柳田先生の「35才問題」を読んで
2009年 09月 27日
予想よりはるかにキツかったです……。
腕に巻いた加圧ベルトで、血が止まるかと思いました(汗)。
もちろん、少し和らげてもらいましたが……。
で、ちょっとしたマシントレーニングも、負荷が大きいのですね。
確かに、時間が短くて効果絶大なのかも。
回数券を買うかどうか思案中。
さて、英語の本のチャプターのための原稿書きに疲れたので、気分転換にブログのエントリー。
柳田先生の「生きるすべ」にあった35才問題について考えてみたいと思います。
何度か取り上げられているかと思うのですが、要するに、今の日本の研究業界において、35才という年齢が一つのcritical pointとして強く作用しすぎているのでは、というあたりが御大の言わんとされることと思います。
「昔のような<万年助手>という生き方は、もうありえない」と。
そもそも35才という年齢の基準はどのあたりにルーツがあるのか。
今シーズン突入の文科省科研費の「若手B」の制限もそのあたりかと思いますが、現役で進学して順調に過ぎた場合には学位を取って7,8年目という頃ですね。
そういえば以前、江崎玲於奈先生が、もっとも創造力と理解力のバランスが取れた年代がその頃で、ノーベル賞受賞対象の仕事もだいたいこの頃だというお話をされていました。
でも、出産・育児などにぶつかっていたら、あっという間に35才かもしれません。
女性は寿命が10年長いのですから、定年だって10年伸ばしてもらって(笑)、30代はプライベートにプライオリティーを置く、なんてことができたらよいのでしょうが、研究は継続性も大切なのですね。
(……でも、それって思い込み、でしょうか?)
私の印象では、やっぱり、この15年で大学院の枠が広がったことが一番大きな変化だと思います。
以前にもこのブログでご紹介した「岡本の公式」を挙げておきます。
A: 1年に空く独立したポジション
=[X: 独立した研究室の数]/[Y:独立した研究者の平均在籍年数]
B:1年に新しく加わる人数
=[N:1研究室が1年あたりに新たに取る学生の平均数]x[X:独立した研究室の数]
C:新人が将来独立できる確率
=A/B
=「X/Y」/[NxX]
=1/[NxY]
結局Xの数がいくつであれ、独立できる確率は「研究室が1年あたりに新たに取る学生の平均数」と「独立した研究者の平均在籍年数」の積に逆比例するということです。
例えば、最近のように若手PIをどんどん推進すると、Yの値が20年くらいになり、もしNが平均2名だとすると、独立できる確率が1/(2x20)=1/40ということになります。
詳しくは、こちら
ですので、PIにはならないキャリアパスをきちんと用意しなければならないと思います。
税金を注ぎ込んで育てているのですから、「自分で勝手に探してね」というのではマズイと、私は思います。
本当は、専門的なスキルを持った方々は、研究そのものをするだけでなく、いろいろなところで能力を発揮できるはずだと思います。
例えば、日本神経科学学会は会員数が約5000名、北米神経科学学会のおよそ10分の1くらいですが、事務局体制は専任の方3名しかいないのに対し、北米は80名もいるとのこと(DCに自社ビルを持っているとも)。
このような人数にはクリティカルマスがありますから、じゃあ、8名の体制になったら、それなりにできるかというと、たぶんそうではない。
80名の体制であればこそ、高校との連携や社会への発信など、次の科学を支える人材育成にも携わることができます。
そして、そのような仕事は、研究を行った経験のある方やそうでない方が楽しく生き甲斐を持ってコラボレーションしてこそ成功するのだと思います。
大学の中にも、もっと多様な人材が必要です。
例えば大学の国際広報をするとなると、大学のことも知っていて、それなりに英語も使えて、なおかつ広報のスキルのある方が求められる訳ですが、なかなかそのような方は少なく、さらに首都圏との格差がより出てしまう……。
さらに問題なのは、こういう人材を仮に求めるとしても、「プロジェクト雇用」になって、任期が着いてしまうこと。
継続的なキャリアパスを構築するのが難しい……。
もちろん、日本の企業が高度な教育を受けた人材を活用できなかったら、それこそ国は立ちゆかないことは目に見えています。
すみません、ちょっととりとめのない書き方で。
ちょうど第4期科学技術基本計画に向けた議論を行っている時期なので、いろいろなことを考えます。
政権が変わっても粛々と進んでいますね。
聞くところによると、某プロジェクトがらみなど、シルバーウィーク返上の方々もおられた由。