基礎研究をもっと身近に

昨日、とある申請書書きの筆が進まなくなったので諦め、帰ろうとしたところにエレベーターで一緒になったラボメンバー二人と「ご飯でもどうですか?」ということになり、家まで歩いて帰ろうという計画は簡単に挫折(笑)。
行ってみたかったお店はお盆休みだったので、またしても近所ということからクレムへ。
1階入り口近くでエキストラ・コールドのハイネケンを飲んでいると……。
「あれ? Y先生(@TWMU)、今日は仙台だったのですか? 何のお仕事?」
「いえ、休暇です」
「まー、わざわざ。で、良かったらご一緒に如何ですか?」
ってことで、お連れの方もいらしたのですが合流。
Aggregationが大きくなるような感じ。
青葉通りに面しているので、トラップされやすい雰囲気なのですが、まさか東京在住の方まで巻き込むとは。

……で、エンターテイニングなY先生との会話を楽しみつつ、小皿料理をつつきつつ、スパークリングワインをおかわりしつつ、夜は更けていったのでした。
自戒を込めて、帰りは歩き。といってもたいした距離ではないのですが。

そんな訳で、本日はまだクリエイティブなことをする活力に欠けるので、ウォーミングアップのためにブログのエントリーを。

*****
6月に主催したCREST国際シンポジウム「Neurogenesis2009」のmeeting reportがSchizophrenia Research ForumのNewsとして掲載されました。
このサイトはNPOによって運営されているのですが、2006年にCold Spring Harborの統合失調症に関するworkshopに参加した際に知り合った方が中心となっています。
以下、当時のエントリーからの抜粋。
参加者は5-6倍の競争だったらしいが、職業や国の多様性があるように選ばれている。
ちなみに、男女比はほぼ半々。
上記で触れたSchizophrenia Research Forumというnon-profit websiteを運営しているeditor氏は参加者プロフィールによれば、Dukeで大学院の間、視覚系の解剖学を勉強し、その後、発達心理学の研究に従事したあと、科学ジャーナリストとして10年のキャリアがある。
今回立ち上げたサイトはschizophrenia等に関する研究のディスカッションをオンラインで行うとともに、さまざまなリソース(抗体や発現ベクター等)に関しての情報提供も行うらしい。
おそらく、その辺りで企業からの寄付を取り付けて運営するのだろう。


このときに立ち上げたサイトが動いているということですね。
ちょっと長いですが、ミッションを引用しておきましょう。
Mission

The mission of the SRF is to help in the search for causes, treatments, and understanding of the devastating disease of schizophrenia. Our goal is to foster collaboration among researchers by providing an international online forum where ideas, research news, and data can be presented and discussed. The website is intended to bring together scientists working specifically on schizophrenia, scientists researching related diseases, and basic scientists whose work can shed light on these diseases. In this way, we hope that the Schizophrenia Research Forum will be a catalyst for creative thinking in the quest to understand a deeply complex disease.

It is our goal to create and maintain up-to-date content of the highest quality. The website is free of charge to users, independent of industry sponsorship, and open to the public. Though geared toward researchers, we welcome other visitors—people with mental illnesses, families, the media, and others who need accurate information on research into schizophrenia. We do, however, require that users who wish to post comments and other materials be registered members. All such materials are subject to approval by the editorial team. As a "forum," we encourage participation and welcome feedback from the community.

トップページを見て頂くと、今回のmeeting reportのようなnewsの他、Spotlightとして最近1週間の関連論文が自動検索されてまとめたコーナーなどがあり便利です。
さらに、それらの論文に対して投票したりコメントを付けられるようになっていてインタラクティブ。
Current Hypothesesなんてところに自説を載せることも可能。
一応、サイトの管理者の承認による掲載ですが、意見の異なる査読者に落とされるということはない訳です。

意見は研究者の間だけで交わされるのではなく、コミュニティーに開かれています。
で、統合失調症に関連するとして論文に掲載された遺伝子一覧などを、一般市民の方も簡単に見ることが可能なのです。
あるいは、現在治験が行われている薬についての情報などにもアクセスできます。
こんな仕組みも基礎研究をもっと身近にするために必要なことだと思います。
サイエンスカフェや出前授業だけが科学コミュニケーションではありません。

このサイトの運営には10数名ほどのメンバーが関わっているようですが、PhDを持ったサイエンス・ライターの方、ウェブ・デザイナー、イベント・コーディネーターなど多彩な顔ぶれ。
きっと、アメリカでこういう組織が作りやすいのは、「多様なバックグラウンドの人間が集まって何かをする」ことに馴れているからなのでしょう。
対して日本では「お馴染みのメンバーが集まる」傾向が強いので、新たな組織を作ろうとすると難しいし、無駄も多くなる……。

ちなみに、Schizophrenia Research Forumは、先行していたAlzheimer Research Forumのやり方を踏襲したもののようです。
その他、例えば大学の中に作られた研究所が運営している自閉症のサイトなども、研究サイドからのアウトリーチですし、逆に、患者団体が主催するサイトにおいても、きちんと最先端研究情報がフォローされます。

あらためてこうやっていくつかのサイトを調べてみると、やはり情報発信においてはライティングが重要なのだと思います。
「科学技術立国」というキャッチフレーズを掲げている日本のプレゼンスを高めるには、ますます英語のテキストを発信し続けなければならないのに、そういう人材があまりにも乏しいことに悲しくなります。
日本語での情報発信も足りなさすぎます。
最先端の研究成果が市民に届かない。
専門教育前倒しもよくないですが、高校1年で理系文系を分けるなんてことも、「理系なら国語や英語は苦手でもよい」「文系なら数学を知らなくても良い」という偏りを生み、将来的に社会にでるときに「糊しろ」が少なすぎて共同作業がやりにくくなってしまうのだと思います。
by osumi1128 | 2009-08-15 11:28 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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