NPOにできること

久しぶりに三島に行くと、確かにエスカレータの右側を空ける東京型であった。
新幹線で1時間なのだから、東京に通勤する人だっているだろう。
コメントによると大垣と米原の間が「右か左か」の分かれ目なのだそうな。

さて、日曜日の晩の話になるが、とあるNPOの総会で「脳をつくるレシピの研究」と題する一般向けの講演を行った。

このNPOは「科学協力学際センター」といって、東北大学金属材料研究所の川添教授が代表を務めておられる。
学術研究の成果の一般市民への発信と学際的科学技術開発へのサポートが主な活動内容だ。
http://www.ccis.tohoku.org/
会員数はおよそ70名で、東北大学関係者だけでなく、仙台もしくは東北エリアの企業の方(大小いろいろ)も参画しておられる。
現在発足3年目で、「認定NPO」になることを目指しているとのこと。
(寄付金に税金がかからなくなるなどのメリットがあるため)

つい先だって私も会員になった。
それはこういう活動も研究者にとって必要な時代だと思うからだ。
(すべての研究者が皆そうしなければならないと思ってはいないが)

研究活動を20年行う間にだんだん不満になったことの一つとして「どうしてサイエンスの面白さを普通の人たちと共有できないのだろう」ということがあった。
また、自分で研究費を頂く立場になってみると、普段の生活とは桁が2つも3つも違うお金、しかもそれは元はといえばほとんど国民の税金、を使うのに、勝手なことをしていて良いのか、ということが気になってきた。
研究を志す人にある程度共通した性格のためなのかもしれないが、研究者の社会は閉鎖的になりがちである。
自分の研究室の仲間、元の出身研究室の友人、共同研究者や学会関係の友人とは密なコミュニケーションがあるが、それ以外の交流としては出身学部の元同級生、先輩後輩等くらいだろうか。
趣味の友達とは、なかなか研究そのものの話をすることはない。

平成17年度科学技術白書によれば、とくに若い世代で科学に対する無関心層が増加してきている。
これは初等中等教育の現場において、理科や科学の楽しさ、面白さを伝えることが難しいことにもよるだろうが、20年後の日本を考えた場合に由々しき問題であると思う。
「科学・技術は大事」と考える世代でも、どれだけのことを理解しているだろうか。
国の施策としての対応も望まれるが、今自分にできることは何かと考えると、いろいろな機会を利用した情報発信であり、例えばこのようなNPO活動のようなボランティアもその一つである。
会員の多くはバイオ系ではなく工学系なので、まずはこれらの方たちに脳研究についてちょっとずつ知って頂きたい次第。

普通の人に話をするのは、ある意味とても難しい。
よく分かって頂けないと「・・・で、そういう研究をして何に役立つのですか?」という質問を受けることが多い。
昔はムキになって「応用ではなくて、知ることそのものが人類の知に貢献する」などと答えていたが、今は「例えば、精神疾患などの発症を防ぐことができたら良いと思って研究しています」と答えている。
とりあえずは、そういう答えを聞くと、聞いた人は安心してくれる。
接点を持つためには、現時点では仕方ないかなと思う。
サイエンスの面白さを分かち合えるようになるためには、もっと若い世代に語りかける必要があるだろう。

日本はこれまでかなりのことを「国の主導」で行ってきて、道路や建物をたくさん作り、現在私たちは大きな負債を抱えている。
理想は小さな政府であり、いろいろな隙間を埋める事業を、それぞれの地域に密着した形でNPOなどが支えていければよいと思う。
by osumi1128 | 2005-06-28 00:34

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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