明先生ご退職おめでとうございました

今年の3月は、お世話になった先生方の退職が重なりました。医学系研究科ではともに脳科学グローバルCOEの活動を行った森悦朗先生とともに、元医学系研究科長・医学部長の大内憲明先生もご退職。21世紀COEの頃からTUBEROプロジェクトや医工学研究科立ち上げで御一緒させて頂きました。年は違うのですが、東北大学の教授に同期着任ということもあり、過日のご退職祝賀会に馳せ参じました。
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出席者が270名ほどの、しかも着席という大掛かりなご宴席で、さすが、外科の先生は違う……と思いました。同門の方々の結束が硬いというのも、個人主義な基礎とは違う雰囲気ですが、それでないとチーム医療がうまく回らないということもあるのだろうと思いました。

この日は御一緒の画像を撮るような雰囲気ではなかったので、記念に退職教授記念講演会のときのショットを上げておきます。
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4月からは宮城県北部の登米市の医療管理者として従事され、新たなお立場で地域医療に貢献されるるとのこと。これからもご指導宜しくお願いします!




# by osumi1128 | 2017-03-31 22:42 | 東北大学 | Comments(0)

大人のための最先端理科第110回:精子の老化は自閉症に関連? 父の高齢化と次世代への影響

今週発売された週刊ダイヤモンドに連載コラムが掲載されています。今回は現在、我々の研究室の中心テーマとして位置付けている研究に絡んだお話です。

書店で、あるいはオンラインでお読み頂ければ嬉しい限りです。
週刊ダイヤモンド「大人のための最先端理科」第110回「生命科学」:
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# by osumi1128 | 2017-03-20 22:38 | サイエンス | Comments(0)

東日本大震災からの七回忌

2017年の3月10日の時点で、東日本大震災による死者は1万5893人、行方不明者は未だ2553人とのこと。生かされたことに感謝するとともに、犠牲者のご冥福をお祈りします。

昨日から本日昼過ぎまでは、第10回神経発生討論会を仙台近郊の秋保にて主催していました。セッションの途中に当たるため、追悼のための黙祷は本日の口頭発表開始前に行われました。

京都府立医科大学の野村 真さんと当研究室の吉川貴子さんが心を配って丁寧に企画してくれた甲斐があり、参加者は100名弱と大盛況かつ和やかなものとなりました。韓国からも5名の参加者があり、トークのスライドやポスターは英語、口頭発表のほとんどの方は英語での発表だったので、留学生の方たちにも十分わかりやすかったと思います。

今年の特別講演の講師は愛媛大学の村上安則さん。もはや日本では彼が脳の進化の大家です。学名がたくさん出てくるのがちょっと辛いのだけど……。脊椎動物型の脳の起源はカンブリア紀まで遡れるが、小脳、菱脳、終脳などは脊椎動物の系譜で変形していった、というお話でした。
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この研究会は大阪大学名誉教授の村上富士夫先生、生理学研究所の池中一裕先生、名古屋大学の宮田卓樹先生が発起人として作られたものです。現在、世話人は10数名。順に研究会のオーガナイズを行って回していますが、年会費の徴収などは行わず、事務局も置かないカジュアルな運営です。

何より「若手育成」を目的として設置された会なので、発表者は原則若手、10分と比較的長めの質問時間も、最初の5分は若手優先というルールです(「自称若手」は含まれませんww)。英語の口頭発表に対して、日本語での質問もOK。とにかく質問する習慣を付けるのが大事。
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何より、神経科学大会や分子生物学会のような大きな学会よりも「神経発生」に特化した研究者が一同に会しているので、質問も深くなるし共同研究の話なども盛り上がります。ちょうど「日本版ゴードン・カンファレンス短縮型」のような研究会ですね。

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夕方からは、今年度でご退職になる森悦朗先生の退職記念祝賀会に出席しました。こちらも森先生のお人柄を反映してユーモアに溢れ、なおかつ暖かい会でした。神経心理学を打ち立てられた山鳥重先生の後任として「高次脳機能障害学分野」の教授として14年務められる間に、正常圧水頭症や認知機能障害に関する数々の研究成果を挙げられました。本当にバイタリティのある先生で、東北大学脳科学グローバルCOEで御一緒できたことは幸せでした。「あの仕組みは良かったよね」と森先生も仰って下さるのが嬉しく思われます。

