才能教育:「浮きこぼれ」をなくすために

関西出張から仙台に戻ったら、すっかり涼しくてびっくり。
さらに台風通過で雨の月曜日。
Rainy days and Mondays always get me down...

日本は資源に乏しいので「科学技術立国」を目指しているのだと謳われています。
平成7年11月15日に「科学技術基本法」が施行され、そのもとに「科学技術基本計画」が策定され、現在第3期の段階にあり、次の5カ年の準備が進みつつあります。

その計画について検討する委員会の委員でもある毎日新聞の元村有希子さんが、同新聞の「発信箱」に次のような記事を書かれました




(以下、リンク切れになるのは残念ですので、全文引用させて頂きます。)
発信箱:浮きこぼれ=元村有希子

 ホームレス支援を掲げるカナダの「てんとう虫財団」総裁、ハンナ・テイラーさん(11)は5歳の時、ごみ箱から食べ物を拾う人を見て衝撃を受けた。ベビーフードの空き瓶をてんとう虫の水玉柄に塗って募金箱をつくり、寄付を呼びかけた。6歳で財団を設立、07年には「カナダでもっともパワフルな女性100人」に最年少で選ばれた。

 日本では、テイラーさんのような人材は皆無に近い。才能のある子はいても、それを育てる環境が十分ではないためだ。

 早熟な才能ゆえに、普通の子の集団から浮いてしまう子どもたちを広島大理学部の泉俊輔教授は「浮きこぼれ」と呼ぶ。数学好きの中高生を全国から選んで開いた夏合宿で、数学や科学の話題で朝まで盛り上がる少女たちがいた。「早く寝たら?」と声をかけても寝ない。「学校では『賢いね』と一目置かれてはいるが、浮くのが怖くて『数学が好き』と言い出せない。教室では自分を抑え、孤独や疎外感を感じている」

 才能児に共通する特性がある。独創力と抽象的思考力に優れ、精神的に大人びている。好きなことにはすごい集中力と行動力で取り組む。才能教育が盛んな米国では、すべての州が何らかの制度と予算を用意して才能児を発掘し、飛び入学や特別教育プログラムで支援している。テイラーさんもカナダで才能教育を受けているという。

 日本も従来の低学力(落ちこぼれ)対策に加えて「浮きこぼれ」救済を考え始めてはどうだろう。彼らにも伸び伸びと学ぶ権利がある。「むかし神童、いまフツーの人」という冗談が通じるような現状は、限りない可能性を浪費しているようで寂しい。(科学環境部)

毎日新聞 2009年8月22日 東京朝刊


11歳で財団を作ってしまう少女ほどでなくても、才能のある子供達はたくさんいますね。
音楽やスポーツの世界において小さい頃からの英才教育が普通なのだとしたら、科学においてもそういうことがあっても良いのだと思います。

日本の教育は、これまでに「平等」をあまりにも重視し、それは結果として「低い方に合わせる」ような「ゆとり教育」を進めたことにもなりました。
(本来、「ゆとり教育」を持ち出された方の意図とは別かもしれませんが……)
この度の衆議院総選挙では民主党の圧勝という結果になりましたが、次世代の教育に関して、日本や世界の行く末を見通した政策を展開してほしいと願っています。
by osumi1128 | 2009-09-01 01:50 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30