見場と中身

昨晩の話題は「いかに分かりやすい授業をするか」だった。

7時に少し遅れて「ブラッドオレンジジュース&ピザ」の会に行った。
ピザ担当の数学科のK先生は、本当は定禅寺通りの美味しいピザ屋からテイクアウトしようと思っていたところが、最近、材料の手作りモッツァレラが入手困難になり、予約のみになったとのことで、ピザハットになってしまったと嘆いていた。
(ちなみに、このピザ屋さんは、ナポリ風窯焼きの美味しいピザを食べさせてくれます。しかも、オーナーシェフ?はイケメン系です。)
http://gourmet.yahoo.co.jp/gourmet/restaurant/Tohoku/Miyagi/guide/0207/M0004000181.html

(珍しく)ジュースで乾杯して食べ始めたのだが、最初(私の持ち寄りがテイクアウトのお総菜で、小茄子のピリカラ揚げ煮と、オクラとメカブのとろとろ和えだったためか)、給食の好き嫌いになった。
私たちの世代は「給食は(というか食べ物全般)残してはいけません」という教育で育っている。
Kさんは「とにかく嫌いで食べられないものが多くて、コッペパンの中に嫌いなものを詰めて(パンは残しても良いルールだったそう)ごまかした」という。
場所を提供して下さって、サラダとジュースを出して下さった同僚のN先生は、小学校低学年のときに行っていた香港の日本人学校の給食がとてもまずくて、食べられた代物ではなかったらしい。
そこで、例えばチャーハンのようなものの場合、最初にお皿に広げて「先生、食べられません」と言うと、「もう少し食べるのよ」と言われ、次に、それを寄せて固めて見た目に少なくして「もう、食べられません」と言うと、「よく食べましたね」となってメデタシめでたし。

上記2例から分かるように、子供というのはたくましく生き延びる術を考えつくものだ。

さて、どこから話題が転換したのか覚えていないのだが(決して、ジュースをビールに替えたからではないと思う)、Kさんが「授業ではPowerPoint使う?」と言う。
数学では数式を書いて順に説明しなければならないので、伝統的に板書なのだそうな。

私の場合は、仙台に来て2年くらい、OHPを板書で1年生相手に教養レベルの細胞生物学を教えていたが、その後、PowerPointに切り替えた。
その理由は、やはり美しい顕微鏡写真を見せたり、ムービーも使うにはPowerPointが一番便利だからだ。

Nさんの場合は、昨年度の修士相手の授業1コマのときは全部板書だったのを、今年はPowerPointにしてみたらしい。
「でも、板書のときの方が分かりやすかったんじゃないかな。PowerPointって、綺麗な図などは見せられるけど、流れていっちゃうでしょ。聴いている方は書き取れないよね」
「準備するときも、板書しないといけないと思うと、前の晩にはすごく一生懸命に覚えたりするけど、PowerPointだと、この話とこの話をして・・・とラフに考えるだけじゃない」

これは確かで、私も本当に印象に残って欲しい単語などはもういちど「板書」する。
(面白いことに、私が板書すると、学生は一斉にそれを書き取るという反応を示す。条件反射のようなものか?)
たぶん「板書」のスピードは人の理解のペースと合っているのだが、PowerPointにいくら情報を詰め込んでも、そのうちどれだけが学生の記憶に残るのかは疑問。
しかも、最近の学生はメモ取らない人が多い傾向があるし・・・

授業を準備する側から言ったら、PowerPointは有り難い。
ほとんど英語版しかないけど、教科書の図などのコンテンツは充実しているし、最新情報も論文からコピペできる。
そのときの授業内容がファイルとして残せるから、今年はここを入れ替えよう、などという亢進も非常に簡単だし、他大学に呼ばれて話をするときに並べ替えるのもラク。

今でも、昔、解剖学の先生が、沢山の色チョークを使って、さまざまな神経の走行などを黒板に描かれていたことを思い出す。
同じようにしようとすると、確かに準備に時間がかかる。
解剖なら同じことを教えていけるが、分子細胞生物学の分野では、「古典」だけでなく最先端のことも教えたいから、どうしてもボリュームが増え、それをカバーするには板書はキツイ。
(でも、それだけ教えようと思っても相手にはどれだけ残るのか分からないのだが)

数学では学会発表も黒板で行うことがあるらしいのだが、生命科学系は一昔前が「スライド」で、今ではほとんどコンピュータプレゼンテーションに替わっている。(PowerPointが嫌いな人はKeynoteなどを使っている)
したがって、授業も同じような準備になりがちである。

で、数学の人は、数学の授業をどうしたら分かりやすくなるかという話をよくするらしい(というか、彼女を見ている限り、とにかく非常に議論好き)のだが、数学者の議論は(彼女曰く)あさっての方向を向いているとのこと。
「見場より,中身」の美学が強すぎて、何をどう説明すれば分かりやすいか」と
いう話は熱中するのだが、それを、どうプレゼンするかには全く無関心らしい。
生命科学系では、論文書きやら学会発表やら科研費申請やら班会議やらで日々忙しすぎて、そういう議論をする暇がないのが現状かもしれない。

「まずパワーポイントの機能を覚えなくては」と言っているK先生には「分かりやすいプレゼン」を目指した拙著を進呈しておこう。


今日は夕方にNPO法人の総会で一般向けの講演。
明日は午前中東京、午後に三島で会議。
昨日のコメントによると三島のエスカレータでは右を空けるらしい(東京流)ので、本当かどうか観察してくる予定。
by osumi1128 | 2005-06-26 10:56

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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