神経科学者SNSからの提言をめぐって

今日は暖かい一日でした。
昼間にポスドクさん二人とランチに出たのは、その後ついでに郵便局に寄りたかったこともありますが、気温が摂氏5度より上がると、身体の緊張感がほぐれますね。

さて、本日のエントリは科学技術政策関係ネタです。
(かなり長めの記事になります)





平成18年度から22年度までが、第3期科学技術基本計画の範囲なので、目下、第4期の計画策定に向けた準備の委員会が開かれています。
日本学術会議からは「第4期科学技術基本計画への日本学術会議からの提言」(PDF)が取りまとめられました。
文部科学省の下に置かれた委員会では「中間報告」を出したところで、まずは一段落。
我が国の中長期を展望した科学技術の総合戦略に向けて-ポスト第3期科学技術基本計画における重要政策-中間報告
日本経団連でも「科学・技術・イノベーションの中期政策に関する提言」が発表されているほか、現在、総合科学技術会議の下の基本計画専門調査会の方でも月1回ペースで議論されています。

このような提言は、専門家、有識者と関係組織の方々により取りまとめられるものであり、今後5カ年という国の方向性を見据えて、いわば関係各方面の大所高所からの意見が集約された形になります。
そのような中で、どうしても取りこぼされてしまうような研究者の現場感覚の意見について、「神経科学者SNS」という組織から、若手有志がアクションを起こして、とりまとめを行いました。
神経科学者SNSは、統合脳データベース委員会が、神経科学・脳科学の研究を行っているか、これらの研究に関心を持っている研究者の情報交換・コミュニケーションの促進のために実施するソー シャルネットワーキングサービスです。

神経科学者SNS「事業仕分けコミュニティ」による
「これからの科学・技術研究についての提言」(2/4公開)


(本提言は公開するにあたり、神経科学者SNSの運用を行っている「統合脳」という科研費の班が情報公開用に用いている「統合脳プラットフォーム」に置かれています。)

この提言をまとめるにあたり、約1500名のSNS登録者に30問のwebアンケートへの協力を依頼し、170名からの回答を得て、それをもとにしている点がユニークであると言えるでしょう。
とくに、研究資金運用における合理化についての具体的なアイディアは、注目に値すると思います。

公開後、いくつかのサイトでもさっそくに取り上げられました。
大「脳」洋航海記「欲しいのは金じゃない、ただ合理的なシステムを求めているだけ:神経科学の若手研究者たちによる公開提言」(2/4公開)
科学政策ニュースクリップ「神経科学者SNS提言を発表」(2/6公開)

ところが2月9日付けでネット上に載った記事では、一部、事実関係に誤りが認められる記載がありました。
JanJanNews「「欲しいのは金ではなく合理的なシステム」神経科学若手研究者たちの提言」(浅田明)
 (第二段落)その中で、神経科学者若手のSNSでは、事業仕分けをきっかけに「これからの科学・技術研究についての提言」をまとめ日本学術会議、総合科学技術会議宛てに提出した。この内、日本学術会議は提言を却下したが、総合科学技術会議(議長:鳩山総理)は今月中に委員会で取り扱いを審議することになっている。

神経科学者若手からの提言は、公開前に事前に日本学術会議の幹事会の先生方にもお目通し頂いたものではありますが、決して「却下」された訳ではありません。
また、これから開催される上記の基本計画専門調査会において、私自身が「若手からは研究環境改善のための、このような具体的なアイディアも出ている」という参考発言をさせて頂く予定にしてはいますが、「委員会で取り扱いを審議する」訳ではありません。

関係者にお問い合わせしましたところ、下記のエントリのコメントに記載されたことが歪曲された可能性があるのではないか、ということでした。
大「脳」洋航海記「研究者自身による真摯な反省から出立した提言とご理解いただければ:公開提言に対する反応へのお返事」
そのために、同ブログの管理者の方は、すでに訂正エントリを掲載されています。
大「脳」洋航海記「訂正エントリ:公開提言は日本学術会議から「却下」されたわけではなかったとのこと」

日本学術会議としては、上記に挙げた「提言」の他、今年の1月15日付けで幹事会声明も出しています。
日本学術会議幹事会声明 <日本の未来世代のために我々が今なすべきこと>
若手からの意見を吸い上げる仕組みについても考慮されつつあるところであり、対立の構図となるような関係ではありません。

サステナブルな社会を築いていくためには、何より、人と人のつながりが大切だと思います。
真意はどこにあったのか不明ですが、そのようなつながりを断ち切らせるような書きぶりは困ったことです。
ネット社会において、テキスト化されたものをどのように扱っていくのか、リテラシーやエチケットやクレジットが問われる時代であることを痛感しました。
by osumi1128 | 2010-02-10 00:37 | 科学技術政策

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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