文藝2009秋号:特集・小川洋子【加筆あり】
2009年 08月 21日
こういう雑誌は、近所の本屋さんには売っていません。
仙台駅近くなどの大型書店に行かないと……。
広告も少ないのに、カラーのグラビアまである、こんな雑誌を出し続けるのは大変なのではと、余計なことまで考えてしまいます。
小川洋子氏の小説は『博士の愛した数式』とその映画版のほかに、『凍りついた香り』くらいしか読んでいないのですが、日曜日にラジオ番組を持っていらして、たまに聞くことがあります。
で、そのためにゲットした、というより実情を話すと、特集の中に「対談」が載っていて、そのお相手というのが、遠藤秀紀さん(遺体科学)と岡ノ谷一夫さん(脳科学)で(あ、それぞれ、別々の対談です。鼎談ではなく)、岡ノ谷さんから「載ってるから読んでね」とお知らせがあったからなのでした。
あぁ、確かに、小川氏の独特の世界というのは、『パンダの親指』の遠藤さんや、最近『ハダカデバネズミ』で科学ジャーナリスト賞をゲットされた岡ノ谷さんとつながる空気があるなぁ、と思いました。
やっぱり、生き物としての実体があるからなのでしょうね。
細胞や分子のレベルでは難しいかも。
で、岡ノ谷さんとの対談の中では、もちろん、ジュウシマツの歌の話などが出てくるのですが、中には「雌に向かっては歌わなくなってしまうジュウシマツ」がいるのだそうです。
つまり、求愛のラブソングだったはずが、「オレって歌が上手い」こと、そのものに高い価値観が置かれてしまう……。
石器の発展などを見ていても、道具として役立つレベル以上に、あるところから「美しい道具」が生じてくるのは、余分な神経細胞をたくさん持ったことと、生きていくのに不自由しないくらいの食べ物に恵まれるようになったことが要因だと想像します。
実際、鳥の仲間で、何千キロも渡りをする種は、歌っている場合じゃなく、そんな余剰のエネルギーはありません。
ちなみに、「大人の脳でも神経細胞が生まれる(神経新生)」ことが業界内で浸透するようになったきっかけは、「鳴禽が歌学習をする際に、脳の中に新しく生まれた神経細胞がいる」ことが報告されたからです。
さらに言うと、「複雑な歌を歌う♂」が選ばれるのですが(性選択)、繁殖期の神経新生は栄養摂取とリンクしており、「学習能力の高い♂」は栄養状態が良く、子供に餌を運んでくれることが期待されるために選ばれる、という説明が為されています。
うーん、竹内久美子先生的ネタ、ですが。
【加筆】
上記の記述で、「鳴禽が・・・」から「・・・説明が為されています」までは、論文になっている研究成果があります。
「竹内久美子先生的ネタ」と書いたのは、「だから、人間の場合もカラオケが上手い男性がモテる」的な結論に使われる可能性が高いだろうなぁと思った、ということです。
人間の好みはもっと多様で複雑なものと思います。