8月30日の意味

秋晴れの美しい日。
一日に昼夜の変化があり、1年に四季の移り変わりがある、そんな循環の仕組みを科学で紐解く前から、人間はこれらのリズムと折り合い、生活に生かしてきた。
リズムは変化であり、変化が活力を生みだす。
だが、予期せぬ急激な変化は大きなストレスになる。




2009年8月30日、きっと今から日本の歴史を覚える子供達にとっては、それなりに大事な節目の日として刻まれるのだろう。
衆議院選挙の投票結果、(実にあっさりと、であったが)与野党の政権が交代した。
新しい組閣が為され、マニフェストなるものを達成させるのに、これまでの予算を削れ、新たな事項を盛り込めとの大騒ぎ。
挙げ句の果ては、すでに国民が抱えている借金は膨大であるにも関わらず、史上最高額の予算が計上された。
……これには正直、脱力感を覚えた。
すみません、普通の足し算引き算レベルでも(桁は多いけど)分かることではありませんか???
さらに利息を考えるだに恐ろしいではないか……(こっちは複利計算が必要)。

研究業界で言えば、この余波は先週金曜日になって届いた。
おそらく多くの研究機関でこの日の前後で期間内締切が設定されていたと思うが、いわゆる文科省の科研費という枠の研究費の公募のうち若手(S)と新学術領域の課題提案型の公募が中止となった。
公募されていたものが途中で中止というのは前代未聞、空前絶後のことであり、もちろん応募するつもりで一生懸命文章を練り上げていた若手の方々、各研究機関の事務系の方々等等、その怒りは察するに余りある。
一方で、これは前代未聞、空前絶後のことであって、そこに至るまでの省内外でのやりとりというものも、どんなにかご苦労なことであったかと拝察する。

なにせ、95兆円という予算に目眩がしたもので、気を取り直して遠くに目を向けると、先のインドネシアの地震の被害は甚大だし、中東では今なお安心して眠れない人たちが何万人もいる。
研究というものは、平和な社会に成り立つのであって、ドンパチ戦争がある社会で行うことは不可能だ。
だから、せめて、まず、日本が平和で民主国家であることに感謝すべきではないか。

その上で、我々は今回の政権交代が一体何であったのか、きちんとウォッチしていく必要がある。
今まで良くないと思われていたが変えらなかった制度を変えることができるのか、次世代の子供達がそれぞれの能力を活かせる社会に向かおうとしているのか、世界から尊敬される国としての責任を果たしていけるのか。
それが8月30日の意味を問うということであり、その政党を選んだ国民の義務であろう。
一人ひとりができるレベルで。

追伸:
研究のアイディアを申請書の形にすることは、いろいろな物事をクリアーにするには最適です。
きっと、次のチャンスに活かされんことを!

文部科学省発表記事
関連記事:5号館のつぶやきさんより
by osumi1128 | 2009-10-18 17:02 | 科学技術政策

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