山鳥先生はじめ多数の方々が全国からご出席されていたことも、森先生のご人徳ならではですね。
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森先生のスピーチも、過日の最終講義の折も含め、いつものことですが、関西人らしく随所で笑いを取っておられました。本学ご退職後は大阪大学に移られるとのこと。新天地での益々のご活躍をお祈り申し上げます。
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その後、神経発生討論会に招聘・参加された韓国の研究者の方々との夕食会に顔を出しました。これからも交流が続くことを祈っています。
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早目に先に失礼して、着物を片付けたり書類を作ったりした後、Facebook経由で回ってきたのが、駐日米国臨時代理大使の動画が素敵だったので、こちらに掲載しておきます。震災復興のために設置された東北メディカル・メガバンク機構を訪問された折の映像も使われています。

地域住民コホート8万人、三世代コホート7万人のリクルートが達成され、これからフォローアップと解析のフェーズになりますね。生かされた者として最善を尽くしたいと改めて感じた日でした。

# by osumi1128 | 2017-03-11 23:56 | 311震災 | Comments(0)

グンナー・エクイスト先生の講演:How to make scientific research more transformative

2月27〜3月2日に第9回HOPEミーティングが東京国際フォーラムにて開催され、5名のノーベル賞受賞者とウメオ大学名誉教授であるGunnar Öqvist(グンナー・エクイスト)先生の講演とともに、世界22カ国からの約100名の学生および若手研究者のポスター発表、グループディスカッションが為されました。その前日には「ノーベル・プライズ・ダイアログ2017」も行われ、充実した1週間になったことと思います。(大学入試と重なって、ダイアログの方に出席できなかったのは個人的には残念でした。人工知能のテーマで盛り上がったと聞いています。)どちらも主催は日本学術振興会現在の理事長は元慶應義塾大学塾長の安西祐一郎先生)。

個人的には、2015年の東北大学知のフォーラム脳科学国際シンポジウムにもお招きしたEdvard Moser先生のご講演で、グリッド細胞発見のその後の最新の研究成果を伺うことができ、現役の研究者としてさらに研究に邁進する様子が見られたのがもっとも刺激になりました。

また元スウェーデン王立科学アカデミー事務総長を務められたグンナー・エクイスト先生のお話は初めてだったのですが(今、探しましたら、ちょうど昨年、本学にもご訪問されておられました)、ノーベル賞の委員会はどんな研究を受賞対象として求めているのかについての内容が興味深かったので、拙ブログに載せて皆さんとシェアしたいと思います。(ご発表に使われたPPTファイルを許可を得て入手させて頂きました。画像はウメオ大学のHPから拝借)
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How to make scientific research more transformative

エクイスト先生によれば、研究には2種あるといいます。
Dual nature of research:
●Incremental research: research formulated within the conceptual frame of long-standing hypotheses and theories.
●Transformative research: challenges long-standing hypotheses and theories.
例えばノーベル委員会のような組織では、この2つのうち「transformative research」を求めています。いわば「世界を変える研究」です。
Drivers for excellence in research:
●A Nobel Laureate has on average had 7.4 other Nobel Laureates as colleagues during a career
●On average a Nobel Laureate has worked in 4.6 environments (universities or institutes) before receiving the Nobel Prize
The environment seems to be contagious
このデータは面白いですね。研究において「エクセレント」であるには何が必要か、ということについて、ノーベル賞受賞者のデータを振り返ると、平均7.4名のノーベル賞受賞者と同僚や共同研究者であり、受賞までに4、5箇所の異なる大学・研究所で仕事をした、ということから、良い刺激のある「研究環境」を渡り歩くことが大きな影響を与えると導いています。「contagious」という英語は元の意味は「感染性のある」ということですので、周囲の環境からの「良い影響」が伝染る、ということですね。確かに、ケンブリッジ大学、ロックフェラー大学、マサチューセッツ工科大学、ベル研究所などでは、これまでに多数のノーベル賞受賞者が輩出されています。

(もっとも、7、8名のノーベル賞受賞者と同僚にならないと、あるいはいくつもの研究室を体験した後ではないとノーベル賞に繋がらないということではなく、例えば東北大学工学部卒の田中耕一先生は、なんと学部時代の発見が2002年のノーベル化学賞受賞対象(質量分析法)となっています。田中先生は2015年に御一緒したノーベル・プライズ・ダイアログで、日本独自のユニークさを追求することも大事なのではないか、というご発言をされていました。大事な視点だと思います。詳しくは拙ブログ参照。)

