『科学との正しい付き合い方 疑うことからはじめよう』(内田麻理香著、DIS+COVERサイエンス)

今年のGWはお天気にも恵まれ、皆さんそれぞれ充実した時間を過ごされたことでしょう。
例年、何か大きな原稿を抱えているのですが、今年は2冊、校正の上がりを待っている段階で、研究費申請書の準備とともに、オフィスの片付けを実行しました(V印!)。
まだ完璧というにはほど遠いのですが、少なくとも、数人とのディスカッションをできる状態までにはなり(苦笑)、心理的には満足。
「掃除はこころの浄化」というのは本当です(←脳科学的に云々ではなく-念のため)。
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本を読む時間はもっぱら移動中の列車の中か寝る前ですが、いくつかの本を並行して読むことも多く、今、継続して読んでいるのは『プシュケーの脳科学』(浅野孝雄、藤田晢也著、産業図書)。
先に読み終わったこちらのご紹介を。
新刊DIS+COVERサイエンスシリーズのうち著者からご恵贈頂いた1冊『科学との正しい付き合い方 疑うことからはじめよう』です。




先日、科学技術振興機構理事長の北澤先生による『科学技術は日本を救うのか』をご紹介しましたが、本書ともう一冊『予定不調和』(長神風二著)と同時に刊行されていて、北澤先生、内田さん、長神さんの順に読むと良い、というお勧めに従ってみました。

内田さんの肩書きはサイエンス・コミュニケーター、サイエンス・ライターですが、NHKのTV番組「すイエんサー」にも出演されるなど、幅広い活動をされている、とてもチャーミングな方です。

本書のメッセージを一言で言うとすれば、「科学をもっと身近に!」ということだと思うのですが、これは私自身、つねづね思い続け、言い続けてきたことでした。
社会が都会化して、自然に触れる機会は減った世の中でも、例えば、お料理やお洗濯の中に、「界面活性剤はどのように働くか」などの科学(この場合は化学)が潜んでいます。
これから先、地球を痛めつけずに人々が平和に暮らすにはどうしたらよいかは、科学的な知識や思考法無しには考えられないでしょう。

本書は、導入部としての「初級編」、本書の中核をなす「中級編」、さらに科学と社会の付き合い方を考える「上級編」という三部構成になっています。
科学嫌いの読者をも引き込もうとする内田さんの努力に頭が下がります。

「科学番組」的なものはいろいろありますが、その多くは「(役に立つ、あるいは逆に、役に立たないけど面白い)科学的知識」を扱ったものであり、内田さんは「科学的思考」が大切であると説きます。
「疑うことからはじめよう」という副題にあるとおり、科学的思考において「まず疑ってみる」という姿勢は重要であり、そういう科学リテラシーがあれば、「似非科学」が巷に跋扈することを防ぐことができるでしょう。
「何々が体にいい!」という報道を見て、毎日毎日「それだけ」を食べていたら体に良い訳がありません。
何事もバランスが大事であり、科学の心はそういうバランスを取ることに繋がります。

…という観点から、あえて本書についての辛口コメントも付け加えるとすれば、挿入されている「コラム」が、過去に他の媒体に掲載されたものである点です。
やや「科学エンタメ」系な内容である、あるいは内容がすでに古びた印象のコラムがあることが、本書全体の流れとの乖離を生んでいるような気がします。
もっとも、これは科学を職業としている者の視点ですので、そのことによって科学を親しみやすいものと感じることができた一般の読者の方々も多くいらっしゃるかもしれません。

ともあれ、科学コミュニティーというのは、専門家の集団だけではなく、内田さんの言うところの「マニア」や、一般の方々まで繋がっていて欲しいというのは、まったく同感です。
あえて「非専門家の立場から物申す」というスタンスの内田さんの次作に期待します!
by osumi1128 | 2010-05-05 13:43 | 書評

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