パンダの親指

故スティーブン・グールドが書いた本の1冊に『パンダの親指』というタイトルのものがある。
これをちょっと意識して書かれた『パンダの死体はよみがえる』(ちくま新書)を読んだ(ライフログ参照)。

本を書かれたのは遠藤秀紀(えんどうひでき)さんと言って、国立科学博物館から今年の2月に京大霊長類研究所に教授で移られた、まだ(たぶんぎりぎり)30代の方。
とある会議で初めてお会いしたら、「お父様のことをよく存じ上げています」と言われる。
細胞生物学系で専門が近いため、母の知り合いにはよく声を掛けて頂くことがあって、若い頃はちょっと反発もあったが、最近は年を取って丸くなったのか(体型も?)、有り難く受け取ることにしている。
だが、父は鯨が専門で、農学部水産学科の出身だから、バイオ系といってもそう滅多には共通項がない。
へえ、珍しい、どうして?と思ったら、鯨の解剖学の関係らしい。

会議の後、直ちに御本を送ってきて下さった。
読んでみるとなかなか面白い。
中でも、上野動物園のジャイアントパンダの二代目、フェイフェイを解剖し、パンダには「第六の指」だけでなく「第七の指」もあるという発見にまつわるエピソードは、筆がなめらかにすべるように描かれている(って、間違いなくキーボードに向かって執筆されたはずだが)。

遠藤さんの専門はいわゆる「解剖学」で、さまざまな動物の体がどんな風にできているかを、最近ではCTやMRIまで駆使して研究されている。
普通の「モデル動物」を扱うのではないので、「材料」が提供されるのは偶然によるところが多く、その運命的な出会いを最大限に学問に役立てたいというエネルギーに満ちあふれていることが伺われる。
これを「遺体科学」というらしい。
対象のレパートリーたるや、5トンを超えるアジアゾウから、ジャイアントパンダ、レッサーパンダ、コウモリ、マングースと多種多彩。
彼にとって「死」は終わりではなく「始まり」を意味し、「もしもし、ゾウが死にました。受領可能ですか?」という電話から研究が展開されていくのだ。

仙台も今は梅雨の中休み。
至適温度低めの私は東京以西より涼しいのが幸せ。
皆さんご自愛下さいませ。

PS:
すみません、先日のPowerPointの話から、どうしてもKeynoteを試したい気持ちになっているのですが、Pptのファイルがそのまま移行できるかどうか、どなたかご存じでしたらコメント(もしくは直接メールでも)下さい!
by osumi1128 | 2005-06-28 12:50

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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