また、そのような研究環境を作るのに何が求められているかについては、以下を引用されていました。
The EU Aarhus Declaration 2012:
(www.excellence2012.dk)
●Recognising and nurturing talents
●Trust and freedom
●Long-term perspectives
●Creative and dynamic research environments
●Beyond and across disciplines
同様の提言はスゥエーデン王立アカデミーからも為されています。その中で挙げられていたのは以下。
The Academy report highlights:
●better support of individuals with new ideas
●better career opportunities for young scientists
●more focus on international recruitment
●the role of the academic leadership
●money was not the issue
最後の部分、「お金の問題ではない」といいう点は、再度認識した方が良いかもしれませんね。実際には若い研究者にキャリアの機会を与えるには、国としてのお金はかかるのですが、高い給与が必要なのではなくて、エクセレントな研究を行うことができる国際的な環境を整える、そのためにアカデミアがリーダーシップを発揮するということなのでしょう。ここしばらくの間、選択と集中が続きましたが、もう少し裾野を広げる施策に切り替えた方がサステナブルに人材育成できるのではないかと考えます。
Organizational concepts facilitating the making of major discoveries:
●Scientific diversity
●Communication and integration
●Leadership capacity
●Adaptiveness
●Organizational flexibility
そのような組織に何が必要なのかをまとめると、サイエンスの多様性、コミュニケーションと連携、リーダーシップ、寛容性、組織の柔軟性が大事とのことです。
Organizational concepts hampering the making of major discoveries:
●Differentiation
●Hierarchical authority
●Bureaucratic coordination
●Hyper diversity
逆に、重要な発見が生み出されるような組織構築を阻害するものとして、差別化、階層的権威主義、事務系の調整力(事務仕事が過剰になる、というようなことでしょうか)、多様性が大きすぎること挙げられていました(ちょっと和訳が難しいですね……)。最後のメッセージとして……
Take home message:
People with novel ideas, exchange of knowledge and ideas in an environment with complementary skills, are key elements for shaping creative environments that are brave enough to address important, ground breaking questions also having a fair chance to make transformative discoveries, innovations and improvements that may merit for a Nobel Prize. People with novel ideas are the strongest drivers for excellence in research.
ちょうど、日本でこのような組織を目指して作られたのが「世界トップレベル研究拠点」(World Premier Institute, WPI)だと思います。
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第一期の拠点形成から10年経ち、新たな拠点の公募が始まるようです。







# by osumi1128 | 2017-03-05 21:19 | サイエンス | Comments(1)

NIH-Japan Symposiumの備忘録:サイエンスを行うのは人

初めて会う方がよく「ブログ、見てます」と仰って下さるのですが、数年前よりもエントリー頻度が下がっているのは、(1)日々のつぶやきはTwitterとFacebookに移行、(2)震災後から2014年終わりくらいまで気張っていたモードからトーンダウン、(3)入れ替わりのタイミングで週刊ダイヤモンドに5週おきにコラム連載、という背景かなぁと思っています。でも、TwitterやFacebookは、自分で何を書いたのか、後から検索しにくいので、やはり長く残したい大事なことは、ブログとしてウェブに記録しておきたいと思います。

2月15日〜17日に、米国衛生研究所(NIH)とのジョイントシンポジウムの第3回めが開催されました。2011年の東日本大震災後、NIHの方々が本学の被災状況を心配されて種々ご支援された御礼として始まったシンポジウムですが、ご準備・運営頂いた関係各位のご尽力に心から感謝申し上げます。
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初日の夕方にキャリア・ディベロップメントのセッションがあり、外山玲子先生のコーディネートとイントロにより、筑波大学の深水先生のトークに加え、今回招聘されたNIH側の若手8名(学部卒業後のpost-bachelerの方から、PhDの学生さん、ポスドクやジュニアスタッフの方まで)にパネル討論に登壇頂きました。東北大学側からの参加者も、学部生や大学院生、とくに多数の留学生が参加して、グループディスカッションも盛り上がっていました。競争の激しいと言われる生命科学業界ですが、「なぜ、この分野に参画したのですか?」という質問に、「良いメンターに恵まれたからです(=高校のサイエンスの先生が良かった、大学の指導教員に勧められた)」という答えが多かったのが印象的でした。やっぱり「先生」って大事ですね……。
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翌日、オープニング・セレモニーで、総長やNIH側の代表の先生のご挨拶に加え、NIH日本人研究者の会(通称「金曜会」)を立ち上げられた尾里啓子先生のスピーチが素敵だったので、記しておきます。(追って英語のテキストを頂く予定)

