実は日本は<低学歴社会>だった!

一昨日、新幹線の中で阿部元総長と席がお隣同士になるという幸運に恵まれ、東京までの1時間40分弱の間、ずっとお話を伺うことができました。
東北大学を退官された後、総合科学技術会議の議員として国の科学技術政策に関わられ、現在は科学技術振興機構の顧問というお立場で、ご講演やアドバイス等を行う毎日とのことです。

「大学におけるcreativityを生みだすには?」というような話題になったときに、「かつて日本に宣教師が来たときに驚いたのは、民度の高さ、識字率の高さだった」ということが取り上げられました。
「お坊さんの教養の高さに打ち勝たなければキリスト教を布教することはできないだろうと考えられた」のだそうです。
しかも「女性の教養が伝統的に高い」ことが特筆に値する。
「紫式部、清少納言の頃に、すでに女性が文学の歴史に関わっていましたよね」
「いや、さらにそれ以前の万葉集の頃から、男女が歌を詠み合っていたのですから」
「万葉仮名を書いて、ですね」
「なぜ、日本でのみ、そのように女性が古くから文化に関わってきたのかは興味深いことだね」

阿部先生との会話は、その後、地域医療の話や事業仕分けにも及びました。
大きな仕事を新しく始めるときには、どんなことに気をつけるべきか、などの人生訓のようなことも伝授して頂き、ちょうど1コマの個人レッスンを受けたような、知的に充実した時間でした。




その翌日、つまり昨日はまた東京日帰り出張だったのですが、「経済Trend」という雑誌のための座談会に呼ばれました。
他にはソニーの副会長の中鉢様、東大前総長の小宮山先生という畏れ多いお二人で、これまた刺激を受けた1時間半。
「イノベーション創出のためには:科学・技術のあり方」というようなテーマでした。

*****
その後、内閣府に移動して男女共同参画基本計画策定のための委員会。
ここで見た資料に驚いてしまいました。
ここからが本日の本題(前振り長くてすみません)。

実は日本は<低学歴社会>である!

この発言は座談会において、日本では博士号を持った人材が活用されていない、という意味で申し上げたのですが、そもそもそれ以前に、日本の四年生大学進学率は2007年の統計で45%だというのです。
OECD諸国の平均より下回り、お隣の韓国が60%、オーストラリアに至っては85%もあるというのに、です。
「大学が全入時代になった」という意識が強く、進学率はもっと高いと思い込んでいましたが、そうでもないのですね。
日本では短大や高専が、米国でいうところの「カレッジ」に相当する役割を果たしているのでしょう。
経済状態が悪くなると、家庭の事情で大学に進学できない、四年制よりも通学期間が短い短大や専門学校に進学する人が増えることは間違いなく、高い能力を持った人が高等教育を受ける機会を逸してしまうことになります。
ローンとして返済する必要のない奨学金の給付が是非とも必要ですね(すべて国に頼るという意味ではありませんが)。

さて、ここでふと気がついたのですが……。
日本の大学学部学生の中で、理系の男女比が3対1と、女子学生が少ない(25%)ことが、女性の科学者・技術者が少ないことの出発点である、とずっと言い続けて来ました。
ところが、本日配付された文部科学省の資料によれば、女性の大学進学率が40%なので、上記を鑑みると男性は50%ということになりますね。
ということは、大学に進学する女子の中では、実は理系の割合が多い???
ということは、大学への進学そのものを勧めることによって、自然に理系女子が増える???

日本の女性は免許が取れる学部(医・歯・薬・看護)への進学が圧倒的に多く、理学部・工学部に極端に少ないという偏りがあって、それが大きな問題なのだと思うのですが、そもそも、もっと大学に進学してもよいはずで、そこのところを問題にしてこなかったことに気付きました。
ただし上記は全国の四年制大学の学生数の中での理系・文系の割合を正確に把握しないと、間違った推論になっているかもしれません(簡単に調べられなかったので断念しました)。
やっぱり、きちんと数字を元に考えなければいけませんね。

それにしても、decision-makingの場が低学歴社会であるニッポンをなんとかせねば!

【追記】
2009年8月の読売オンラインの記事に「大学進学率、初めて5割越す」というものがありました。
ただし、これは短大を含んで56.2%なので、OECD標準の四年制大学でどうなのか、文科省からの平成21年速報もあたりましたが読み取れませんでした。
詳しくは文科省 学校基本調査平成21年度速報
by osumi1128 | 2009-12-05 16:14 | 科学技術政策

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