尾里先生は、「サイエンスを行うのは人である。だから人と人の間の関係性を大事にすることが必要である。かつて日本からNIHに留学した方と、今もNIHにいる日本人の間の関係が続いて、このようなジョイントシンポジウムに繋がった。皆さんも人と人のネットワークを大事にして下さい」という意味のスピーチを、ゆっくりと、でもしっかりと述べられました。

尾里先生の英語は、決してネイティブ的な流暢さはありません。ですが、その分、重みがあるというか、よく伝わるというか……あぁ、表面的な話し方より、やっぱり「中身」が大事なんだだなぁ、と改めて思った次第です。天皇皇后両陛下の話される英語との共通性を感じました。

尾里先生は、日本人女性の中でも小柄な方ですが、その志はとても大きいと思います。2012年の春の叙勲において、瑞宝中綬章を授章されたのは、ご自身のご研究に加えて、日米学術交流等のご功績によるものとのことです。2013年のときには叶わなかったのですが、今回、来日頂くことができて何よりでした。
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ポスターセッションには100題を超える発表があり、若い方々で賑わっていました。元大学院生の耳鼻科の鈴木淳君がポスター賞を受賞したのも嬉しいことでした。画像はラボのFacebookを参照あれ。
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自分が担当したのはNeuroscienceのセッションで、NIH側からは代表を務められたBattey先生と、NIMHのMerikangas先生、国内からは宮川剛先生、本学からは富田博秋先生が登壇されました。
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きっとこの画像で尾里先生の小ささ(物理的な)がわかるはず♬ お隣のMerikangas先生は豪快な方でした!


# by osumi1128 | 2017-02-27 21:37 | 若い方々へ | Comments(0)

大人のための最先端理科第105回に岡田節人先生のことを書きました

5週に1回担当している週刊ダイヤモンドのコラム「大人のための最先端理科 生命科学」に、1月17日に亡くなられた岡田節人先生のことを記しました。改めてご冥福をお祈りいたします。
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デジタル版はこちら

# by osumi1128 | 2017-02-12 23:07 | サイエンス | Comments(0)

徳島に行ってきた:四国5大学連携女性研究者研究交流発表会に参加

徳島大学からの依頼により、平成28年度第3回四国5大学連携女性研究者研究交流発表会で講演をしました。このプロジェクトは平成26年度の文科省ーJSTの人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業(連携型)」により、徳島大学、香川大学、愛媛大学、高知大学、鳴門教育大学および地元企業の連携行われています。
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講演後の情報交換会でもスピーチを求められたので、「メンター」と「バトン」という2つのキーワードにまつわるお話をしました。
キャリアを形成する上で、メンターは重要。多くの場合、直属の指導者がメンターになる訳ですが、メンターは何人いてもいいし、自分で勝手に「この方が私のメンター!」と決めても良い。昨年4月から徳島大学の学長を務められている野地澄晴先生も、私にとってのメンターの一人。大学院の最後の頃から共同研究でお世話になり、励まして頂いたり、苦言も頂戴した。そういうメンターを大事にするのが良い。
私自身は、こういう「男女共同参画」や「ダイバーシティ」を推進するための活動を10年以上に渡って続けて来たが、それは私よりも年上の先生からバトンを渡されたから。年上の先生からは「昔はもっとたいへんだった。活動は常に続けないとバックラッシュに負けてしまう」と言われ続けて来た。この10年の間に遅々とした歩みではあるけれど、確実に変わって来たと感じる。これからは私のバトンを次の方に渡す時期だと思っている。
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さらにその後の二次会では、久しぶりにお話した野地先生から、種々、大学改革のことなどを伺うとともに、いくつか書籍をご紹介頂きました。そのうちの一つは「グリット(やり抜く力)」についてのものだったのですが、いくつか同じタイトルの本がありますね……。

とりあえず下記の本『グリット 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』の説明より引用。
GRIT(グリット)は、いま米国で最も注目されている「成功のためのキーワード」です。
最新科学で明らかになったのは、「真の成功」のための最重要要因は、生まれながらの才能やIQではなく、GRITだということです。(むしろ「IQの高い人は、自分を過信し、努力を怠る」)
GRITは、Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の4つの要素からなり、「やり抜く力」を意味します(それぞれの頭文字をとると、GRITになります)。
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上記の本の元?にもなっている、社会心理学者の著書はこちら。しっかり読みたい方にはこちらの方がベターでしょう♬
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# by osumi1128 | 2017-02-04 19:01 | 若い方々へ | Comments(0)